スティーブさんの言によると、この木の棒は300年近く前のものだという。
ではこの棒、いったい何?答はすぐあとで。

さて、熱帯雨林を見下ろすポイントへと向かう。とはいっても湿度の非常に高いエリアゆえ、日が高く上がって来る時間の登り坂はそれなりに汗をかく。そしてひとしきり登ったところ、そのあたりに何やら陶器というか土器のようなものがいくつか置かれているエリアに出た。

「これはチャイナから来たもの、これはここの土で作られたもの」と、スティーブさんの解説。それはともかく、いったいどうしてここにこんなものが?その疑問はそこから数十m進んだところで謎解きとなった。岩盤が縦に露出し崖となっている場所に出た。ちょうど屋久島モッチョム岳の稜線付近のようなおもむきだ。そこに墓があった。埼玉の吉見百穴のような発想といえばいいのだろうか、岩場の途中にいくつかの埋葬跡が今でも残っている。岩場の中腹まで上がれるように木組みのはしごが掛かっているので上がってみたら… こんなものがお出迎え。


さぁーって、こりゃ何でしょうかねえ。って、もうおわかりのくせに(笑)。こちら様、スティーブさんいわく300年前からこのエリアに住みついていた先住部族の方のお骨だとか。なんでも、この地域の部族はここよりもう少し南に下ったMadaiの遺跡に住みついた人々と同じグループで、彼らは一定箇所に居を構えず、定期的(ただし数年とかいうことではなくもっと長いスパンで)に移動していたのだということだ。さらに特徴的なのは、彼らが水辺に住まずにこの場所のような山の上に住んだということだ。スティーブさんはこう言う。

「水辺にはまず洪水の危険がある。雨期の増水は当然考慮しなければならないし、また、水辺には多くの動植物が生息し、その中には人間に危害を加える(毒を持つ動植物とかね)ものもいるわけだから、かえって山のほうが生活する上で都合が良かったわけだね。」考えてみれば山の上とはいっても熱帯雨林だから乾期とて1日中雨が降らないというわけじゃないから水にはあまり困らない。でもって川沿いに比べれば湿気は少なくて過ごしやすいし(当然ヒルも少ないわけですな)、風通しもいい。なるほど、ここに住む理由はもっともだな。

さて、ここからもう少し進んでみると… 。

こちらは当時の埋葬に使われた木の棺桶。相当昔のものらしい。スティーブさんは300年前のものだと言っていた(と思う)。確かに崖の石庇が直接の雨を遮り、かつ下の岩盤が地表から来る湿気を抑えることもあり、森の中に置いておくよりははるかにもちはよいことだろう。でも、所詮熱帯雨林の、育ちが早い代わりに材質としては脆い木だから、本当かなあ… と思っていたら、「この木はIron Woodだからとても堅牢なんだ」との発言あり(彼はガイド中、「この木は○○といって、××すれば塗り薬になるんだ」とか「この木は△△すれば色々な病に効くんだ」というようにたくさん説明してくれていた)。その上でこの棺桶の中から一本の棒をとりだした。このページトップの写真にあった例の棒だ。なんだろうこれはと思って見ていたら、何とそれは一緒に埋葬された「吹き矢」であるらしい。いくら棺桶の中にあったとはいえ、あんな細い棒が1年中高温多湿のこの地で果たして300年もの長い間残っていられるものだろうか。

自分の聞き間違いかなぁと思いつつ聞いていたのだが(Takemaの英語力、実はかなりアヤシイんです。だから、万が一聞き間違えていたらごめんなさいな)、そのうちにスティーブさんが自分の子供の頃の話を始めた。

「自分が子供の頃はこの付近のジャングルに住んでいたんだ。だから(前のページでも書きましたが)自分は父や祖父にジャングルで生きていくための色々な知恵を教わった。吹き矢もそうだ。矢の先に毒を塗って動物を捕まえたりすることもあった(吹き矢が命中してから約10分でたいていの動物は息絶えるのだという。それならその10分間の間は逃げる獲物をずっと追わなければならないということか。それもまた大変だ)。」「後になってジャングルを出て里で生活するようになったけれど、でもジャングルでの経験が今の自分を作ってくれたんだなあと感謝しているよ」等々。

ちなみに現在の彼の住まいはLahad DatuとSandakanの間、ジャングルに隣接したエリアにあり、なんとその付近ではテングザルその他の動物たちが見られ、彼はそこを拠点にしたツアーなどを主催し、その合間にここでのガイドを引き受けているのだとか。うーむ、次回このエリアに行くときは絶対に参加してみたいものだと実感。と同時に、彼の観察眼の鋭さにも納得。ダナンバレーではそれぞれの客が必ずガイドをつけなければならないが、ナイトサファリの時の総合ガイドは彼だったし、真っ暗な中でサーチライトをあてながら動物を探すその素早さには舌を巻くほどだったのを思い出した。たった2日の滞在にもかかわらず多くの動物を見られた幸運も、実は彼の力量による部分が大きかったんだなあと、改めて感謝感謝のTakema&おしんこどんなのであった。


そうそう、これがナイトサファリに使われたトラック。二台に木製のベンチを乗せただけの簡素なものだ。でも、このナイトサファリ、何とも言えず素晴らしい。真っ暗な中(この日は月が出ていなかった)、夜空を見上げれば満天の星、そしてそこかしこに舞うホタルたち。動物が見られなくとも、その美しさにふれるだけで十分に満足できます。他のお客さんと相乗りだけれど、カップルには絶好といえるでしょう。あ、でも結婚前のカップルがわざわざこんな所まで足をのばすとは思えないな(爆)。

それはともかく、ここダナンバレーは熱帯の真骨頂を体験するには最高の場所といえるでしょう。もちろん滞在費はかなりかかります。ちなみに今回は1泊3食ガイド料やナイトサファリなど全て込みで一人RM700(RM:リンギットマレーシア。通貨単位を表す)。日本円で22000円といったところでしょうか。確かに高いです。コタキナバルのタンジュンアルリゾートにだって2人だったら相当滞在できる(だって\22000×2=44000/1泊だもん)んですけれど、いわゆる「リゾート」とは全く違った雰囲気の滞在を経験するにはこれ以上の場所はないとも言えます。ケニアのサファリで利用するロッジとはまた違った趣であり、おすすめ!

とにかく、夕方から夜にかけての、森から発せられる「音楽」をじっくり聴くだけでも(できればそこに日本から持参の冷酒でもあればなお良い)「おおっ!」と思わせられること必定と思います。

さあって、お次はいよいよダナンバレーを出て…と思ったんですが、よく見るともう少し動物の写真があったもんで、さらに続く「ダヌムバレーの動物たち2」としたいと思います。あーっ、この計画性のないやっつけ構成、ひらにお許し下さいませm(_ _)m