この朝も、前日同様曇り&わずかに霧雨が降ったりやんだりしています‥が、実はこの天気はここ沓形周辺だけで、反対側の鴛泊方面はしっかり晴れているというのですね。何でも、南西寄りの風が入ると島の西側はこんなふうに曇ってしまうのだとか。沓形周辺はもう何日もこのような天気が続いているそうで、ご愁傷様です。でも、南の風のおかげで曇ってはいても全く寒くありません。本当に今年の北海道は夏らしい暑さが続いておりましたなぁ。

早起きする必要はなかったのでのんびり起き、そろそろ朝ご飯でも食べるかと、昨日のうちにセイコマで買っておいたおにぎりやサンドイッチを取り出していたところ、昨夜見ていた限りでは全く「生体反応」のなかったテント方面から男の人がこちらに向かってきました。いわく、

え、ええっ?帆立ってあのホタテ?そしてなぜにこの方は突如として帆立を朝一番からわれわれに勧めてくださるのか?ただ、この方の格好を見ると靴は使い込まれた長靴だし、着ている服もキャンパーのいでたちでは決してなく、どちらかといえば「漁協系」の雰囲気です。ということは、間違っても「昨日スーパーで買ってきたパックの帆立むき身が食べきれなかったのでこちらに勧める」などということではなさそうです(大笑)。

もっともそもそも最初からそこまで考えていたはずもありません。返答はといえば「は、はい、いただきます!でもよろしいんですか?」という完全なる防戦一方モード。しかしこのモードが、この日の朝夕を決定づける大きなターニングポイントだったのでありました。

「昨日はちょっと遅くまで漁師さんのところにいたのでテントに帰ってこられなかったんですよ」とおっしゃりつつ、帆立の殻から身を外す手つきはまさに慣れたもの。「この人はどんな人なんだろう?」と思いつつさらに話を伺うと、「このあたりの海は寒暖流のぶつかる潮目なんでプランクトンが豊富なんです。よって、オホーツク側では一定の大きさになるのに3年かかるのに、ここでは1年そこそこでここまで成長するのですよ。」なぁるほど、豊かな海なんですねここは。

しかしこの時点でお聞きした「この方=Wさんの素性」についてはここでは明かしますまい。もう少しあとで片鱗だけ‥。

「昨晩漁師さんからいただいた」という活ホタテ、上の2画像を見ると大した大きさではないように見えますが実際はいわゆる「特大サイズ」。むき身にしたものをいただき、それがそのままわれわれの「朝ご飯メインディッシュ」となったことは言うまでもありません。

「Wさん、華麗に身を外すの儀」
漁師さんではないはずなのに、なめらかな仕事さばきはスバラシイ。それにしてもこの方のお仕事はいったい?

Wmv形式、521KB、12秒

うわぁお!パンと牛乳とおにぎりという、朝食ながらちょっとさびしいメニューに、剥きたてホタテの刺身が仲間入りっ!お味も最高でございます。ちなみに貝柱はもちろんのことですが、それ以上のおいしさにたまげたのがヒモの部分。「ん?これってアワビじゃないの?」とも思われるほどのプリプリ食感で、いやぁ、朝からサイコーのごちそうをいただきました。ありがとうございますっ!

Wさんにお礼を言いつつ、今夜ちょこっとご一緒させていただくことにいたしました。今夜が楽しみ?

というわけで1周50kmちょいの島一周に出かけます。時計回りにぐるりとすることにして、まずは反対側の鴛泊へ。とはいえ特にどこにいかなきゃということもないので、まずは港そばのペシ岬へ。



海鵜やら港やらを眺めながら登っていくのですが‥。

事前の予想通り天気のいい鴛泊側は、いやはやとにかく暑いです!風もほとんどなくて大汗をかきました。ここに初めて来たのはたぶん1991年くらいじゃなかったかなぁ。かれこれ15年も昔のことなのね。あの時は風が強くて、寒くて、ほうほうの体ですぐに下りたんだっけな。

「まあすぐそこだし」と水を持って行かなかったわれわれは、大変な暑さにヘロヘロ気味になりながら坂を下ってきました。と、登り口のあたりのお店には「かき氷」の旗がはためいているではありませんか!



うわぁ、最後に「かき氷」を注文してから何年経っていたんだろう?たぶん20年は越えていたはず。

久々のメロンシロップにしみじみしながらシャコシャコとスプーンを動かします。ン、ンマーイっ!その瞬間、家庭用かき氷機でお腹が痛くなるまで作っては食べ、作っては食べていた小学生時代のことが脳裏によぎったとかよぎらなかったとか。

このあとは、せっかくなので利尻富士町側の温泉にも行ってみようということで足をのばしました。そういや地図上には鬼脇にも温泉マークがあったのに行かなかったのはちと残念。それにしても利尻島は火山島なのに以前は温泉がなかったというのは不思議ですねぇ(ここもボーリングも随分深く掘ったみたいだし=1500m)。



さすがに平日の午前中、露天風呂は終始貸切でした。というか「暑くて温泉どころじゃない?」(笑)。

源泉温度は41.3度ということですが、循環湯(+源泉足し湯)だそうで同時に加温しているのでしょう、実際は43度近くありました(体感)。湯はうす黄色なんでしょう、自分としてはあまり特徴はないように思いました。でもまぁこれもまたよしということで。

入浴後は無料の冷水を何倍もおかわりして、それでも噴き出す汗を強制的に止めるべくバイクに乗って再び移動開始です。あれ、考えてみれば姫沼には寄らずに通過しちゃったのね(あとで気づいた)。



沿道には昆布がたくさん干してありました。そう、利尻は羅臼、三石と並ぶブランド昆布の産地なんですよね。



本日はウニ漁も解禁のようで、磯近くにはたくさんの小舟が出ていました。



ウニはともかく、昆布はお土産にしようと、鬼脇付近の直売所に立ち寄りました。やはり観光客向けの施設より安かった。

さて、鬼脇を越えてからはいくつかのミニ見所がありまして、以前バイクできたときには雨だったんで見られなかった風景をタンノーいたしました。‥が、やっぱり暑い!


沼浦展望台とオタトマリ沼、暑いのでさっさと退散しました(笑)。なお右端の画像はニセモノです(大看板の前で撮った)。



仙法志御崎公園のゴマフアザラシは、なぜやら以前よりもさびしげな雰囲気で泳いでおりました。やはり1匹だけだと‥

仙法志を越えてしばらく行ったあたりから、ようやく?空が曇ってきました。これで暑さも一段落です。とはいえ北海道にきてからこれまで、いまだに「長袖の必要性」を感じたことがほとんどないというのはあまりにも珍しいことです(ちなみにこの時期稚内でも道路の温度表示は27度くらいでした)。

走っていると、何やら飲泉場があるみたいです。せっかくなので立ち寄ってみると‥



水場まで走っていったおしんこどん、さっそく湧き水で‥顔を洗っておりました(笑)。



その近くでは地元のおじさんが、浜に打ち上げられた昆布を拾っておりました。案外簡単な「漁」なのね(笑)。

というわけで1周完了です。まだそれなりに早い時間なのですが、一応明日は「利尻岳登山」を予定していますから、早めの行動終了もやむを得ないことでしょう(とはいえ別に早寝をするわけじゃないんですが)。というわけでさっさとお風呂に行って、早めの夕ご飯っと(Wさんがテントに戻ってくるのは少し遅くなってからなので)。



今日のお風呂は足湯!‥ということはありません(笑)。ちょいと寄り道です。



お風呂上がりにはハーフウニ丼でビールをぐはぁ!少食のわれわれにはちょうどいい量です。

お腹も満ちていい気分で帰って来ると、今日途中ですれ違った赤い服を着たソロチャリダーくんがキャンプ場にテントを張っていました。真っ黒に日焼けしていて、かなり長期の予定で回っていることは明らかです。こちらから話しかけるタイミングはなかったのですが、こちらがタープ下で焼酎をちびりちびりと始めていたら、どうやら他のキャンパーに何やら話しかけている様子です。が?

というわけでこちらも彼に話しかけてみると、韓国から来た彼(Kという名前なので、以下「キーちゃん」)は、今回韓国から自分の自転車とともに関空に降り立ち、最初は日本海を北上して北海道入りを果たす予定だったのが、ちょっとした気持ちの変化で東海道を東へ進み東京へ。さすがにその暑さに辟易し、大洗からフェリーに乗って北海道へ。こちらに来てからは至極快調なツーリングを楽しんでおり、9月上旬に旭川から韓国に帰るというなかなかのロングツアラーだったのでありました。

というわけでもう日本入りしてからは結構日数も経っていると思うんですが、なぜかこのキーちゃん、日本語が全く話せません。そのかわり以前カナダにワーキングホリデーで滞在していたということで英語は普通に話せるようで、Takemaはいつもながら英語力維持のつもりもあっていろいろと話をしていたわけです。すると、彼もまた利尻岳に登るつもりであること、でもこの沓形ルートは情報も少なく、ソロで行くことには躊躇していたことが判明。よって、明日は3人で一緒に登ろうという話になりました。

辺りが暗くなってきた頃、Wさんが帰ってきました。いわく、

クーラーボックスの中を見せてもらうと、なるほどホッケがたくさん入っています。確かにこりゃWさん達(2人グループ)だけじゃ食べきれません。というわけでキーちゃんとわれわれと、そして別のテントから遊びに来た少年と合わせて4人がご相伴にあずかることになりました。

ホッケは本当に新鮮じゃないと刺身で食べるのはコワイということ、また寄生虫(アニサキス)がいることが多く、そのまま食べるとひどい腹痛に見舞われるとのことだそうです。うわぁ、以前鴛泊の港でホッケが釣れたということを聞いて、「よし、じゃあ自分も釣って刺身にして食べよう!」と思い釣り糸を垂らしていたことがありましたが(釣れなかった)、あれは釣れなくてヨカッタのね(笑)。



Wさんのテント内で調理開始!ちゃんちゃん焼きもアラ汁も美味しかったぁ!

魚をつつきながらWさんのお話を伺っているうちに、この方の様々な経験、そして何よりも「この方はなぜ今ここにいるのか」がはっきりしてきました。

Wさんは約20年ほど前、とあるお仕事(営業)で札幌からこの島を訪れたそうなのですが、最初はもちろんうまくいかなかったものの、その時の数少ない顧客が自分のことを島の人に宣伝してくれた関係で島内での仕事がどんどん増え、その後は現在に至るまで「利尻礼文担当」として、毎年春から秋にかけて島に長期滞在するようになったのだということです。

最初は民宿等に泊まりながら仕事をしていたそうなのですが、島のとっての書き入れ時である夏の時期に自分たちが部屋を占領していたのでは申し訳ないと考え、今のようにテントや自炊用品を持ち込んでの営業生活をはじめたそうです。また仕事柄漁師さんと知り合うことが多く、よって各宅を訪問すると「どうだ、これ持ってけ」的に新鮮な魚介類をたくさんいただいて来ちゃうのだとか。なるほど、今朝の帆立貝やさっきのホッケなどはいわば「営業活動の副産物」だったわけですね(驚)。

個人的にも釣りが趣味だということで、時には漁船にも乗せてもらうそうですからこれは何ともうらやましい状況です。もちろんWさんが現在の状況に至るまでには相当のご苦労があったはずでしょうが‥でも、利尻礼文に来るときに巨大クーラーボックスをいくつも持参するという「営業活動」はやはりなかなか普通ではあり得ないことですよね‥。

また、このWさんは若い頃(高校時代から)道内の山をかなりたくさん歩かれていたそうで、何と高校生の時に「積雪期の利尻岳登頂」などをされていたというのですからこれまた驚きでした。また、「ヒグマの天敵は何だと思います?実はヘビなんですよ」と言って、ヘビを竹籠に入れて山々を歩いたときの話などを伺っていると、ホントに自分なんかまだまだ何にも知らないんだなぁという気にさせられます。とにかく興味深い話で時間を忘れそうでしたが‥おっと、明日は早いんだった!ということで、Wさんのテントを後にしたわれわれでありました。どうもありがとうございました&ごちそうさまでしたWさん!

というわけで、明日はいよいよ利尻登山です。天気はどうなることやら。
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