気持ちいいはずのこの道。にっくき台風の余波!

さて、太郎の小屋から黒部五郎のキャンプ地まではコースタイムで6.5h。一日の歩行時間をできるだけ短くした今回の計画では一番のロングコース。というわけで、この日ばかりは出発を6:00に設定する(え、遅いって?まぁそういわないで)。小屋まで歩き、朝の巡回ラジオ体操が始まったあたりにホントの出発となった。



朝露に濡れるチングルマの実やワタスゲなどを見ながら歩き出す。


太郎山を越えて、まずは北の俣岳手前の小ピーク目指して一気の登り。振り返れば富山湾まで見渡せるという、絶妙の展望にも助けられてまずはなんとか稜線へ。いつもはこの時点でドバァっと汗が噴き出しているのだが、今回は荷が軽いからか(身体が山に慣れてきたためか)そんなこともなくまずは快調な出だし。


ここから北の俣岳までは、雪渓を左に見ながら緩やかな登りとなるのだが、いつもならハクサンイチゲの一大群落(単独の群落としてはおそらく北アルプスで一番大きいと思う)が広がっているはずが、雪渓の消えるのが遅くてまだちらりほらりといった感じ。ま、残念だが仕方ないなぁ。いい天気だし、しょうがないよね。

などと言っていたのはこの辺までなのである。そして、北の俣の頂上が見えていたのもこの上の写真あたりまで。このあとは一気に飛騨側からガスが押し寄せた。ちょうどこの頃、九州近海で完全に停滞していた台風の余波で、東海周辺は湿った空気がどんどん入り込んでいたのである。天気が安定しているときは14:00過ぎ以降に夕立が来るのも普通ではあるが、今回、ほぼ毎日のように稜線上は10:00をまわるとガスってしまうのである。(ただし、北陸側はフェーン現象ということもあって雲一つ湧かない暑い日が続いていた)

北の俣岳で我々から「視界」というものを奪ったガスは、そこから赤木岳、中俣乗越、黒部五郎岳に至るまで、全くとれることはなかった。しかもしめったガスの吹き上げということで、Takemaのメガネはすっかり結露の巣となり(メガネの登山者ならわかると思います)、やっと登った五郎の肩ではポツポツと、ガスならぬ水滴が「ほ〜ら、早くキャンプ場まで行かないと、こんなもんじゃすまさんよおっ!」と我々に無言の、いや実体の伴ったプレッシャーをかけてきやがったのだ。



なんだよ、ここで大休止のつもりだったのにぃ!

行ったことのある人なら誰でも知ってる「黒部五郎のカール(圏谷)」、笠ヶ岳の秩父平とならんで気持ちいいところBEST1の座を争うほどの快適な場所なのだ。すぐ上の雪渓からとめどなくあふれわき出す雪解け水、その脇にはシナノキンバイを中心とする花、花、花。今回も、ここで昼食の予定であった。そしてここでの飯と言ったら「つめたぁく冷やしたソーメン」、それしか考えられなかった。しかし、いざ下りてくると、湿気を帯びたつめたーい風が吹き、雪解け水こそいつも通りではあったが、「このまま食ったら、寒くてブルブル+雨でびしょぬれ」になりそうなことは明白。やむを得ず、一気に小屋まで向かってしまうことにした。悲しいことだ…。

キャンプ場に着き、テントを張ってすぐにポツポツと雨が降り出した。そーら言わんこっちゃない。結局このあとは、降ってはやみ、ときどき太陽は出るけれどまたすぐにガス、といった感じなのであった。残念。明日は、なんと「三俣蓮華」まで!(爆)。