阿弥陀岳も朝日に輝いてます。目の前の行者小屋はまだ冬期閉鎖中。

土曜日の朝一番ということで、本当に人が少ないということはテント出発時に感じていたことですが、驚いたことに中山乗越から行者小屋に至るメインルートさえ、自分が今日最初にトレースを付けるような状態でした。となると何となくいやな予感が。

それは「一昨日まではずっと天気も悪かったし、昨日とて平日だからほとんど人は入っていないだろう。となると、尾根道とは言え上部では雪の吹きだまりになっている場所があるんじゃないかなぁ」というものでした。そしてその不安はズバリ的中することとなったのでした(笑)。

樹林帯下部を登りつつ、時折視界が開けるような場所からは稜線をのぞむことができます。う〜ん、予想通り雲ならぬ雪煙が上がっています。この場所からでもこれだけはっきりと雪煙が確認できるということは、実際の稜線上はものすごい風が吹いていることを意味するわけで、「いやだなぁ、行きたくないなぁ」と思うことしきりです。でもなぜか登りに来ちゃうのがまた不思議(笑)。学習能力が欠如しているようです(爆)。

樹林の密度が徐々に薄くなり、樹相も針葉樹一辺倒からダケカンバが混じるようになってくると、ルートの傾斜もかなり急になってきます。そうして、予想した通り先人の残してくれていたトレースもどんどん判別しづらくなり、ついには消えてしまいました。とはいっても迷うほどの場所ではありません。問題は、ここの傾斜と雪の深さです。



ここが一番深かった!写真右側の小山の右脇に抜ければいいんだけれど‥

この時期にしてはかなり深く柔らかな雪であるのは、一昨日まで続いた悪天の影響でしょう。そしてここが地形的に吹きだまりとなりやすい二重尾根地形になっていることも災いしているのでしょう。とにかく、進まない上がらない!深雪対策装備など持ってきていませんから(そもそもこの尾根ルートの登山者で、この時期にそれを持参する人などほとんどいません。稜線に出たら風当たりを強くするだけですし)、とにかくツボ足のラッセルで格闘するしかないのです。

腰あたりまで雪に埋もれながらひざで前部の雪を固め、左右の雪を足場に落とし込んで固め、そしてそぉっと足を乗せると‥「ずずっ!」約1/3歩分ほど上に上がりました(笑)。というのはいいほうで、ひどい一歩では「原点以下」にまで下がっちゃったりします。しんどかったのは正味50mくらいの標高差に過ぎなかったのですが、休憩を入れて40分くらいかかっちゃいました。

そして何よりものバッドタイミングは、自分がもうまもなくこのラッセルエリアから脱出できるところまで上がってきた時、ずっと下部に一名の登山者を発見!彼は、Takemaの作ったトレースを忠実に一歩一歩たどってきます。そのスピードは‥いうまでもなく早〜い!そりゃそうです、トレースがあるとないとでは大違いなのが雪山ですから。こんなことなら、あと1時間遅く出発していれば良かった?(笑)。

しかしまぁ、何とか吹きだまりエリアから脱出し、アイゼンのツァッケが小気味よく効く岩稜帯へと上がってきました。標高的にもかなり上まで来たようで、稜線まではあと少しです。と、ふと気付いたことがありました。それは‥

そう、僅か2時間前にははるかに高いところまで舞い上がっていた雪煙が、眺める限りほとんど見られないのです。確かに移動性高気圧の圏内に入りつつあるという予報ではありましたが、こりゃ嬉しい!稜線上で耐風姿勢を何度も取り、一瞬風の収まる僅かな時間「それ、今だ!」とばかりに十数歩進む、これを繰り返すというようなことも昔はありましたから、こりゃ何とも思いがけない喜びです。よかったぁ!

稜線上に立っている指導標もすぐそこに見えてきました(右上写真、左真ん中あたりに見えています)。地蔵尾根最後の関門は「数mながら両側がスパッと切れ落ちたやせ尾根」だったのですが、来てみるとその場所は右上写真の通りミニ雪稜となっていました。ここはやや左側を通ることで難なくパス。でも下りの方が恐いかな(右上写真にマウスオンすると、稜線上から撮った「後続者がこの場所を通る画像」に変わります)。

何はともあれ稜線到着、あとは赤岳頂上へ向かうだけです!

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