ウミガメの産卵といえば日本でも何カ所か見ることができるようですが、その絶対数が少ないだけになかなか短い日程で希望を叶えるのは難しいところ。また、マレーシアの東海岸でも見られるそうですが、モノの本によると「カメ一匹に観客100人でなにがなんだかわからない」状態だとか。ということで、ここボルネオのSandakanから船で1時間半くらいのところにあるSelingan島(どうもSelingaanというスペルが正しいという説もあるらしい)までいけば、入島人数制限もあることからゆっくりと見られるのではないかと思って行ってみました。



午前10時頃、迎えの車で埠頭まで。そこからは高速艇で一気にスールー海を突っ走ります。とはいえ途中の島で早めのランチをとったりするので、ま、焦らずのんびりとといったところ。島に着き、管理棟兼食堂兼宴会場兼資料館でこの島でのルールを聞いた上で部屋のキーを渡されます。ルールについては「地球の歩き方」などに書かれていますので、ここではそこに触れられていないことを書きます。

部屋の建物は管理棟から少し離れたところにあり、夜は真っ暗なのでライトは必携です。忘れてたTakemaは、100円ライターの火花を散らしながら部屋と管理棟との間を移動するというていたらく。けつまづいてころんでもばからしいので、くれぐれもお忘れなきように。
部屋は至極快適です。1999-2000版の「地球・・」には「部屋は蒸し風呂・・」などと書かれていますが、今は各部屋にSanyo製のクーラーが付けられており、全く問題なし。さらに、各部屋には冷凍冷蔵庫までついていて、しっかりビーチリゾート気分に浸れます。正直いってこんなにリッチな生活のできる島だとは思っても見なかったぞ。

午後は夕メシまでフリータイム。何とウミガメの産卵する砂浜での遊泳が可能で、シュノーケル等の貸し出しもあり。ただし、島周辺の珊瑚礁はかなり壊滅状態で、期待できるものではありません。Takemaは冷蔵庫で冷やしておいた吟醸酒持って砂浜でひなたぼっこ時々平泳ぎという至福のひとときを過ごしました。
この砂浜で特筆すべきなのが左の写真。そう、昨日産卵に上がって来たカメの足跡です。浜のあちこちにカメの痕跡が残っており、「おおっこりゃ今晩も期待できるぞ!」とワクワクすること請け合いです。で、足跡の終点には大きな穴が。この島では盗掘防止のためレンジャーが全ての卵を別の場所に移し替えてふ化させるのですが、そこはTakema、ついつい「1個くらい取り忘れてんじゃあないか?」と思い、しばしさらに深く掘ってみたりしましたが、彼らはやはりプロ、取り残しはありませんでした。

と、ここまではいいのですが、あきらめて再びひなたぼっこ生活に戻ってしばらくしたころ、向こうから二人組が歩いてくる。しかもそのうちの一人は方から自動小銃下げてる。「な、なんだ?」と思いつつ「ちわーっ」何て声を掛けて話をしているうちに、彼らは密漁監視パトロール員だとのこと。何でも昼夜24時間、定期的に島を巡回してあやしいやつが入り込んでいないかチェックしてるんだと。げげっ、彼らがあと5分も早く回ってきてたら、あの小銃が火を噴いたかもしれなかったぞ!危ない危ない(^_^;)。
さて、肝心の「ウミガメ産卵の決定的瞬間!」の写真ですが、残念ながらありません。彼らはフラッシュやらライトやらの光には非常に敏感で、浜にそういう光が見えたりしたら決して上陸しないんだとか。産卵が始まってしまえばある程度は大丈夫らしいですが、今度はその光を見た次のカメが上陸しなくなる。ということでカメ関係は一切撮影禁止なのです。でも、1m強の距離から涙を流しつつ(あれは涙だ、ということにしておこうよ)必死の思いで産卵していたあの姿は忘れられないし、そのあと別の場所からふ化したばかりの子ガメを海に放したときの光景はやはり印象的。子ガメはまだ甲羅も固くなって折らず、全体にプニュプニュした感じで、それでも必死に海に向けて進んで行くんですね(ちなみにほんの数匹だけですが、何度向きを変えても陸のほうに向かっていくのがいました)。あれから4ヶ月が過ぎましたが、あの時の子ガメのうち、今も元気に泳いでるのは何%くらいなのかなあ。ということで、左の写真はふ化エリアに埋められた卵の標識を撮影したもの。標識一番下の99と いう数字は、一匹のカメが99個の卵を産み、その卵がこの下に埋められていることを意味します。

そんなこんなで1998年のクリスマスはカメ島でさびしく、でも思い出深く終わったのでありました。

「その他のBorneo(Saba州)情報」 「Borneoのメニューページ」