野湯行脚みちのく編 −田代元湯−

【 その2 湯ったり編 】

 

何ともいい雰囲気です。ちなみに右のお湯には熱くて入れませんでした。後方にはさっき渡ってきた橋が見えています。
田代元湯は、駒込ダム建設計画に伴い1990年過ぎに廃業した宿(「やまだ館」)の施設を利用する温泉です。もっともそのダム計画自体が今やストップしているようなので、今後この温泉がなくなってしまうのかといえばどうやらその可能性は低そうですが(よかった)。歴史は古く、あの八甲田雪中行軍の初日の目的地はここだった(結局たどり着けなかったわけですが)ということのようなのですね。泉質は、後述の「東奥日報」によると「硫化水素芒硝泉」。芒硝とは何なのかよくわかりませんが、身体に良さそうなのは確かです。

二階屋の建物が2棟、そのうちの一軒が内湯となっており、その外に露天風呂もあります。他にもいくつか湯船があったりしますが、うちらの時は熱くて入れませんでした。なんでも有志の方々がここを清掃・維持管理して下さっているとのことで、確かに内湯の建物内部には崩壊を防ぐためのつっかえ棒があったり、内壁を補修した跡などもありましたから、全くもって感謝するばかりです。しかしこのあたりは名にし負う豪雪地帯ゆえ、いつかはこの内湯棟も倒壊してしまうのではないかと気にかかります。


まずは目の前の露天にザボーン。時期柄アブが多いので脱衣にも機敏さが求められます(笑)。ちょっと熱めで気分のいいことはこの上もありません。ああ来て良かったと思いつつ、持参の缶ビールをプシュ。ぬはぁ、首から下は極楽浄土、顔のあたりはアブ地獄(笑)。でもいい気持ちなんですけどね。

内湯に入っていた人たちがあがったのを見てうちらもわっせわっせと内湯に移動。でも移動距離たった5m。近くて良かった。さいわい内湯の中までアブが追いかけてくることはほとんどなく(何でだろう?)、こちらではゆっくりと過ごせました。

 

内湯は2漕からなっていてどちらも適温(ちょいと熱め)、気持ちがいいです。左上の写真のカメラ側後方には脱衣場(男女別)がありましたが、浴室は昔から混浴だったのでしょうし、ここまで来て男女混浴にこだわる人はいなかったのでしょうなぁ。出湯量はかなり多いようです。ちなみに、玄関側にかつてこの宿が営業していた際に掲示されていたはずの立て札を発見。当時の入湯料がいくらだったのか気になるところです。

さて、ここを訪れたのは8月も間もなく終わろうとする平日でした。しかし、わたしらが着いたときには5人くらいの先客がいて、あがる頃にはまたもや5人くらいの新客さんが到着しました。「ここもかなり有名なんだなぁ、こんな山奥なのに」と思っていたら、どうやら理由はそれだけではなかったようです。

 

新客さんのお一人いわく、「実はここの温泉が地元の新聞に紹介されていて、それを見て来てみたんですよ」とのことでした。なるほど、ローカル紙とはいえ新聞の威力は大きいですな。でも裏を返せば、「新聞に載ってもこれくらいの人出」ともいえるわけで、やはり関東近辺との周辺人口の違いをうらやましく思わざるを得ませんでした。ちなみにその新聞とは「東奥日報」。2002年8月26日の朝刊でした。このあとその現物を入手しましたので、ちょいと載せておきます。読めないけれど許してね。

さてとりあえずゆったりした後は、すぐ脇を流れる清流駒込川で心地よい風に吹かれてくつろぎたいところですが、使われずに余った源泉がそのまま川に流れ込んでいる場所を発見!こうなったらここにも入っとかなくちゃという貧乏根性が頭をもたげます。しかし底面を掘り広げて快適に入ろうなどという積極性は一切なし。だってすぐそこに立派な露天風呂があるしね。というわけで、ただ座り込んだだけで満足することにしました。



足のあたりは冷たい清流、背中のあたりは源泉のアツアツ。

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