「砕氷艦 しらせ」に乗ってきました(1)



12,650トンの巨艦です。これから南氷洋へと向かいます。

(2015年11月15日)

ええっと、タイトル通りです。とあるご縁があって大井埠頭から横須賀基地までの航海に体験搭乗してきました。しかもこの航海はただのお試し航海ではありません。この翌日(2015/11/16)、このしらせは南極への長い航海へと旅立ちました。つまりこの日の移動は、翌日からの本航海を前にした最後の試験航海をも兼ねていたわけです。

もちろんさまざまな資材や物資もすでに積み込まれた状態であり、状況はまさに「本番そのもの」。そんな航海に搭乗させてもらえたわが身の幸運を喜ばないはずがありません。しかしおしんこどんまで乗せてもらうことはできず残念ながらおうちでお留守番ね(残念そうだった)。

集合は大井埠頭近くに7:00というかなり早い時間でありまして、大森駅からタクシー利用。早めに到着してしまったので待ち合わせ場所には他の人の姿はなし。ぽつんと「取り残された感じ」を味わいますが、やがて送迎用のバスがやって来まして一安心。いざ大井埠頭に到着し、そのまますぐに乗艦となりました。



あいにくの雨模様でしたが、まぁしょうがない(このあと天気は回復しました)。パンフももらってと。



これは乗船前に下から撮ったものですが、当然これらのコンテナ内にも物資が満載なのでしょう。




(妙なところに感動)。


さて案内された部屋でしばし待機です。参加者は大きく2組に分かれて艦内見学となりますが、Takemaは後半グループということに。まずは艦内のざっくり説明&質問タイム。へぇ、やっぱり(非番でも)お酒は勝手に飲めないんだ、わたしにゃ無理だなぁ(あっさり諦める)。

そのあとは昨年(第56次観測隊派遣=2015/11現在も南極基地で活動中)のビデオを見るということですが、少し時間があるのでトイレに行ったり自販機を眺めたり‥。



自販機は2台ありましたが、お値段は安めです。それにしてもこの2台分の缶飲料だけでいったいどれだけの補給在庫を積んでいるのでしょうか?それとも在庫は多くもなく、売り切れたらそれでハイおしまいってこと?帰路にはシドニー港に入港するそうですが、そこからはオーストラリアで仕入れた飲み物が販売されるのでしょうか?謎です。

そうそう、ちゃんと「自衛隊ならでは」の飲み物もありました(左上画像マウスオン)。それと、ノンアルコールのビールはちゃんと売っているんですね‥(これまでの航海を通して「一定の需要がある」と考えられた品揃えでしょうから)。



自販機の前には「床屋さん」も。さすがにまだ営業していませんでしたが(そりゃそうだ)、前回(56次)の貼り紙を見ると帰路の営業は2週間だけだったってことなのかな?



窓は当然ながらこの丸窓です‥が、外を見るとタグボートの姿が。もう出港してたんですねぇ(出港離岸の瞬間、見たかったなぁ)。



「艦橋の諸注意」というタイトルの貼り紙も。「しらせ」の所属は海上自衛隊ですが、観測隊も乗船するわけですから双方が気を遣わなければならないわけです。それにしても「それなりの態度で接すること」とは微妙な言い回しのように思えます(笑)。

さて続いてはビデオ鑑賞です。昨年、一昨年と2年連続で「接岸」を果たしたということですが、一方で近年は南極周辺の氷が厚みを増しているのだそうで「あれ、温暖化してるんじゃないの?」という気にもなりましたが話がそれちゃうのでパスね。今回も無事に接岸できますように。

そうこうしているうちに後半グループも艦内見学の時間となりました。さらに小グループに分かれてうろうろすることに。まずは船後方のヘリ格納庫へと向かいます。





多用途ヘリCH101が2機格納されていました。こちらはイタリア(とイギリスの共同開発)のヘリなのだそうですが、この機は日本でライセンス生産されたもののようです。

南氷洋に船が達するまでは特に使用することもないので、ローター等の外部部品の多くが取り外された状態で格納されています。ちなみに一部に寒冷地用の仕様が施されていますが、たとえばオイルなどは特別なものではなく通常のものを使っているのだとか。説明下さった係員の方の言い方を引用すれば、「南極とはいっても『夏』ですから、天気が良ければ気温もプラスですし、時にはTシャツでいられるような日和だってあったりします。温度などのイメージでいえば『秋田の冬』といったところでしょうか」とのこと。なるほどねぇ‥。



上部のエンジン&ローター取り付け部分はこんな感じです。機体サイズとしてはCH-47よりかなり小さいですが(かつて搭乗したときのページはこちら)、格納庫のサイズを考えればCH-47だと1機しか格納できそうにないわけで、機動性も考えた上でこの機が選定されたということなのでしょう。



いろいろと説明を受けていますが、この機が数ヶ月後には実際に南極の地で活躍しているんだろうなと思うと何だか感動。そして説明してくださる係員の方も確かヘリ要員だったと思うので‥ご安全に!



テール側からはこんな感じです。お隣に僚機92番機もちらりと見えています。



このあとは格納庫を出て外部甲板を歩いていきます。乗船前に見えていたコンテナ群の脇を通ります。見上げればそびえ立つコンテナ群なのですが(右上画像マウスオン)、その中に気になるコンテナがありました(左上画像マウスオン)。



というわけで調べてみたらそうじゃなかった!こちらのページに今回の57次越冬隊に参加する民間女性へのインタビュー記事が載せられていますが、その中の記載によると「2時間ぐらい解凍してから発酵させます」とあるので、パン生地にしたところで寝かせる前に急速冷凍しているということでしょうか。それにしても(株)フジパン、やるなぁ。

ちなみに上記リンク先の内容で印象的だったのが「私の経験ではお酒がちょっと足りない程度でもパニックになる傾向があります。お酒は若干余る程度調達した方がいいですね。」という記載でした。そうだよなぁ、志願して隊員になったとはいえ現地での楽しみはといえばお酒ぐらいしかないでしょうからね。そうか、南極越冬隊員になれば飲めるか!(本末転倒)。



続いては幹部自衛官の食堂だったか会議室だったか応接室だったか、いずれにせよ一段「格上」の部屋です。窓には何と障子まで設置されています。ちなみに右上画像には壁に後付けのマシンが付いていますが、しらせは当然全館エアコンディショニング完備。これはエアコンではなく「空気清浄機」です。これは‥艦内での火災を考えてのことなのか、または閉鎖された空間ゆえにインフルエンザほか空気感染の防止のためなのでしょうか?謎です(聞けばよかった)。

で、この部屋はじゅうたん敷きだから‥ということもあるのでしょうが、近代装備も設置されておりました、それは‥





しかし、なぜ名前が「紋別のクマ」なのかは永遠の謎なのであります(苦笑)。やっぱり質問タイムは艦内見学後に設定してほしかったなぁ。



船内ではとかく運動不足になりがちなので、このようなトレーニング室の利用頻度も高いのだとか。それに関するお話の中で「運動後のお風呂」の話になったのですが、浴槽の湯は海水を沸かしたものを使っているそうで、一方でシャワーの水は真湯。海水を蒸留させて造るので貴重(=高価)であり、皆さんかなり節水を心がけているのだとか。さてこのあとは階段を下りて機関室へ(実はこの階段を下りたわけじゃないんですが同じ構造の急なやつです)。



機関室は船内の低い位置にあることから室内温度が高くなっています。そのためかさりげなく「冷暖房記録ノート」なるものが設置されていましたが(普通のキャンパスノートなのね)、「重要参考資料 破棄禁止」と記されたオレンジのテプラテープが貼り付けられていました。何の参考にするんでしょう?

さまざまな制御盤とモニターがあるわけですが、気になったのが「お魚」です。さっきからちらちらとモニターカメラの前を横切ってるわけで(右上画像マウスオン)、どなたかが「あの魚は何なのでしょうか?」と質問したところ、返ってきたお答えはちょっと意外なものでした。



しらせはこのお魚さんを生け簀状態で南氷洋まで運ぶことになりそうです。まぁこのあと熱帯の海−南氷洋へと水温が激変するわけですから、お魚さんが再び東京湾の海に戻ってくることはないだろうと思いますが‥。

と、ここで隊員の方が「何だかのんびり和気藹々とやっているように思われるかもしれませんが、船に何かがあったときはここは最前線基地ですから」というようなことをおっしゃった上で、グループの女性に「はい貴女、このボタンを押してみてください」「え、いいんですか?」「いいです、どうぞ押してください」。というわけで彼女がボタンを押してみると‥




(両上画像を比較するとわかると思います)

どういうボタンだったのかはわかりませんし、実際には警告を知らせるブザーなども鳴り響くことでしょう、そもそもこの赤ランプが1灯でも点灯するだけで大騒ぎになるはず。それにしても、この時は停泊中ではなく航海中だったわけでいわば「本番中」。こういうことをしちゃって大丈夫なんでしょうか(笑)。

というわけで次ページに続きます。

[戻る] [次へ]