− その4 ラーメンだってたまには食べるのだ − 

突然ですが、わたしゃ世のラーメンブームとは全然縁がありません。だって「ラーメン食べたいっ!」と思うことがほとんどないんだもの。ましてやわざわざ行列してまでラーメンを食べたいと思うあの感覚はちょっとわかりません(まあ、もともと行列してものを食べること自体が嫌いなんですが)。家なんかで簡単食としてインスタントラーメンを作ることはありますけどね。

そんな私にとって、いわゆる「ご当地ラーメン」は「別世界の出来事」のように感じてきました。でも今回、只見線の中で「会津若松に着いてからどうしよう」とぼんやり考えているうちにこう考え始めたのです。
会津若松かぁ、じっくり歩いたことはないけれど、たとえば『白虎隊記念館』なんかをわざわざ見に行くのもどうかと思うし(ちなみにそのような記念館があるのかどうかは不明)、かといって「会津若松名物料理」なんてのも聞いたことないなぁ(知らないだけともいう)。『小原庄助さんと一緒に身上潰すまで酒が飲める店』というような場所でもあればいいけれど、午前中から身上を潰させようとする店っていうのもなぁ(笑)。しかも雪が降ってるんじゃ、ちょっと駅から遠ければタクシーを使うしかないし、ならばいっそのこと会津若松は通過ということにしようか。とすると?」
近場でどこかいいところというと喜多方か山都です。え、山都ってどこかって?ご存じない方のために申し上げれば、駅でいえば喜多方から磐越西線で新潟側に1駅のところにある町で、最近は「水蕎麦」等で蕎麦フリークには有名な場所なんですね。

でも、喜多方から先は列車の本数がぐっと少なくなってしまいますから(ちなみに電化区間は喜多方まで、そこから先はディーゼル列車のみ)、山都まで行くと帰ってくるのにも一苦労です。というわけで山都訪問は却下ということにしました。

となれば残るは「ラーメン&蔵の町喜多方」しかありません。そこで「よっしゃ喜多方で昼飯じゃ」ということで、快速「あがの1号」新潟行きに乗り込みました。



走り出す前からやる気満々に見える「あがの1号」。

会津若松、乗ってしまえば喜多方までは15分足らずで到着します。しかし、喜多方駅周辺はどしゃ降りならぬ「どしゃ雪」。駅舎の外に出るのにもそれなりに決心がいるほどです(笑)。しかしまぁ駅で時間を潰していても仕方がないので(当然)、とりあえず「ラーメンマップ」を見て駅から近そうなラーメン屋さんまで歩いていくことに。駅前だというのに歩行者の姿はほとんどない状況で、たどり着いたのは「丸見食堂」さん。

暖簾をくぐってみると、他にお客さんの姿はなし。まだ11:30だし、それにこの天気だから誰も道を歩いていないわけで、これは当然です。でも一瞬「あれ、ラーメンの町喜多方なのに誰も入っていないということは、も、もしかして『ハズレ』?」と思ってしまったのも事実です(行列が嫌いだといいながら、お客さんが誰もいないと不安になるってぇのは明らかな矛盾ですが)。しかし、お店の壁にさりげなく画鋲で貼られたカップラーメンの上ぶたをみてびっくり。

「え、ここのラーメンって商品化されてるの?」



そうなんだ、知らなかったよそんなに有名な店だとは。

でも、仰々しく「○○のカップラーメンは当店の味をまねて作られました」などのこしゃくな説明はいっさいなく、ただカップラーメンのふたをそのまま貼り付けているだけという姿勢はいいですねぇ。何だか嬉しくなっちゃいました。当然のごとくお店の人の腰も低いし。

というわけで、ネギチャーシュー麺×2と餃子1、さらにまたもや瓶ビールを注文(まだ飲むぞ)。そうこうしているうちにどんどんお客さんが入ってきましたが、われわれは最初に注文しただけあって出てくるのも最初。丸見食堂、本日初ラーメンなのだと思い、心していただくことに。

何だか左写真を見るとほんとの真っ黒スープのように見えますが、フラッシュをたかずに撮った写真ですので相当割り引いて考えてください。味はあっさり系で、飽きのこない感じというべきでしょうか。個人的には結構好きな味です。なるほど、ラーメンも悪くないなぁ。

さて、お店を出た後も帰りの列車まではかなり時間があるので、雪もやんで太陽が出てきたことだし少し周辺を歩くことにいたしました。とはいっても歩道は雪と氷で滑りやすいので近場あたりを‥と思っていたら、おしんこどんがめざとく?路地を少し入ったところにある漆器やさんを見つけました。これがまた大正解!

民家の一部を開放しているという感じのこの漆器やさん、聞けば製造直売はもちろんのこと、丁寧な「仕事」を貫徹するため、あえてデパートなどには卸さない(流通マージンが滅法かかるため、自分たちの意図した以上の値段になってしまう)とのこだわりを持っている職人さんのご自宅でした。4代目の方にいろいろと説明をしていただき(これがまた勉強になりました。きちんとした造りの漆器では、新品より使い込んだものの方が光沢が増すということなどを、現物で比較しながら説明していただいた時などは、目から鱗が落ちました。

確かに「偶然訪れた」こちらのお店ではありましたが、「こりゃ買いたい!」と思うまでにさして時間はかからず、「蕎麦ちょこ」を2客購入。もちろんそれなりのお値段ですが、後悔はなし。これから使い込むのが楽しみです。



古い蔵をうまく家の中に組み入れた家の作り方も素晴らしいです。
んでもって右が購入した蕎麦ちょこ。これからもっと輝きを増すはず!

そのあと、3代目のお父さん(ちなみに4代目の方でさえも私より6才くらい年上です)を交えてしばしお茶を飲みながらの談議。実際に漆器を作っている人の言葉にうそはなく、何だかさまざま感服しながらゆっくり聞かせていただきました。そして気がつけば14:00、帰りの列車の出発までは残り20分くらい。そろそろおいとましなければいけません。

家の前の細くくねくねした道は、実はかつての「新潟街道」なのだとか。その道を歩いて喜多方駅までは、往路よりもはるかに近く感じました(これも本当)。さ、いよいよ家に帰らなきゃ。



何でも本来は特急型車両で運用されているらしい「快速あいづライナー」。
この日は車両故障の影響で一般車両での運行。くぅ、残念。

というわけで郡山に出て、あとは新幹線で帰るだけ。またお腹も減ってきたのでそれぞれ駅弁を購入。さて皆さん、どちらがおいしそう?どちらも画像そのもの発色が良くないんですが(笑)。

右のほう(鮭とイクラ)がおいしそうに見えるでしょ?でもねぇ、ちょっと飽きるんですなこれが(ちなみにTakemaが注文)。左の方は幕の内的に見えますが、何といっても12品+2種類のご飯というのがすごいです(ちなみに中央のお肉も量が多いしおいしかった)。それぞれのお弁当の名称は忘れましたが(笑)、いい味出してます。がんばれ駅弁!

というわけで帰ってまいりました。たった1泊2日、されど1泊2日。たまにはこういう旅もいいものだなぁと感じる要素の中心に、「移動中に酒をしこたま飲める」というポイントがあったのはいうまでもないことです。どっとわらい。

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