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− その7 高原列車は行く&ゴッティ鉄橋前後は大賑わい −



114年前に建設されたゴッティ鉄橋はいまだに現役です。新しい橋の建設予定は‥ないんだろうなぁ。



ピンウールウィン駅を出発した列車は、緩やかな丘が続く高原地形の中をのんびりと走ります。田んぼではなく畑がメインなのは、地形のこともありますがそもそも降水量が少ないのかもしれません。畑の中に塩ビのパイプを張り巡らせた灌漑設備が稼動していました。植えられている野菜も、遠目ながら日本でよく見るような作物が多いように感じます(ブロッコリーとか)。



なおこの区間に限った話ではないですが、線路の両脇に生えている下草や小潅木をなめてはいけません。この時期(12月)には黄色いひまわりのような花がいっぱいに咲いているのですが、窓から不用意に顔を出したりすると(時には出していない状態でも)顔をはたかれます(笑)。というか、メガネをかけている場合下手をすると小枝にもっていかれるかも知れませんのでご注意を。



とはいえミャンマー国鉄も何もしていないわけではありません。左上画像、駅でもない場所なのになぜか列車が止まったなと思ったら、草木の刈り払いを行う作業員さんたち(8人)が下車していきました。

ただ、刈り払い機などの工具等を下ろしたようにも見えませんでしたし‥もしや皆さん「背中に背負ったナタ1本でこれから密叢に斬り込む」ということなのでしょうか(まず間違いなくそうだと思います)、なんという終わりの見えない人海戦術!草木は刈ったそばからまた伸び始めるわけですからねぇ‥。

それでも作業員さんがすでに手を下したとおぼしきあたりは、右上画像のようにきちんと下草が切りそろえられています。せめてエンジン付きの刈り払い機があれば、もっと作業も簡単に早く終わることでしょうが‥。



小さな駅にはお客さんの代わりに犬たちが大挙してやってきて「ご飯のおすそ分けヨロシク♪」。



うーん高原列車は行く by 岡本敦郎という感じですねぇ(古すぎ)。ちなみにあの歌の舞台は福島の沼尻軽便鉄道なのだとか。



標高が下がって温暖な気候エリアに入ってきたのか、サトウキビ畑も目立ち始めました。思い出すなぁ大東島。



地元の方々が少しずつ下りていき、気がつけばお隣の車両はほぼガラガラに。これならゴッティ鉄橋も撮りやすそうです。



朝ご飯は食べましたが、なんだかんだの11時間長丁場ということで美味しそうなこちらの麺ランチ(右上画像マウスオン)。

いやこの細麺太麺の米麺が美味しかったんですよホント。Naung Hkio駅のこの駅売り麺はかなーりお勧めです!ちなみに200チャット(約20円)でした。

さてそうこうしているうちに、いよいよゴッティ鉄橋が近づいてきましたよ♪



鉄橋の手前でぐっと高度を落とすべく右へ左へと身をくねらせる列車、よって、車窓から見る橋の位置が右にいったり左にいったりと大忙しです(笑)。

さてここでゴッティ鉄橋について簡単に説明しておきましょう。長さ689m・高さ102mのトレッスル式の鉄橋で、その構造は山陰本線の旧餘部鉄橋と同じものですが、餘部鉄橋の方は長さ310m・高さ41mでしたのでこちらの方が圧倒的に規模の大きな橋梁です。

この大きな橋を架けたのは当時この地域の宗主国であったイギリスでした。材料となる鉄骨部材はアメリカから輸入したそうですが、ではなぜこのような大橋梁工事をしてまで鉄道を通す必要があったのか?それは当然宗主国の利益に繋がる「何か」がこの奥にあったからにほかなりません。

調べてみると、ラーショーの西50kmほどのところには銀や鉛、亜鉛などを算出する「ボードウィン鉱山」があり、当時は「世界でもまれに見る含有量を誇る大鉱山」だったといいます。そうか、金属資源を搬出するために鉄道が必要だったというわけなのね。

で、さらに検索してみると、こんなページ(神戸大学経済経営研究所サイト)を見つけました。大戦中の新聞記事の中に「ナムツ鉱山」という記載がありますが‥おお、グーグルマップに「ナムトゥー」という地名発見!このあたりだったのか!(なお、ボードウィン鉱山はナムツ鉱山の西側に位置する大鉱山)。

しかし、現在の路線はナムトゥーに向かわずラーショーに続いているんだけれど?と思ってよくよく見てみると、シーポー(ティーボー)とラーショーの間にある「Ho-ta」というあたりで線路が二手に分かれています。一方はラーショーへと続いていますがもう一方は‥ビンゴ!しっかりナムトゥー、そしてボードウィン鉱山まで続いていることが確認できました!(自己満足)。この路線はMR(ミャンマー国鉄)による運営ではない、いわゆる民間の鉱山鉄道となっているようです。

しかし、現在のマンダレー〜ラーショー線では貨物輸送の扱いはしていないようです。それはなぜかといえば?


(なおwikipediaの英語版には「1900年に完成」とありますが、ここではとりあえず1903年説に従います)。

当たらずとも遠からじなのではないかと思いますよ。補修工事は戦後イギリスが1948-1950年にかけて行った記録が残っているようですが、その後大規模な修繕工事は行われた記録がない‥ということは、ある意味「いつ何が起きても不思議ではない」わけですよ。あ、前のページで「運賃には保険料が含まれている」と書きましたが‥おいおい、そういうことかよ(怖)。何だか「カサンドラ・クロス」という古い映画のラストシーンを思い出しちゃったじゃないですか(苦笑)。あと「ロンドン橋」の歌詞もね。

ゴッティ鉄橋より遅れること9年、1912年に完成した餘部鉄橋は、その後のメンテナンスを欠かさず行ってきたにもかかわらず今はもう解体されたというのに、こちらゴッティは完成後114年が経過&大規模メンテナンスは(たぶん)67年間行われていないわけですから‥(まぁ、餘部の場合は塩害の問題もあったでしょうが)。

ネット上でゴッティ鉄橋の立て替え計画があるのかどうかを検索しましたが、どうやらその計画もないようですね。そのかわりこんな記録も見つけました。

「この橋には戦略的価値があることから、橋に何かがあったときに東西交通が麻痺するのを避けるため、1976年から78年にかけ、谷へ下る迂回線が建設された」

なるほど、橋の下に見える鉄道線路はそれだったんですね。ちなみに別のページによると「完成の翌年、雨期の洪水により路盤は土砂に埋まった云々」ともありました。ミャンマー国鉄はこの区間の将来についてどのような青写真を描いている(描いていない?)のでしょうか?

さて、橋を渡る前からテキストたっぷりになってしまいました。そろそろ本題に戻りましょう。



鉄橋手前の駅でしばらく停車します。観光客の多くは(自分も)勝手に線路に下りて記念撮影をするのですが、手前の木や下生えが邪魔をして実はあまり展望がいいわけではありません。






橋手前の駅に到着&出発の動画です。余り大したものではありません。


なおゴッティ鉄橋の前後区間には多くの車内販売というか物売りの方々が乗車しているので、スナックや飲み物には困りません。となればわれわれはやはりビールです(右上画像マウスオン)。さすがにビールはそこそこ高くて1000チャット(約100円)でしたが、そこそこちゃんと冷えていてちょっとびっくり。

出発を知らせる警笛が鳴り、皆わらわらと列車に乗り込みます。ゴッティ鉄橋の全貌を見るのには進行左側の席がいいのですが、並んで座っているので通路側からだと見にくい‥というわけで自分は空いているオーディナリー席に移動しました。自分は動画、おしんこどんは静止画担当ということで‥



さぁーて、いよいよ鉄橋にさしかかります。スピードは‥歩くのと同じくらいの「最徐行」モードです。



ハイはーい、真下を見るとこんな感じでーす。何だかバンジージャンプのお立ち台にいるような感覚(笑)。



デッキのドアは常時開放モード(恐)。あ、あれが70年代に作られたが放置されている「迂回線」だと思われます。



橋の部材と車体の隙間がほとんどありません。なお進行右側には何か所かメンテ用スペース?が設けられています。



橋の上流側には滝が見えたりします。渡った先の岩壁‥うーん、確かに鉱物が含まれていそうな色ですなぁ。



橋を渡りきりふり返るとこんな感じ。あと、なぜだか謎の見送り集団に遭遇(笑)。



橋梁区間、観光客と地元の人とでは行動パターンがまるで違います。物売りの皆さんは休憩モード。

さて続いては動画です。橋を渡る前から橋を渡りきるまでノーカットの連続動画なので、再生時間も7分45秒と大変長くなっております(笑)。鉄分の濃い人以外は飛ばし飛ばしでもいいかもしれません。




そんなわけでゴッティ鉄橋を無事通過終了(保険は適用されずにすみました(安堵))。車内も一時のコーフンモード(旅行者だけですが)からすっかり落ち着きを取り戻します。30分ほど走った先の駅で‥





ちなみに不思議だったのが売り子の皆さん。この駅で列車を乗り換えて戻っていく(再び商売開始)んだと思っていたんですが、そのまま乗っておられる‥でも「次の列車」はないわけですから、先の駅で降りてバスで戻る‥でも、鉄道に比べて料金はぐっと高くなるはずだし(というか鉄道料金が安すぎるともいう)、どうやっているのかな?もしかして「出先の拠点で1泊」とか?まさかねぇ。



ちなみに、売り子さんはこの丸い布の上に商品を載せているわけです。うまいものだなぁ。



再び高原列車の趣です。山越え谷越えはるばると、ラララララ♪(知らない人のほうが多い?)

さて、長いページになってきたのでこの続きは次ページにて。


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