− その25 フブスグル湖への長い道のり −


というわけで空港に着いたのは20:30ころ。しかぁし、国内線カウンターフロアには人っ子一人なしといった感じで、カウンター内も電気が消された状態。うーん、こりゃ本当に飛行機が出るのだろうかと心配になってきます。ゾルさんとドライバーのアーギーさん(ちなみにこの方には後日カラコルム方面に出かけた際にも運転でお世話になりました)は二人で何やら話したあげく、「いったん引き上げましょう」とのこと。どこへ行くのかなぁと思っていたら、なぜか空港ターミナル近くの団地の広場で休憩。とはいえそこで何をするわけでもなかったのですが、何だかゆったりした夕方のひととき、あれはあれで悪くなかったなぁ、うん。
ところで、この団地の広場内にも「蓋の開いたマンホール」がいくつか口を開けておりました。まさかこのあたりに「マンホールチルドレン」がいるわけでもないでしょうが、それにしてもその周りで子供たちが平気で遊んでいるのが何とも不思議というか危なっかしいというか。遊んでいて怪我をするのも自己責任ということなんでしょうかね。ま、ここのマンホールの場合「落ちたら大怪我」となるのは必定なのであまり比較しようとするのも変ですが、たとえば「池の周りに張り巡らされたフェンスを乗り越えて遊んでいた子どもが足を滑らせて溺れても、『これは低いフェンスを張っていた自治体の責任だ、損害賠償しろ!』と大言してはばからない親のいる国」というのもどんなもんかなぁと思いますわな。低かったのはフェンスそのものではなく、子どもにそのような行為をすることを認めていた親の「親としてのレベル」ではないかと思うんですけれどね。
再び空港に戻ったのは21:10頃。おお、カウンターがオープンしているということはちゃんと飛ぶということなのね(嬉)。ちなみに夜間飛行になるわけだから、ムルン空港は夜のフライトにも対応しているんでしょうねと訊ねたら、「南ゴビのあの空港とは違ってもちろん滑走路は全面舗装だし、誘導灯もちゃんとありますよ」とのことでした。でも、自分が聞きたかったのは「レーダーやら無線誘導装置とかはちゃんとあるんでしょうか」ということだったんですが(笑)。ま、自信を持ってこの時間に飛ばすということなのだから大丈夫なんでしょうね、たぶん(笑)。

下段に22:45発(またもや5分延発)MUREN行きの画面発見、よぉっし!ちなみに画面が二段になっているのは、SDカード内でデータがぶっ壊れ、別ファイルの画像同士が結合したからだと思われます。そんなことってあるもんかと思うけれど、実際そうなっているんだからどうしようもありません。不思議だ。
出発の1時間くらい前に搭乗待合室に入り、さぁってあとは搭乗を待つだけの状態。となればすることもないので、待合室入口で行われるセキュリティチェックの様子を見ながらぼんやり過ごすことにしたわけですが、何だかモンゴル人の皆さんの、チェックに対する姿勢というか緊張からくる妙な挙動などにおもわずほのぼのしちゃいました。というかモンゴルに限らず飛行機搭乗に慣れていない人はみな似たような挙動に出るんでしょうね(自分もそうだったに違いない)。

妙に自信ありげな態度で堂々と通過しようとした瞬間、非情にも「ピーッ」の電子音。するとこれまでの態度はどこへやら、急におどおどキョロキョロ、すごすごと金属探知チェック用のお立ち台の上に立ってみたり、そうかと思えばドキドキびくびく系草食動物的挙動を如実に物語る態度だった人が、「無罪放免」と知るやいなや見せる満面の笑み!(しかもそういう人に限ってソロのお客さんだったりする)。それでもかつての社会主義の名残か、係員のおばさんたちはある種徹底的に無愛想だったりするわけで、その好対照がまた何とも面白い!いやはや、失礼ながらじっくりタンノーさせていただきましたわ。これに比べれば羽田空港のセキュリティチェックなんて見ていて面白くも何ともないなぁ。

話がそれました。搭乗口が開き、飛行機までの移動バスが出発したのは何と出発予定時刻ジャストの22:45でありました。また遅れてしまったわけですが、まぁここまで来ればどう考えてもフライトキャンセルはあり得ませんからある種気楽なものです。それにしてもたかだか1時間ちょいの国内線フライトなのにこれほど遅れるとは、前にも似たようなことを書きましたがやはり乗客の都合などまったく考えていないのね(笑)。



夏のモンゴルとはいえ、この時間になればさすがに真っ暗なのは当たり前。さ、これから出発です。

というわけで日付も変わった0:10ころ、最初の目的地であるムルン空港へ到着!預け荷物が出てくるのを待ちます。が、それなりに(隔日運行便しかない国内空港にしては)大きい建物なのに、荷物受け渡しターンベルトはおろか、一見した限りでは荷物用のカウンターすら見受けられません。荷物はどこから出てくるんだろうと思いつつよくよく建物内の掲示を見てみると‥うわ、こりゃ効率悪いわっ!



一応50人乗りの飛行機なのに、一人一人に受け渡すシステムでした。一時は騒然(笑)。あー、もうこんな時間なのにまだ荷物が出ない(笑)。

さてこの旅行記をお読みいただいておられます聡明な皆様であれば当然ご記憶のこととは思いますが、念のため改めて申し上げます。本日、われわれの最終目的地はここムルンではありません(最初は「これだけ遅れるんならムルン市内のちっぽけ宿に泊まってもいいなぁ」と思ったんですが、その希望はゾルさんにより即座に打ち消されましたっけ(笑))。今宵の宿(もはや「宵」などという時間では到底ありませんが)は‥

というわけで深夜のダート行、しかも道中に人家はまずほとんどないということですから単独行動はあまりに危険ということで(帰路は昼間でしたが、家なんて2軒くらいしか見ませんでした。あとはるか遠くにゲルを数軒ね/数時間の移動中。)同じフブスグル湖を目指す観光客(主に韓国人グループ)とともに全6台で一つのグループを組み、集団走行&助け合いによるナイトラリー無事突破を狙うこととなりました。うわぁ(予想通り)すんごいことになってきたぁ!(とはいえ現地のドライバーさんにとってみれば「よくあること」なのかも知れませんね)

窓の外から見える「人工的な灯り」は空港ターミナルのそれが本当に最後でした(ムルンの町はフブスグル湖への道とは反対方向なので)。あとはもう、車のヘッドライト&テールライトだけがすべてです。しかしまぁそれでもこの6人のドライバーさんたちは路面の状態を熟知しているのか、それとも勘による部分が多分にモノをいっているのか(たぶん両方だと思いますが)、ふっ飛ばすこと飛ばすこと!おまけにわれらがドライバーさんは「軍団」の中でもそれなりにリーダー的存在だったようで、速い速いっ!



「あの揺れの中でよく撮れた!」とほめてやって下さい‥というほどの大揺れ×数時間でしたなぁ(しみじみ)。

それほどパワーのないヘッドライトを唯一の頼りにどんどん車はひた走ります。しかも道は新旧あわせて幾筋にも延びているせいか、各ドライバーさんとも「己の信ずるルート」に一気に突入、ギアチェンジ、アクセル全開、ブレーキ&シフトダウン、ギャップを乗り越え再びアクセル全開!という感じでとにかくぐわんぐわんと突進です!

そして、南ゴビ編で触れたとは思いますが、われらが命を託す車(極端だな)は当然の助動詞「べし」ともいうべき「ロシアンジープ」。そう、悪路&悪天候にはめっぽう強いが、その分居住性が犠牲にされてしまったというあのロシア製四駆でございます。

道は予想のごとくバンピーロード(可愛い子鹿が出てくるわけじゃありませんので念のため)、しかも時には川渡りもあったりするそれこそナイトラリーそのもののハードタスクが続きます。そんなラリーとなれば‥



深夜のマシントラブルだってあたりまえでしょ♪こんな時にはわれらがドライバーさん大活躍。

しかぁししかし!本格ラリーのようで決してラリーではないのは、混載荷物とでもいうべきわれわれの存在ですっ!そうっ、われわれはラリー体験に来たわけでもないただの観光客、しかもわたしらは(最初の予定では)今頃ツーリストゲルの中で安らかに寝息(いびき)をたてているはずの純真無垢ないたいけ日本人だったはずなのに、現実の車内はといえば‥

というような、成績の上がらない営業サラリーマンがいよいよとことんまで追いつめられたような地獄絵図だったわけでございます(何のこっちゃ)。ちなみに道の状態はといえば、夜だからいっそうそう思えるのかも知れませんが正直いって南ゴビよりしんどい!そもそも平坦なルートではないのと、夜間走行ゆえわだち上の小さな凸凹を避けることなくそのまま一気に走り抜けるからなんでしょうけれど、後部座席でうとうとし始めたおしんこどんはと見れば‥

その時の画像&動画がないのは残念な限りではありますが、あのね、そんな悠長な揺れじゃなかったんですって!(笑)。ま、撮ったとしてもフラッシュなしではなぁんも写らなかったでしょうけれどね(フラッシュ撮影じゃなぁんも面白い画像にならないし)。

Takemaはといえばそう、30分くらいはうとうとしたのでしょうか(当時の日記に書いてあるから間違いないということにしておきましょう)、しばし河床を走り、道が登りになり、そして下り始めてしばらくしたと思ったら、ヘッドライトに照らされる暗闇の先にはちらほらと人工的建造物が見えてきました。ドライバーさんが「Lake!と暗闇を指さしてにこっとした(と思う)しばらく先に進んだところ、いきなり真っ暗闇の中で急停車。そう、そこが目指す宿の駐車場だったのでありますわ。

時に午前4時20分。もう夜明け間近じゃないかというなかれ、いくら夏とはいえ夜明けは日本のように早くはないのだよ、いや違ったそんなことをいいたいんじゃなかった、何と気がつけば‥

ひゃーっ、そりゃ大揺れだったはずですわ。5-6時間は大げさ(路面が完璧に乾いていたのはもっけの幸い)だったとしても、同じドライバーさんによる日中帰路の方がたっぷり時間がかかった(それでも4時間ちょい)のですから(それでもかなり飛ばしていたとは思ってましたが)、「この夜のことはわれわれだけのヒ・ミ・ツ」といってもいいくらいです(だからねぇ、何を言いたいんだって)。

暗闇の奥から車の音を聞きつけた宿の人たちが出てきました。われわれは集団トップの到着だったこともあって、さっさとゲルへと案内され、薪ストーブに火を入れてもらいましたが、こうなったらもう、あとは寝るっきゃないっしょ!ゾルさんに暗闇の中で「明日の朝食は9:00でぇっす!」と言われたけれど、そもそもお互い起きられるのかな(笑)?ぐーったりお疲れモードのあと4時間後には養殖、いや違った朝食が始まるのですから。

というわけで、夜明け近くにやっと寝られたTakema&おしんこどんのフブスグル湖リゾートライフはどんなふうに明けるんでしょ?

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