− その2 ああ悦楽の野湯堪能&下山 −



先人のトレースをたどるのは楽なものですが、このあとは‥

さて、このあとはとりあえず北上です。朝日岳までは何人もの登山者が残したトレースをたどるだけでしたが、どうやらここから北側のエリアに進んでいる先人はこの週末で一人だけの様子です(実は上画像は帰りに撮ったものなので、先人1人+Takemaの往復(2人分)=3人のトレースなのです。だからはっきりしてるでしょ)。

目指す目的地方面に延びる唯一の先行者トレースは左上画像のように細々としたものでした。こりゃ、今日のようによほどの天候に恵まれなければなかなか来られないぞという感じです。少なくともガスが出たらそこで巻かれておしまいですが、ちなみにこの日の行動中、空に雲はただの1つもありませんでした。こんなことってまずほとんどないんじゃないのかな?本日ここに来られたことを山の神様に大感謝してもしきれないほどです。しかも単独行ですからね。

このあたりからじゃないかな?というあたりで目星をつけて(だから読図力必須でもあります)、先行者の踏み跡から離れて「あらぬ方向へ」と踏み出します(右上画像)。間違える後続者がいるといけないのでその辺の折れた小枝で「×」マークを付けることも忘れませんでした。ここから先は自分だけの世界です。あー、間違えていたらどうしよう(笑)。

どこぞで聞いた話によると、登山道から離れてからはとにかくブッシュ&灌木で視界が効かなくなるのでGPSは必須、しかもそのヤブ漕ぎと1時間は格闘しなければならないということでした。しかし今回この時期に来たのは、前ページにも書いたように「かように手強いブッシュ地獄を何とか回避する」ためだったんです。で、どうだったのかといえば?詳しくは書けませんが‥

という事実でありました。それではその到着瞬間の模様を動画でどうぞ(笑)。



「野湯到着の瞬間&周辺ぐるり」

かーなり嬉しかったです。ただもうそれだけです、はい。

Wmv形式、2.36MB、1分3秒




よぉーし、これでしょこれでしょ万々歳っ!

しかし今回は本当にラッキーでした。残雪の多少によって状況は大いに変わりますし、4月上旬あたりでは多少天気が崩れれば完全に冬山に逆戻りという可能性もあります。、そもそも残雪がもっと多ければ雪崩の可能性が多々あり、かといってGWに近くなればなるほど「寝た子=熊笹ブッシュが起きあがる&表面が雪でも地表部が溶けていて、結果として踏み抜いてだらけで前に進めない」わけで、とにかくここの源泉にたどり着くのははなはだ困難です。今回は運も含めて全てがTakemaの味方になってくれたんだといえるかもしれません。

さてそんなわけでまずは源泉の湯をチェックです。温度計などという文明の利器は持っていないので(PH計測器はともかくとしても温度計くらいは持っていてもいいかなぁという気はしていますが)あくまで指の感覚で計測という超原始的な方法なのですが‥




「源泉湧出の様子」

このぐつぐつ系の湧出ともうもうと立ち上る湯気、手を入れても何とか火傷はせずにすみましたがキンチョーの一瞬でした。

Wmv形式、774KB、19秒

で、源泉温度は何度くらいだったのかはわかりませんがとにかく熱いです(全然役に立たないコメントです)。一瞬の感覚では60℃近くかな?(確証全くなし)。ということはこの湧出口に浸かるというのは夢のまた夢、もし正夢だったら地獄の釜茹でと同じで大変だというわけで、この源泉が流れ出る下流側で入浴適地を探すことにしました。ちなみにこの湧出口のすぐ脇にも先人さんが製作したと思われる湯船の残骸があったんですが、この時はとてもじゃないですが入れない熱さでしたっけ。ちなみにこれだけブクブクしていても、溢れ出して下流に流れ出る湯の量はそれほど多くはありません。季節にもよるんでしょうが。

周辺にはこのほかにもいくつもの噴気口や、量は少ないとはいえ湯の流れ出しがありました。ちなみに周辺には最近巷でよく耳にする硫化水素ガスがかなり漂っているはずです。しかしこの日は下流側から風が吹いていたので、結果として風上側で入浴することになったわけでその点は安心。もし無風の場合は流れてきたガス(ちなみに硫化水素ガスは空気より重いですから下流側は危険)でやられる可能性があります。ここで何かがあってもまずほとんど人は来ませんからねー(苦笑)。

結局直線距離にして30m位下流側で何とか適地を発見しました!



ここなんですが実際は結構広いし、それに深さもそこそこあるようです。

ただし左上画像をよーく見てもらえばわかることですが‥なぜにスコップは自立しているのでしょうか?そう、この部分には温泉湧出系の泥がたーっぷりと堆積しているわけですね。うーむやはりスコップを持ってきて大正解というか、スコップなしだったらせいぜい足湯が関の山ということになるところでした。というわけで、ここからは掘って掘って掘りまくります!

粘着系?の泥は、雪掘りのように最初に升目の切れ込みを入れてからだと気持ちよくスパッとすくえます。ただしあまり欲をかいて大きなブロックですくおうとすると途中で崩壊し、たまった湯の中に落ちた泥は今度はとろとろ系に戻ってしまうので、途中からは小さい切れ込みでこまめに出すようにしました。はねた泥でスパッツはかなり汚れましたが、なーんでこんな作業が楽しいんだろうなぁ♪



左上画像はすくい出した泥。そのまま泥パックができそうです(笑)。中央&右上画像、かなり広い湯船でしょ?

さーてそんなわけで最深部約40cmの立派なセメント濁り湯系の野湯が完成いたしました!湯温は‥ちょっとぬるいかと思っていたのですが存外に適温。40℃くらいかな?この場所より上流ではこれだけの適所がなかったのでかなーり満足です。



セルフで撮った左上画像は、焦ったためタオルの天地が逆転してます(笑)。足指に入りこんだ泥は数日間取れませんでした。




「お湯をタンノー中」

最初のころに見える足先はまさにセメントコーティング。そのあと迷文句も飛び出します。

Wmv形式、939KB、23秒

このあとあたりを探検してみると、よくみればコンクリートの塊や、手積みの石垣なども目に入り、少なくとも以前はこの場所に何らかの人の手が入っていたことがわかります。しかし今は導湯のホースひとつ見あたらない全くの野湯となっています。本当に素晴らしい徹底的な山奥の野湯、できればずっとこのままであってほしいものです。

さて湯浴み直後、とある大失敗に気づきました。それは‥

こんな幸せな場所、しかも春の日射しを浴びながらのぽかぽか陽気(風はあるけれど)の中で湯上がりにビールが飲めないとは何という悲しい現実でしょう!あるのはこの場に降り積もった雪と千葉県市川市の水道水のみ。コーヒーは持ってきていましたがお湯を沸かすのも何だか面倒だったので、いいや水で!というわけでサンドイッチと水とのさびしいサビシイ昼食となりました(笑)。

というわけで1時間弱ほどまったりしたあとで帰路につくことに。帰路とはいっても基本的に往路と同じルート・同じ時間がかかるのでそれなりに大変ですが、往路と違って道の勝手はわかっているので気分的には楽です。



歩いてきた道を振り返ります。また来ることはあるんでしょうか(笑)。

登山道に戻ると、どうやら数人のパーティが通過したらしくトレースはかなりしっかりしたものになっていました。このあとは再び朝日岳を経由して峠の茶屋の駐車場に戻ります。

もうすぐ到着というところで駐車場が見えました。あれま、もうすっかり車が少なくなっちゃって、自分の車とあと1台しか見えませんね(左上画像にマウスオンすると拡大画像に変わります)。結局駐車場に戻ってきたのは15:30。約6時間の山中滞在となりました。最後に朝日岳をバックにしてこの日の立役者であるピッケルとスコップの記念写真というわけで。

さてこのあとは、身体中に拭き残しているであろう湯泥をきれいに洗い流すべく湯本の温泉街へ。鹿の湯はまぁどうでもいいやという感じです。というわけで「ここは案外いいんじゃないの?」という直感で「千歳屋」さんへ。

入浴をお願いするとこころよくOKをいただきました。内風呂のみのシンプルな宿ですが、鹿の湯&行人の湯の混合泉を貸し切りで心ゆくまで味わえたのは目下の幸い。今回はお風呂セットも持ってきたので髪も含めてぜーんぶキレイさっぱり洗い、「硫黄臭たっぷりのピカピカTakema」に変身いたしました♪



いやぁすばらしくいい気持ちでした。

山の汗を温泉で気持ちよく流して‥さ、そろそろ帰らなければなりません。出発前おしんこどん(この日は用事があったのでもともと別行動の予定でした)には「もしかしたら遅くなるかも」と伝えていましたので心配はしないと思いましたので(というか彼女はこの時間外出中のはずだったし)、那須に来たらかなりの確率で立ち寄る国道沿いの月井酒店におじゃましてお酒を買い込みます。このお店、この場所にしてかなりの品揃えですのでね。
さらには夕方17:00直前にお蕎麦屋さんに飛び込んで更科系のお蕎麦をかき込んだ上で帰路についたわけです。FMから流れる交通情報では「東名も関越も中央も全部軒並み30kmくらい渋滞してるんだから覚悟しなさいよ、ついでに普段空いてる常磐道も事故の関係で12kmくらいは渋滞してるからね」というような悪魔の最新情報が流れてきます。でもなぜか東北道のみ「館林で5km」しか渋滞がないようです。でも結局自分が通過するときにはそれも解消、結局渋滞なしで20:00過ぎには帰ってきましたっけ。

かーなり楽しんだ春の雪山野湯行脚でした。ちょっと疲れたけれど楽しかったぁ!でもホントは関東屈指の到達困難湯、決して楽な行程じゃないので念のため(笑)。
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