これも内戦のつめあとなのだろうな…(国道6号線 その2)


Phnum Liebからは、これまでと同じくダートとはいえ、明らかに状態のいい道になった。トラックも快調に飛ばす(それでも相当揺れるので、落ちたら絶対に大けが間違いなし)。「こっこれは、トータル6時間どころか5時間もかからないんじゃないか?」と心ときめかせ始めたころであった。

ある橋にさしかかった。Phnum Liebまでは橋などなきに等しかったし、両側は田園だったのだが、この区間はどちらかといえば湿地帯に近い。そのため小さな橋がやたらにかかっているのだが、今度のは大きな橋だ。しかし、近づくにつれて何か様子が違うことに気づいた。…橋(橋げた)が落ちているのだ。

とってもつたなくて汚い絵ですみませんがガマンしてね。2つの橋げたのうち1つが完全に落ちていた。で、我々の考えからすれば「それならすぐに付け替えろ」というところなのだが、さすがにここはカンボジア。そんなに簡単にことが運ぶはずはない。しかしここは生活道路なのだから通れないままでは困る。そんなこんなで、落ちた橋げたと橋脚とのあいだに土や砂を入れ、ある程度の高さができたところでとりあえず使っていたのだが、やはり次第に土砂の面が下がる。そこでそこに板を渡して、車はその板の上をおそるおそる渡る、という現在の図式ができあがったのだろうと思う。しかしまあ、ほかにどうしようもないとはいえすごいやっつけ仕事だこと。

そんなわけで、土砂の面と板との高さはもう1m近くあったように思う。とにかくトラックはその板の上をおそるおそる、絶対に脱輪しないように渡っていく。よくしたもので、荷台のお客が降りて前方で誘導してくれている。うーむ何で写真撮らなかったんだ。乗っているだけとはいえ自分も緊張していたからだろうな。

それでもなんとか、いくつもの似たような橋を越えて進むうちに、突然渋滞にぶつかった。周囲になにもない、沼地に土盛りされた道を突っ切る直線道路での渋滞である。こりゃ何かあるな、と思わないほうがおかしい。だってここはカンボジアなのだ。

みんな車から降りだした。前がつかえているのだからおいて行かれることはないだろうと思い、自分も車から降りる(そろそろタバコを吸いたかったし)。前には5台くらいの車が止まっていて、そのさらに前方に人だかりができている。なんだろうと思って行ってみると…

 

あれまあすごい状態だ。上の絵で「板を渡して…」と書いたけれど、その「板」の雰囲気が、この写真から何となくわかるでしょうか。ちなみにここにいる人は通りすがりの地元の人というのではなく、みなトラック等に乗ってきた野次馬兼誘導員です(最も誘導するのはごく一部の人だけで、あとはみんな純粋な野次馬。渡っているのも「とりあえず対岸に移動しておこっ」というくらいの必然性です。ま、それを撮っている自分もあまり人のことは言えないんだけれどね)。なぜかこのことを見越したか、飲み物と揚げパンみたいのを売る臨時屋台まで出る始末(けっこう売れていた)。

で、一台ずつ渡るわけなんだけれど、双方向に譲り合いの精神がないし(つまり、両岸から「次は俺の番だっ!」という確固たる意志を持った車がしゃしゃり出てくるために、結局どっちも渡れず、列も全然進まない、というわけですね)、しかも、左写真の手前のほうに見える変な鉄の枠のあいだにタイヤがはまっちゃったりして脱輪一歩手前!というような車が続出したりして、結局平均して10分に1台くらいしか渡れないわけです。自分側の列も、知らないあいだに20台くらいの列になっちゃったし、気がつけばここに来てからもう1時間くらい過ぎている。「こら渡れるのはいつになるかわからないぞ」と覚悟せざるを得ませんでしたね。

そういえば前日の夜、22:00ころにこっち方面からシェムリアップについた日本人が、「完全に脱輪した車が道をふさいだせいで、自分の乗ったトラックはここを諦めて湿地帯を強行突破したんだけれど、途中何度もぬかるみにはまって、どろどろになりながら乗客全員でトラックを押しましたよぉ!」と言っていたな。それがここかどうかわからないけれど、確かにここが一番渡りにくいところであったのは確かだったと思う。

そうなると突然新たな商売が!そう、「バイクの運び屋」である。下の沼地の深さはそれほど深くはない。膝上ってところ。自転車なら押して渡れるのだが、いかんせんバイクではマフラーに水が入ってしまうのでそうはいかない。そこで何人かで「いっせーの、せっ」とバイクを持ち上げ、じゃぼじゃぼと、橋の脇を渡らせていく「商売」である。

 

渡らせたあとでバイクの持ち主が運び屋さん達にお金を払っているのを目撃したのだから、これはボランティアではないなあ。でも、そんなこんなで結局1時間半以上の待ち時間も、思ったより退屈しないで済んだのは確か。そして、ここからは何とも軽快に、トラックはシソフォンの町に入っていったのでありました。結局トータル6時間10分。シソフォン〜ポイペトまでは1時間半で行くというのは、通過してきた人の経験でわかっていたから、ポイペトまでだと7時間40分かかったことになるのか。うーむ、今日のトラックは「Rapid Service」だったことになるな。良かった良かった。

しかし、荷物満載のバイクはあのような運び屋さん達のお世話にもなれないわけで、最初のページにあった子豚10匹バイクや、生きたニワトリ30匹逆さづりのバイクは大丈夫だったんだろうかと、ふと気になった。ニワトリ達も、最初見たときはみんな首を持ち上げて耐えていたけれど、最後のほうは何匹かがぐったりしていたしなあ。恐るべき試練だな。

なお、この阿鼻叫喚世界の写真をもっと見たいという人はここから行ってね