避難小屋での宴会もたまにはいいもんです



これまた懐かしい形のダルマストーブ。少々お疲れ気味とはいえ、
こんなストーブを囲んでの宴会はまた味があるものです。


山の上のほうでは紅葉も終わろうとしている11月上旬、何度か訪れたことのある井戸湿原(標高1300m)へ。5月下旬にはそれこそ全山ツツジの赤白ピンクの華やかな色で彩られるこの場所ではありますが、さすがにこの時期ともなると足をのばす人もぐっと少ない。我々とて今回はハイキングに来たわけじゃない。今回は、こともあろうに「宴会」に来たのでありますよ。

 

草もみじさえも終わってほぼ茶色一色になった井戸湿原、そこから20mほど上がったところにある「湿原荘」。ここが今回の宴会場所となりました。この小屋は築35年、もともとは個人が建て、その後地元粟野町に管理が委託されたという小屋で、確かに35年の「年輪」は随所に感じさせますが(窓が一枚なかったりとか)、かろうじて水が引かれていたり、なぜか別棟のトイレは水洗だったりして、贅沢さえ言わなければ、必要な設備が「現段階では」整っています。そして、自分としても思いがけなかったのが上の写真にもある「ダルマストーブ」。「小屋だから、夜の宴会中は冷え込むだろうなぁ」と覚悟してきたのですが、このありがたい設備のおかげでそれほど寒さを感じることはありませんでした。

今回ここで宴会をやろうと思ったのは、NZ関係のHP「New Zealand Tramping World」運営者の秋場さんと「どこかでキャンプしましょう」ということになったのがきっかけでした。とはいえ、関東近郊のキャンプ場について調べてみてびっくり。どこもオートキャンプ場になってる!関東ではもう長い間キャンプしていなかったとはいえ、いつの間にこんなに変わってたんだ!しかも、当然お値段も「オートキャンプ相場」ですからね、ちょっとやってられない。悩みに悩みまくった結果、「キャンプじゃないけれど…」と秋葉さんにお許し頂いたのがここだったというわけです。

でもここの小屋は確かに穴場ではあるでしょう。登山用避難小屋とはいえ、このエリアは縦走するほどのロングコースを持たないし、そもそもすぐ近くに日光連山や皇海山などの「登山的魅力」を持った山域があるわけですから、篤志家以外の「登山者」はほとんど来ない。ハイカーは基本的に日帰りですからこの小屋に泊まることはない(ただし、日中は多くのハイカーが訪れ、小屋前のベンチは「大昼食大会」の様相を呈します)。さらに「ただ宴会できればいい!」っていう人々には、「駐車場から30分弱歩かなければ着けない、しかも宿泊用具は全て持参」というのがネックになるわけですね。でも、それだからこそその労苦をいとわないタイプの人間にとってみれば最高の立地条件とも言えるわけです。

ただし、無人小屋ゆえ、使った後の後かたづけは完璧に。この小屋、確かに古いですが汚さをそれほど感じずにすんだのは、これまでの利用者のマナーがよかったからなのです。こんなこと書かなきゃいけないのもイヤなんですけれど、もしこれを読んで「それじゃウチラも行ってみようかな」と思われる方はそのへんのところもよろしくお願いいたします。


さて、説明はこれぐらいにしておきましょう。明るいうちに周辺から枯れ木を集めてきておいたのであとは火をつけるだけです。念のため、火つけとして新聞紙を持ってきておくといいでしょう。さて、火もついた、これで一安心…ん?妙に煙が出るぞ!そう、このストーブ、隙間からかなり煙がわき出てきます。左の写真がなんだか白っぽく写っているのも犯人は煙。それなりの覚悟が必要です。な〜に、換気すればいいんですよ。そういうのが面倒な方とか、服や寝袋が煙で燻されるのを好まない人は、こちらでの宿泊、絶対おすすめしません(笑)。

それでも、火が安定するとさすがにあったかいです。小屋に備えつけられていたやかんでお湯を沸かし、屋久島焼酎「三岳」のお湯割りが始まります。おつまみはおでん。ついでにゼータク霜降り牛肉やしいたけ、ししとうなどの焼きモノが加わり、なんとも優雅で静かな一夜を過ごすことができました。え、他のお客さんはって?もちろん貸しきりでしたので、迷惑をかける心配もありませんでした。はい。
 

さて、この小屋を使ってみたいと思われる方は、使用前に粟野町の役場に問い合わせた方がいいでしょう。なお、冬季は前日光牧場への道自体が閉鎖されますので使用は当然不可です。そして何よりも!山に入る前に、前日光牧場の職員の方に「これから湿原荘に泊まります」と一声掛けていくことを忘れずに!駐車場を管理している職員の方にも迷惑がかかりますので、それだけは忘れずに。

変な話ですが、だいぶ老朽化が進んでいるこの湿原荘、あと5〜10年もつかどうかは大変微妙なところです。ということはこの「古き良き小屋」の風情を楽しめるのもあと数年というところでしょう。よろしければ一度足をのばしてみてください。