− 野湯に始まり野湯に終わった南東北湯めぐり (2)清兵衛温泉編 −

続いての温泉はここからちょっと遠いんで、山の中を横断するR459を使って西へと向かいます。会津盆地を通るR49は交通量も多いし面白くないだろうなと考えての選択でしたが、うーん、すれ違いも厳しいような幅のくねくね道が延々と続いたもんで、バイクならともかく車で走るにはちょっとなぁという感じでした。

おまけに、途中旧山都町の相川集落にあるという川原の源泉小屋を見学するのも忘れて通過してしまいました。相川集落、こんな時でもなければそうそう来られる場所じゃないんですけれどねぇ、大失敗。

続いてR459は宮古集落に入ります。実はわたくし、大学生時代にとあるフィールドワーク(実地調査)でここ旧山都町を訪れているんです。北部の「藤巻」という小さな集落のことは今でもよく覚えていますが、あれから20年が経過した今、あの集落はどうなっているのだろうか(存続しているのかどうか?)とちょっと心配です。

話がそれました、宮古の話です。あの頃はひなびた集落(もっとも藤巻よりははるかに大きい)でしたが、集落おこしというわけでスタートさせた「水そば」が当たりに当たり(もちろん水そば自体は昔から食されていたのですが)、今や蕎麦通には全国的にも有名な場所となっているわけです。

その宮古に来たからには、しかもまだ9時台だというのにすでに「営業中」の看板が出ているところもちらほら見かけるからには、そして観光客らしき姿はまだ皆無に等しいこの状況下においては、

というわけでTakema車は一旦停車。と、しかし約10秒ののち再発進、宮古の集落をあとにしたのです。な、な、何がTakemaにアクセルを踏ませた?

この時、たった10秒足らずの停車時間でしたが、実はかなりの精神的葛藤にさいなまされた時間でもありました。せっかくの水蕎麦を食べたい、しかも開店しているお店もあるし、さらにはTakemaは朝3:00に起床してからまだ何の固形物をも食していない、簡単に言えば空きっ腹モードばく進中なのでありました。しかしその一方で「その場の欲に身を任せず、よーく考えて行動せにゃイカンよ」と、Takemaを引き留めるもう一人のTakemaがおりました。そのいわば「裏Takema」はこう言います。

ここで食べたあとそれこそ数十分後にまたお蕎麦を食べる気なの?というわけです。「別に2食とも食べちゃえばいいではないか、大盛りだと思って」とお考えになる方もいらっしゃるでしょう。しかし、悲しいかなTakemaは基本的に小食なのであります。お代わりなんて日常的には滅相もありません。食べ物屋さんで大盛りを頼んだことは、わが人生の中で一体何度あったでしょうか、数えられるほどしか‥いや、大盛りを頼んだ記憶そのものが思い出せません(笑)。マエダンゴさんを見習えといわれてもじぇったいに無理です。

というわけで今回は無念の涙ならぬ蕎麦つゆを飲んでしまったTakemaでありました。でも、これから行くところのお蕎麦も美味しいっていうからまあ仕方ないかというところではあります。

さて蕎麦通ならぬ温泉通の方なら、これから訪問しようとしている温泉はもうおわかりのはずでしょう。蕎麦屋さんがやっている温泉、そう、「清兵衛温泉」!社長自らが私財をなげうって掘りあてた極上の温泉です!何が極上かって、それはまぁ入ってみてのお楽しみということで。

到着してみてびっくり、この古澤屋さんはかーなり大きな建物で、座敷とテーブル席を合わせて100人は収容可能なのではないでしょうか?そうそう思い出した、宮古で蕎麦を食べなかったのは「できるだけ早い時間に着かないと長時間(温泉を)待つことになるし」というのも理由の一つでありました。実はこちらのお風呂は貸し切り利用制なので、混んでいるときは1時間待ちなんてのはあたりまえらしいのです。

しかし到着は10:05、さすがに朝食には遅く昼食を食べるにはあまりにも早い開店直後だったため先客さんの姿は皆無でした。レジにおられた男の方にお風呂のことをお話しすると、何とこの方が社長さんだったようで快諾をいただきました。ちなみにこの社長さんは大変気さくな方で、いわゆる一見客であるわたしにもとても丁寧に対応してくださいました。こりゃお蕎麦も温泉も期待できそうです(わくわく)。揚湯のポンプをこれからスタートするということで食事後の入浴ということになりました。ん?ということは‥

というわけで至極気分をよくしつつ、山菜蕎麦の到着を待つことにいたしました。ちなみに店内にはこんな掲示も。

ちなみにこちらの清兵衛温泉ですが「温泉の利用は無料」です。ただし念のため付け加えればこれは「温泉だけでも無料」というわけで、つまりは「いよ!社長さん!太っ腹!」ということになります。「抱き合わせ」が普通のこの世の中、「社長の日頃の行いがよい」看板通りの運営方針ですね。しかしわたしはそれでも食べずにはおれません。だって未明から何も食べていないんだもん!というか地元の人は別として、普通の感覚を持った人はまず食べるでしょうね(笑)。ちなみに蕎麦にもこだわりがあり、全て地元産の蕎麦粉を使った十割蕎麦です!



というわけで山菜蕎麦をいただきました。美味しかったのは空腹だからというわけではありません!(自分にはちょっとつゆが濃い気がしましたが)

さてそんなわけで食事のあとはいよいよ温泉です!「最近は温泉目当てに来る人も多いんですが、新潟のあの地震のあとは湯温が下がっちゃってぬるいんですよ」とは社長さんの弁。その社長さん自ら別棟の湯小屋まで案内してくださいました。と、その手前で「ここを掘ったんですよ」とのお言葉。

左画像がまさにその「源泉小屋」です。そしてその奥に進むと、「普通の家」にしか見えない浴舎がありました(中央)。ここで鍵(右画像)を渡され、内鍵を掛けての貸し切り利用となったわけです。うわ、誰にもじゃまされずに湯を堪能できるなんて何という幸せなのでありましょうか。そしていよいよ念願の浴室、扉を開けてみてまずびっくり!

透明な湯が、どどどどどどどどっとさして大きくはない湯船に注ぎ込まれています!ちなみに動力揚湯ですから湯量の調整はしていないのでしょうが、手元にある分析書(何とコピーをいただいちゃいました)によると湧出量は「83.8リットル/min」とあります。この83.8リットルを惜しげもなくこの湯船に投入しているということは、イコール

という数学的計算が成り立つわけであります!(というか計算じゃないけど)。循環で湯を使わざるを得ない施設から見れば水前寺清子、いや違った垂涎モノの話でしょうね。ちなみに下の方のビデオで「怒涛のオーバーフロー」も出てきますのでお楽しみに!

さらに驚いたのはこの湯の素性。上記のコピーを見ると「含塩化土類-食塩泉(ナトリウム・カルシウム-塩化物泉)」とあります。湯口からは透明の湯が流し込まれているのも画像を見ればわかる通り。しかしここで左上画像の湯船を見て下さい。薄緑色っぽく白濁しているのがおわかりでしょうか?これはなぜ?そんな成分はないと思われるのに?

実はこの温泉最大の特徴はその泡付きにあります。体感38℃くらいの温めの湯に浸かると、何と10秒で肌に泡が付き始めます。では40秒くらいじっとしていたらどうなるか?

左上画像、わかりにくいですが腕の体毛に泡がついてます。しかしそれよりも何よりも、肌そのものが何だかざらざらしているように見える部分、これって全部アワなんです。確かこれは30秒くらい腕を浸けたタイミングの画像のはず、こんな状態で肌の表面をさらっとなでるとアワアワが「あわわわわわ」という感じでぶわっと湯面に浮き上がってきてはじけます。わたしも日本人の平均より少しは多いくらいの温泉に入ってきましたが(変な謙遜するなって)、ここまですごいのは初めてです。しかもこの温泉、分析上の(旧)泉質名に「炭酸」の文字はないのですから!

「あー驚いた、素晴らしき清兵衛温泉」

いやホント、いろいろな意味で楽しい温泉です。ちなみにNHKでも以前紹介されたんだそうですが、あの「ふだん着の温泉」かな?あの番組で取り上げられると必ず混んじゃうんで休止してほしいんですが(笑)。

Wmv形式、613KB、14秒

ちなみに湯のお味はマイルドな塩味でした(炭酸味はほとんど感知せずの鈍感舌?)。ちなみに湯から上がったあとしばらくは普通でしたが、しばらくして身体がポッポしてきました。さすが食塩泉の長湯は効きましたね。

というわけで古澤屋さんに戻ると、レジにいた方は社長さんではありませんでしたが(というか従業員さん達の数が増えていてびっくり。どうやら11:00から本格営業のようですね。自分がオーダーしたときも社長さんが「今はお蕎麦ならすぐ出来ます」とおっしゃっていたし)、何と「コーヒーをお出ししますから少々お待ち下さい」とのこと。うわー、あまりにも歓待され過ぎちゃってびっくら仰天です!従業員さんたちもみな丁寧で、社長さんの日頃の指導?が行き届いています!だって、全然マニュアルとは思えない丁寧な接客だったんですよ。ホントにこの社長さん「日頃の行いがいい」んですね!

コーヒーをいただきながら訪問ノートに書き込みました。お腹も満ちたしお風呂も大満足、そして湯上がりのコーヒーまでいただいちゃったわけで、もうこれは西会津に足を向けて寝られそうにないです。しかし西会津方向って、自分のベッドから見たらどの方向だろう?(笑)。

丁寧にお礼を申し上げ、お店を出て車の鍵を開けたところであることにはたと気づきすぐさまお店に舞い戻ると、みなさんわたしの書き込んだノートをご覧になっている最中でした。ふー危ない危ない。「すみません、字を間違えたので訂正させて下さい」。実は「初訪問」と書くべきところ、あの時突然「訪問」の「問」が「門」だったかどっちだったかわからなくなり、つい「訪門」と書いてしまったわけです。実はその時かなり悩んだんですが、車のドア開閉が脳の回線を接続したのか「阿呆、どう考えたって『問』だろうが!」という天の声が聞こえたというわけです。

URLも書いてきたし、「このサイトの管理人って『訪問』も満足に書けないんだ」と思われずに済みました。いやぁアブナカッタ(苦笑)。でも、こんな風に字が出てこなくなることって皆さんにもありますよね?(>40歳以上の方限定の問いかけです)。

というわけで本日の計画、ここまでは昨日までに考えておいたのでした。が、まだ午前中のこのタイミング、ここからどっち方面に向かいつつ小野川を目指すか、そこが問題です。
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