(2006年9月19日訪問)

平日お休みのこの日、かねてから気になっていた那須の某源泉を訪問してみました。「台風の関係で風が強かったら高速でしんどいよなぁ」と考えて車で行ったんですが、一番風があったのは千葉県内だったなぁ。那須の山の上でさえほとんど無風だったのに、ちくしょーだまされたぞ(笑)。これもまぁ10年前なら「風何するものぞ」と吹っ飛んでいっただろうになぁ、やっぱり年を食いましたわ(笑)。

というわけで那須の某所に車を停めて歩き出します。手にはあの「携帯湯船」とバケツを持っていいます。でも山道などで片手が完全にふさがってしまうのは難点、邪魔だし重いし。携帯湯船に背負い紐でも付けようかな(笑)。それにしてもこのページタイトルに書いた「あこがれの源泉地帯」という表現、日本の人口1億2千数百万人のうち同調してくれるのは何人くらいかな(笑)。



最初こそ林道(一般車進入不可)ですが、やがて山道を歩いていきます。

さてこの源泉地帯ですが、得ていた情報によると「沢沿いに源泉は出ているが場所柄掘ることができないのでドカシーがあると云々」ということでしたし、それならバケツと携帯湯船で何とかなるんじゃないかと考えたわけです。本当は雨樋も持っていきたかったんですが、いかんせん長尺物なんでやめておきました。スコップは「要らないだろう」と思って持参しませんでしたが、持っていったらそれこそじゃまだったろうなぁ。

で、実はこの場所ですが今年の初夏に訪問しようとしたんです。濃い霧の中今回と同じ物を持って林道を下りていったんですが、少し先に飯場(仕事中ゆえ無人でした)があり、その先からはクレーン車だかユンボだか、とにかくかなり大きな工事の音がぐわんぐわんと響いていたので「こりゃダメだ、何の工事か知らないけれど(「治山云々」だったような)また出直そう」と、とぼとぼ戻った記憶があります。

今回は工事そのものも完全に終了していて飯場も完全に撤去されていましたんでその点での問題はナシです。というわけで「たぶんここだろう?」と思われる山道を下っていくと‥そこには「驚きの光景」が広がっていたのでした!



治山工事とは、まさに源泉地帯の斜面全体に対して行われていたものだったのですね。なるほど、夏前のあの時点でここを訪れることはできなかったわけだ‥。

し、しかしこれは非常によろしくない状況です。完全に整備されたこの現場に源泉のこぼれ湯などまだあるのでしょうか?ちなみに噴気のほぼ全ては斜面にもうけられた噴気抜きの穴から出ているのであり、自然の岩の間や地面から直接出ているわけではありません。となると、こぼれ湯も地表に出ることはなく地下に設けられている(かもしれない)配湯パイプへと導かれてしまっているのではないか?

周辺を探ってみましたが(場所によってはガスがかなり濃厚なので厳重に注意して行動しつつ)、確かに自然にわき出ているこぼれ湯など全くありません。

唯一河原付近から噴気が上がっていましたが、すぐ脇を川が流れているのでもし湯が出ていてもどうしようもないし、実際のところこぼれ湯はナシ。いずれにせよ「完璧なる護岸工事」により手も足も出ません。

と呆然としつつ、とりあえずは煙草を一服。これはもはやダメということなのか、いや、よく探せばそれでもどこかに湯はないものか?もう一度この源泉地帯をじっくりと調べることにして、斜面の上部や途中はあきらめて河原付近を重点的にチェックしてみました。すると‥おお!



徹底的な護岸工事のためハシゴを下りていくと、こぼれ湯を排出するパイプがいくつも河原に向けて顔を出しています。

このパイプのうち1本から、わずかながら湯が流れ出ていたのです。

パイプの直径から見るとわずかな量のこぼれ湯ですが、それでも途切れることなく着実に流れ出ています(これが源泉地から導かれる排水溝を通ってこのパイプに流れ込んでいるという現実は無粋なので突っ込まないでね)。でも少なくとも「廃湯(利用済みの湯)」でないことだけは確かなので、こうなったらこのこぼれ湯に全てを賭けるしかありません!というわけで‥



こ、こいつ(携帯湯船)の出番です!

この携帯湯船、購入後最初の実験では大失敗をしたわけで(そのページを見ていない人は、このページを読み進める前にこちらを見てね)、そのためちょっと工夫をしてみたわけなんですよ。上の画像をよく見てみると、湯船の上部から「つっかえ棒」らしきものが2本(実際は3本)見えていると思いますが、これがその「工夫」なんです。このつっかえ棒の形状から考えるに元々の素性はおわかりかと存じます。そう、カメラ用の三脚(4000円くらいの安物、雲台破損につき使っていなかった)です!



最初はバケツに湯を溜めて携帯湯船に注ぎ始めたんですが、いかんせん時間もかかりますんで面倒くさがって「直接投入」に切り替えました。

湯量はしょぼく、湯温は流れ込み時にやや熱いが適温=溜めていくうちに冷えるのでぬるい、という状況です。さらに漏水が全くないわけではなく、湯が溜まれば溜まるほどに圧力で漏れ量も増加している気がします。しかししょぼい流入量といえど漏れる量よりは溜まる量の方が多いというわけで、30分ほどのんびり待ったところで半分くらい湯が溜まりました。

「こんな現場で地道に湯溜め中」

完全に手の入れられた片隅でひっそり湯を溜めている様子が一番最後に出てきます。

Wmv形式、762KB、18秒
ご覧の通り白濁の湯(熱湯の湯がここまで流れてくるまでにさんざん空気にさらされているからでしょうね。排湯溝の上部では透明湯でしたから)が流れ込んでいます。湯の素性としては申し分ないです(ちょっとぬるいですが)。というわけで「入浴」!



何だか情けない場所で入浴しているように見えますが、実際は山のど真ん中、沢の音と噴気の「ゴーっ」という音で自然一杯です。


「ただ今入浴中」

狭い携帯湯船内での撮影はきつかったぁ。

Wmv形式、363KB、8秒
多少ぬるいながらも白濁湯の源泉は何ともいい気持ちです。で、今回最大の課題ともいえる「携帯湯船改造版」の使い勝手はいかに?つっかえ棒は役に立ったのか?まずは結論から申し上げましょう。

この脚をくくりつけた段階の最初から「3本よりも4本あった方がより安定するだろうしなぁ」と考えてはいました。しかしもともとの材料が「三脚」だけに「四本目の脚」はないわけで、こればかりはいかんともしがたい問題でした。しかし実際、かなり不安定な場所(平らに見えてもどけられない石とかがあって決して水平にはできない)であってもこの三本脚は十分にバランスを保ってくれたどころか、

という、恐るべき耐荷重性を発揮してくれたのであります(驚)。いやぁこれはホントに驚きました。思いっきり使えますよコレ。ま、手に持って運ぶのは坂の上り下りにはそれなりにしんどいんで、上で書いたように背負えるようにするとより携帯性が増すかなぁ。

「最後に撤収の様子です」

ゴミも残さず地面も掘らず。自然にやさしい携帯湯船というところでしょうか。

Wmv形式、1.27MB、32秒

最後に再び湯をバケツに溜めて足湯タンノー。現地は期待していた状況では決してありませんでしたがまぁ何とかぎりぎりで入浴できたかな(焦)。それにしてもあぶなっかしい野湯訪問でした。基本的に危険な場所です(ガスも斜面も)、お気楽な気持ちで入り込むととんでもないことになりますので(=ガスで死にます)、慎重に気をつけて。特に風がない日は危険ですので立ち入りは控えましょう。

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