− ミャンマー国鉄「豪華車両」の旅 −

ヤンゴン市内の散策を終えたあとは、ホテルに預けておいた荷物をピックアップしてヤンゴン中央駅へ。15:15発の夜行列車「ダゴンマン号」にていよいよマンダレーに向けて出発というわけです。聞くところによれば、ミャンマー国内の鉄路は「大きな横揺れのみならず、怒涛の縦揺れに驚かされる」といういわく付きだそうで、「鉄」の血をも合わせ持つTakemaとしては「ここまで来てミャンマーの鉄路を体験せずしていかがする!」という気にさせられておりました。よって、ビザ申請時にこの列車のチケットも一緒に予約しておいてもらったというわけです。

というわけで駅へ。駅舎まであと100mというところで一気に雨が降り出し、最後はバックパックを背負ったまま猛ダッシュというおまけ付きでしたがまぁいいや。コンコースからホームに出る「改札」にあたるゲート部分は、人が1人通れるくらいしか開けられておらず、そこでチケットのチェックを受けた上でいざホームへ。正面に停まっているのがダゴンマン号のようで、かなり長い編成です。こうなると写真を撮りたくなってくるのですが、残念ながらミャンマーでは主要な駅や大きな橋は準軍事施設とみなされ撮影禁止になっています。仕方なくすごすごと自分が予約した車両へ。
ちなみに、「どこまで撮っていいのか、どこからがダメなのか」の線引きはかなり微妙なようで、「遠景ならいい」だとか、「小さくでも写してはいけない」とか「大きな駅はダメだが小さな駅はかまわない」などなどいろいろなご意見がありました。というわけで、ヤンゴン駅の構内ではもちろん撮りませんでしたが、遠景は勝手に「OK」ということで撮ったりしましたのでご了承下さい。だって、人によって言うことが違うんだものしょうがない。
今回自分が予約していたのは、このダゴンマン号(ミャンマー国鉄一番の豪華列車という位置づけのようです)の、これまた料金が一番高い寝台車(US$50!)です。バスでの移動(2500〜3000K)に比べれば目が飛び出るような料金ですが、鉄道と船には「外国人料金=ドル払い」が存在するのでやむを得ませんね。

早めに乗り込んだだけあって4人部屋のコンパートメントにはまだ先客の姿なし。「車内は軍事施設というわけでもあるまい」というわけで早速写真を撮ることにしました。



多少年季は入っているけれど、これがミャンマーで1番のゴーカ車両!

枕にはちゃんとシーツが掛けられ、真ん中のテーブルには人数分のミネラルウォーターが置かれ、ついでにあまり意味なく壁に大きな絵が掲げられている所などはさすがに一番の豪華車両というべきところでしょう。

さらに、この車両には個室ごとに「エアコン」が付いています!というか、ミャンマーの鉄道車両でエアコン付きのものはこのダゴンマン号のアッパークラス車両しかないのです。しかしそのエアコンを見てびっくり。



(ピンボケ画像でごめんなさい)

そう、わざわざ車両専用のエアコンが付いているわけではなく、後付けで強引に据え付けたとしか考えられない代物でした。ん?となると室外機はどこ?と思ってちょっと探してみたら、コンパートメントに付随した小さな部屋(荷物室?乗務員用?大きさは畳半畳くらい)にしっかりと鎮座ましましておりました。やることがゴーカイだなミャンマー国鉄!

ついでに言えばこのエアコン、運転させると本体からボタボタと水が垂れてきてしまい、乗客の荷物がそのあたりに置けず難渋した記憶があります。さらに一番の問題は、

というところにあったのですが、まぁこれはしょうがないなぁ(諦笑)。ちなみに、このコンパートメント内を下に図解してみましたのでご覧下さいませ。マウスオンすると画像が変わりますのでお楽しみあれ。


そうこうしているうちにわがコンパートメントBにも他のお客さんが乗り込んできました。まず最初、自分の向かい合わせの席に座られたのは何と年配のお坊様。うわ、列車が走り出したら車窓の風景をつまみに芋焼酎をがんがん飲み出そうと思っていたのに(笑)、目の前で人間の煩悩欲望の愚かさについて精通されているはずのお坊さんとは‥こりゃまた仏罰を受けても仕方なさそうですな。しかし実際は目の前でとことん飲んでました(笑)。まぁ、お坊さんもサッカーの新聞を読んでいたんでこりゃ許していただけるかなぁと。

そしてもう一方の上下段には小さな男の子とその母親、そして母親の姉だか妹だかと思われる女性が乗り込んできました。男の子は年の頃でいえば小学校低学年というところですが、現地ではさぞかしハイソな階級に属しているらしく、何だか挙動が早くもゴーマンになりつつあるようであまりかわいくない(笑)。ついでに、このご家族は大量の荷物とともに乗り込んで来られたのですが(「パソコン一式」もどどどっと積み込まれました)、おかげでコンパートメント内の空きスペースが結構狭くなっちゃった(笑)。まぁこういうのはアジアではある程度あたりまえのことでしょう。「ヒヨコ50羽」とかが乱入してこなかっただけ良かったということにしときましょ。

さぁてそろそろ発車時間だぞと思っていたら、何と発車は寸分の狂いもない「まさに定刻」!ミャンマーの鉄道は遅れるのがあたりまえということですが、このダゴンマン号も、そして後日乗ったマンダレー発のローカル列車も、始発駅の出発時刻は完全に守られていました。要は途中で必ず遅れるということなのね。

というわけでマンダレー駅にむけて動き始めた列車の窓からパチリ。あ、駅舎をとったんじゃなくて人々&遠景を撮ったんですよぉ。お間違いなく。(あ〜あ、こういうことをやるとこのサイトもミャンマー国内からは閲覧禁止になるのかな)
よっしゃやっぱり動画編!(3)

「ヤンゴン発、15時間の鉄路の旅がスタート」

うん、あくまでこれも「風景」を撮りたかっただけね(笑)。

wmv形式、1013KB、20秒
列車はヤンゴン市内を抜けると徐々にスピードを上げていきます。とはいってもレールの長さが短いため、「ガタン、ゴトン」のリズムは随分と早いんですが実際には大したスピードは出ていません。まぁ明朝の到着が多少遅れようとも、どうせ明日は到着地のマンダレーで泊まるわけだし、数時間の遅れは覚悟の上なので気楽なもんです。しばらくはのんびりと景色を眺めながら焼酎をクイっ♪、おつまみセットのピーナツやらイカ燻やらをポリポリ。至福のひとときです。

(左)やはりミャンマーの鉄道車両は、車両ごとの行き来が出来ないのが基本らしいですなぁ。
(右)駅を徐行しながら通過中の一こま。天秤棒からぶら下がっているのは魚獲り用の竹カゴ?

よっしゃやっぱり動画編!(4.5)

「走れ、走れ、ダゴンマン!(その1)」

wmv形式、898KB、24秒

「走れ、走れ、ダゴンマン!(その2)」

wmv形式、1056KB、36秒

何だか「世界の車窓から」的になってきましたなぁ(笑)。
しかし、悦楽の旅気分は実はそう長くは続かなかったのであります。それは列車走行中、ふとした現実に気づいたことから始まりました。
「そういえばこの列車には食堂車が連結されているのを確認したけれど、そうか、車両ごとの行き来が出来ないのであれば、どこかの駅で停車中にホームを歩いて食堂車に行くしかないなぁ」
もともと食堂車で食べることはあまり考えておらず、まぁ途中の停車駅では必ず物売りがホームにいるだろうから、彼らから夕食を買えばいいかなと思っていたのですが、となれば気になりだしたのが次のこと。

それでもしばらくのうちは「ま、そのうち停まるだろう」とタカをくくっていたのですが、ヤンゴンを出発してかれこれ2時間はたとうというのにこのダゴンマン号、いっこうに停車する気配を見せません(複線なのですれ違いのための停車もないのです)。すでに時刻は17:00をまわり、このままだと暗くなっちゃうぞ、ついでにお腹も少しずつ減ってきた‥。

というわけで、臨席の親子(このお母さんは英語が話せるようだったので)に声をかけてみました。「あのぉ、この列車が次にどこに停車するかご存知ですか?ついでにその時間ってだいたい‥?」しかし返ってきた言葉は、かなり衝撃的なモノでした。



スゴイぞすごすぎるぞダゴンマン号!ヤンゴンの次に停まる駅が出発後6時間以上経ってからだなんて、さすがにスペシャルトレインだけある、いやでも実際はそんなに速いスピードで走るわけでもないのに、6時間無停車ってそりゃあやり過ぎってもんだぁ!おかげで、さっきまでポリポリぱくぱくと食べていたおつまみセットの袋は、これまでの「おつまみ」という位置づけから一気に「本日の夕食」に格上げされてしまったのでありました。まぁ量そのものは何とかなりましたが(かなりの大袋だったもんで)、ローカルの食べ物をぱくぱくつまんで食べる楽しみはすっかり奪われちゃいました。はぁ、事前の調査研究を怠ったツケがこんなところに‥(大悲)。

やがて外も暗くなり、お坊さんの指図で窓外側の鉄製日よけ窓を下げ(これで外の景色は全く見られなくなりました)、それぞれ就寝モードに入ります(ちなみにタイ国鉄のように乗務員がベッドの設営をやってくれるなんてサービスはありません。というか乗務員だってコンパートメントに来られないって(笑))。ふぅ、これで今日は本格ご飯にはありつけずに終わりかぁと思いつつ自分も寝ることにします(寝台灯などという高尚なものはないので)。しばらく眠った後でふと目を覚ますと、列車はかの「最初の停車駅」に停まっているらしく、遠くでは物売りの声もしているようでした。でも、もういいのです。もうわざわざ起き出して食べ物を買う気にはなれず、起き抜けアタマの中で「このまま眠りの王国へ戻る」ことを決意した記憶があります。

眠りながら見た夢は、何と「地震の夢」でした。寝台列車に乗っていてそんな夢をみたのは覚えている限り初めてでしたから、やはりかなりの縦揺れに、寝ているはずの脳もびっくりしていたのでしょうね。途中何度かトイレに起き、ついでに「ヒミツの喫煙室」にてタバコを何本か吸いながら考えたことは、「マンダレーに着いたら、まずはホテルを決めて、それからとにかく朝ごはん!」ということばかりでありました。

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