− 旅行記その12 魅惑の液体「Kava(カバ)」デビュー。で、その結果は如何に? −

さてタンナ島行きを明日に控えた今宵、せっかく首都=何でもある、にいるわけですから少しでも楽しまなきゃ。というわけで最初に行ったのが例のスーパー「Au Bon Marche」。って、何を買ったかといえばおしんこどんのビーチサンダルなんですけれどね(多くの国を旅した歴戦の勇士系おしんこどんサンダルも、さすがにEpau村で壊れてしまったわけです)。

タンナ島では、ビールはともかくそれ以外のアルコールは手に入りにくいらしいので(特にわれわれが行くのは町や空港からとてつもなく遠いエリアですから)、ワインでも‥と思ったら、カスクワイン(箱入りの3リットルワイン)でさえかなりの値段がすることにびっくりしてしまい、結局逃げ帰りました。まぁ、まだ芋焼酎は結構残っているから節酒することにして‥いやそうじゃない、せっかくバヌアツに滞在しているのに酒ばかりに頼るべきではありません!

というのは、この地域、すなわち南太平洋諸国には大変トキメキわくわくドキドキ系の伝統的な飲み物が存在しているのです。その名を、

さて、そもそもカヴァ(以下カバと表記)とはいったいどのような飲み物なのか?とりあえずWikipediaを覗いてみると‥
【カバ】

の潅木、またそれから作られる南太平洋のメラネシアからポリネシアにまたがる地域――フィジー、トンガ、サモアなどで常用される嗜好品。向精神性薬物。カバカバとも言い、カヴァ、カヴァカヴァなどとも表記される。またカバを使った儀式もその名で呼ばれることがある。フィジーではヤンゴーナという。

根を乾燥させ、粉状にして水に混ぜるか、あるいはそのまま水で揉み出したものを漉した泥水様の液体がカバで、これを飲用する。ヤンゴーナ自体の植生域はハワイからニューギニアまでと広い。

カバの効果は鎮静作用を主とする。アルコールは含有しないが、酒に酔った時のような酩酊感がある。飲用時、口内の痺れを覚えることが多い。

カバは現在のところ南太平洋諸島域、その他の多くの国々で規制されておらず合法である。しかしカバの成分を抽出し製造されたサプリメント剤による、重篤な肝臓障害を含む健康被害が欧米諸国で発生しており、医薬品として規制管理されつつある。日本でも厚生労働省が2002年11月28日付けで、販売監視強化の通達を都道府県に出している。
というわけで概略はおわかりいただけたでしょうか?ノンアルコールなのに酔っぱらう?不思議な飲み物なのであります。ただし最後の「重篤な肝臓障害」はあまり考えなくともいいのでは?(濃縮精製したサプリメント剤と「生」とを同一に考えちゃいけない気がします)。

しかも土壌の関係なのか、この南太平洋諸国においてもバヌアツのカバは「濃い」ということで有名なのだそうです。というわけで、バヌアツ訪問を決めたときからこの「カバ様」には是非ともお世話になりたいドロンしてみたい!と切望していたTakemaだったのであります。

さて、Epau村では諸般の事情でありつけなかったとはいえ、ポートビラのような都会では、それこそ住宅地内のそこかしこに存在する「カバ・バー」なるところで飲むことが出来るというわけなのですね。というわけで、仕事を終えたかわもっちゃんと待ち合わせて「いざ出陣!」となったわけです。

市内バスに牛タン塩焼き調理済みの皿を持ち込んで登場したかわもっちゃん(うーん、そんな人になってみたいぞ)に案内をしてもらって宿近くのカバ・バーへいそいそと。

ちなみに「バー」といっても、悩ましげなネオンがときめき、いや違ったきらきらと輝いておいでおいでと男心を誘惑したり、ましてや「ハイいらっしゃいませ、只今サービスタイム実施中につきオリジナルカバが1時間飲み放題!いかがですかぁ魅惑のカバスペースにて皆様のご利用をお待ち‥ハイ、1名様ごあんなーい!」などとかの呼び込みお兄ちゃん(オジさん)がいたりするわけではありません(説明長すぎ)。

また、繁華街ではなく住宅街にぽつんとあったりするのも、「カバの飲み過ぎにより酒乱ならぬカバ乱が大暴れして地域の人々のひんしゅくを買う」ようなことがあり得ないことを暗に意味しています。そう、カバとはアルコール飲料よりももっとずっと「大人の雰囲気を楽しむ」飲み物なのです(そう言い切っちゃっていいのかな?)。



出ました!これがカバ・バーの外観です!

「そこがカバ・バーであることを示す」唯一最大の目印というのは、道路側にぽつんと灯された裸電球ただ一つ。夜はともかく、昼間はどこにあるのかほとんどわかりません(もっともカバ・バーは夕方以降からしか営業しませんが)。ちなみに入口のみならず、店内(とはいえ基本的には室内で飲むのではなく広場にしつらえられた屋根のみの小屋の下)も照明はほとんどなし。その理由はまたこのあと述べるとして、とにかく、われわれが抱く「バー」のイメージとは180度違っております(ちなみに地方ではカバ・バーという施設はありませんが、その代わり村内に「カバを飲むための場所=ナカマル」が存在しています=後のページで詳述)。

というわけでいよいよのカバデビューとなるわけですが、その前にカバの飲み方等概説!(ベンキョーになるっしょ?)。
1.カバを飲む前の準備 とにかく、水分も食べ物も摂ることなく空きっ腹状態にしておかなければなりません。たぶんカバの成分をきっちり吸収させるためだと思います。われわれも、夏のクソ暑い日の午後、「くわぁ暑い、し、しかし夕方の生ビール目指してここは我慢我慢!」とか何とかで水分補給を我慢し、仕事帰りの居酒屋にて「ゴクゴク、ぷはぁ旨い!」などとやったりすることがありますが(健康にはよくないけれどね)、まぁそれと同じ感じだとご理解下さい。唯一大きく違うのは飲後感ですが(ビール:「う、旨っ♪」、カバ:「ま、マズいっ!」)。
2.カバ注文の仕方 実はこれについてはあまり詳しくないんですが(結局カバ・バーには1度しか行かなかったので)、カウンターに100VT紙幣を握りしめていき、「Kava, 100vt, please.」といえばそれで間違いなくOKです。量によって料金も変わりますが。
3.カバ・バーでのマナー 感覚としては居酒屋みたいな場所ですから結構無礼講なのか?と思えどさにあらず。カバの特性上(No.7に記載)大きな違いがあるみたいですのでお気をつけ下さい。

とにもかくにも大前提としては「騒いじゃダメ」、これに尽きます。「飲んで食って大騒ぎしてストレス発散!これぞ飲む楽しみ!」というのはカバ・バーには当てはまりません。じぇったい静かにすること。話すときなども小声でいきましょう。このあとタンナ島で村のナカマルにて飲んでいたときも(部外者はわれわれのみ)、ひとたびカバを飲み始めた後は皆さんヒソヒソ声でしゃべっておられました。

また、われわれ旅行者はついつい写真を撮りたがる病から逃れられないものですが、これまたカバの特性上フラッシュ撮影は(まわりに他のお客さんがいるところでは)厳禁です。まぶしいのは迷惑、どうしても撮りたい場合は周りの人(or バーの従業員さん)に許可を得てからにしましょ。
4.いざ、飲む時は! 自席に持って帰ってちまちま飲むというのは御法度。つがれたらその場(他のお客さんの迷惑にならないところ)まで移動し、腰に手をあてて(これは任意です)、バリウムよろしく途中でやめずに一気に飲む!この「一気」というのがポイントです。そしていざ飲み干したら、カバの苦みを洗い流すべく、多分すぐそばにあるであろう水道の水でうがいです(飲むんじゃないですので念のため)。

ちなみに、カバを飲んだ後に「ペッペッ!」とあたりにつばを吐くのはマナー違反でも何でもないデフォルトのスタイルです。だってカバの味といったら‥(以下次項)
5.The taste of Kava? 飲んで美味しいものであれば、このKava飲用文化圏はもっともっと世界各地に広がっていったはずと思います。はっきりいってまずいです。とはいえ青汁のまずさ(青臭系)とは違うのは当然。あっちは葉っぱ、こっちは根っこですからね。うーん、たとえようのない味ではありますが、Takema的に表現するのであれば(人それぞれ感じ方は違うということをご承知おき下さい)、

「生のゴボウをメインに、それと少量の高麗人参をすり下ろしたものにコショウを軽くひとつまみ、そこに黒土をちょこっと入れて(あくまでイメージですので誤解なきように)、それらを水で溶いて絞ったときに出てきた液体」

こんな感じですかね?(ご意見ご批判はあると思いますが)。ちなみに飲み終えた後、口をゆすいだ後もカバ苦みは口の中に残りますので念のため(Takemaはあまり気になりませんでしたが)。
6.飲み干した後は? とにかくまず「何かを食べる」ことが大切なのだそうです。空きっ腹で一気にゴクリなんだから、そんなにすぐに食べていいのか(カバ成分の吸収が遅くなっちゃうんではないか?)とちょっと不思議に思う部分もありますが、逆に「吸収しすぎて困っちゃったなリンダ♪」なんてこともあるということなのでしょう。
7.Kavaの「酔い心地」は? 実体験についてはあえてここでは書きますまい(後の方のページで詳述します)。ちなみに一般論のみ申し上げますと、Kavaで気持ちよくなっている状態のことを現地の言葉で「ドロン」といいます。日本でも高度経済成長期の東京新橋ガード下あたりでは、夜も更けてきた頃合いに「じゃ、俺、ドロンするわ」などといいながら仲間より先に家路につくサラリーマン(団塊の世代?)の姿があったようですが、もちろんそれとは何の関係もございません。ちなみに、それがさらに一段進んだ状況のことを「セクセク」といい、Beechcomber ResortのTeleさんによると、手や足が勝手に動き出して収拾がつかなくなるのだとか(ただし本人にとって気持ちが悪いわけではないとのこと)。

おっと大切なことを書き忘れてました。アルコールによる酔いとカバ酔いとの一番大きな違いとは‥

 アルコール: 精神が高揚するとともに感覚器官への麻痺によりいわゆるハイな状態へと導かれる。妙に短気になったり声が大きくなったりするのはこのため。
 カバ: 精神を落ち着かせるとともに感覚器官が鋭敏化し、外部からの干渉を好まなくなり、いわば「自分の世界」を楽しむような感覚になる。
要は、ハイではなくローな状態へとわが身を導く液体とでもいえばいいのでしょうか?ただし誤解のないように申し添えれば、カバ酔い(ドロン)することによって精神的に暗く落ち込んでしまうということではありません。精神の安定化作用はあっても、鬱状態に導くわけではないので念のため。カバはあくまで「気持ちよくなりたいため」に飲む飲料であり、「人生を投げ出したい人が飲むやけくそドリンク」(何のこっちゃ)では決してありません。

なお、カバ・バーでのマナーとも関連しますが、ドロン状態においては感覚器官の鋭敏化により光を通常以上にまぶしく感じたり(カバ・バーの照明が暗かったり、フラッシュ撮影禁なのもこのため)、また人の声も通常より大きく聞こえたりします。まだ自分がドロンしていない時でも、先に気持ちよくなっちゃってる先人に気を遣うことを忘れずに。

カバ酔いについての本格的詳細については、また後の方のページで触れます。なぜなら(次項参照)。
8.どれくらい飲めば? 上の方でも書きましたが、バヌアツのカバは周辺諸国のそれに比べて「Strong」であると、一部関係者内においてとみに有名です。しかし、特にポートビラのカバ・バーあたりで飲めるカバはいわば「近代製法モノ」。それに対して地方の村などにおいて仲間内で飲まれているのは「カスタムカバ」であるのが一般的なようです(カスタムカバについては後のページでとことん詳述しますのでここでは略)。

で、この近代カバはカスタムに比べてドロンパワーが弱いようなのが残念。かわもっちゃんも、「赴任後ビラで3週間ほどは全くドロンが来なかった」とおっしゃっておりましたし、そんな彼が地方の村では「一発で来た!」ということのようですから。

ちなみに、飲み慣れない人はまだ身体にカバ成分を受け入れる順応性が整っていないためかドロンしにくいとかいう話もちらほらと。ま、3杯飲んで兆候がなければ、少なくともその日はドロン出来ない可能性が高いかも?(一概に沢山飲めば酔うというモノでもないようです)。
9.二日酔いにはなるのか BeechcomberのTeleさんは「ない!」と強く断言していましたが、かわもっちゃんによると「ある。しかもかなりキビシイ」ということで、意見が分かれました。しかし、青年以降ずっとカバを飲み続けてきたTeleさんの「経験」は、少なくともわれわれには当てはまらない気もします。ま、とにかく「ほどほどに」というのが一番のようです。
10.その他 旅行者という立場から見る限り首都ポートビラでは男女の別なく飲むことが出来るカバですが(もっともカバ・バーに来ているのはほとんどが男性)、タンナ島などでは観光客の泊まる宿の中などを除き女性は飲むことができません。実際、タンナのある村で聞いてみたところ、その村に住むある女性は「私は一度も飲んだことがない」とおっしゃっていましたっけ。
さぁて長い長い前置きはこれくらいにしておきまして、いざ現場レポとまいりましょう。われらが案内人は言わずと知れたかわもっちゃん、現地駐在ですからカバ関係の事情はバッチリというわけで、完全に安心(慢心?)しきって、いざカバ・バーへ向かったのでありました。

最初にかわもっちゃんがお店の人に「フラッシュ撮影」の許可をもらってくれたので、とりあえずあたふたっと撮影です。店の人が女性というのが何とも首都らしいというべきなんでしょうか。タンナ島などじゃ、女性はカバ製作に一切タッチしない(できない)ということですからねぇ。

で、小振りのラーメン鉢のような入れ物にカバをどどどっと注いでくれるわけです。ちなみにこれ1杯で100vt。高いと考えるか安いと考えるかは人それぞれですが、聞くところによると「お酒は飲めないけれどカバなら飲める」という下戸の方も少なからずいらっしゃるようです。あ、カバとお酒を交互に飲む人はいないでしょうが、カバのあとお酒というパターンは駄目というわけではないようです。ただしドロンのあとのお酒は結構効くらしくて、すぐに眠くなっちゃうという話を前述のTeleさんから伺いました。

飲んでます飲んでます。一気に飲むのがマナー(というか正しいカバ摂取法)なので当然の姿なのですが、飲み終えた後はすぐに口をゆすいで「ぺっぺっぺ!」。暗いカバ・バーの敷地内からはこの唾吐きの音があちこちから聞こえてきます(これが結構哀愁を帯びていていい感じ)。よし、飲み終えたらさっそくおつまみ摂取です!

出た!まさかバヌアツに来て牛タン塩焼きをおつまみにできるなんて思ってもみませんでした!JICA施設内で焼いたモノをそのまま持参してくださったかわもっちゃん、ホントにありがとうございました!(まだほんのり暖かくて美味!)。ちなみに、かわもっちゃんのご尊顔掲載はあまりにも畏れ多いのでぼかしを入れたことをお許し下さいませ。

ここで「意外なオプショナルツアー」に参加することが出来ました。このカバ・バーで提供しているカバの製造行程を見学させてもらえることになったのです(交渉してくださったかわもっちゃん、重ね重ねありがとうございます)。というわけで、同じ敷地内にある「製造工場」におじゃまいたしました。

はいはい、これ(左上画像)が原材料となるカバの根っこです。すでに細かくカットされていますが、これを右上画像にあるマシンで細かくミンチします。うわー、さすが近代カバっ!文明の利器をバッチリ活用しているわけですね。ちなみにカスタムカバの場合はこの部分を人力でナントカするわけですが、ナニをどうやって人力でナントカするのかについてはまたあとの方で濃厚にレポートしますんでしばしお待ち下さいませ。

ミンチしたものを(もしかしたら2回ミンチするのだったかも?)水で溶き、それを濾します。ノンフラッシュで撮影したので随分青っぽくなってますが、実際はもっと土色、すなわち泥水系色です。で、これをさらにきめの細かい布で濾すと、飲料としてのカバが完成ということになります。ただ、カスタムカバの場合濾すのは1回だけでしたが。

こっちの画像はフラッシュを使ったんで色合いとしてはこちらの方が正しい感じです。右上画像はまだ2度目の濾しの前段階かな?

で、左上画像が「カバ製造ヒミツ工場(うそつけ)の全体図」となります。うーん、「問屋制家内工業」といった趣が濃厚に出ていてこういうのは大好きです(笑)。ちなみに「この人達はカバをつまみ飲みしながら作業したりするのか」とかわもっちゃんに聞いてみたら「それはない、カバ飲んじゃったら仕事にならないんで」とのことでした。うーむなるほどさもありなん。

カウンターには「飲み干されたカバ鉢」が並んでいます。で、ちなみにカバでドロンするとしばしばこのような姿勢で「わが世界を恍惚と楽しむ」コトになることが多いそうなのですが、実はこのカバ初体験日(やさしくしてね)、Takemaもおしんこどんも「初ドロン」には至らなかったのでありました(とっても残念)。だから右上の画像はただのヤラセなのでありましたが、ま、このあと訪問するタンナ島に期待することにしてっと(ちなみに、その期待は裏切られませんでした!)。

そして憧れのカバタイムは瞬く間に過ぎ、かわもっちゃんもJICA宿舎へとお帰りになり、われわれは「たまにはリッチにゼータクするぞ!」との勇ましいかけ声のもと、ビラでもおそらく高級レベルにランクされるであろうフレンチレストラン「ルスタレ」へ。せっかくだからシーフードの一つや二つ食してみなければという欲望があったからで、さっそくビールと椰子ガニを注文。しかし、今考えてみれば「甲殻類」よりも滅多に食べられないはずの「コウモリ丸焼き」の方がよかったのかな?それにしても、フィンガーボールの出てくるようなレストランで食事って、一体いつ以来だっただろう?たぶんナミビア(2001年)以来かな。



でもまぁ、それなりに美味しかったのでよしとしましょうか!でもカニ用のスプーンが欲しいところでしたが。

さて、とりあえず旅の前半戦であるエファテ島滞在はこれでおしまい、いよいよ明日からは「旅のメインディッシュ」タンナ島に向けて移動します。「タンナ島に5泊」というのは、バヌアツを旅行者の中でもかなり珍しいパターンらしかったんですが(SPTのOさん談)、それだけの意味というか価値はあったのか?いやいやそれが大ありで、滞在をとことんタンノーした次第です。というわけで、次ページからは「タンナ島南部を楽しみ尽くした」旅行記が始まります!お楽しみに!
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