− その2 シャン族の村訪問はお茶と煙草と地域の現実談議(1) −



この集落の典型的な民家風景。こらこら水牛くん、コワイ目をしてにらまないでね。

さて、最初におじゃましたお宅の土間(といえばいいのかな、要は高床式の1階部分)にてまずはお茶をいただきながらお話を伺うことに。ご両親と3歳の女の子と一緒にこの地域の暮らしぶりなどについて話を聞くことになったわけなのですが、決して飾らず普通に接してくれるのはやはりガイドさんのおかげかもしれません。というかこちらからの質問(もちろん全部英語)もちゃんとミャンマー語に通訳し、帰ってきた言葉をまた逆翻訳して教えてくれるし、何ともありがたい感じです。まぁ質問といっても、「あそこに見える大きな入れ物は米の貯蔵庫ですか?なるほど、でもネズミとかに食べられたりはしませんか?あ、あれがネズミ返しなんですか、なるほどぉ」くらいのものだったんですけれど(笑)。

ちなみにこの地方では(シャンだけなのかミャンマー全土にいえることなのかは不明)、家を訪問してきた客人に対し必ずお茶を出してもてなすのがしきたりなのだとか。そして、もしその時その家に自家栽培で収穫した新鮮な果物などがあればお客に食べてもらうのがあたりまえで、その客がたとえば我々のような一見の外国人であっても、決してその代価(お金)などは請求しないのが当然なのだということでした。

ふむぅこのあたりは日本と同じですね。ただし、「招かれざる客」に対してはどうなんだ?と、一瞬日本の訪問セールスを連想して疑問に思ったわけですが、そのへんの扱いについて当然日本と同じのようです。そもそもこのあたりにそういう人たちが来るはずもないのですが、よく考えればこの地域の人たちはもっとシビアな「招かれざる客」と長年対峙してきたのですから(いや、現在進行形?)、「客」であるか否かの見きわめは我々の及びもつかない鋭敏さを持っているに違いないでしょう(次ページで詳述)。

お茶のおかわりを3杯もいただき、「それじゃどうも、ありがとうございました」と、その直前に教わったばかりのシャン語でお礼を言いながら近くのニワトリをよけるように2-3歩進み、火のついていた熾(おき)のど真ん中に足を突っ込んでアワワ系のあたふたパニックになりながらも(情けない‥)、こちらのお宅をおいとまいたしました。民家訪問はこれからもどんどん続き、このあと「お茶っ腹」になるとも知らずに(笑)。



次に訪問した家は、さっきの家から徒歩約1-2分ほど。今度は「薬」がメインテーマとなり(あ、あくまで医薬品のほうね(苦笑))、こちらのご主人やガイドさんの持っていた薬の効能についてカツキンさんドラウルくんによる即興の「お薬説明会」開幕となりました。

しかしそれを聞きながら思ったのは、彼らとてもちろん薬剤師ではないのに薬成分の「本名」をよく知っているということでした。パッケージの裏側の成分表示を見て、「あ、この薬は鎮痛剤が主な成分になっているので直接胃腸の荒れた部分の治療に効くわけではないですよ」とか「この成分の含有量が多いから1回1錠にしないときつすぎると思いますよ」等々。2人とも国は違うのに成分表を見ただけでそこまで言えるというのは、それぞれの国の基本的な医薬品に対する教育レベルが高いことを意味するのでしょう。

ふと翻って自分を考えてみると、たとえば「イソジン」という製品名は知っていても、「イソジン」に含まれる効能成分の名前は全然知りません。ましてやその含有成分のパーセンテージが何%くらいなのか、どれくらいの量でどのくらいの効能を発揮するのか、副作用は何かなどについては皆目知りません。また「塩酸ブロムヘキシンが効く!」というコマーシャルは知っていても、その成分が風邪のどのような症状に効くのかはほとんど知らないのです。

しかしこれは果たして自分だけのことでしょうか。多分そうじゃなくてかなりの部分は「日本人」に共通する感覚じゃないですかね。日本の医薬品メーカーは「消費者教育」についてちょっと考えてみる必要があるのではないか、そして我々も消費者の側から考え直すべき部分があるのではないかと、ここミャンマーの片田舎の村でふむふむぅと考えてしまった次第です。

話がカタくなりました。ついでにテキストがずらずらずらぁっと長くなってしまいましたがもう少しご辛抱下さい(前ページでも「ここからは動画もぐぐんと少なくなる」って予告したでしょ)。

さて、こちらの家ではお茶だけでなく地元産の葉たばこ(あくまでご禁制の品ではありませんので念のため)を勧められました。これも「お客へのもてなし」の一環であるのはいうまでもないことで、もともと全員(ガイドさんも含めて)が喫煙者である我々としては、「おおっ!」とありがたく頂戴し、吸い始めました。フィルターなしなのにそれほどキツくもなく、案外いける味なのには一同ビックリ。ただし吸い続けないと途中で消えてしまうのはやむを得ないことでしょう。まぁシケモクでも気にしない人には吸いかけをそのまま持ち運べるのでかえっていいのかなぁ。



続いて次のお宅へ(これまた2-3分で着いちゃった)。ここでのいきさつをまたテキストだらけで書き始めるのもナニなので、たまには画像もご紹介いたしましょっと。



何だかほのぼのご家族という表現がぴったりでしたね。

このような素焼きの瓶(かめ)は、各家庭のみならず道ばたにもちゃんと据え付けられた棚の上に置かれていたりします。用途はもちろん「飲料水」。素焼きゆえ表面にしみ出す僅かな水分が気化熱となって中の水を冷やすという絶妙な仕掛けです。瓶の上には必ずコップが置かれていて、誰でも飲むことが出来るようになっているのが心憎い。「誰の水」という概念はなく、のどが渇いた人はご自由にどうぞというわけです。

コップは飲んだら洗う‥などということは全くしません。そんなことをしたら貴重な水が無駄になってしまいます。赤の他人が口をつけたコップ‥に対する不潔の概念は存在しません。この点では近年における日本の一般的概念の方が世界的に特殊である気がします(西欧と比較してもそれはいえるんじゃないか?)。

ただし、中に入っている水がどのような素性のモノなのかは「汲んだ人のみぞ知る」世界ではあります。OMさんは「こういう水は私なら普通に飲んで問題ないけれど、日本人のあなたにはどうなのかわかりません」と言っていました。今や悲しいかな「世界で一番弱い胃腸の持ち主」となりつつあるわれわれ日本人にとっては、やはり厳しいかもしれませんね。でも今となって思えば、「自分は飲んでみればヨカッタ!」。悔恨の情ここに極まれりというところです。まぁミネラルウォーターのPBを持ち歩いてたから無理して飲む必要はなかったんですが。

しかしこの日の午後、この「水」のことで「痛い思い」をすることになるとは(謎笑)。



続いて3軒目のお宅へ。ここはこの一家のお住まいでもあるようですが、その一方でチャールズGHの提携ロッジでもあるようで、そのような文字がどこかに書かれていたような記憶があります。うーん、泊まれるのであればここ(の村)には泊まってみたいぞ!ちなみに設備はどう見ても必要最小限で、電気は通っておりませんので念のため。多分寝袋持参でしょう。

子供たちはとってもシャイながら笑顔がいいです。彼らのお姉さんか従姉妹とおぼしき女性は、写真に写るのを恥ずかしがって逃げてしまいました(右写真でTakemaの右にいるのはまた別の女性です)。
さてお次は、真面目内容のテキスト中心ページとなります。題して「知られざる」シャン州。覚悟してお読み下さい。でも勉強になるとは思いますが(たぶん)。

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