− Page42 恐るべきヒコーキ&ブリックマネーのどんでん返し in VFA −



空港の外側は閑散、しかし内部は‥「無茶苦茶ごったがえしてます!」

前のページでも書いたようにS&Kさんはほんの一足先に空港へと向かいました。しかしこの時点ではお互いにこう考えていたと思うのです。それは、

で、S&Kさんが出発して程なく、われらがFさんの運転する空港への送迎車が到着しました。どうやら他の宿に泊まっているお客さんと混乗のようなので(これは全然問題ない)あちこち回って、でもいるはずのお客さんがいなかったりもしながら、まぁとにかく空港へはまだ時間的に余裕のあるタイミングで到着したわけです。

さてここではFさんから「重要なブツ」の受け取りがあります。そうそれは「Brick Money」。今となっては旧紙幣となったとはいえまだまだ現役の「レンガ」です。これだけは絶対に手に入れたいと思っていて、到着した日のうちにお金を渡しておいたのは数ページ前に書いたとおり。というわけで同乗のご夫婦の荷物を下ろして手が空いたところで「ところでレンガは‥」と聞くと、そこには思いがけない返事が待っていたのでありました!

え、え゛え゛ーっ!これはTakemaにとってかなりショックなことでありまして、先行きの見えない政情においてある種「渡航の是非を検討しちゃおうかなどうしようかな」という思いを常に抱きながらも、でもやっぱり今だからこそジンバブエに行きたいと思っていた原動力は、実はバンジーでもビクトリアフォールズでもなく、一番はこのブリックマネーにあったのでありますよ。それなのにアアソレナノニ!「おうちに忘れて来ちゃった」だってー?

しかし彼の神妙な態度、そして「申し訳ないけれどこれはお返しします」という言葉とともに差し出されたあのUS$5を見たら、Fさんを責める気持ちは一気になくなっちゃいました。と同時に「やっぱり市内でも両替しておくんだったなー」という後悔に。いや、おみやげとしてはいくらあっても(重量制限が許す限りは)不要ではないですからね。いや、でもこのことを含めてもFさんは信用に足るいい人だったと思いますよ。できればこの「ついうっかり」はなかったらもっと良かったけれどね(笑)。

そんなわけでFさんとお別れしてチェックインカウンターへの扉を開くと、そこには思いもかけない阿鼻叫喚の世界が待ち受けていたのでありました!

ビック〜Jo'burg線はそんなに太いラインではないはずなので、せいぜい往路と同じようなB737サイズの機材が使われているだろうと想像していたんですが、この狭い出国ロビー(もちろん国内線と兼用)にはどう考えてもその人数をはるかに超えるすごい人がごった返していたのであります!

しかもすでに何やらチェックインが始まっている様子?そんな中にS&Kさんもいたわけです。「こ、これはもしかして『究極のオーバーブッキング』かもしれんぞ」と考えたのは理の当然です。しかし絶対大多数の乗客が「整然と列を作る白人さん」なので、パニック状態にはなっていません(笑)。そこで並み居る人を押しのけて(いや、列の脇を通って)カウンターで聞いてみると、あにはからんや、

ということでした(安堵)。ちなみにわれわれの予約しているフライトは「BA6282」便、つまりはブリティッシュエアウェイズとコムエアー(BAの南アフランチャイズ会社)のコードシェア便でしたから、今ここでぐちゃぐちゃになっている列からは少し離れていてもいいわけですね。しかしさ、

そんなわけでそこそこ近くの椅子を確保して、ついでにすぐ前のアイス屋でまたも棒アイス(オレンジ系)を食べて待ってました。もちろんいつカウンターに「BA」のラベルというか札が掛けられても決して見逃さぬよう、それこそ「獲物を狙う肉食獣のように」常にちらーりちらり目をやりながらでしたけれどね(笑)。

と、ほーらやっぱり!何の予告もアナウンスもないままに、さっきまでSA便のチェックインをしていたカウンターにそうっと「BA」の札が掛けられました!となればとにかく今すぐ並ぶしかない!と、いきなり動き出したTakema夫婦の挙動を皆さん察知して、うわーすごいことになっちゃった(大笑)。

しかしなにがすごいというか何というか、

もともとカウンターは2つしかないわけです。SAの待ち人数が少なくなってきたとはいえまだチェックインの列は続いているこの状況では、日本的合理主義からすると「どう考えても2つのカウンターで残りのSA客を急いでさばき、その後一気に2カウンターでBAをさばく」のが賢いやり方のように思うのですが、やはりアフリカの考え方は違うようですね。よって、

でもやっぱり白人(しかもここに来るくらいだからどう考えてもみーんなTakemaよりお金持ちでしょう)ゆえに整然性は失われることがなく、よってかなり列も守られて無事チェックインまで進んだ次第です。これが失礼ながら「列を作らない中国人だらけ」だったらそれこそ阿鼻叫喚地獄の中で途方に暮れたと思います(笑)。



でも手書きにしろ何にしろ、ボーディングパスさえ手にしてしまえばあとは恐くない「はず」なのであります。

さーてチェックインが終わればしばらくすることがありません。というのも、先発のSA便の出国手続きもこの段階では始まっておらず、S&Kさんもまだロビーにいらしたのでしばし歓談。確かSA便でJo'burgに飛び、数時間の乗り換えで香港経由日本に帰るということだったと思いましたが‥

他の人の経験ゆえ正しく真意を伝えられるかはわかりませんが、メールでいただいた情報をもとにはしょって言えば次のような流れがあったようです。
「ただでさえ出発が定刻より1.5h遅れただけならまだしも、何とVFAを飛び立ってすぐにすぐお隣のザンビア共和国内リビングストン空港に着陸(ちなみに直線距離にして30kmあるかないかです)。理由は燃料不足による給油だそうで(大驚)、もちろんJo'burgでの乗り換えは叶わず。しかもJo'burg空港での扱いはあまりにもひどいもので「営業時間終わってるから明日来い!」とまぁ、客を客とも扱わない途上国の航空会社そのもの。結局ザンベジクルーズのあの韓国人ツアーグループとタッグを組んで大クレームの結果やっと日本に帰ってこられた」。
うわー恐ろしい(苦笑)。「ボーディングパスさえ手にしてしまえばあとは恐くない」と思いこんでしまうのは平和に慣れた国の旅行者の証でもあるのですね。しかしこの時にはまだお2人がそんな流れに巻き込まれるとは思っていませんでしたから、ごく普通の世間話くらいしかしていませんでしたが(笑)。

さてSA便の出国手続きが始まったあたりで、まだヒマなわれわれは交代でショップなどを見に行くことにしました(とはいっても前述のアイス屋を含めても2店しかないんですが)。で、一番メインのショップで品物を見ているときにふとひらめきました。それは‥

そう、まだ出国前ですから扱いとしては一般商店と同じですもんね(そうでもないか)。というわけでダメもとで聞いてみましたが‥やっぱりこの店にはないそうです。あー、ジンバブエで一番のおみやげだと思っていたのにー、Fさーん‥。

しかしこれで全てが終わりというわけではなかったのであります。この店の店員さんがこんなことをおっしゃるではありませんか!

そ、そ、そうか!実はTakema、この時点まで「銀行」という存在を全く無視して考えておりました!これまでいろいろなニュースを見てきた中で「ジンバブエの銀行には預金引き出し制限がありそのため人々は夜明け前から行列を作るが、順番が回ってこないうちに閉店ということも珍しくない」というような記事を何度も目にしていたので、「個人的に頼むしかなかろう」という作戦ばかりに固執してきたというわけです。

もちろん銀行における両替は「公式レート」によって行われますが、これだけのインフレであればもはや公定だろうが闇だろうがもうぐちゃぐちゃ、いや、闇のほうに話を持ちかけてもどうせぼったくろうとするに違いないですはず、しかももはや「ジンバブエドルを入手する最後のチャンス」となれば、その銀行様に全てを賭けるしかありません。というわけでいざ行かん!(それにしてもロビー内に「銀行こちら」の看板すらないのはどういうわけでしょ?)。

銀行の部屋はこぢんまりとしていて、部屋の中には行員の女性が1人とガードマンの男性が1人いるばかり。でも「本日の両替レート」を示す掲示はどこにもなし、なるほど、刻々と変わる(変わりすぎる)レートゆえ掲示してないのかなと妙に納得した次第です。

で、以下は行員さんとの会話ね。のっけからストレートな質問を投げかけたTakemaです(笑)。
Takema 「こんにちは。あのぉいわゆる"Brick Money"を手に入れたいんですが、今こちらに『在庫』はありますでしょうか?」
行員さん 「残念ながら"Brick"状態になっている旧札の束はこちらにはありません。その代わり旧札の未使用束ならありますけれど‥。」(そう言って机の上に帯封付きのZ$5,000,000,000の札束を載せる)
Takema (うわーっとかなりドキドキしながら)「あのぉその1束ですが、US$ではいくらになるでしょうか?」
行員さん (一生懸命計算した上で)「US$4になります。」
Takema (思い切りぶったまげつつではもうちょっと足してもいいかなと考えているうちに、行員さんが新たな札束=ちょっと0の数が少ない、を机の上にさらに3束載せたのを見て)
「すみません、それら全てを合わせるといくらになるでしょうか?」
行員さん (これまたさらに一生懸命計算した上で)「やっぱりUS$4ですね。」
Takema (唖然としながら)「じ、じゃ、それでお願いします。」
というわけで、こちらの銀行及び事前にFさんからプレゼントされていたお金を合わせたものが下の画像となるわけです。中央上にある4つの束はそれぞれ100枚ずつにまとめられて帯封がついたままのもの、この総額はと思って帰国後に数えてみると、



そんなこんなで「本来のブリックマネーじゃないけれどまさにレンガ相当の厚みを持つピン札」を手に入れたTakemaは、おしんこどんいわく「何とも嬉しそうな表情で」ロビーに戻ってきたということです。さもありなん、この両替は相当嬉しかったもんなー。あえて失敗したことといえば、「やっぱりUS$10相当額くらいは両替してもらうんだった!」ということ。そうしたらさ、たぶん‥

あーめくるめく小市民的発想(苦笑)。でもある種「歴史の記念」としてこの札束はそのまま大切にしておきたいと思います。でも第一次世界大戦後におけるドイツの超インフレはある種状況的に納得できる現象でしたが、これほどの混乱というか無策、いやある種の逆策というか無謀策によって、1980年に登場したジンバブエドルは2006*1、2008*2、計3回のデノミによって計25桁を切り捨てるという、貨幣経済の歴史において最大の下落を招いたというのが現実です。その渦中に少しでも顔を出せたという経験は嬉しいのですが、ジンバブエの場合「現段階で収束したわけではない」というのが切ないところです。

しかもそれに追い打ちをかけたというか、経済上の崩壊が生活インフラにも直接影響し、最低限の上水道の供給すらおぼつかなくなりコレラが発生(2008/11から?早い予測によれば2008/8から?)。それを食い止める手段もないままムガベ大統領は海外からの医療支援すら制限すると同時に「このコレラは欧米から持ち込まれたテロだ」と言い始める始末。

【2008年12月13日 AFP】

ジンバブエのロバート・ムガベ(Robert Mugabe)政権は12日、「ジェノサイド的」コレラ感染の拡大は、旧宗主国である英国のせいだと述べた。一方、国連(UN)の潘基文(パン・キムン、Ban Ki-moon)事務総長は、ムガベ大統領に「未来を見る」よう呼び掛けた。


結局2009/2/10現在のマスコミ報道によれば、ジンバブエ国内でのコレラ感染者数は69317人(WHO発表)、死者数は3397人に及んでいます。しかしムガベ政権は海外からの医療団(特に欧米各国からの)入国を制限し、しかも生活インフラを自力でどうこうできるわけでもないことからやむを得ず首都ハラレを代表とする大都市居住の人々は井戸を掘り、しかしその井戸が浅いことからすぐ近くのトイレ棟からの糞尿等が流入し、結果としてコレラの蔓延を助長する結果になっているというのです。

コレラ渦は徐々に沈静化しつつあるといいますが(WHO)、それは国家による努力の成果では決してなく季節的な要因(雨期の終了)です。このことについては「国境なき医師団」サイトの「活動ニュース>ニュース>ジンバブエを選択」すると同時に他の諸サイトで理解できるかと思います。とにかく「国は何もしていない」状況です(あ、ムガベ大統領が香港に豪邸を購入、とかいうのはあるみたいですね)。ちなみにこのページをアップしようとしている2009/2/18現在の最新報道によれば「まだまだコレラの感染者は増えるばかり、2月に入ってからは"2分に1人"の割合で感染者が増えているという状態なのだとか。ああ、今や天はジンバブエを見放しているのか‥。

というわけで2009/2現在のジンバブエを巡る状況をお伝えしましたが、いやあのね、このページは2008/8の旅行記なんですよね。というわけで話を戻しましょうというか、いいかげんジンバブエを出国しましょう!(苦笑)。

その後の出国手続き後、これまた僅かな蛍光灯のみが僅かに灯る搭乗ロビーには人々がごった返していましたが(この段階では2機分の乗客がひしめいていましたから)、やがて前述のお二人を乗せたSA便が飛び立つと、随分と落ち着きを取り戻しました(たぶんこちらが落ち着きはじめたのと、先発のSA機がザンビアのリビングストン空港に着陸したのはほぼ同じタイミングだったと思われますが)。

で、こちらも数十分遅れで搭乗開始です。で、われわれの乗り込むヒコーキを見てびっくり!会社名を含め一切の機体塗装がありません!(ま、白い塗装ではあるんですが)。これを見て「この飛行機大丈夫かな?」とも思ったわけですが、考えてみればこの状態とは最近流行りの「ラッピング塗装」直前段階での運行だったのかなと。ちなみにもちろん機体番号等の塗装表示はありましたけれど。でもいざ飛び立ってしまえばおかげさまでの順調飛行、あらぬ国のあらぬ空港に寄り道することもなく?まっすぐJo'burg空港に着陸したのであります。はーヨカッタ。

しかしこれでは終わらなかった?ここからは「Takemaのどんでん返し劇場」が始まります。おしんこどんのバッグ取り忘れ、全然笑えませんって(大苦笑)。
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