− その1 マンダレー出発 −
さて、何だかいろいろ盛りだくさんだった前日はいつの間にやら夢の彼方へと消え去り、無情にも腕時計のアラームが「そろそろ起きないと大変なことになるよ」と無機質な電子音を耳から10cmのあたりで嬉しそうにお知らせしてくれます。時刻は朝の3:00、あたりまえながら外は真っ暗のこんな時間に起きなきゃいけないとは!(実は前夜だらだらと三岳@芋焼酎飲みながら日記を付けていたのがいけなかった!)。それもこれも、ラーショー行き列車旅のためなのさ!
起きるには起きたのですがさすがに眠いです。まぁそれでも顔を洗って荷物を詰めて、そろそろ階下に降りようとしていた頃、ETホテルの従業員さんがちゃんと起きているかどうか確認に来てくれました。そもそも宿泊者が時間に起きるか否かはホテル側の責任問題ではなく、もとよりこちらは起こして下さいコールなどは宿に要求していませんでした。さらには「勝手に出ていきますから」と言い添えて前日のうちに支払いも済ませていたわけなのに、それでも気を利かせて部屋まで来てくれるとは、すんごい従業員教育!あの中国系おばちゃん、かなりやってくれます!(実はこのETホテル、このあとまたたまげたことがあったのでした@数日後)。
さてそんなわけで約束の3:30(ちょっと過ぎ)に宿の外に出て、まだ真っ暗な中レイミーさん(イェマイくんも一緒に来るとは聞いていなかったのでたぶんレイミーさんが一人で運転してくると思っていました)のレーベーを待ちます。
3:40、まだ来てません。3:50、まだ来ません。3:55、ちっとも来ません。4:00、ちょっと待て、全然来やしないぞぉ!
少しだけ腹を立て、でもそれなりに「やっぱりそうかぁ‥」とさびしい気持ちになりながら、それでもあと列車の出発まで45分に迫った駅までは何とか行かなければなりません。でもここから駅までは徒歩で25分くらいかかるらしく、一度も歩いたことがないルートをこの真っ暗な中歩いていくのは自爆行為(危険はなさそうだけど絶対迷いそう)。どうしようか、車通りの多い交差点まで歩いていこうかと思っていた頃、こちらに向けて進んでくるサイカ(サイドカー付き自転車)発見。さっそく呼び止めて値段交渉。確か700kくらいで仕方なくOKしたんだよなぁ。時間的にもせっぱ詰まり度的にも、全然値切れなかったTakemaです。
そして、一度は来たにもかかわらず全然印象の違うマンダレー駅(まさか日本の駅のようにホームの上にコンコースがあるような立派な駅だとは思いませんでした。到着時は正規のルートを通らずホームからすぐ外に出ちゃったもんですから。ちなみに正直言ってヤンゴン駅よりはるかに立派な造りです)でティーボーまでの切符を購入し、どのホームだかはよくわからないけれど、こんな時間だし(まだ4:15頃)、人のいるホームに行って聞けばわかるだろうと思って階段を下りていくと‥
そう、どのホームにもそれなりに沢山の人がいたのです。しかしよく見ると、「横になって寝ている人が多いホーム」もあれば「起き上がってうろうろしている人が多いホーム」もあります。「それじゃここか?」と目星を付けたホームに停まっていた列車に乗っている人に聞いてみると、どうやら間違いなさそうです。アッパークラスの車両を見つけ、着席完了。まずは安心一安心(安堵)。
ちなみにアッパークラスといえども背もたれは木造りで、「こりゃ長時間はキツイか?」と不安になりましたが、何のこっちゃない、11時間を優に超える乗車中も何とかなりました。なお料金はUS$6でしたが、オーディナリークラスは$3だったけ、そして椅子の造りはほとんど(いや、全く)同じに見えたのだけれど気のせい?(ちなみに外国人でもオーディナリークラスの利用可能です、念のため=後で知った)。
さて出発時刻まであと10分くらい、ぼけーっとしていた時に、突如思いがけないことが!開けっ放しにしていた窓の外からTakemaに向けて大きな声が!
驚いて窓の外を見ると、そこにはさっきまで「へっ、『兄弟』ってそんなもんだったんかよ!」と腹立ち半分でもさびしさ半分で思っていたレイミーさんが、こちらを見ながら嬉しそうに立っていたのでした。そしてこう話し出します。
「今朝は迎えに行けなくて本当にすまなかった。実はあのあとエンジンの調子が悪くて遅くまで調整していたんだ。で、今朝起きたらすっかり寝坊してしまい、急いでここまで来たんだけれど‥。すまない、悪かった兄弟、いやな気持ちにさせちゃったかい?」
いや、これで嬉しくなりました。商売上のその場その場の口車なら何とでも言えますが、実際まだ朝の5時前にわざわざ駅まで来て、さらにどの車両に乗っているかわからない自分を探し、こうしてわざわざ謝ってくれるわけですから、これはレイミーさんの本心に間違いありません。これで腹立ちもさびしさも全部消えました!その後レイミーさんも車内に来てくれてしばし雑談(「正直なところ、昨日の強行突破でエンジンのかかりは悪いままだとのこと。まぁ乾けばもと通りになるはずだから心配はしていないけれど」、等々)。
さて、しばらくレイミーさんと話しているうちに、はるか前方で「プァーン」と汽笛が鳴り、続いてそぉっと列車が動き始めました。時計を見ると何とこれまた4:45ジャスト。うーん先日のダゴンマン号といい、始発列車の時刻は本当に正確だ!(しかしまだ全然信用していないのだよミャンマー国鉄!)。
というわけでレイミーさんともお別れ、手を振るレイミーさんに手を振り返し、列車は夜明け前の真っ暗な中を徐々に進み始めます。さぁいよいよミャンマー国内のローカル鉄道、そして国内きっての山岳路線と思えるラーショー線(正式名称は不明)に分け入ります!
さてここでこの「ラーショー線」について少し説明いたします。マンダレーから東に進み、ピンウールィン、ティーボーを経由して中国国境近くのラーショーまで続くこの路線は、植民地時代にイギリスが建設した鉄道です。何と言っても驚くべきはその標高差で、マンダレーから最初の大きな街であるピンウールィンまでは70kmくらいの距離なのに、その標高差は何と約1000m!列車が数多くのスイッチバックや、ループ線などを使って一気に標高を上げていく様子は圧巻です。また、ティーボーの手前には大峡谷を一気にまたぐゴッティ鉄橋などもあって見どころ満載!なおマンダレー〜ピンウールィン区間を通る旅客列車は1日1本しかありませんが(その他ピンウールィン〜ラーショー間には区間運転あり)、鉄ちゃんのみならず、時間と暇がある人(あ、同じか)には是非一度乗ってもらいたい路線です。
ボックス席の進行窓側席を選んでくれたのはマンダレー駅窓口おいちゃんの配慮によるものなのか、偶然なのかわかりませんが、それなりにゆっくり走るローカル線ゆえ窓から入る風も心地よく、こりゃいい気分です。向かいの席には年の頃50才くらいのミャンマー人ご夫婦が座っており(ゴッティ鉄橋の先まで行くという=レイミーさんが聞いてくれた)、んでもって自分の横の席は最後まで空席でした(やっぱり外国人待遇?他は満席だったし)。夜が明けるまでの車内は1両に豆電球が3つばかり灯るのみでかなり暗く、雰囲気はバッチリというところ。
いくつかの駅に停まりながら1時間ほど走り、夜もほぼ明けてきた頃、少し大きな駅に到着です。大きいといっても街があるわけでもなく、ただ単純に「ホームに物売りの人がかなりいる」というだけなのですが。この駅には数十分停車するので(結果的にそうだったわけで、実際はいつ発車するのかわからず、不安でホームに降りられなかったぞ)、ここで何か朝食代わりに食べておけば良かったと後で後悔。ま、結局はダゴンマンみたいにひもじい思いはせずに済みましたけれどね。
左写真の女の子が頭に乗せているのは水が入った瓶(かめ)。量り売りというわけですが飲めるのかどうかは不明です(たぶん雨水でしょう、ミャンマーの人は飲めても日本人はお腹をかわすかも知れません)。右写真はクリスタルアップル(英名)という果物がちょうど売れるところですね。
さて駅員さんが緑の旗を振っていよいよ発車。いよいよここから「山登り」が始まります。
よっしゃやっぱり動画編!(11) |
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駅から進行方向正面には山が壁のように迫っています。どうやらここからは本格的な「山登り」ということになりそうです。というわけでその詳細については次のページで「濃厚に」ご案内いたしましょ。いやぁ、か〜なぁり豪快な路線だこと!