「砕氷艦 しらせ」に乗ってきました(2)



「南極観測船」というのは文科省側の通称で、防衛省側では「砕氷艦」が正式名称なんだそうです。英語では「Ice Crasher Ship」。



(2015/11/15 その1 その2)

再び神棚のあるメイン甲板に戻ったあとは食堂へ。この日のランチはフレンチトーストのようです(われわれは見るだけですが)。調理員の方が黙々と作業なさっているのは、これが演習航海ではなく「本番航海最初の洋上昼食」だからなのでしょう(勝手に推測)。



食堂内の椅子はただ置かれているのではなく、テーブル下の固定器具に引っかけ持ち上げられた状態で固定されていたのですが、そこから下ろせば基本的に移動自由だったというのにちょっとびっくりしました。国内を運航するフェリーなどでは椅子は鎖等で床に固定されているのが普通ですので‥。この部屋を多目的に利用するためなんでしょう。



続いて案内されたのは倉庫です。着岸後に陸揚げされる備品が収納されていますが、案外スカスカだなという印象。まぁ南極観測は昨日今日に始まったわけではないですからそういうことかなと。ちなみにしらせが運ぶ物資の60%(重量ベース)は燃料なのだそうです。そりゃあね、「越冬」するわけですからそういうことになるわけですよね。嵩的には食糧なんでしょうが。ちなみに飲料用アルコール類は全体の何パーセントになることやら(笑)。

ところで気になったのが右上画像の調理器具。鍋やらラップやらが「何だかとりあえず入れた感じ」で置かれていますが、その鍋とかが見る限り新品には見えないんです。これは、越冬隊の調理班の方が「使い慣れた調理器具でやりたい」ってことで搬入しているのでしょうか?でもせめて埃防止のカバーくらいはあったほうがいいような気が(笑)。



続いては観測隊員の居室を見学です。2人部屋ですが、その割には椅子とソファー?ソファーは「3人目の寝床」を想定して設置されているのかもしれません。

ちなみに観測隊員は日本から同行するのではなく、往路は12月上旬、寄港地のオーストラリア西岸フリーマントル港(パース)で乗船し、帰路はシドニーで下船してそれぞれ飛行機で移動するのだとか。これについては‥



なるほど。観測隊員は船に慣れているわけでもないですから、その苦しみたるや‥逃げ場もないし、ある意味地獄絵図なのでしょう(もちろんそのことを含め覚悟の上で参加なさっているわけですが)。



通路を進んでいきますが、防火服が吊り下げられた場所もありますし、右上画像では見えづらいのですが通路上にかなり近い間隔で消化器が設置されているのがわかります。それだけ船内火災には気を遣っているということです。最悪の場合「どの船も助けに行かれない」ところを航行するわけですから。



こちらは観測隊員用の観測室。船内に3室あるうちの1つだそうです。



そんなわけで船尾までやってきました。船は順調に航行しているわけですがいかんせん東京湾内なのでゆっくりですし(湾内航路の航行速度は12ノット=約22km/hに制限されています)、風も当たらない位置の自衛艦旗なので全くはためく気配もなしです(笑)。でも南極海ではすごいことになるんでしょう。



さて続いては艦内見学の白眉たる艦橋へ。出入港の際に吹かれるラッパが4つセットされておりました(うち1つはこのあとすぐ使用されるため外されています=左上画像の方がいつでも吹けるようにスタンバイしているのが見えています)。艦長席は空席でしたが、どこかにおられたのでしょうね(右上画像マウスオン)。



やがてしらせは横須賀港入港モードへ。巨艦ゆえタグボートが接岸のお手伝いにやってきました。



ここ横須賀港は自衛隊と米軍の強要基地でもありますから米艦船も入港しています。左画像が米軍、右画像が自衛艦ですが、艦船番号の表示以外には区別できませんね(実は米艦船のほうが「ちょっと薄汚れている」のですが)。



潜水艦もいました。港内のエリア的には米軍のものなのでしょうか?そうこうしているうちにタグボートが接岸作業に入りました。初めて知ったのですが、タグボートと船体の接触箇所からは散水がなされているのですね(右上画像マウスオン)。これが海上自衛隊のみの装備なのか、一般船舶のタグボートでも同じなのかはわかりませんが。ただ、どのタグボートも船舶火災に備えて散水銃などは装備されているようです。



間もなく着岸です。ここで艦橋へと戻りますが、こういう緊張の最中でも艦橋を公開してくれているとはびっくりです。あ、ところで(右上画像マウスオン(笑))、みなさーん、一時的にでも借りたものは責任を持って返しましょうねぇ!‥あ、うちの職場でもボールペンとかがよくなくなるよなぁ(苦笑)。





ふり返ってみれば、長い航海が「何だかたった数時間くらい」にしか感じなかったことがフシギです(大笑)。おかげさまで後半は雨も止み、甲板で入港の様子を見ることもできてラッキーでした。ではここで、入港時の艦橋内部の様子をちらりと動画でふり返ってみましょう。ラッパも鳴りますよー。





しらせの奥にあたりまえのように護衛艦が停泊しているのが何だかすごい(笑)。ここは基地の港ですからね。

このあとですが、たまたまこの日は横須賀の防衛大学校の開校記念日だということを同乗の方からうかがい「それじゃ、行ってみますか」と(一般公開しているそうなので)。そうしたらびっくり!





わたしは全然ズブの素人なのでわからなかったのですが、同行の男女(自衛隊員じゃないです)はやたら詳しくて「今すれ違った人、○○(職名)でしたよね、すごい!」とか、「うわ、あの車は○○ですね、すごい」とか。やっぱりわかる人はわかるんだなぁと。でも一番ぶったまげたのは、



という発言でした(びっくり)。急いでふり返ってみると確かにあの白髪頭は‥。調べてみたら、中谷氏はここ防衛大学校の卒業生なんですね。なるほどぉ(まあシビリアンコントロール下の日本ではそれを問題視することもありませんし)。



初めて行ってみた防衛大学校ですが(というかふだんは公開していないでしょう)、とにかく敷地が広い!そしてごった返す人の波!(左上画像からは想像もつきません)。この日のノリは完全に大学祭と同じで、複数の場所で野外コンサートもやっていましたし屋台もあちこちに。ただ自分の大学時代と明らかに違うのは、



ちなみに今の一般大学の大学祭もアルコールに関しては厳しい制限が設けられているのが普通だそうです。当時はある意味ひどかったもんなぁ(苦笑)。つまりは「われわれの世代がひどすぎたので」ということか?

お昼ごはんはある意味デフォルトの「カレー」といたしました(海上自衛隊では金曜日のお昼ごはんがカレーと決まっている=曜日の感覚を忘れないためだとか)。カツが揚げたてでなかったのが難点のど飴でしたが、まぁこういう日だししょうがないかと。

そんなわけで「砕氷艦しらせ」体験航海記は以上です。そして、かの「しらせ」は‥


産経新聞ウェブサイトより)



砕氷艦「しらせ」の道中および南極での任務完遂を祈りつつ、この体験航海搭乗記をおしまいにしたいと思います。頑張れしらせ&搭乗員の皆さん!

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