− その4 高原列車はゆったり進む −
列車は時折思い出したようにのんびり風情の駅に停まり、また何事もなかったかのように走り出します。そんなこんなが何度か続いた頃、さしものTakemaも何となくお腹が減ってきました。そういえば今朝は朝ご飯を食べていなかったのだからあたりまえの話です。「よし、次の駅で売り子さんから何かを買おう」と決めたのですが、そんなときに限って売り子が誰も出ていない小さな駅だったり、また売り物が生のキノコと水だけだったりして(笑)、なかなか望みは叶いません。
こうして何駅か悲しい思いをした頃、ふと停まったNaung Hkai駅。「おおっ、沢山の売り子さんが出ているゾ!ここなら何か買えそうだ!」と喜びにむせぶTakemaだったのでありました。揚げパンがいいかな、それとも炒飯にしようかな‥。
よし、ご飯ものにしようと決めて売り子さんを呼び止めます。「この袋入りのチャーハンちょうだい」。とまぁここまではいいんですが、いかんせんミャンマー語の全く分からない自分と英語を全く理解しない売り子さんですから、これがいくらだと言っているのか全く聞き取れません。と、その時向かい側に座っていたご夫婦のダンナさん(高倉健にどことなく似ている)がおもむろに財布を取り出し、Takemaにお金を見せてきました。
そう、高倉さん(勝手に名前を付けるなって)は自分に対して「この額だよ」と見せてくれようとしたのでした。マンダレー出発からずっとご一緒していたこのご夫婦も英語は全く通じないのですが、親切ですなぁ。「チェーズーティンパーデー(ありがとうございます)」とお礼をいうと、さらに何やら奥さんに話しかけたダンナさん。すると‥。
奥さんが荷物の中からスプーンとナプキン、そしてティッシュを出してきて、「どうぞこれを使いなさい」と差し出してくれました。うわ、そこまで親切にして下さるとは!m(_ _)m。言葉は通じないながら、お互いにこにこしながら「美味しいです」「そうですか、良かったですね」系の会話?を弾ませます。
というわけで、お腹も気持ちもほっこりとふくれたTakemaでありました。
さて、その後もしばらくは標高800m付近をのんびりと走り続けましたが、あたりの風景は畑から徐々に森林へと変わり、やがて線路は右へ左へとくねり続けながら一気に坂を下り始めました。正直言ってかなり強引に作った感じのルートで、線路のすぐ脇に迫る岩肌は窓から触れる距離にあり、その岩肌と線路との間には小沢が流れていたり、カーブもまた随分ときついらしく、列車はキーキーと金属音を響かせながらそろりそろり進んでいくのです。
一瞬視界が開けたあたりで、例のご夫婦が「あれがゴッティ鉄橋だよ」と、はるか先の方を指さし教えてくれました。なるほど、はるか先の方に白く大きな橋が見えます。しかし鉄橋の高さまではまだかなり高度差があり、あれまぁもうずいぶん下ってきたと思うのにまだあんなに下るのかと少々驚きです。そんなこんなで、鉄橋手前の最後の駅、その名もゴッティ駅に到着。
列車見物の少年が一人だけのゴッティ駅。
どう見ても橋の管理のために設けられたとしか思えない山間の駅を出発した列車は、橋に向かってこれまたゆっくりとしたスピードで坂を下っていきます。なんでもこのゴッティ鉄橋は1903年にイギリスによって建設されたという築100年を越す古さと、現在でもそうなのかは不明ですが世界で2番目という高さを誇っているのだといいます。そしてこの橋は「準軍事施設」にあたるものであり撮影禁止なのだとか。とはいってもある程度離れた距離からの撮影は構わないようです。(実際、下の写真は「ここから撮るときれいに撮れるよ」と車掌さん自らがアドバイスしてくれた時のものです)。
近づくにつれて威容がはっきり見えてきます。下の方は樹林に隠れて見えませんが、かなり高い!
そしていよいよ鉄橋上へ。列車は極度に速度を落とし、歩き〜小走り程度のスピードでそろぉりそろりと進んでいきます。鉄橋の補修はどのくらいやっているんだろうなぁ、ほとんどやっていない、いやこの高さじゃほとんど出来ないんじゃないのかなぁと不安にさせられます。この橋の様子を写真でお見せできないのが残念ですが、まぁそれはご容赦下さいませ。
え、何だとTakema、「写真はないけれどって?」(笑)。
橋の上から景色を眺めてみると、すぐ近くには大きな滝がかかりかなり風光明媚なところです。また、鉄橋の真下には古い線路跡と思われる路盤が残っていましたが、あれはもしかしてこの鉄橋が出来る前(つまり100年以上前)の遺物なんでしょうか。何だかかなり面白そうな場所です。
橋を越えたら「写真」撮影もOKです(あのね)。
ゴッティ鉄橋を越えると列車は再び山の中を登り始めます。前の席の高倉健ご夫婦は鉄橋の次の駅で降りて行かれました。ありがとうございましたぁ!
自分のボックスが空いたのを見た、近くに座っていたおいちゃんが席を移動してきました。Takemaのつけている腕時計(高度計測機能付き、ただしもう10年以上前に買った古いやつ)に興味をお持ちのようなので、「ええっとですね、これはこの場所の今の高さを表示しているんですよ、あ、これを押すとストップウオッチで、あ、これは気温ですね。でもってこれでらいとがつくというわけです」などと全て日本語で説明。英語が通じないのは確認済みなので、ならば使い慣れた日本語で話すのが一番でしょ。
そんなこんなで和気あいあいのうちにも列車はさらに先へと進みます。
まだまだ続くよ動画編(22・23・24) |
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「定時で運行していればあと1時間くらいで到着なんだけど、ティーボーはまだ結構遠いんだろうなぁ。」
何となく小腹が空いてきたのに駅の物売りさんから追加の食べ物を仕入れるのを忘れたTakemaは、ちょっと悲しい気持ちでいました。ほーら地元の人は準備万端、前のおいちゃんも何やら袋の中から取り出したぞ、うわぁ鶏の唐揚げだ、匂いからするとカレー風味だなと、直視するでもなく目をそらすでもなく、それでも興味津々のTakemaモードでしたが‥え、ええっ!?
何とおいちゃん、自分が食べるよりも先に「これ、良かったら食べないかい?」と、Takemaにおすそ分けしてくれたのでありました(感謝感激風林火山!)。Takemaが恭しくおしいただき、むさぼるように食べたのは言うまでもないことでした(笑)。
というわけで何ともほのぼのした時間が流れるミャンマーのローカル線旅行。う〜んやっぱり乗ることにして正解だったっ!おっと待て、すでにマンダレー出発後10時間が経とうとしているのに、まだ目的地に着いていないんだったっけ(笑)。というわけで、あともう少し列車の旅を続けます。
車窓からの景色はまだまだ高原の趣です。お嬢さん、売れたのはネギ?ニラ?