やられた!いきなり置き引きだよホーチミン!

ホーチミンに着いたのは12/22の夜。この夜はもう宿を探して泊まるだけ。どうせ24日朝にはプノンペンへ行っちゃうんだし、せっかくだからちょっといい宿に泊まるぞ!と、空港でタクシーの運ちゃんに話し、1泊朝食つき$30のリッチなホテル金帝旅店(Golden Kim De Hotel)に泊まることにする(ベンタイン市場近く)。エアポートタクシーの運ちゃんにはろくなのが居ないと聞いていたが、とりあえず彼のためにホテル代が高くなったということはなかった。ここは何とインターネットカフェ併設の立派なホテル。でも、着いたばかりでいきなりネットというのもなあと思い、触ることはなかった。

このホテルはデポジットとしてパスポートを預けるシステムのようだ(宿代は後払い)。ま、こんな高いホテルなんだからやばいことにはならないだろうと思ったが、ちょっといい気分はしない。しかし、結果としてはそれでよかったのかもしれない。

夕飯を食いに近くの屋台へ。ベトナムに来たら生春巻きもいいが、やはりまず食べたかったのはホビロン。そう、ご存じの方もいるでしょう、ふ化直前のタマゴを茹でた、あれです。最初は「うーむ…」と思ったが、斜め前の席では現地の若いお姉ちゃんがぱくぱく食べてることもあり、「ま、食えるんだから」とおもってスプーンですくって口に入れてみる。思ったよりもあっさり味で、しかも歯ごたえもソフトで、これならいけるしまあまあ旨い。そのあとハマグリ系の、いやまさにハマグリの茹でたやつをつまみにしてビールを飲む。目の前のロータリーはもう22:00近いというのにバイクで埋め尽くされている。「バイタリティあんなあ」と思いつつ宿に戻り、ちびっと日本酒飲んで就寝。

さて翌日は、とりあえず旧大統領官邸と戦争博物館でも行って、そのあとサイゴン川の方でも行くかと心に決め、まずは旧官邸へ。ま、共産主義のプロパガンダにうまく利用されてるなって感じ。確かに贅沢ではあるけれど、大統領ならこれくらいの生活してただろうと想像できる程度のものであった。

事件はそのあと起こった。中で知り合ったフィリピン人の女の子(観光で来てた)と別れ、サイゴン教会裏の公園のベンチに腰掛けてたときである。地図を見ながらタバコを吸っていたのだ。見通しのいい場所だからという油断もあったのだろう、荷物のデイパックは自分の真横に置いていた。その時である。突然真横から自分に大声で話しかけてくる若い男あり。彼は大統領官邸のほうを指さしてなんだかんだと言ってくる。どうせバイクタクシー乗らないかというような誘いだろうと思いながらも一応相手はしていた。「もういい、わかったよ」と思って真正面を向き直したその時、即座に気づいた。「デイパックがない!やられた!」

急いで後ろを振り返る。後ろは広い芝生になっていて、逃げる姿は見つけられるはずだ。しかし!だ、誰もいない!どういうことだ!しかし当然盗んだ相手はそっちの方向に逃げたとしか考えられない。その瞬間、さっきまで自分に話しかけていた若い男が全く別の方向に逃げていくのがわかった。グルだったんだ!しかし、彼を追いかけたところでしらばっくれるだけだろうし、何よりその時の自分はパニクっていた!「貴重品入りのデイパック!ちくしょーっ!!」「Fuck!Son of a bitch!」などと知ってる限りの罵声を叫びながら、犯人が逃げた(だろう)方向へ全速で走った。途中の屋台のおばちゃんが「あっちだよ」と指さして示す。しかし、その方向は…交差点であった。しかも人通りも多く、もはやどの方向に逃げたのかは見当もつかない…。

その場に立ちすくんだ。「ちくしょーっ!」と叫び、あたりにいた人が何事かと何人か近づいてくる。英語の理解できる会社員系の人がいたのでとりあえず事情を話す。しかし、「で、あなたは犯人の顔を見たのか?」と聞かれたとき、「NO」と答えると、「うーん、じゃあ残念だけれど無理だねぇ…」といわれ、呆然としていた自分の中に犯人への激しい怒りがわいてきた。再びその場で「Fucking! Son of…」とわめき散らす。そのあと急激に「やばいことになったぞーっ!!」と身体の力が抜けた。そうだ!まずは警察だ!取られたものは出てこないにしろ、入国時に税関カードに申告したものがある。盗難証明書出してもらわなきゃ!「警察はどこだぁ!」と再びわめいた。そしたら、取り巻きの会社員系さんたちは通りかかったバイクタクシーを止め、何やら運ちゃんと話した上で、こう言ってくれたのだ。

「このバイクに乗って警察に行きなさい。運転手には事情を話したから大丈夫。お金はいらないから。」

地獄に仏とはこのことか。パニクっていたTakemaを見て、いろいろ気を回してくれた皆さんに丁寧にお礼を言う。あのときゃホントに嬉しかった。でも実はまだ頭の中ではパニクっていたのだが。

警察に行き、事情を話す。かなりなまった断片的な英語を話す警官はとにかくこの用紙に事件の次第と盗まれたものを書け、という。もう一度頭の中を整理してみる。デイパックの中には何が入っていたのか(左の用紙をクリックすると拡大します)。

・ 一眼レフカメラ(Nikon F-601) Tamron 28-200mmレンズ
・ MDウオークマン(SONY)、ディスク10枚程度
・ 現金(US$200 JPY\10,000)
・ 国際運転免許証
・ その他小物
・ それぞれの物品にしみついた思い入れ

というところだということがわかった。この時、貴重品は4ヶ所に分けて持っていて、体から離していたのはこの現金入りのものだけだったのは幸いだ。しかし、失われたものは帰ってこない。あのデイパック、もう10年近く使ってて愛着あるもんだったんだけどなあ。

証明書を発行してもらいに警察の本部の外国人相談窓口(とでもいうのだろうか)に行くと、そこにはドイツ人の先客が。待ってるあいだ暇なのでしばし話していると、彼がこういった。「あなたは今回が初めてだろうから驚いただろうけれど、自分は前に中国でもっとひどかったからねえ。カメラも本体3つ一気に持って行かれたし、今回はCustomの申告用紙なくしたから来てるんだけど、大丈夫、まだ旅が続けられるんだから。」

なんだか同じ立場にいる人の励ましは妙に説得力があった。おかげで少し気を取り直すことができた。しかし、カメラがないのは痛いし、手持ちの現金はあとUS$200とJPY\20,000。しかし、カンボジアでは宿代や交通費は全てUS$払いだから、これは決して裕福な旅はできない。久々に水シャワーの安宿だなこれからは。

このあとカメラ屋に行ってコンパクトカメラを買った。カード払い。宿もカードが使えるというので助かった。しかしとんだ出費だが、ま、彼の言うようにそれでも旅が続けられるんだからまだましなのだ。しかし、バイクに乗るっていうのはやっぱり無理かなあ。カンボジアではカードで支払えるところは少ないっていうし。なんだか妙に節制の旅になってしまいそうだ。部屋に戻ると何事もなかったかのようにバックパックがころがっている。この夜はフテって夕飯も食わずに酒(とつまみに干し芋)だけ飲んで寝てしまった。



宿にてCNN見ながらペットボトルに入れた「栄光富士 庄内誉」を飲む(酒は2リットル持参)。
「今頃、俺のデイパック盗ったやつらはホクホクなんだろうなあ」と思うたびにむかっ腹がたつ。