石北峠を下り、ちょっと気になっていたのが「滝の湯温泉」。これまで何度も通過しながら「国道沿いだし大した温泉でもないだろう」と高をくくっていた湯なのですが、事前によくよく調べてみると結構いい感じらしいのです。しかもすぐそばには民営の「塩別つるつる温泉」なんてのもあるし。というわけで、ちょっとした「温泉街」(3軒だけしかわからなかったけれど)を回った末に、やはり原点の?「滝の湯センター」におじゃますることにしました。



いやはや、日なたにいるともうそれだけで暑い!

室内の電気がついていなかったんで「営業してないんかなぁ?」と思いながらそぉっと入口の扉を開けると、ちゃんと営業中でした。節電モードだったわけですね。管理人さんに310円也をお支払いして浴室へと向かいます。館内の造作はいかにも町営というか、子供の頃体験宿泊した「少年自然の家」という感じで、「きちんとウチのしきたりを守ってもらわなきゃイカンよ!」という風情です。いやあくまで造作だけの意味で、管理人さんは気さくな方だったんですけれどね。

というわけで服を脱いでいざお風呂へ。ささっと身体を洗い、湯船に浸かって約10秒。う?ん?うわわ?

湯は無色透明で、硫黄臭も確かにします。でも、湯に浸かっているとあまりの「ぬるすべつるり感」に「にょっほーっ!」としか言えなくなってくるのです!(何のこっちゃ)。こればっかりは匂いのしない料理番組同様体験してみなければわからない感覚なんですが、ここのお湯はホントにすごいです。すぐ近くにある「塩別つるつる温泉」が結構混んでいたのは露天風呂があるからではないかと思われますが、このぬるすべに露天は不要!ゆっくりこの格別湯(もちろん掛け流し)を楽しみたいところです。

風呂上がりにも汗は全然引きません。ただこの日が暑かったからなのかもしれませんし一概には言えませんが、ここは宿泊もできるというし、国道からは奥まったところにあるからうるさくもないし、いざという時には宿泊候補としてもいいかもしれません(難点はやはり「少年の家」的な雰囲気がぬぐえないところかもしれませんが(笑))。

留辺蘂から北見・訓子府あたりは、Takemaでも知っているタマネギの大産地です。2006年は夏の雨が少なくて大変だという話を聞きましたが(というかわれわれの滞在中に雨が降らなかったんで)、北見盆地のあたりは盆地ゆえの温暖気候により収穫が早いのかな。というわけであちこちで収穫中&後のタマネギ畑を目にしましたっけ。

さて、このあと本当は某無料温泉を訪ねるつもりだったんですが‥やっぱりお盆に来るものじゃないですね、大キャンピングエリアと化しておりました。場所はわかったからまぁまた来ることもあるでしょう。



この画像だけで場所を特定できるあなた、かなりの「通」ですね!ヒントは車の奥に見える「橋」?

で、ここまで足を延ばしたのはいいんですが、そろそろ帰らなきゃ!実は阿寒エリアの未訪問源泉エリアにもちょっと興味はあったんですが、「ちょっと立ち寄り♪」で何とかなるわけでもなさそうですし(場所の特定からやらなきゃいかん)、そもそも今回の北海道ツーリングは「野湯の呪縛?」から離れて純粋にバイク旅行を楽しもうという計画だったのですから(ホントよ)、野湯に関する資料は一切持参していなかったんです(潔いなぁ=自画自賛)。



よぉっし、帰ります!(R240 釧北峠付近にて)

国道241号線に出て、ここからはひたすら足寄方面へと走るだけです。し、しかし!螺湾(ラワン)本町まであとほんの数kmというところで、行く手にぐんぐん迫る真っ黒な雲の群れ。「うっはぁ、こりゃやばいよなぁ」と思いつつ走行中、ちょっと待て急停車っ!



いや静止画なんで全然臨場感はないんですが、この場に居合わせたわれわれの緊迫感たるやすごかったんですよ。この場所にバイクを止めた時点ですでに「や、やばやば!」と思わせるに十分な「おこぼれ雨」がこの場所に降り始めており、その時ここから先は「雨の暗幕」で奥の景色が見えないほどだったんです。

で、これこそ動画がなくて悔しかったんですが(実際は動画を撮影するほどの精神的余裕はありませんでした)、その暗幕はみるみるうちに

その先鋭隊はわれわれにもポツ、ボツ、ボツボツ!と、小-中-大きな雨粒となって降り注ぎ始めます。くわ、(カッパを着るのが)間に合うのか?そんな時です。どちらからともなくあることに気づいたのは。

「どしゃ降りのカーテン」は、われわれから数十mのところまで押し寄せ、そして引き潮のようにぐぐぐーんと去っていったのでありました。上の画像で手前の路面が乾いているように見えるのはその精神的動揺が落ち着いた後になって撮ったものなので、雨粒の跡がほぼ乾いたタイミングだったんです。いやはやビビったぁ!

とはいえこのあとも時折は「雨雲のベロ(張り出し部分)」に触れ合いながらの走行となりました。ま、昨日の峠の雨に比べれば子供だましみたいなもんですが。道道621号線を上利別へショートカット‥と、何やら不自然な段差がありました。



随分前、釧路沖地震の直後にはこんな段差が結構ありましたが‥これは?

純粋に「この段差は何?」と思ってバイクを停めたのが正解でした。この、妙に新しい段差は‥

旧国鉄池北線の頃から「乗りに行きたいよなぁ」と思いつつも、そうそう行かれない場所、しかも他の場所に対する飽くなき欲望も常にふつふつと湧き上がっていたわけで、結局その「路線」に初めて直接触れたのは、廃止後4ヶ月後のこの日となってしまいました。

旧踏切部分で分断され、もはや列車が走ることのなくなった線路。つい昨日、「やっほーっ♪」とトロッコ乗車を楽しんだわれわれではありましたが、あのアトラクションだって結局は美幸線の廃線なしにはありえなかったわけで、ちょっと複雑です。

錆びてしまったとはいえ、今ならまだすぐにでも列車を走らせることができそうな、そんな「出来たての廃線」。何でもこの路線の一部(陸別町)では「動態保存」も検討されているそうですが、全線では140kmもあったわけですからそれは全体のごく一部。しかもそれとて維持の経費を考えるといつまで保存が可能なのかは不透明です。
ニュースソースは「2006.10.15に富山県魚津市の食堂で読んだ新聞」としか言えないのですが、その時のうろ覚えによれば「地方のバス利用者数はここ10年でほぼ半減、同じく鉄道利用者数も4割減」とかいうことでした(記憶に間違いがあったらごめんなさい)。いくら地方だとはいっても10年で人口が半減したわけではないでしょう。そこに見えるのは地方過疎地域における公共交通機関利用者の減少、すなわち高校通学生の減少と、そして特に、かつてのモータリゼーションの置きみやげとも言える「高年者ドライバーの増加」があげられるのではないでしょうか。

10年前の70歳と現在の70歳世代においては免許の取得率がかなり違うはずです。現在の「地方」における70歳の方々の多くは現役のドライバーでもあるでしょう。となれば、そこに公共運送機関の利用率低下と大きな因果関係があったとしても不思議ではありません。いわゆる「交通弱者」の減少です。と書けばいいことのように聞こえるかもしれませんが、もし利用者の減少により公共バス路線が廃止されれば、そこに住む高齢者(死ぬまで車を運転できる人は少ないでしょう)はいずれ「足」を奪われてしまうのです。必ず最後にはしわ寄せがやってくるということになります。

「今後10年で、日本国内の多く(一定数)の集落では地域コミュニティの維持不可能な状態に陥る」という分析も聞いたことがあります。少子高齢化と人口の都市集中、そして「地方分権」の名の下に切りつめられる地方配分予算。高度成長期における日本の諸政策の中で「富の再配分」は(結果論として)うまくいっていた部分も多いと思いますが(その裏で利権をめぐるどろどろした世界があったことはともかくとして)、バブル崩壊あたりからの「都市と地方の『格差是正』諸政策」は一気に日本の地方をおかしくしてしまったのではないか、しかもやり直しがきかない方向に、というような気がします。
話がすっかりそれてしまいましたので元に戻しましょう。道道468号線という、なかなか滅多に走ることもなさそうな展望ロードをくねくねと西へ。というのも、少しでも南には進みたくなかったわけなんですね。それは‥



南側の足寄方面を見ると‥うっはぁ、行きたくないっ!(笑)。

しかしそれでも芽登の集落から国道273号の清水谷にかけてはまたまた降られました。ま、しょうがないですな。

というわけで再び糠平に戻ってきました。前で書いたように夕食はできれば外食で‥というわけなので、糠平の温泉街にあるラーメン屋さん「どんぐり」へ。こちらのマスターは糠平出身、ホテル関係に勤務していろいろ見てきたけれどやはり自分のふるさとで頑張っていきたい!と一念発起してこちらのお店を始められたという気骨のあるお方。美味しかったですよ、これからも頑張って下さいね!



ちなみに閉店が早いので午後7時とかに行くと閉まっちゃってます。家族サービス中?

さてここ糠平温泉の温泉街をゆっくり歩いてみた方ならわかるとは思いますが、どうしても「昔ながらの観光地だな」という印象は否めません。ちょっと古めかしい宿泊施設群が、往時はともかく今となってはいろいろな意味で糠平のイメージにもつながっているような気がします。この日はそんな宿のお風呂を利用させていただくことにしました。



いや、お風呂そのものは気持ちよかったんです、ホント。

ただ、ちょうど宿泊の方とお風呂で話す機会があったんですが、「いやぁ驚いた、部屋はたばこ臭さとカビ臭さでまず換気しなきゃいけなかったですよ」とのことでした。

施設は当然ながら使えば使うほど古びていきます。しかしそれについては日々の手入れを怠らなければカバーできる点もあると思います。大切なのは「お客さんの立場に立った経営」のはずなのに、「お客が減った -- 従業員を減らす -- 日々のメンテナンスがおろそかになる -- ますますお客が来なくなる」の悪循環に陥っているような気がしてなりません。

少なくともタバコ&カビくさい部屋、そして脱衣場の片隅に「殺菌用塩素」がそのまま置かれているような状況のままでは、お客側も「また来よう」とは思わないはず。そのあたりを考えてほしいなぁとふと思ったりして‥。

何だかこのページ後半は愚痴ばっかりになっちゃいましたね。さ、旅を続けましょう!
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