− 旅行記その7 エファテ島北部をドライブ −
カスケード滝から、道路は一気に登りとなります。そうそう、この周回道路ですが、もとはといえばアメリカ軍が作ったものらしいんですね。第二次大戦中、日本軍がバヌアツの北側にあるソロモン諸島まで侵攻してきた際、米軍はこのヘブリディーズ諸島(=バヌアツ地域)をいわば「絶対防衛圏」ととらえて多大の物資と人員を投入、守備に万全を期したそうなのです。
しかし結局日本軍はガダルカナル島の戦闘などに敗北し、ここまで侵攻してくることはなかったわけです。よって戦争終結後、多くの島にさまざまな軍需物資ほかが残されました。アメリカ軍は当時の植民政府にそれらを(かなりの破格値で)買い上げてくれるように要求したそうですが回答は「NO」。物資を本国まで持ち帰ることもできず(資金面?)、でも買ってくれないなら使わせないようにしてしまえということでそれらを投棄したというわけです。エスピリッツサント島の「ミリオンダラーポイント」はその代表格(行ったことないけど)。
ただ、ブルドーザーなどの大型物資はともかくとして、アメリカ軍は進出地においてもアメリカの「文化」を持ち込みますから、たとえば兵士用の生活物資など、駐屯の過程で出た不要物はそのまま放置されたのでしょう。北部のEmua村には、当時のコーラの瓶を並べて売っている「お店」などもあったりします。
話はすっかりそれましたが、そんな歴史の中で作られたこの周回道路の中でも、おそらくこの峠越え部分は工事における一番の「難所」であったように思われます。傾斜はかなり急で、われわれがレンタルした車(800cc)ではローギアでないと登れません。しかもこういう場所ゆえ補修もなかなか行き届かないのか、こういう急坂に限って道路状況がかなり悪いんですね。
中にはかつて簡易舗装はしたものの今や穴だらけで、かえって旧舗装面がないほうが楽に通れるはずだと思えるようなところもありました。カスケードの滝からハバナハーバーポイントの区間の坂道は要注意です。
話が路面状況のほうに進みましたので、ついでにエファテ周回路の道路状況について説明しておきますと、路面が荒れているのは上記の区間だけといっていいです(この区間の坂道では登りながらのルート取りも重要です。目の前の路面ばかりを見ていると、深みにはまってにっちもさっちも行かなくなる可能性あり)。
平地部分の路面は、もちろん穴ぼこは数多く存在しますが、バカみたいなスピードで疾走しなければ大丈夫でしょう。ちなみに人や動物(豚やニワトリなど)がしげみから突然飛び出してくるので、せいぜい40km/hくらいでのんびりと走るのがエファテドライブの楽しみ方です。西海岸沿いは路面も安定しています。また、南側エリアではアメリカの援助により拡幅&舗装化が進行中です。ポートビラだけじゃ面白くないけれど北部に行くには自信がないという方は、南東部のエトンビーチを目指すというのもよさそうです(車窓から見たところほとんど施設はなさそうでしたが)。
なお、村の入口や村の途中には、盛り土をしてある場所が多くあります。車を強制的にスピードダウンさせるためのものですが、問題は、この盛り土が遠目には目立たないというところにあります(保護色ですからね)。家々が立ち並んでいるところばかりが村ではありません。とにかく家屋(や人)が見えたら減速しましょう。
車の通行量ですが、ポートビラ市内から離れると一気に少なくなります。というか、ほとんど車を見なくなります。でもだからといって「気がついたら道路の左側を走っていた」などというこのないようにお気をつけください。ブラインドカーブにもミラーなどという設備は存在しません。
おバカなポーズをとっていますが、この場所の傾斜はすごいんです。
他の車はぜんぜんいません。
それではここで、実際の様子を動画でごらんいただきましょう。ただし坂道部分の動画は含まれていませんので念のため。
|
というわけでひとしきり走ったところで出てきた村(Emau村)にてちょっと休憩しようかと車を止めると、村人が何人か近づいてきました。それもそのはず、たまたまわれわれが車を止めたのはとある施設のまん前だったのです。村人にしてみれば、「お、お客到来!」というところだったわけですね。
左上画像の場所はといえば、海ガメ保護施設のまん前でした。誘われるがままに見学です。
|
はいはーい、寄ってきましたねぇ♪
Donation Boxに幾ばくかを差し入れ、その後は目の前の海を眺めたり、貝や彫刻などのお土産屋さんを見物したりしてしばしくつろぎます。ここまで来ていれば、今日の宿はもうさして遠くもないですからね。
ちょっとコーヒーでも‥と思いましたが、出せないみたいだったので、グレープフルーツのような果物を購入!中央画像のすだれはお菓子袋の再利用♪
と、このあたりで「ある重要な事実」に気づいてしまいました。それは‥
おいおい、頼むよぉ‥。
四つのタイヤとも、どう考えても規定の空気圧には達していません。いやもう、「何だか接地面が多いように見えるなぁ」と思って触ってみたらぷよぷよなんだもん。しかも右後輪ときたらもうやけっぱちで「やっだぁ、柔らかくてかわいーぃ(はぁと)」などとヘラヘラしてしまいそうなほどに(何のこっちゃ)エアが抜けまくってます。それこそ、「結構空気が抜けた感じの自転車タイヤ」に近い程度の圧しかないような感じです。
一瞬不安になりました。これはもしかしてタイヤに何かが刺さっていて、
でもそれではもともと全車輪ともエアが低い説明にはなりません。ただとにかく言えることは、まだエファテ島周回の4/1を走っただけですから、まだまだダート道の走行は続きます。圧が低く接地面がヤワいということはそれだけ路面からの刺激に弱そう=パンクの危険が高まることを意味するような気がします。しかも、ここまでの道中の感じでいえば、この先加圧装置を備えた整備工場などはいうまでもなく、ごく普通のGSすら絶対ないと断言できるような気もします(苦笑)。
というわけでここからはとにかく低速、40km/h以上は絶対に出さないようにしてゆっくりと、少しでも路面にあいた穴を避けるようにして進むことにしました。すると何だか、それまでよりも沿道の風景が近くなったような気がするから不思議です。前の方のページで「40km/hくらいで走るのがいい」と書いたのはこの時の感覚からなんですね。
ちなみに、しばし走った後に圧を再チェック(触感ですが)してみたら特に変わりはないように思えます。ならばというわけで、とりあえず今日の宿に何か加圧の機械に準じる物でもないだろうかと期待しつつ進むことにしました。
道行く人に手を振りながら(滅多に出会いませんが)進んでいくと、海に突き出たJetty(小埠頭)に出たのでここで小休止。ここは多分周辺の島への渡し場になっているのでしょう(われわれが着いてすぐに船が来て何人か乗り込み、沖に向かっていきました)。そしてだぁれもいなくなって‥いや、山羊がいた。
うーん、天気もいいし気持ちいいぞぉ(ただし日射しは極強)。
このあたりの広場には山羊が何頭もうろうろしていて、Takemaはしばしその光景を眺めていたわけですが、ふと見るとおしんこどんが広場の真ん中でしゃがみ込んでいます。「あれ、具合でも悪いのかな?」と思いつつ近づき「どうしたの?」と声を掛けると‥。
親ヤギだか兄ヤギ姉ヤギだかの集団は、離れたところでそれぞれ勝手にじゃれたり草を食べたり、好き勝手なことをしながらそれでも一つの集団を維持しています。しかしこの子ヤギだけは、一番弱い立場にもかかわらずたった一頭だけ離れたところで座り込んでいるのです。
しかし飼われているとはいえペットとして扱われているわけではありませんから、当然人間が近づいたら逃げていくはず。それが逃げないということは(&親ヤギがわが子を救いに来ないということは)、おそらくこの小ヤギの命はもう長くないのでしょう。でも懸命に、最後の瞬間まで生きなければならないんですね。
小ヤギくん、生まれ変わったら今度は思い切り走り回るんだよ。
というわけでしんみりしながらこの場所を後にしたTakem&おしんこどんだったのでありました。
さてここからは一投足で今宵の宿「Beechcomber Resort」に到着します。こ、こんなところで「源泉掛け流し」だなんて!(笑)。
[戻る] | [次へ] |