「ほんとうの空」を求めて阿多多羅(安達太良)山へ



空が広くて近い気がしたのは、「智恵子抄」の影響だけではあるまい。

(平成14年1月13・14日)

正月休みに行こうと思っていた安達太良山に1週間遅れで行ってきました。冬型の気圧配置が弱まったせいもあって、この時期にしては天気もよかったのですが、頂上踏破には固執せず(稜線の風はものすごいし、初心者のおしんこどん@妻もいるしね)、結局くろがね小屋を往復して温泉三昧というような感じになったのではありますが、そのぶん十分にのんびりと山を堪能できたわけですね。

朝7:00頃の新幹線で東京を出発。早いし便利なんだけれど、「新幹線を使って山に行くって、そりゃちょいとゼータク過ぎるんじゃないの」的な感覚はいまだに残っちゃうなあ。在来線の東北本線は細切れの普通列車ばかりで、中距離を移動するのにはあまりにも使いにくいし、まぁJRにはJRの都合があるんだろうけど、せめてもう少しバラエティに富んだダイヤ作りをしておくれよと思ってしまう。そんなことを考えつつ、東京駅の駅弁の企業努力のなさに憤慨するおしんこどんとともに新幹線やまびこはさっさと郡山に到着、在来線に乗り換えて二本松へ、そこからタクシーで奥岳温泉というか安達太良スキー場へ。

ここからくろがね小屋に行くのには二つのルート(ゴンドラに乗って楽ができるが稜線の強風に吹かれるルート&昔からあるルート)がある。今回は昔からの勢至平ルートにしたが、これはやはり正解だったようだ。強風の中カリカリに凍りついてコンクリートみたいになった斜面を上り下りするのは自分だっていやだし、ましておしんこどんには荷が重すぎる。その分時間はかかるが無理に高度を上げないコースのほうがやっぱりよかったと思う。

 

さあここから少しずつ登りが始まる、という地点にて。
この辺では天気もまあまあだったんだけれど。

テントを背負っていないということで荷物はこの上なく軽いのだけれど、最近の運動不足のせいでちょっとした斜面の登りでも体力の衰えを実感せざるを得ない。やはりこりゃフリークライミングを復活せにゃいかんな。今回初登場の新装備であるストックは、使い慣れていないからか何だか邪魔なだけに思えた。ピッケルほど信頼性がおけるわけではないので何だか不安なのだ。

登っていくうちにどんどん雲も風も出てきた。まあ小屋まで残り1時間くらいのものだし、トレースはしっかりついてるし、な〜んも恐いわけではないのだが、久々に「風の音」を聞いて、そうだったなあ初めて雪山に来た頃はこの音を聞いただけで何ともいえない恐怖感に襲われたっけ、とふと懐かしい記憶が顔をのぞかせた。



小屋までの最後の休憩場所にて寒がるおしんこどん。雪に埋もれてはいるが
この下には温泉の送湯管があり、90℃近いお湯がとうとうと流れているのだ。

そしてようやく県営の「くろがね小屋」へ。昭和38年に作られたということだけれど少しも古さを感じさせないこの小屋は、なんでも設計時にアルプスの山小屋の造りを視察調査した上で作られたということだから、なるほど納得できる。階段の広さやトイレの位置、靴置き場の位置など、他の小屋とは確かに違う。

ま、それでもまずはダルマストーブの脇に陣取ってビール&焼酎(鹿児島の芋焼酎黒伊佐錦)とともに昼食であるちゃんこ鍋の開始。ザックの中から一種独特の芳香を漂わせていたタラやサーモンの切り身や刻みネギもこれにて成敗ということになる。おいしいおいしい。しかしおしんこどんはちと量的に足らなかった様子。Takemaの少食を基準に買い出しをするとこうなるのだ(笑)。

 

ぬっくいぬっくいダルマストーブ。そのそばで窓の外の雪を見ながら
飲むビールはやっぱりいいなあ。

そうそう、このダルマストーブ、この広い小屋全体を暖めるためには常に最大パワーで火をつけていることが必要、そのためには大体15分おきくらいに石炭をくべ直さなければならないということでそれなりに面倒な存在ではあるようなのですが、その石炭の袋を見てある種びっくり(上のダルマストーブの写真にマウスポインタを置いてみてください)。

「太平洋の海底炭」とあります。そう、これはこの前閉山となった「釧路太平洋炭鉱」の石炭、いわば「最後の国産炭」だったのであります。こんな所で国産炭にお目にかかれるとは驚きで、キャッチコピーの「暖房の王様」ということばにも何だか哀愁すら感じてしまうわけです。「王様」がいなくなったあとはどうなるんだろう。もっともこれからも技術教育目的?で少しは掘り続けられるということですが。

さて、ここ「くろがね小屋」は純然たる山小屋ではありますが、他の小屋にはない誇れる設備があるのです。今回ここを訪れた目的の大半はその設備にあると言っても過言じゃありません。それは?‥ま、大体わかりますよね。寒い時期に一番嬉しいもの、それは!