雪上キャンプの春夏秋冬

 

1998GW、室堂雷鳥沢キャンプ場にて。左写真の中腹に見えるごま粒は雪上訓練中の人たち。この日は曇っていたので寒かったのだが、太陽が出たら右写真のようにTシャツだ。ズボンは脱ぐと雪に直に触れるので我慢して着用している。
自分は中学高校と山岳部に所属していた。大学でも登山のクラブ(山岳部じゃないんですけれど)に入り、やはり自分が現在の放浪というか期限付徘徊癖を形成する上で、この「山」とは多大な影響を及ぼしてくれたものだと思う。外に出ることのすばらしさといえば格好がいいけれど、一人で山の中を歩いていて、稜線を越える風の音にビビっていたのが実際のところ。でも、一人で衣食住全てを背負い、なんとか一人でやりきることの快感を覚えた最初の経験が山だったのは間違いない。で、その頃のこと。

山岳部に入り、中1こそ団体装備なしでナップサック(今はこういう言い方しないなぁ。要はデイパック)で「わぁ〜い」的に低山を歩くだけだったが、1年後にはいきなり環境が変わった。

まずキスリング。とはいっても知らないかたのほうが多いだろう。横長の、帆布で出来ているかどうかはともかく、パッキングの技術如何によっては天国と地獄の差が生じること請け合いの、まぁ言うなれば職人のためのザックであった。ザックはそんな状況だし、当時はフリーズドライなんて姑息な、いや便利なものがなかったもんで、とにかくなまもので必然的に荷は重くなる。「ペミカン」なんていうのもあったくらいだ(これ知っている人はすごい)。

あの頃に比べれば、たとえばテントでいえば、はるかに軽く通気性と防水性を兼ね備えた立派な素材モノが出ている。「凍って丸太、下山後の網棚からしずくがシトシト」なんてのははるか昔の出来事だ。そして食事しかり、衣服しかりである。上下関係の封建制までどっかに吹っ飛んでいってしまった。

しかし、様々なことが変わるとも、Takemaのザックなぜか相変わらず重いのだ。もちろん大好きな酒の重さはある。それでもせいぜい2kgの問題くらいなわけで、更なる課題は「つまみ」なのである。冬山行こうか、じゃ、鹿島槍でも行くか、で、食糧計画はTakemaにまかせた。でも、つまみはオデンが欲しいぞ、という感じなのだから必然的に荷物は重くなる。乾燥オデンがあったとしても却下される。だって、かつての発想:乾燥食はラーメンを除いて不可、という意識が今でも残っているのだから。さらにいえば、「うまいものが食いたい」という欲求は若い頃より増殖する。「さきイカあればいいや」は「ホタルイカ沖漬け背負い上げろよ」に進化するのである。

とはいっても、ここ数年冬山には行っていない。せいぜい行くとしてもGWの上高地〜岳沢〜前穂とか、室堂〜立山三山+大日岳とかがせいぜいだ。でも相変わらず荷物は重い。だいたい、余計なモノが多すぎるんだ。液晶TVを持っていったこともある。「ひまわり画像をダイレクトに見られればかなり翌日の天気を予想出来るのではないかという前向き&手抜きの発想のみならず、「ついでにナイター見られるからいいよな」的な明らかに後ろ向き発想からである。実際は、山の中ゆえ電波状態が悪い上に(テントのフレームをアンテナとして活用できないか、というアイデア自体は国宝級だったが)、GWとはいえ、夜はやはり-10℃くらいまでは軽く下がる場所である。バッテリーもすぐ上がってしまい、大した役には立たなかった。

さて、話を戻して春夏秋冬。

このGWという時期、まだまだ寒い、とはいってもそれは悪天の時の話だ。時にやってくる無風快晴の一日、そんな時はすごい。朝方、当然のようにテント内の水(しかも枕にしていたポリタンでさえも)はしっかり凍り付いている。テントの内側は、我々の息に含まれる水分その他がしっかり凍り付き、まるで「氷の殿堂」。まぁそれはテント内炊事と同時にどっかにいってしまう(ゴアテントの場合)。午前8:00ころ、登山中の太陽は「はぁ暖かくていいなぁ」と感じることも。問題は行動が終わり、帰ってきた後の午後だ(雪山の午後は雪崩の危険があるので行動しないでテント場にいるのが普通)。

テントの中は、余りにも強い直射日光+雪の反射とで暑くて暑くて、とても入ってはいられない。では外はどうかといえば、当然の事ながらその恐るべき殺人光線に襲われることは言うまでもない。でも、テントから引っ張り出したマットに横になり、熱さを雪でごまかせば何とかならないことはない(少なくともその一刹那は)。Tシャツに短パン、マットを敷くとはいえ、雪の上にごろ寝だ。ワイキキビーチみたいなもんだ。

そして夕方。太陽がかげるとともに、一気に押し寄せる冷気というよりも寒気。そしてその頃だ。「顔が熱いッ&痛い!」しかしもはや焼けてしまった肌はいかんともしがたい。なんたってものすごい紫外線を浴びまくったのだ。でも、耐えて寝る。

そして翌日。また同じ事の繰り返しだ。

GWを終え、再び出勤する顔はケロイド状。かさぶたからは血液ならぬリンパ液が垂れ、「公序良俗上問題あり」の状態だ。でも、それでも毎年やってたなぁ。皮膚ガンになるなら俺からだなぁ。でも幸いその兆候はない。

[戻る] [ホーム]