これも内戦のつめあとなのだろうな…(国道6号線 その1)



シソフォンに近い国道の「橋」。前日は一台が脱輪して大変だったらしい。



さて、翌日はいよいよシェムリアップからシソフォンに向けて移動である。この区間は名だたるカンボジアの道の中でも荒れ具合がはなはだしく、バスはおろか、普通乗用車でさえも通行不能だと思われるすごい区間である。移動可能なのはバイクと、車高の高い4WDのピックアップトラックだけである(左の写真)。そんな状況ゆえ、所要時間はどれくらいかかるのか見当が付きにくい。ほとんどの人は、シソフォンには泊まらず、そこから1.5時間くらい先の国境の町 Poipetまで一気に行ってしまうのだが、人によっては12時間近くかかったらしいのだ。その人の場合、シソフォン〜シェムリアップの約110kmを10時間はかかったことになる。実に時速11km!というわけで、国境到着が夜になるというのもいやだったし、たまには観光地以外の地方都市にも泊まりたかったので、あえて国境の手前のシソフォンまでのチケットを買ったわけだ。


さて、隣のチケットのコピーを見てもらえるとわかるのだけれど、「Price : 7$ inside」と書かれている。7$というのは現地の物価から考えると明らかに高いのだが、大切なのは「inside」。つまり、トラックの荷台ではなく車内、しかも助手席独り占めってことだ。

モノの本を読んでも、国境から来た人たちの話を聞いても、共通しているのは「荷台はしんどいし大変」。これに尽きた(日本人・西洋人共通)。人は鈴なりだし振り落とされてもおかしくないし…。ということなら、あえてとことんハードな旅を望むわけでもないTakemaは、あっさりとVIP席による移動に決めたわけである。実際、移動の途中で話した、別のトラックの荷台に乗っているという西洋人は「もう駄目だよぉ」と、思いっきり疲れ果てた声でこう言っていた。まあ、2時間の辛抱くらいならやってみようと言う気になるんだけれどね。

車内といっても2列席である。助手席は1人しか乗せないが(いや、VIPチケットでなかったら3人くらい乗せるかもしれない)、後部座席には5人がすし詰め的に座っているのだ。車は上の写真の通りハイラックスのピックアップトラックと同サイズのマツダ車だし、なんだか申し訳なくなるような状態である。

さて、市内からスタートし(最初は客は自分一人だけ)、少しずつ客を拾っていく。空港の分岐までは舗装の修理工事も進行中の、まずはいい道といっていい。観光客のための工事といって良かろう。そして分岐からしばらく走ると、突然舗装がとぎれ、いきなりのすごいダートが始まった

すごいダートといっても、日本の、荒れた林道を想像してはいけないのだ。石ころはないに等しい。道幅は、トラックがすれ違えるくらいの広さはある。問題は凸凹だ。凸凹という表現が正しいのかどうかはわからない。要は、平らなところがないのだ。最初のページでも書いたけれど、深さ80cm、直径3mの大穴なんてあたりまえだ。そしてそれが延々と続くのである。そんなところを走れるのは、車高の高いトラックか、ホイールベースの短いバイクしかないのだ。

実はこの道について何枚か写真を撮ってあるのだ。しかし、写真ではその凸凹の現実がわかりにくいのであえて割愛します。だって、画像を見て「なんだこんなもんか」と思われるんじゃああまりに悲しい(笑)。で、何でこんな道になっってしまったんだろうと考えてみたわけです。「整備しなかったから(=内戦で整備できなかった)」というのは当然だけれど、整備しなくてもこんな道になるかなあ。そこではたと思ったのが、「もしかして、地雷か?」という仮説。カンボジア北西部は最後までポルポト派の拠点だったし、この道はまさに北西方面へと向かう道。ということは、ポルポト派か、あるいは政府軍かどうかはわからないけれど、敵の侵入を防ぐために国道に地雷を敷設した。したがって直径の大きなこの穴々はみんな地雷の爆発跡、と考えれば全て合点がいくし、国道脇で今でもやっているという地雷探査(今回は見なかったけれど)の説明もつく。

そう考えると、ただの旅行者として来ているこの地ではあるが、やはりとんでもない場所だったのだとも思える。そういえば、数年前までカンボジア難民は今回自分が行くルートを通ってタイに脱出していたものなあ。この仮説はたぶん真実なのだろうと思える。


さてさて、さしもの激しいルートを走り抜け、シソフォンまでの中間点ともいえる町、Phnum Liebまでやってきた。ここまでは約3時間弱。…ということは、このペースで行けばシソフォンまでトータル6時間で行けるということか?、と思った。しかしそれは甘かったのだ。

話は変わるが、この町での停車で、このトラックに何人乗っているか数えてみた。その結果、「運転手もあわせて24人、あるいはそれ以上!」という結果が出た。はっきりしないのは、自分が数える前にこのトラックから離れた人がいるかもしれない(いや、いた)からである。うち車内には7人。残り17人は荷台である。さらに、誰一人の客として手ぶらで乗り込んでいるものはいない。その荷物はみんな荷台にある。そしてみんなその上に座っている。つまり、荷台の枠に寄っかかって移動するのならともかく(これならあまり危険はないだろう)、実際は「フラットな畳の上に腰掛けた状態で凸凹道を落ちないようにして乗っている」わけである。こりゃ落ちるのもあたりまえだよ。落ちて怪我しても(打ち所が悪くて死んでも)、誰も保証なんてしてくれません。というわけで、助手席はともかく、慣れていない我々はやはり車内に乗り込むべきではないでしょうか。もちろん車内の方がはるかに料金も高いけれど。
この日のルートは1ページにまとめてしまおうと思ったのですが、けっこう長い文になってしまったので、続きは次のページで。今度は全く別の障害物がTakemaの行く手を阻みます!