フロントガラスに跳ね石で大傷顛末記
(2006/12/8)
その日わたしは諸般の用件により夕刻の東名道を東京に向けてひた走っておりました(温泉の帰りとかじゃないよ)。
静岡ICを通り過ぎ、すっかりあたりが夕闇にとざされたころのことでした。追越車線走行、前には90kmリミッター制御のトラック、斜め前方にもトラック。車間はといえばそんな状況でしたからそれなりのものでしたが、そんなに詰めていたとは思われません。で、その時「闇からの一撃」!
高速をずーっと走っているとある種漫然とした運転感覚になるということは誰しもわかると思いますが、この「いきなりの大異音」に、一体何が起きたのかとたまげたTakemaでありました。
それでもわがフォレスターの走行に関わるような異常は感じられません。あれぇ、今の音は何だっただろうと、ちょいとキョロキョロしているときに「原因」は発見されたのであります。
富士川のSAで車を停めて確認すると(暗い場所でしたが)、まあ十円玉より少し小さいくらいの損傷なんで千葉までは大丈夫と考え、霧雨の中帰ってきたわけです。
でもその時は、「これは下手をすればフロントガラス交換かなぁ、となれば5万円くらいはかかるかもしれないなぁ」というくらいの気持ちでした。しかし家に帰ってきてネットで検索してみると、フロントガラスの交換ってその2倍から3倍くらいかかるみたいなんですね(驚&嘆)。NZで自分の車のリアガラスを自爆粉砕したときには当時の値段で2万円弱だったんだけれどなぁ(比較の対象にならないけれどね)。
で、朝になって改めて損傷の具合を見てみると‥。
左右の画像それぞれにマウスオンすると別角度の画像に変わります。結構大きいでしょ。
傷そのものの大きさはそれほどでもありませんが結構えぐれてます。それに丸い円状のヒビも入っていて、これではまずダメなんだろうなぁという気持ちになっていました。
しかし、ネットで最初こそ「フロントガラス 交換」で検索していたものの、そこに「修理」の2文字を追加したあたりから状況は変わってきました。それは「も、もしかして交換じゃなくて補修で何とかならないか?」という新たな希望の光でもありました。
検索結果から目を付けたのは東京都江戸川区平井にあるこちらのサイト。個人営業の方ではありますが、とにかく車のガラス損傷修理については無二の詳しさ、そしてさらに管理人の堀江さん自身の個人的なお話や難病との格闘歴がきっちりと綴られていて、お人柄がしのばれます。「よし、こちらにお願いしよ!」と即断したことはいうまでもありません。
電話を入れると、「日曜日にお伺いできますが、損傷面にビニールテープ等で雨があたらないように保護をしておいてください」とのご指示。この日は夕方から雨が降る予報だったので、的確なご指示でありました。そして日曜日。堀江さんの登場と相成りました。
せっかくなので作業を見学させていただけないかと申し出て、快諾をいただきました。堀江さんによると、わたしのように「滅多にないことなので見学したい」という人が多いんだとか、みんな考えることは同じですね(笑)。というわけで、いろいろなことを伺いながらの作業となりました。
上記サイトにあるように「基本的には出張サービス」という形を取っているのには理由があって、強度の落ちたガラスのまま走行していると、車体のねじれなどについていけずにヒビが広がる(伸びる)恐れがあるからなんだそうです。なるほど、わたしの場合はヒット後高速を200kmあまり走ってきたわけですが、実は結構リスクが高かったのね。ついでなので、もしフロントガラスに跳ね石による傷が付いた場合、気をつけるべきことについていくつか挙げておきます。皆さんの「いざという時」に役に立つかも(そりゃないに越したことはないけどね)。
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と、ここまで表にしてきたところでちょっと待てよと思い起こしました。素人であるTakemaが聞きかじったことを列挙するよりも、「本職」のサイトを見ていただいた方がいいじゃないのさということを(気づくの遅いって)。というわけで、堀江さんサイトのこちらのページをごらん下さい。これで完璧です(笑)。
さて肝心のTakema車の傷はといえば、堀江さんの見立てではかなり大きな、丸い形状のもの(石)がぶつかった可能性が高いということでした。また、クラック傷(スターブレイクというらしい)のみならず、傷の周囲に丸い円状の傷(これまた専門用語ではブルズアイというらしい)を伴っている、いわゆる「コンビネーション傷」も生じており、このような傷が出来ることは少ない(=かなりの衝撃が加わった可能性が高い)ということでした。そうかぁ、よく頑張ったぞフォレスターくん(笑)。
ちなみに雑学ですが、日本車のフロントガラスが現在の「合わせガラス」になったのは昭和62年からのことで、それまでは強化ガラスを使っていたんだそうです(アメリカなどではもっともっと以前から合わせガラスだったそうですが)。この強化ガラス、強度を超えた衝撃が加わると粉々に砕けてしまうという代物ですから、もし今回Takemaが運転していた車が古い強化ガラス車だったとしたら、場所が東名高速上だったこともあり大事故は免れなかった可能性が高そうです。ふぅ‥(安堵)。ちなみに側面は現在でも強化ガラスだそうですが、「いざ脱出しなければならないときに割れないのでは逆に危険度が高いので」ということでした。なるほどなぁ、何だかすごく勉強になりました。
で、問題はこのブルズアイで、レジン(樹脂剤)を完全に浸透させることは難しく、強度的には十分にできても、この跡を完全に消すことは出来ない可能性があるということでした。失礼ながらここで「その場合も車検には通るのでしょうか?」とお聞きしたら、「それはまず問題ないはずです」ということでしたので(ちなみにこれまでに修復した車両が車検に通らなかったことは一台もないそうです)、「それならば全く問題ありませんのでお願いいたします!」(わたしゃバイクでも車でも、そもそも「見た目には全然こだわらない派」ですし)。ということで作業開始です!ちなみに作業工程の撮影は企業秘密の漏洩につながるから無理かな?と思っていたのですが、「どうぞどうぞ」とのことでした。そうか、見ているだけで真似できるものじゃない「技術職人の技」なんですもんね。お見それいたしました(苦笑)。
作業セットスタンバイ完了!(左上画像のタバコ空箱、実はこれも大切な修理アイテムの一つだったのにはびっくり。)。まずはドライヤーで傷の内部にあるかもしれない水分を蒸発させます。水や油は天敵ですからね。
続いて、レジンの注入を円滑に行うための傷面修整およびレジン浸透の道作りです。先端がものすごく細いドリルで作業なさっているのですが、恥ずかしながら素人Takemaには何がどうなっているのか、まったくわかりませんでした(笑)。
いよいよ本命の?インジェクターが登場です。これは先端スポットを真空化させ、その圧力でレジンをクラックの隅々にまで浸透させるというすごい器具なのだそうなのですが、実はこれまたどういう流れでどんなことになっているのか、レジン様はどう動いているのかいないのか、皆目わかりませんでした。もっともこれがわかるようなら自分だって堀江さんになれますって(笑)。
でもって、しばしの養生?のあと、紫外線を照射します。何でもレジンは紫外線で固化するのだとか。ちなみに黄色い幕は紫外線防止のUVカバー。なるほど、レジンを送り込んでいる途中で固まってしまったらにっちもさっちもいかなくなっちゃうわけですからね。
最後に表面をなめらかに削り上げて完成でした。「ブルズアイ」は言われれば確かに多少残っているような気もしますが、「ここですよここ!」と指摘しなければまずもってほとんどわからないくらい綺麗に仕上がりました。堀江さんはさすがに技術者ゆえ、「ちょっと残っちゃいましたねぇ」と残念そうでしたが、Takemaはこれで十分でございます!このページ一番上の画像と見比べれば違いは言わずもがなです(右上画像にマウスオンすると修復前画像に変わります)。
気になる修復代金ですが、福沢さん1人と夏目さんが何人かという非常にリーズナブルな料金でございました(詳しくは堀江さんサイトをご参照下さい。明快な料金体系です)。
というわけで、これから真冬にかけてのTakema&おしんこどんのお出かけはこれで問題なし!終わってみればなかなか出来ない、いい経験でありました。