− その3 帰還困難区域内を通過して南相馬、そしてさらに北上 −



誰だよこの地を「人が住めない」場所にしやがったのは!でもね、それは「みんな」だと思ってやっていくしかないのです。

そんなわけでここからは警戒区域をノンストップで通過していきます。いつものことながら申し上げれば、わたしは「警戒区域内とはいえ国道6号は安全だ」と単純に申し上げるつもりはありません。それは「なぜ二輪通行禁止なのか」を考えればすぐにわかることです。

今回の再開通は、特に相双地域といわきを結ぶ物流や個人の往来の利便性を考えた上での「やむを得ない措置」であると考えます。ただし高濃度汚染地域を通るとはいえ、そこで車を降りたりせずただ通過するだけなら身体への大きな影響はないだろうと思いますのでこのルートを選んだ次第です(あくまで個人的な考えです)。というのも、今回は南相馬市のとあるお店に是非とも立ち寄りたいので(アポなしなんですが(苦笑))、すんごい山越え道経由の遠回りよりは直上できる国道6号経由が一番でしょというわけです。そんなわけでいざ北上開始。

富岡町役場への分岐と富岡消防署。このあたりはぎりぎりで「居住制限地域」。ちなみに先ほどの富岡駅周辺はそれより一段レベルの低い「避難指示解除準備区域」でした。あの唯一営業していた金物屋さんのエリアはおそらく居住制限地域だと思われます。「福島民友」新聞のこのページは変更があるごとに更新されているようなので参考になりますが、できれば独自マップだけではなくGoogleマップ等とリンクさせて欲しいところではあります。

警戒区域(帰還困難地域)に入りやがて大熊町へと進みます。大熊町は旧居住人口の90%以上を占めるエリアが警戒区域に指定されています。国道6号だけは走行できますが、右上画像の通り沿道の住宅入口にはすべてゲートが設置されており、土地所有者といえども勝手に立ち入ることは出来ません。

なお許可を得れば立ち入ることは出来るようですが年間最大15回、1回につき5時間という時間制限があるようです(このあたりはネットで知り得る状況ですので実際は違っているかもしれません)。

道路標識からすると左上画像の交差点を右折すれば福島第一原発に至ると思われます。この交差点エリアから原子炉建屋までは直線距離で2.5kmもないはずです。もちろん立ち寄りが許される身でもないのでそのまま通過しましたが、この送電線の奥に見えているのは福島第一の施設なのだろうなぁと。

ちなみに「福島第一原子力発電所→」の大きな案内板は、マスコミの報道画像には出ていた記憶がありましたが今はこっそり静かに取り外されていたようでした。そりゃそうだ、その看板に釣られてどこかのおバカが行ったりしたら復興管理に携わる方々の「余計な仕事」が増えるばかりですから。


さらに双葉町へと入ります。この国道6号線区間を走るのは震災前後を含めてまさに初めてだったのですが、沿道の様子を見るにある意味「鄙び」とは無縁で、「そこそこ栄えていた(うまく地域が機能していた)のだろう」という印象を強く受けました。なるほど、原発との共存を前提にした町づくりはこんな感じで出来ていたのかとちょっとびっくり。

というのは、かつて青森は下北半島の東通原発界隈を通った際に失礼ながら「へぇ、原発その他を誘致しても道路インフラはこんなものなのか」と思ったことがあったからなのですが、あれは海沿いの旧道を通ったからだったかも知れません。

いずれにせよ(善し悪しはいまさらいいませんが)、このエリアが文字通りの意味で「すっかり元の通りに」戻ることはないでしょう。そして、未来への展望(計画)を今の段階で描き出すことすらできないというのがこの地域の現実です。


さらに進んでいくと除染工事が行われており片側交互通行となっていました。あれ、警戒区域(帰還困難区域)内なのに?と思いましたが、実はここが双葉町と浪江町の町境でありまして(右上画像をよく見ると情報に浪江町を示す看板の一部と、「期間困難区域 ここまで」と書かれた看板それぞれが見えています)、ここから先のエリアは「避難指示解除準備地域」となるわけです。

ここからは道路両側のバリケードもなくなり、一見するとごく普通の町なみに戻るわけですが、田畑だったところや家の庭先に生い茂る雑草の勢いの良さは、そのまま浪江の町の現状を表しているわけです。道路から見る限り、住民と見られる方の姿は全く見られませんでした(1台だけ脇の道を走る普通乗用車の姿を見ただけです)。浪江町は海側から内陸に向かうに従って汚染が深刻になっており、この解除準備地域は浪江町全体のごく一部にとどまっています。

車はやがて南相馬市に入りました。南部の小高区は浪江町同様「帰還困難地域」「居住制限地域」「避難指示解除準備地域」とに分かれていますが、このあたりから、「既視感のある変化」を感じ始めました。すなわちそれは‥

雑草に覆われた平地(放置された田畑)ばかりだったのが、「あれ、あそこの農地、トラクターが入って整備した形跡がある」とか、「あ、今通り過ぎた家、見える側の窓のカーテン開いてた」とか。そして「あ、あのお宅、布団を干してる!洗濯物も!」に至るわけで、特にお布団を見たときは嬉しくなりました。だってそこには間違いなく「日々の営み」があるわけですから。そしてそれは、2014/3に富岡町からいわき市方面に南下したときに感じた変化とそっくりそのまま同じだったわけなのです。

「目に見えない境界」を勝手に引かれ、その近隣の地域で実際に生活しておられる地域の方々の思いは、わたしのような部外者などが計り知れぬ複雑なものがあるでしょう。しかし、だからわたしはその方々に敬意を表しますし出来るだけ応援していきたいと思うのです。「口は出すけれど手は出さない」個人や団体に比べてはるかに「人間らしい」生き方を選択なさっている方々に対し、部外者ができることといえば「地元産品を買って応援」くらいしかないのですし、また結局のところそれが一番お互いのためになると思うのです。


やがて「見る限りは」すべてがごく普通の「日常」に戻っているエリアに入りました。歩道を普通に歩く人、自転車。何だかウキウキして嬉しくなってきます(もちろんそれを単純に喜んではいられないのではありますが)。で、道の駅南相馬があったのでもちろん寄り道。

ぶどう液やおしんこどん職場用のお菓子、そしてこれからの2泊用に「相馬のたくあん」と「ほっきおどり(干し貝)」を購入。おっとそのあと追加で右上画像マウスオンで出てくる小高商業高校プロデュースの「だいこんかりんとう」も購入しました。金額にして5000円弱くらいだったかと。

え?それだけ?と突っ込まないでください(苦笑)。わたしだけ買っても意味はありません。このページをご覧いただいているみなさん=「あ・な・た」こそに、相馬地方産の(または製品に至る過程で相双地方の企業が関わっている)物品をご購入いただければ嬉しいのです。

たとえばこんなサイトもあります。いや別にこのサイトでなくとも全然構いませんから(一部商品はちょっと高めのような気もしますし)とにかくどこかのサイトで福島産宮城産岩手産青森産、いや全部ひっくるめて東北産の産品を購入するだけで、そのお金は直接間接的に被災地の復興を後押しする血となりエネルギーとなるはずです。

震災の「風化」はまさに現実のものとなっています。千葉に住んでいるともはや「は?もう復興工事はあらかた終わったんじゃないの?3年半以上経ったわけだし。」という感覚レベルでの発言をよく耳にします。TVでもNHKは今も被災地の情報を報道してくれていますが(感謝)、民放などは酷いばかりです。でも「現地の足腰を支える復興」はまさにこれからなのです。皆さん、「ネットでついついポチっと(特に食料品)」の場合は、生産地が東北地方であるものを選んでほしい!それがわたくしTakemaの願いです。眉間にしわなど寄せず、お互い楽しくお手伝いが出来たら最高なのですよ。

そんなわけでやって来たのは南相馬市鹿島区にある「若松味噌醤油店」さん。実は某SNSつながりのお味噌屋さんなのですが、訪問するのは今回が初めてです。でも事前にアポイントを取ることもなく‥突然の訪問、申し訳ありませんでした(苦笑)。

屋号の通りお味噌と醤油の醸造をなさっているお店で、今日はお味噌を買いに来ました。あ、ちなみにこの購入行動は支援というつもりはなく「どんなお味噌なのか試してみたい」という気持ちからでした。わが家には案外「マイ味噌」の定番がなくて、いろいろ買いはするのですが「これ、イイ!」というのに出会えていなかったわけなのです。というわけで期待してますよ!(笑)。

実はすぐ前に立ち寄った道の駅でもこちらのお味噌を販売していたわけですが、せっかくなら製造直売で買いたいですよね。種類も本店の方が多かったですし。

と、店内にご主人がおられたのでまずはご挨拶。ウェブサイトでお顔を拝見しておりましたのですぐにわかりました。もっともご主人からすれば「あなたはだぁれ?」であること当然の助動詞べしなので、SNSでフォローさせていただいていることを申し上げるとすぐにわかって下さり一安心(何度かコメントさせてもらったこともあるので‥)。ちょろっと並んで記念写真をば(右上画像マウスオン)。

このあとはひと通りの世間話をば。やはり国道6号の再開通は非常にメリットが大きいらしく、ご主人ももう何度もいわきに足を延ばされたのだとか。「近くなりました」とのことでしたが、自分にとっても震災後の南相馬市が近くなったことは大歓迎です。2015年には常磐道も仙台方面まで全通するということなので、そうしたらどんどん遊びに来ます!相馬エリアはこれまでエアポケット的に訪問が手薄だったエリアでもあるので‥。

さて「相馬田舎味噌」の購入です。何種類かあるようなのですが(お味噌のラインアップはこのページ)、やっぱりここは「超特」でしょう!また冬期限定の「青バタ味噌」もすでに売られているようなのでそちらも購入。さらには漬物用の三五八も購入です。帰宅後にはもちろん日々のお味噌汁でいただいておりますが‥

(いや普通の「超特」も美味しいんですよ!「より一層の好みといえば」という意味です)
夫婦2人なのですぐにはなくなりませんが、なくなった時にはまた買いに伺いますのでよろしくお願いします。

さて、お店を辞去したあとはそろそろお昼ごはん。土地勘もなければ下調べも(いつもの通り)全然していなかったのですが、ささっと調べて‥「うん、お蕎麦屋さんがあったぞ」というわけでいざ行ってみました。

「そば処 木音(きね)」というお店でしたが、人気店なのか開店直後からどんどんお客さんがやってきます。何にしようか一瞬悩みましたが、「おすすめ品」があったのでそちらを注文。1つは天ぷら付きでもう1つは単品です(左上画像マウスオン)。ちなみにそば粉は会津産のものを使用しているようなのである種願ったり願ったりです(笑)。まだ新蕎麦じゃなかったようですが、うん、美味しかった!

さて、お昼ごはん後は再び北上です。実は勢いあまって石油ストーブを買いそうになっていたのはここだけのヒミツです(笑)。


この物流会社さん、震災後はとってもはた迷惑な気持ちになられたこととお察しいたします。
さて続いては、阿武隈川河口近くにあるわたり温泉鳥の海へ。実は震災後休業していたのが、2014/10/4(現地訪問時の1週間前)からめでたく再開ということで「ならば」系で行ってみることにしていたのです。んが?あれれ?






い、いや「はらこめし」(要はシャケの親子丼)は本来とことんいただきたいのでありますが。
ということは温泉もすごいことになっていそうな予感‥というわけでこちらへの立ち寄り入浴はまた今度ということにして、とりあえずお祭りの方を見てみることに方針転換。何でも震災後初めて復活したお祭りなのだとか。

しかしはらこめし会場の方はすでにあらかた終了してしまったようで残念‥ということで水産まつり=直売エリアへ。


カレイが市価より3-4割安かったのだとか!しかしさすがにこのタイミングでは買えません‥。

亘理ICから常磐道に乗り仙台東部−北部道路と乗り継いで東北道へ。古川ICで下りたとなればもう行き先はおわかりですね。そう、今回の旅行のメイン目的地は‥

ではではこの続きは次ページにて。

あ、最後に今回再開通した国道6号区間の動画を一応アップしておきます。人によっていろいろな思いがあると思うので、ご覧になりたい方だけ見ていただければいいかなと思いページの一番下に設置しました。震災の記憶が風化する中、2014/10現在の「今」を見ていただければと思います(要所要所でテロップが出てきます。8分57秒)。


動画のキャプチャ画像なので画質ダサダサでごめんなさい。でもね‥。

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