最後の夜だ!YAMANONAKAカムイミンタラ



いよいよ多和平を出発したのはお昼過ぎ。どうせ明日の夕方十勝出港だからそんなに急いでどこかに行っておかなきゃいけないというわけでもないのだ。途中ブツ切れになっている国道274(だっけ)を走る。観光地も何もなく、ただ牧草地の中をうねうねと走る道だ。MDから流れるエルトンジョンが心地よい(何てカッコつけちゃって、こけたらどうするんだ)。
そして音別でサンマ等を買い出しし、一路内陸YAMANONAKAへ。


ここYAMANONAKAカムイミンタラキャンプ場は、昭和42年に廃校になった霧里小学校の校舎及びグランドを利用した民間のキャンプ場。オーナーは昔長野のキャンプ場にいたが、どんどん俗化されてくるのを嫌って、一気にこの山里に移り住んだんだそうな。だからキャンプ場は通年営業。「この前の冬は-20度以下になったの1回しかなかったしなあ」っていうから「へえ、意外と暖かい(!)んですね」と聞いたら、「その前の年は20回以上あったけどね」という。さもありなん。教室を利用したコモンルームにはマンガ中心にずらっと本が並ぶ。こりゃ雨の日も退屈しないですみそうなキャンプ場だ。
夕食用にと買ってきたサンマをあぶりながら屋久島焼酎「三岳」をちびちび。あたりはすっかり暗くなった。無風。サンマの脂の焦げる音だけがあたりに広がり、そして消えていく。森の中で何かがホホーッホホーッと鳴き出した。きくと、コノハズク(ミミズク系)だという。あちらとこちらで交互に鳴き出した。きっと何か話をしてるんだろう。「おい、どこかから旨そうなにおいしてるな…」「俺もさっきからそう思ってたんだよ…」そんなはずないか。

空は、森の中ゆえ満天とはいわないが、きれいな星空となった。月さえなければもっといい。でも、こんな月があるからまた次に来ようと思うのかもしれない。人間、全て満足しちゃ駄目だ。いつも中途半端に心残りを残しておくくらいがちょうどいい。今回の旅は「まったり」とか「うだうだ」だったけれど、結果的には「山に登らなかった」という心残りが残った。だからこそ来年も来たいと思う。3年前、北海道からの帰りのフェリーで「もう北海道も卒業だな」なんて思ったことがある(事実その翌年は来なかった。暇な限り走って、いろいろ行って、それで北海道をわかっていた気になっていたような気がする。それに比べりゃ今回のような過ごし方はあまりに軟弱とか時間の無駄なのかもしれないけれど、でもこんな過ごし方の良さをわかってきたように思えるのがソロツーリングとしての今回の旅の最大の収穫かな。

「楽しみかたなんて人それぞれだ。」誰かが言った言葉の意味が少しわかったような気がする。

コノハズクの鳴き声が止み、あたりは真っ暗になった。森の中から獣の声がする。結構近い。オーナーの飼っている犬が突然ほえ始めた。ひとしきりほえ終わると、あたりはまた静かになった。「三岳」ももうなくなった。さ、寝ようかな。