十勝川、自然の恵みにちょっとほろ苦さ(その1) 



やっぱり出てくると思ったでしょ、千代田堰堤。

味のやさんをおいとまする時、ご主人が「これからまっすぐ帰るのかい、時間があれば鮭の捕獲場でも見に行くといいよ」とおっしゃってくれました。そうなんです、この時期はちょうど鮭の遡上時期にあたっていますから、川に行けば鮭が見られるかもしれないわけですね。

このことは一応念頭に置いてはいたんですが、いかんせんどこに行けば見られるのかがわからず、広域農道経由で十勝川温泉まで南下してきた時も、「このあたりに『鮭こちら→』なんて看板が出ていないかなぁ」などと一応注意深く道路脇をチェックしていたんですが、そのような案内は全然見あたらりませんでした。よって、いさぎよく諦めて帯広市内に入ってきたというわけだったんです。

しかし、今度は目印を聞いてきたので大丈夫、時間的にはちょっと厳しいけれどいざ行かん千代田堰堤!(このあとその時間的しわ寄せが来ることはまだ気付いてませんでした)

ちなみに千代田堰堤そのものは鮭の捕獲場として有名で(もっとも今回はそれすら忘れていましたが)、観光バスも押しかけるような駐車場や見学テラスなども設置されています。ただし、それはあくまで北岸に限った話。今回うちらが行ってみたのは南岸の幕別側なんですね。こちらは全く観光化されていません。そのため国道38号からの分岐案内表示などは全くなくて、さらに堰堤は十勝川の土手を越えてダート路をえっちらおっちら進んでようやくたどり着けるような場所にあるわけで、そのため(連休中にもかかわらず)我々の他には観光客は見かけませんでした(最後のほうで地元ナンバーの家族連れを見かけただけです)

さて、堰堤脇の駐車場というか広場に車を停めます。この日は天気があまり良くなくて、昨日までとはうってかわって冷たい風が吹いています。広場には、工事資材置き場および飯場とおぼしき構造物、そして大きなクレーン車が停まっているだけです。川の下をのぞき込むと‥よく見ると鮭らしき大きな魚が何匹か泳いでいるのが見えます。たまに、堰堤を乗り越えようと頑張る鮭の姿もごく時たま見えます(見たのはおしんこどんだけ)

「遡上、そして捕獲といってもこんなものなのかぁ」と思いかけた、その時です!

これまでしんと静まりかえっていた巨大クレーンが、いきなりうなりをあげ始めました!クレーンはもともと川の上にアームを伸ばしていたのですが、そのアームの先から伸びたワイヤーは水の中に沈んでいました。今、そのワイヤーが引き上げられようとしているのです!何だ、何が起きるんだぁっ!

水の中から縦横各5mくらいの大きな網が引き上げられていきます。ん?網の中には何だかぴちぴち跳ねる魚?これでやっとわかりました。

吊り上げられた網は向きを変え、資材置き場だと思っていた方向に向かいます。そしてステージ状の場所に網が着地した時です、てっきり無人だと思っていた小屋の中から3人の方が出てきて、網にかかった鮭を分別し始めました!

こうなったら、この分別風景を是非とももっと近くで見せてもらえないかと思い、小屋に近づいていくことにしました。すでに網は再び十勝川に封じ込められ、3人の方は小屋に戻っていたのでしたが、窓の下から「すみませーん、写真を撮らせてもらってよろしいですか」と頼むと、お一人が窓の向こうで「いいよ」的に首を振ってくれたので、ステージ下まで来て写真を撮り始めました。

するとまた別の男の人が出てきて、ステージに上がっておいでという意味の手招きをしてくれました。え?ホントにいいの?と半信半疑&その一方で喜色満面になった我々はありがたくステージ上へ!

この水槽にはメスが入れられます。まだお腹の中の卵が熟していないので、このあとしばらく生け簀で飼われたあと、いよいよ採卵・受精となるらしいです(味のやさんで聞きました)。しかしそうなると、この時期に捕まえられたオスはどうなるのでしょう?

網が上がると、手作業で瞬時にオスとメスとに分けられます。メスは上の水槽へ、そしてオスはなにやら滑り台方面に投げられていきます。その先には‥?

生け簀ならぬ、ただのコンテナボックスが待ち受けていました。もちろん水など入ってはいません。哀れオス達よ、彼らの一生はこのボックスの中で終わりを迎えるということなのですね。合掌。今度また鮭のオスに生まれてきたら、もっと時期が遅くなってから遡上してくるんだよぉ。せめて自分たちの精子が使ってもらえるようにね。
いつものように動画です

「こ、これがクレーン漁だぁ!」

Asf形式、419KB、21秒

「哀れオス達、最期の時‥」

Asf形式、163KB、8秒
というわけで千代田堰堤鮭捕獲場見学終わり!いざ帰路へ!というところなんですが、車はなぜかまたすぐに停車したのでありました。