木から木へとジャンプして移動する、さすが野生の猿。40-50m真下からの撮影。
昼なお暗い森の底から、ズームを伸ばして何とか撮ったこの写真。
数十枚の中でうまく撮れたのはほんの数枚だった…。
この画像、重くてごめんなさい。


さて、ここダナンバレー、手つかずの熱帯雨林が残る数少ない場所ということで、確かに野生動物の種類は多いんです(ヒルも多いけどね)。でもやはり相手は野生動物、しかも、アフリカのサバンナのように見通しのきくエリアならともかく、昼なお暗いジャングル(ホントに地面には日がささないくらいなんです)の中、わずか1泊2日の滞在でそうそう多くの動物を見られるはずもないんですね。そんなわけで「ま、何か見られればいいかな…」くらいのつもりで歩いてみたら…。

   

まずはロッジからテクテクと熱帯雨林の中を歩きます。左の写真、真ん中に林道が通ってますが、奥の方の樹木、道の幅から考えるに相当高いということがおわかりでしょうか?正面奥の木でたぶん40mくらいはあるはずです。でも、これを見て「なんだ、ジャングルっていうからもっと鬱蒼としてると思ったのに」と思われた方もいるかもしれません。確かに左の写真では、林道沿いゆえにそれなりの木が伐られているとは思いますが、もともと熱帯雨林の森=ジャングルは樹高が揃っていないんです。高く伸びた木がまず日光を多く採り入れ、その隙間に生えた木は、ニッチ産業みたいにわずかな光で細々と生きるけれど、所詮ニッチゆえ大きくは出られない。で、大企業というか大樹木とニッチ樹木とで、ほとんどの富=日光は搾取されてしまうわけですね。だから、昼でも地面に直接当たる日光っていうのはほとんどないわけです。従って、地表面には案外植物が育たない。我々のイメージするジャングルといえば、移動しようにもにっちもさっちもいかない密生を連想しますが、決してそんなことはないんです。かつて食生態学者の西丸震哉さんもおっしゃっていましたが、ジャングルの移動よりもキツイのは東日本以北のヤブコギです。沢登りをやった人ならわかるかもしれないけれど、雪で根の曲げられた小灌木を下から押し上げつつ登るのはキツイよなあ。ここでは歩きながら地面が見えるもの、だから案外楽勝。もちろんヒルは出るし、ジャングルの中では方角も分からなくなりますけどね。


こちらは野生のオランウータン。親子で木から木へと移動中のものを撮った写真ですが、子供のほうはこちらから見えないあたりの居心地が良かったのか、ずうっと動かないまま。母(写真)だけがうろうろ動き回っていました。ちなみに、このコンテンツのあとの方で出てくるSepilokオランウータン保護区で野性に帰る訓練を受けた猿たちの一部は、この地域で放されるということですから、もしかしたら、彼女も以前はあっちにいたのかもしれません。


これは何かわかる人はすごい。木の真ん中になんだか小枝をかき集めて作ったような固まりがありますよね。これは「オランウータンのベッド」なんです。彼らは当然木の上で寝るわけですが、毎日夕方になるとこのようなベッドを作るわけです。そうして朝になるとここから移動をはじめ(食べ物を探しながら)、そしてまた別の場所でベッド作り。ベッドは使い捨て。同じ所で寝ることはありません。その理由をスティーブさんに尋ねると、「葉付きの枝は彼らの食料にもなるんだけれど、彼らは新鮮なもの(その日に取ったもの)しか食べない。だから、ちょっとしなびたようなベッドにわざわざ戻って来ることに意味はないし、また、何日も同じベッドで寝ると病原菌が繁殖したりするからだろう。さらに、蛇などの敵がしのんでいることもあるから、そういう危険から身を守るためでもあるらしい」というようなことを説明してくれました。

こちらの写真、手の長いサルの名前は Bornean Gibbon。当然サルの仲間ではありますが、オランウータンなどに比べて随分と色黒ですなあ。彼らは群れで移動していますから、鳴き声とかがあたりに響き渡っています。でもやはり数十m上空にいるので、これなんかは何とか頑張って撮れた方だと思ってやって下さい。


最後にもう一枚。まあトカゲなんてものはジャングルの中にくさるほど居るわけですが、こいつら2匹はひなたぼっこの最中なのか全然動かない。約30分後にもう一度ここを通りかかったときにもまだ同じ態勢で佇んでいたなぁ。そんな生き方、うらやましい。スティーブさんは「こいつらと私は友達なんだ」と言い出し、しきりに声を掛けておりましたとさ。

なお、本当に残念ながら、まともに撮れた動物写真は本当にこれくらいしかないんです。失敗作はそれこそ数十枚単位であるんだけれど。そこで言い訳がましくなりますが、以下に今回見た動物のお名前を一覧にしてまとめておきます。自己満足的ですが(笑)。
Red Leaf Monkey(サル)   かなり近くを何匹も通過していったが、夕方ゆえ光量不足で写らず残念。
Bornean Gibbon(サル) 上に写真あり。それなりに運がよくないと見られないらしい。
Oran Utan(サル) 上に写真あり。セピロックでは絶対見られるがここでは絶対とは限らない。
Pig Tail Monkey(サル) これはボルネオではポピュラーなサル。ここ以外でも絶対見られる。
Bear Cat(ジャコウネコ) 発見したときスティーブさん興奮。彼でも数ヶ月に一度しか見られないとか。ラッキー!
Greater Mousedeer(シカ) ミニサイズの鹿。成獣でも体長は50cmくらいしかない。夜行性なのでナイトサファリで。
Sambar Deer(シカ) いわゆる奈良公園系ですが、体格はもっと大きい。写真はあるけれど、まぁいいか。
Bearded Pig(イノシシ) さあこれから森に入ろうとした時、いきなり宿舎の横に出てきた。デカイ。
Flying Squirrel(モモンガ) 飛ぶところは見られず。夜ゆえ写真も撮れず。
Duskygrey Heron(サギ) 宿の近くの川に飛んできてうろうろしてました。
Great Argus Pheasant(大キジ) クジャクですね。尻尾を含め体長170cm!生息数少なくラッキー!
Buffy Fish Owl(フクロウ) ナイトサファリに行ったら従業員宿舎付近の電信柱に止まっていた。ポピュラー。
Hornbill(サイチョウ) 実はサイチョウの中のどの種なのかはわからない。だって50m上にいるんだもん。
Woodpecker(キツツキ) これはダヌムバレーじゃないところで見たんだけれどまあいいか。
Flycatcher(ヒタキ) 辞書で調べたら和名がヒタキとあったんだけれど、まあまあ綺麗な鳥でした。
というわけで、ここでの動物観察は終了。次のページは、先住民族の生活の跡地&お墓&お骨、そしてスティーブさんの祖先についてのお話です。なかなかダヌムバレーから脱出できないな。