しっかり晴れ上がったティンプーの朝。お二人は「出勤」されるところでしょうかねぇ。

翌朝、目覚めてみると見事に無風快晴の上天気。少し離れた郊外の家々からは煮炊き用かと思われる白い煙(=木を燃料としている)が立ち上っているものの、市内中心部の家にはプロパンガスが引かれているようで煙もなし。ちなみにこの国では樹木の無許可伐採は違法なんです。また許可もそう簡単には下りないんだとか。さすがに「文化の根幹は森林にあり、よってわれわれは森林を伐採しない」と1990年代初頭に宣言した国ブータンです。どっかの島国の先進国のほうがイカンなぁ。

相変わらずお湯のでない洗面所はもう今さらどうでもいいとして、普通のパンと卵の朝食をとり(さすがに到着2日目の朝からエマダツィはきつい)、出発時間まで宿の前の道をうろうろすることに。ティンプー・チュ(チュ=川)の流れは首都を流れる川とはいえないほどに「山あいの谷川」の様相を呈していて、もちろん「飲める水」じゃないんだけれど、川自体は透き通っています。

川沿いの道を行くおじさん。足の歩みはきれいなんですけれど、やっぱり寒いのか背中が丸まってます。ちょっと歩くと、こんなところにも祈りの旗ダルシンが。
さて、今日は標高2350mのティンプーから3050mのドチュ・ラ(ラ=峠。ブータン各峠の標高は出典によって諸説あるようですが、このページではガイドのカルマさんに聞いた標高を参考に表示します。以下同じ)を越えて、一気に1350mのプナカまで降りていくという行程です。距離的には80kmあるかないかなのですが、いかんせん道が道ですから2時間半ほどかかります。

ティンプーから、昨日来た道を6kmほど戻ったところで、おそらくはブータンで唯一なのではないかと思われる小さな立体交差のジャンクションが現れます。ドチュ・ラへと向かう道はこの立体の上を通ってどんどん標高を上げていくわけです。10分ほど上がったところで、対岸にシムトカ・ゾン(「ゾン」は日本でいう県庁兼地方寺院のような施設。さすがは政教一致の国ですな。ちなみにこのあとのページで数多くのゾンが出てくるので覚えていてね)がきれいに見える場所に出たのでちょいと車を停めてもらい、写真を撮っていたら‥



ちなみに、右後方がシムトカ・ゾンです。

山のはるか上の方からどこからともなく子供たちが駆け下りてきました。しかし、降りてきたからといってわれわれ観光客にすり寄って来るという「下心」があるというわけではなく(他の国では非常にしばしば見られることですが)、ある程度距離をおいてこちらをちらちら見ているだけです。そこでわたくしTakemaは逆に彼らにすり寄って「こんにちは。ところで君たちの写真を撮ってもいいですか?」と聞くと、もじもじしながら、それでいて上の写真のように「整列&笑顔」。うーむ、こんなに気持ちよく写真を撮らせてくれる国はそうそうないでしょうね。

ちなみにうちらが出発しかけた時、山の上の方からまたも子供達が何人か駆け下りてきました。惜しかったねぇ、もう少し早く降りてくれば良かったのに(笑)。それじゃ、さようならぁ(^.^)/~。

ちなみに、こういう時に安易にお金や物をあげたりするのは慎んでほしいというのがカルマさんの意見でした。何かをあげることを通す以外に現地の人と交流を持つことの困難な「旅行者」ではあるけれど、だからといって子供たちが旅行者を自分たちの「利益の対象」として見始めてしまっては大変だ、というおことば、ごもっともです(注:言い方そのものはだいぶデフォルメしました)。子供達はどんどん入れ替わっていきますが、一旦子供社会に「たかり的意識」が入りこんでしまったら、その意識は世代を越えて受け継がれ、エスカレートしてしまうでしょうしねぇ。

さらに道を登っていくと、ゲートのあるチェックポイントに着きました。ここを通過する車(特に外国人を乗せた車。この先のワンデュフォダンでは全車停車だったけれど、ここではそのまま通過した地元車もいたような?記憶違いかも)は、旅行社作成による移動証明書を提示する必要があるようです。休憩を兼ねて道沿いの家々を眺めていると‥

(1) 家の前の軒下とでもいうところでひなたぼっこがてら熟睡しているおじさん発見。
(2) うむむ?と思いつつ少しずつ近づいてみると(道のすぐ脇の家なので)、扉のあたりにまだ小学生になったばかりくらいの男の子発見!
男の子は恥ずかしがっているのか外に出てこようとはしません。でも明らかにこっちのことは気になっていて、ちょっと隠れては再びこっちをちらり、またちらり。それではというわけでこっちもかくれんぼ。彼から見えない位置で隠れたところで彼が「あれれ」と出てきたところでにゅっと顔を見せると大はしゃぎ。それを何回か繰り返していると、部屋の中にいるお母さんまで笑ってる。いいなぁこんな雰囲気。メイン国道沿いの光景とは思えないぞ。

せっかくだし、写真撮っていいかなと男の子に身振りで示すと(ついでにお母さんのほうもちゃんと見て、まだ微笑んでいるのを確かめた上でね)、さっきまでの笑い顔が一瞬にして消え、突然表情が固まりました。どうやら写真を撮られることがわかり極度の緊張状態のようです。しかし表情は緊張していても、その態度はやっぱり子供だね。



いいから鼻ほじりはあとにしなさい。

ちなみに、時間をおいて(話しかけながら)何枚か彼の写真を撮ったのですが、指と鼻の微妙な位置関係はともかくとして、彼は常にそのふたつの感覚器官の愛着関係を誇示し続けたのでありました(笑)。

ちなみにここは、山側の奥の方にいくつか民家が見えるものの、道沿いにはほんの4-5軒くらいの家があるだけの小さな村です。しかしその道沿いには、ごくたまに通過する外国人目当てと思われる小さな露店が出ていました。

売っているものは乾燥チーズの束(いくつか白く高くそびえ立っているやつですね)とミカンやリンゴなどの果物、わずかなお菓子でほぼ全て。正直いってここで買うことの必然性は全くないものばかり。しかし、売り子の彼女らも全然商売っ気がないのがまた不思議です。買いもしないのに目の前でうろうろしてもニコニコしてくれるばかり。「一緒に写ってくれますか?」と言ったら、嬉しそうにファインダーに収まってくれたんですね。

さ、そんなこんなをしているうちに、いよいよティンプーから東へ移動する上での最初の難関であるドチュ・ラにさしかかります。ブータンの峠はやっぱりいろいろとすごいのね。

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