− その19 遊牧民のゲルにおじゃまっ!(1) −



おおっ、何だかモンゴルの原風景を思わせる景色だぁ。

乗馬の際には遊牧民のゲルを訪問するのが一般的なパターンなのですが、われわれもとあるお宅を訪問いたしました。実は同じゲルに4回もおじゃましたためすっかり顔なじみになっちゃったわけです。ある時は雨宿りもさせてもらったし、ありがとうございましたぁ!

さて、初めて非観光ゲルの中へおじゃましてみると、‥まずはストーブの上に据えられた鍋の中身に目がいきました(めざとい)。



な、何だかわからないけれど美味しそう‥

こちらは「ウルム」。乳を加熱しながらかき混ぜ、脂肪分が上に集まったところで小麦粉をまぶしてしばらく置くとクリーム状に固まるのでその部分を食べるというわけです。何だかプリンのような感じでとても美味(最初の訪問時に食べたわけじゃないんですが)。

そうそう、ちなみにモンゴルの乳製品その他についてはこちらのサイト(「キッコーマン国際色文化研究センター」)がめっぽう詳しいです。「白い食べもの」ページ以外も含めて一見一読の価値あり。特にモンゴル行きを考えている人は必読だと思います。

そしてそして、ゲルの入り口脇にどどんと鎮座しているのは‥おお、これこそアイラグ(馬乳酒)の容器だぁ!



撹拌して発酵を促す棒が入ってます。中にはもちろん‥たっぷり。

中には「魅惑の白い液体」がたっぷり。ちなみにモンゴルではゲルの訪問客には馬乳酒ほかの飲み物とお菓子などでもてなすという習慣があります。それは家人の知り合いのみに限らず、見も知らない通りがかりの訪問者やわれわれのような外国人旅行者に対しても同じです。「お互い様」という発想から来ているのでしょうかね。ただしわれわれはなかなか恩に「報いる」ことができないので、安直かも知れませんがお土産(プレゼント)を用意するのもいいかもしれません(しました)。

というわけで、いざいただかん憧れの馬乳酒っ!



さぁって、アイラグ初体験、飲むぞぉ!

アイラグは「酒」とはいってもアルコール度数にすれば1-2度しかないので、お酒が苦手な人でも大丈夫。イメージとしてはドリンクヨーグルトの無糖版と考えれば近いかもしれません(なお現地の人はアイラグを酒扱いしておりません)。ちなみにわれわれ旅行者(=飲み慣れていない)に対しては比較的小さな茶碗に注いでくれますが、モンゴル人に対しては茶碗というよりどんぶりに近い大きな容器になみなみと注ぎます。これもまた「歓待すること、人に喜ばれること」を重視するモンゴル人の習慣なのでしょうね。

ちなみにTakemaはこのアイラグがお気に入りとなってしまい(お酒としてじゃないですけれど)、こちらのゲルではかなり何度もおかわりを要求した記憶があります(何回もおじゃましたし)。「居候、三杯目にはそっと出し」の国で育った自分ですが、郷に入りては郷に従えを地でいってしまったわけですね。その結果最後の訪問となったときには‥

と、お持ち帰り用アイラグボトルまでいただいちゃいました。



UBに戻ったあと、このアイラグをタンノーしたことは想像に難くありません(笑)。

もちろんこちらの遊牧民家族の皆さんはそもそも「観光」を生業としているわけではありませんから(せいぜい片手間。そもそもゲルそのものが移動していくわけですし)、これはやはり「歓待された」態度をみせたTakemaに対するお礼なのでしょう。うーん、これは嬉しかったなぁ(しみじみ)。

ところで上部に採光&換気用の穴があるゲルとはいえ、やはり外に比べれば暗くなってしまうのは否めません。しかし開け放たれた扉の外にはそれこそ大草原が広がっているのが見えます。よし、ちょっとお外に遊びに行きますかぁ!



いやはや、ゲルの外はこんなに広大っ!



何だか、絵になるっしょ?



無意味にはしゃぐTakema、その視線の先にはお昼寝中の子馬の姿がありました。

モンゴル編 動画ライブラリー(28)

ゲル周辺風景、推定約220度を展望」

「そこにはただ風ぇが、吹いているだけぇ‥」。若い人は知らんでしょうな(オヤジ系懐古趣味たっぷりコメント)

Wmv形式、688KB、23秒

さて、何気なくゲルの脇に目をやると‥ん?こりゃぁもしかして?



たぶん「酸っぱいチーズ」アロール製作中なんでしょうね(聞くのを忘れた)。重しを載せて水分を飛ばしている様子。

さぁって、おじゃましましたお母さんと娘さん!というわけで再び馬にまたがって帰路につきます。あれれ、ご家族の画像は一切なしなのって?いやいや、このあとのページでちゃんと出てきますんでご安心めされよ各々方(笑)。



さぁって帰りましょ。今度は自分で手綱を持ってます。



というわけで、帰ってまいりました!装具を外し、着替えたあとでマイ馬と一緒に記念写真。

というわけで無事に宿に到着です。しかし、人を乗せるとき以外は鞍を外されているモンゴル馬にとって、実力を思う存分発揮できる乗り手でもないへなちょこ人を乗せたあとはやはり何かが違うということなのでしょうか。本日の業務から解放された彼らは、妙な行動を始めてくれました。いやちょっと待て、ゾルさんやガイドの馬も同じようなことをしていたっけ。うちらの馬だけじゃないのね(安堵)。



みんな、鞍の付いていた背中部分が無性にカユいようで、しきりにゴロゴロ反転しておりましたわ。

さて、ついでですので自分たちが見聞きした「ゲル訪問の際に知っておくべきこと」をいくつか挙げておきましょう。遊牧民のゲル訪問を予定している人は必見です。そうじゃない人は‥まぁのほほんとね(何のこっちゃ)。
* いろいろなサイトで紹介されていることですが、扉を入って「向かって左側が客人&主人側、右側が家族側と心得ておけば間違いないです。お客が居ないときは左側ベッドが父親(男性)、右側ベッドが母親(女性)ということのようです。実際、モンゴル人の方々はみなそのようにされていました。というわけで、お客である我々(男女の別なく)は「とにかく扉をくぐったら左へ」と考えましょう。
* 座る場所をあれこれ躊躇せず、とにかくその辺に座ればいいです。椅子があれば椅子に、なければ床に座ればそれで大丈夫です。ただしベッドは「勧められれば‥」とあるサイトに書かれておりました。
* ゲルの中央には支えとして二本の柱が立てられています。実際はその柱でゲル全体を支えているわけではなく、まさに「全体が一体となった構造物」のわけですが、その二本の柱のあいだを通ると不吉だとされています。‥ということをわたしもどこかのサイトで読んだのですが、実際は夏でもその棒の間にはストーブが据えられているのが普通(遊牧民ゲルでも)ですから、無理をしてすり抜けない限り?このミスをしでかすことは少ないかと思います。
* お茶でも馬乳酒(アイラグ)でも自家製アルヒ(今回は飲めなかった!残念!)でも、とにかく受け取ったら(or 手に取ったら)一度は口をつけてから置くこと。要は「歓迎された」という気持ちを相手に伝えることが大切なのでしょう。なお、茶碗をベッドに置いてはいけない(逆に床に置くのは不思議なことにOK)というルールだったような気がします。
* 必ずお茶うけとしてのお菓子が出されるはずなので、勧められたら手を付けること。もらってからすぐテーブルに置いて「あとで」というのではなく、一口かじってから置くと「食べかけ中」ということになるような感じです。なお、おかわりを要求するのはまったく問題なし、というかその方が「歓待した」という印象につながるからか喜ばれます。
* 夏ならば(場所にもよりますが)馬乳酒がふるまわれるはずです(ちなみに南ゴビではあまり馬を飼っていないので「ラクダ乳酒」「ラクダドリンクヨーグルト」になる可能性が大ですが)。その際、おかわりすればするほど大吉。
* そうそう、馬乳酒(アイラグ)は一応アルコール分ありですが、現地ではごく普通の清涼飲料として飲まれているようで、メインロード沿い(UB周辺ではなくずっと田舎での話ですが)では、草原のど真ん中にテントや掘っ立て小屋があって、「自家製馬乳酒のドリンクショップ」がいつ来るとも知れないお客さんをのんびり待っていたりします(かなり後ろのページで登場予定)。なお、遊牧民キャンプで出されるアイラグはおかわり自由!というより「おかわりしなきゃ失礼!」という気持ちでぐびぐびといただいた方が喜ばれます。これも「たっぷり歓待された」ということを形で示す意味があるのでしょう。ちなみにTakemaは4杯も5杯もいただいた結果、家のおかみさんに「モンゴル人みたいだねぇ」といわれました。だって、お茶碗が地元の人より小さいんだもん。なお、初夏の馬乳酒はまさにさっぱりした清涼飲料水なのでしょうが、どんどん馬乳を追加するとはいえ発酵は進みますから、7月下旬以降に訪問する旅行者の方は「それなりに酸っぱくなっている」ことを知っておきましょう、念のため。
* 相手からものをいただくときは両手を出すか、または右手に左手を添える形で受け取りましょう。日本でも正式な場では片手で受け取るのは失礼にあたりますが、モンゴル(ほかアジア)ではその作法がより厳格に守られているというわけですね。
* 帽子をかぶってきた場合、逆さまの向きに脱ぎ捨てないこと(かぶる側を上にして置かない)。また、人の帽子をかぶったり、自分の帽子を人にかぶらせるのもだめ。
* ゲルに出入りするときは入口の敷居でつまずいてはならない(悪霊などが入ってくると考えられているため)。ゲルの扉の下面は地面より高い位置についているので、これは気をつけておかないとやってしまいそうな気がしますのでご注意を(われわれも注意していました)。もちろん敷居部分を踏むのは絶対にダメです。
とまぁこんなところで。ちなみにこのページの内容は一部翌日午後のものとごっちゃにしているのですが、そんな時間軸の変形をものともせず(強引)、さて翌日は‥うわ、朝から雨だ。さてどうする?

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