- 2019夏(30) 、ウクライナ編(6) 高線量値のKopachi村内各地を見学 -



ホットスポットはさすがに高線量値(58.87μSv/h)。でもここにいたのはほんの数分。



先ほどまで晴れて暑いくらいだったのに、ここで雨が降ってきました。しかし「次の場所では大して歩かない」ということだったので雨具の着用は控えました。そういえば「傘はダメ」とどこかに書いてあった気がしたんですが、いま手持ちの資料を見る限りどこにも書いていないなぁ。

さてやってきたのはメインロード沿いにあった「Kopachi」村。ここは放射線量が高く、多くの建物が放射能遮蔽のため埋められたそうです。村があったことを示す看板も、大きな土盛りの上に設置されていました。おそらくこの下にも‥。

一時的にですが雨が強くなりました。道路からほぼすぐのところにある「幼稚園」の建物に入ります。



ここは原発から約5km、「立地が良く」(原発へのメインロード沿い)、最初に立ち寄ったZalissya村同様、ほぼすべてのツアーバスが立ち寄る場所(建物)だと思います。内部はご覧のとおり荒れ果てています。右上画像は「職員室」でしょうか。



各部屋にはベッドがたくさん。共産主義国に共通することですが、女性の就労率が高いことから乳幼児保育には手厚い措置がとられています。ここは「幼稚園」と紹介されてはいますが、このベッドの数を見るに日本でいう「保育園」だったのかと。

ところで館内外の様々な放置物にだいぶ「演出」された形跡があるのはちょっとねぇ。まあしょうがないか。せめて外部から「脚色アイテム」を持ち込んでいないだけでもましなのかもしれません。



ところでこの建物付近の空間線量値は地上1mで2.14μSv/hでした。33年経ってもそこそこ高いのですが、原発から距離が近いこともありところどころにホットスポットが存在します。「あまり勝手に歩き回らないで」ということでしたが、気がつけばそのガイドさん自身が「こっちが(数値が)高いですよ」とわざわざ教えてくれたり、何だか不思議です(笑)。

で、地べた直近で計測してみたのが右上画像というわけです(なお、これは正しい計測法ではありませんのであくまで参考までに)。うーんやっぱり高いなぁ。エントランスの脇あたりでの計測です。ガイドさんいわく「屋根の形状の関係で、屋根上に降り積もった放射性物質がここに集中して落下したのだと思われます」とのこと。なるほど。

いずれにせよ、この数値が今も普通に出てしまうわけですから、事故後の処理作業でこの村のあらかたが埋められてしまったというのもやむを得ないことだったのかと。続いてはこの場所周辺(南西側)の別エリアへ。1.5kmほど離れていたでしょうか。



事故後に頑張った車両の墓場でしょう。メインロードから少し離れた場所に放置されているのが何だか悲しいですが、実はここも草刈り等のメンテナンスが行われているのは間違いありません。だからこそわれわれも楽々と歩き回れるわけで‥。

さて歩みを進めていくと、ガイドさんから次のようなお言葉が。





というわけでまたも無理矢理線量計(β線計測用)を近づけてみると、「58.87μSv/h」(ページトップの画像と同じものです)。ちなみに前述の「ガイガーくん」がこのポット?周りを念入りに計測してみたところ、最大線量値は80μSv/hを超えていたそうです。



「そんな高線量の場所にいて大丈夫なの?」とお思われる方もいるでしょうが、ちょっと離れればこれほどまでに下がりますからね。それにしてもガイドさんを含め、何だか「なめるように」計測しています(笑)。ちなみに青い服を着ているのがガイガーくんです。



放置された車やトロリーバス。なおこのトロリーバスは、訪問者の「拠点」ともなっているようです。



内部にはテーブルが置かれ、訪問者ノートも。何となくストーカーの「生活臭」もあるような?



それでも、周辺にはけなげに花を咲かせる植物が。「ゾーン」内およびその周辺では、人間が立ち入らなくなったことにより自然環境が回復し、植物の繁茂はもちろんですが、野生動物も明らかな増加傾向が見られるといいます(詳しくはこちら:「事故から30年、チェルノブイリが動物の楽園に」)。

われわれもゾーン内で「モウコノウマ」らしき動物の姿をチラ見遠望しましたが、撮影までには及びませんでした。しかし、われわれの数ヶ月後に同地を訪問した温泉はしご湯さんが動物撮影に成功!というわけで掲載許可をいただいた画像がこちら!





というわけで右側の動物について温泉はしご湯さんに確認したところ、実はオオカミではなく「いちおう野犬」。某ゲートの近くにいて係員により半ば飼育されており「飼い犬みたいなもの」ということでした。なるほど、だから目の前にアナグマがいても「野生の本能」オーラが出ていないわけですね(そもそもよそ見してるし)。

さてこのあとはこの日最後の訪問地「Children's Camp Emerald」を目指します。事故前はプリピャチの子供たちが野外生活を楽しむサマーキャンプとして利用されていたそうです。広い園内には多くのバンガローが点在しています。



こんな道を歩いていきます(メインロードと接する取り付け道路は盛り土で封鎖されています)。左上画像ではアスファルトが見えていますが、すぐに見えなくなり、森の中の遊歩道という趣です。

最初に見えてくるのが鉄骨造りのやや大きな建物で、ガイドさんによるとミニシアターだったのだとか。ネット上には「Open-air」という情報があります。確かに屋根を支えていたはずの骨材が見当たりませんから多分そうだったのでしょう。



各バンガローにはイラストが描かれています。



シャケを持つ猫はともかく、冷戦の対立を超えたパクリねずみって‥。



内部はこんな感じ。窓が大きく取られた開放的な造りです。



子供向けの施設ですからもちろん遊具もありました。

予想外だったのは、このキャンプは先ほどのKopachiの幼稚園跡から推定で5km弱、トロリーバスからは3.5kmほどしか離れていないにもかかわらず、線量値は特に高くもないということでした(地上1mで1.12μSv/h前後)。

原発爆発時の風向きは東風だったようで、原発の真西にあった松の森には強い放射性を持つ物質が降りそそぎ、枯死した松の林が赤く見えたことから「赤い森」と呼ばれるようになりました。なおプリピャチ市は原発の北西に位置していたので、かろうじて「最初の直撃」だけは避けられたことになります。

もっともそのあと風向きがあちこち変わる中で原発の南東側にあるここKopachi村にも強い放射性物質が‥というわけですが、少なくとも「赤い森」に比べれば相対的に飛散物質の線量値は低く、飛散範囲もある程度限定的だったようです。ただしあくまで「相対的」にみての話であり、実際の線量値が「生命に危険を及ぼす」レベルであったことはいうまでもありませんが。

そんなKopachi村の中でも、ここのように線量値が低めの場所があるということがわかりました。福島第一原発事故でもそうですが、「風向き」が大きな被害の差をもたらしたわけです。チェルノブイリ原発事故の影響は、北に国境を接するベラルーシにおいても深刻です。強制避難区域面積がウクライナのそれよりも広範囲なのは、「春ゆえ南風が吹くことが多かった」こともあるのでしょう。

ちなみにこのキャンプをさらに奥に向かうと、チェルノブイリ原発の冷却池に行き当たることになるはずです。そこまで行ってもよかったのかな?(ここでは現地でフリータイムになったので)。ま、勝手な判断・行動は禁物です(そもそもこの時はこの先に冷却池があることを知らなかったのですが)。



というわけでこの日の行動終了、10kmゲートを通り抜けるわけですが、退出する際にはホールボディカウンターによる検査を受けなければなりません。もちろん全員問題なしでした。

さてこれで初日の見学行程はすべて終了、あとはこの日のお宿(チェルノブイリ市内)に向かうだけです!

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