来てはみたけど、これじゃ入れぬウータン温泉。


さて、硫黄島のパンフレットを見てもこの「大谷(ウータン)温泉」というのは書かれていません。このなかなか来られない硫黄島で、しかも地図にも載っていない温泉だというのですから、これは行く価値ありでしょっ!というわけで訪れてみたわけです‥が。



島の指導標に唯一書かれていた、ウータンへの道筋を示す看板。

ウータン温泉は、島の北側、坂元温泉と平家城(その形状から、追討軍に対抗するために安徳天皇側が築いたとされる岩山)との間の海岸沿いにあります。とはいってもその林道からの降り口には看板一つありません。ここへ行かれる方は必ず事前に村の人に確実な情報を聞いておきましょう。刈り払いの状況によっては全く降り口がわからない可能性もありますし。



こんな感じのところを降りていきます。
我々が行ったときにはとりあえず踏み分け道がついてました。

上の写真を見ると「おいおい、道なき道を降りていくのか!」と思われるかもしれませんが、まがりなりにも道はついています。ただ夏などは伸びた草で道など見えなくなっているかもしれませんし、崩れかけたり、岩に足をかけて降りていくような場所もありますからビーサンなどは厳禁でしょうね。

ここウータン温泉は、干潮時のみ入れる野趣あふれる温泉です。とはいっても湯船などというものはなく(どうせあっても波で壊されますが)、行った人間がその都度手掘りで入れる場所を作るという野性度の濃い温泉です。しかし、問題はこの時の天気。この、鹿児島よりさらに南の島というと「冬でもそれなりに暖かいのではないか」と思われるかもしれませんが、東シナ海北部地域は冬型の気圧配置になると北西の季節風が強く吹きつけ、ときには雪が降ることだってあるのです。しかも離島=回りは海=ただでさえ風は強いというわけで、強い冬型になったら目も当てられません。

我々が滞在していたときは雨やアラレが不定期にザザッと降りつける、まさに典型的な冬型の気圧配置の時でした(だからフェリーもダイヤ変更したわけですね)。同じ頃、鹿児島の霧島連峰ではどっさりと雪が降り、山の上のほうは数日間チェーン規制がかかっていたくらい。ということは、海はしっかり荒れている。まだ干潮に近いと思える時間に訪れたのですが‥。



うわわ、入浴予定地には波の子供達がぁ(T_T)。
悔しいので草津温泉のタオルだけ飾ったぞ。

そう、お湯が湧き出していると思えるエリアには悲しき怒濤の海水侵入中。この写真の俊寛じゃなかった瞬間は波が引いたところだからまだましだけど、定期的に大波が押し寄せてくる惨状。あちゃまー、これじゃどう見ても入れないじゃないのさ。

んで、温度はどうなの?と、波と波の間隙を縫って手をつけてみる。ん、温かい。いや言い過ぎた、「何となく温かい」というほうが正解だ。夏ならともかく、冬の海の温度はしっかり冷たい。冷たすぎるのだ。というよりは流れ込む海水の量が多すぎるのだ。

 

むなしく温泉タオルを首に掛けて検温にいそしむTakemaの図。
ちくしょーっ、波さえなければ少しは何とかなるんだけど、
ちょっと油断したら波の花とともに海水がご覧の通り。



そしてさびしく撤退となったわけですな。うーっ、悔しい。

ここウータン温泉はTV局も取材にきたとかで、その方面に造詣の深い方々にはかなり有名な場所であるようなのですが、今回のTakemaペアはあっさり敗退。波が強くてという以前に、やはり来る季節を間違えたのかもしれませんね。島の方いわく「ここは島の温泉の中では一番泉質がいいんだよ」ということでしたから悔しさもひとしおです。

というわけで、ここでの悔しさを振り払うべく、この足でそそくさと東温泉に向かった我々なのでありました。島の南側は晴れてるんだから不思議だなぁ。

なお、ここに来る場合は宿などでスコップを借りていった方がいいでしょう。それなりに大きめの石も多いですから、素手でやろうとするとたぶん痛い目に遭います。


さて、こうしてすごすごとウータン温泉からひきあげたにもかかわらず、残念な事件はまだまだ続いたのでありました(笑)。