アンコールワット周辺のバイク事情



見よ!Honda 「Magna」ならぬ「Mag"m"a」!しっかりロゴまでコピーされた韓国製のバイクでした。


カンボジアといえば、つい数年前まで現政府軍とポルポト派とのあいだでずっと内戦を続けていた国です。「危ないんじゃないの?」「地雷とか大丈夫?」と、つい不安になってしまいますし、実際、タイあたりを旅行するのとはまた違った緊張感が必要なことも事実ではあります。ただ、1999の12月末にベトナムからタイへ抜けた経験からいえば、正直言って思っていたよりもずっと安定し始めていたような気がします。ここではその中でもバイク関係の現状について感じたことを記しておきます。



(T)道路状況

正直言って路面の状況は我々日本の道に慣れたものにとっては「劣悪」です。ただし、アンコールワットのあるシェムリアップの遺跡周辺については政府が気合いを入れていることもあり、特に問題はありません。ただしちょっと郊外のバンテアン・スレイやロリュオス遺跡に行こうとすると、ひと桁国道だろうといきなりダートになります。そっちに行こうとする場合はバンダナなどで顔を隠しておかないとひどい目に遭います。なお道の状態として本当にひどいのは(まずレンタルバイクでは行けないけれど)、シェムリアップ〜シソフォン。シェムリアップからの前半は穴ぼこだらけ。穴といっても直径2〜3m、深さ60cmから80cmの穴だからスケールが違う(笑)。しかも、どこかしこも穴、穴、穴。平らな部分はないといった方がいいくらい。後半にはいると、路面自体は随分おとなしくなるが、そのかわり湿地帯に架かる橋という橋がみな満身創痍の状態。橋脚が落ちてる上にタイヤが通る分だけの2本の鉄板渡してるなんてのは序の口(バイクからすればホントの意味での一本橋。落ちたら大けが)。中には木の板が渡してある、しかも固定されてないなんてのもあって、なかなか凄いものがある。この区間を通れるの四輪は車高の高い4駆ピックアップトラックだけ。乗用車は不可。バイクは…地元バイクが時々通るけれど、なんだかパリダカを見る思い。見えなくなったと思ったらギュイーンとジャンプしたり。シェムリアップ〜シソフォン間110kmを自分は6.5hで抜けましたが、ひどい人は10hかかったとか。

(U)通行状況、マナーなど


右側通行なので日本とは逆。プノンペン市内はベトナム(ホーチミン)などに比べると車、バイクの台数が少ないのでまだましだが、「センターラインとは一定の目安に過ぎない」という価値基準はここでも同じ。なお、逆走もOK(特に郊外)。トラックなどを抜かすときは、むこうからバイクなんかが来ても、相手がよける(だろう)スペースがあれば追い越しOK。なお、当然ながら過積載OK(右の写真では、ドリーム号=日本ではスーパーカブですね、の荷台に子豚を10匹入れて移動していました。こんな光景はごく日常的です)。慣れるまでは恐いかも。シェムリアップ市内及び遺跡群に関しては上記のように路面状況もよく、アンコールワットやアンコールトム周辺をはずれた遺跡エリアでは車の通行もまことに少なく、それなりに気分のいい走りが楽しめます。ま、それでもスピードは70kmを越えない方がいいでしょう。いつ何時巨大な穴が待ちかまえていないとは限りません。

ヘルメットの着用義務はありません。というか、バイク免許も125ccまでは不要だとか。タイにも言えることですが、バイクを借りるときに国際免許の提示の必要はありません。


(V)現地でよく見るバイク・見ないバイク

よく見るバイクといえば、これはもうドリーム号以外になし!というべきでしょう。町中を走るバイクの99%はドリーム号タイプ。ただし日本製ばかりというわけではなく、韓国製バイクもかなり多く走っています(ぱっと見ただけじゃ区別つかないけど)。印象だけからいえば、シェムリアップは観光地=外貨が落ちる地域=他の地域に比べて裕福な人の比率が高い=新しいバイクが多い、ように感じました。排気量的には80〜100ccが多かったようです。

見ないバイクといえば、日本製のオン・オフバイクは、これはもう圧倒的に少ない。下手をすれば1日1台も見ないかも。日本のバイクは高い=売れない=流通経路がない、というようなことも考えられます。そういえばセローを見た記憶があるな、というくらい。しかし、なんとシェムリアップのバイク修理工場で、OH中のNSR250発見!しかし、あのバイクじゃ走る場所ないよ。あれでダート行ってどうするんだよ(笑)。



(W)アンコール周辺をバイクで走るには

これには2種類の方法があるといえます。しかし、一長一短がありますので、好みの方をとればいいでしょう。

  【その1 レンタルバイクを借りる】

一部のホテルやゲストハウスなどではレンタルバイクが用意されています。また、自分の宿にそういうのがない場合も、宿の人に相談すれば何とかなります(これは多分にアジア的な傾向ですね)。

ただ、Takemaとすれば、こういう不満&問題点があるとも言えます。

・ レンタル用のバイクの整備状態は極めて悪く(現地の人からすれば「No Problem」なのでしょうが)、ブレーキの利き、チェーンの状態などはまずもって覚悟すべきです。なお、レンタル中に壊れた場合の修理費用はこちら持ちとなることをつけ加えておきます。

・ 車種が選べない。わざわざレンタル用に高価な日本製のオン・オフ車を置くはずはなく、ドリーム号タイプに乗るしかない。せっかく海外でバイクに乗るのだから、ドリーム号じゃちょっと…という人(Takemaはこの発想です)には問題点かも。

・ 現地には交通標識が皆無に等しく、ましてや「ここがナントカ遺跡」なんていう英語の看板もまずもってほとんどありません(一つだけ見たことあるけれど)。したがって、アンコールワット&トムだけならともかく、ちょっと郊外の遺跡に行くときなどは道がわかりません。遺跡周辺をはずれれば英語は通じないことのほうが多いです。そして、あらぬハプニングが起こったときなどは自分一人ではどうしようもありませんね。

・ ホントかどうかはわかりませんが、ワット&トム以外のエリアでは、外国人が警官に止められて賄賂を要求される、ということもあるとかないとか(もっともこれは自分がバイクを借りたバイクタクシーの運ちゃんが言っていたので、真偽のほどは不明)

   【その2 バイクタクシーを要領よく活用する】

シェムリアップの町中からアンコールワットまでは距離にして7〜8kmあり、しかも路線バスなどは走っていません。では、ツアー客はともかく個人旅行者はどうやってそこまで行っているのかというと、これはもうみんな、バンコクなどでおなじみのバイクタクシー(バイクの後ろに乗って移動する)を活用しているわけです。もちろん1日チャーターも問題なくできます。1日US$6程度

でもここまで読んだ人の中には、「おいおい、後ろに乗るんじゃなくて自分で運転したいんだよ!」と思う人も多いでしょう。そこで裏技。チャーターするときの交渉で「俺が運転したいんだ」と条件を出せばいいのです。人にもよりますが、特に問題なく運転を代わってもらえるはずです(運転手を後ろにのせる)。

ただ、それでも、バイタクのほとんどはドリーム号。「それじゃ、レンタルバイクと比べて道に迷う心配がないだけで、車種の問題は解決されないじゃないか!」という人もいることでしょう(Takemaはこの発想)。そこで、運不運はありますが、自分が結果的にMa"g"maを借りた方法を以下に示しておきます。ただし、自分の場合はあくまで偶然の成り行きでしたが、最初からそれを狙ってもいいはずです。

・ 自分の場合、まず普通のドリームバイタクでアンコールワットまで行きました。ワットの正門近くにはバイタクの客待ちがたくさん停まっています。市内で通るバイクを一台一台チェックするより、集まっている場所に行くほうが効率的です。

・ そこには例のMa"g"maのバイタクが。すぐさま折衝を開始。ただ、自分の場合は、最初に契約したバイタクの運ちゃんがあいだに入ったためちょっと話(お金系)がややこしくなりましたが。

・翌日から2日間の、運ちゃんガイド付きレンタルに成功。

というわけです。もしあくまで一人で乗りたければ、お金はかかりますが、2台のバイタクをチャーターして、一台は自分一人で、もう一台に「本来の運ちゃん+もう一台のバイタクの運ちゃん」という形にすればいいわけです。自分の場合はややこしい話で2台分のチャーター代金を払ったのにバイクは一台だけでしたが、今述べたようなやり方をいやがる運ちゃんはいないはずです。特に、運ちゃん同士が知り合いの場合は話が早い。

なお、Mag"m"aバイクのチャーター料金はドリームバイクより高く、US$9/dayでした。ただこれはどうもボラレたわけではなく、宿の人に聞くと、「珍しい=高いバイクだから、その相場は正しい」と言っていましたし、常識的にもそんなもんだと思われます。だから、自分はMag"m"aのために1日US$15(1600円)も払ったわけです。これを高いと見るか許せる範囲ととるかは個人の価値観の問題でしょう。わたしゃ「仕方ないけど」許せる派でしたんで。でも、最初の運ちゃん(ぴかぴか新車のドリーム号の持ち主)からすれば、こいつがどうしてドリーム号じゃいやなのか、どうしても解せないようでしたが(そりゃそうだ、と思う)。

以上、参考になりましたでしょうか。ただし何度も書くとおり、ドリーム号以外のバイクは本当に数が少ないです。そういうバイクに巡り会うか否かはまさに運次第だということをお忘れなく。現地の人からも、このバイクは注目の的でした。

(X)アンコールワット周辺以外をバイクで走れるか

正直言ってやめた方がいいです。プノンペンではバイクレンタルもあるようですが(なんと有名な安宿「Capitol Hotel」の前にはBAJA250とAX-1が仲良く止まっていました。あれはレンタルだったのだろうか。未確認だけど)、少なくとも郊外まで乗り出すことはできない(貸してくれない)はずです。また、シェムリアップのエリアから外に行くのも、路面状況やいざというときの危険(含む地雷)などを考えると避けたほうが賢明です。

さて、次のページからはベトナムのホーチミンに始まるタイ、バンコクでの陸路横断が始まります。そんなもんよりもバイクネタをもっと!なんて冷たいこと言わないで、どうかおつき合い下さいな。ちゃんとこの中にも出てきますから。