− 野湯に始まり野湯に終わった南東北湯めぐり (3)宮下温泉・神の湯見学・下の湯 −

「さて次はどこへ?」。しばし考えたあげくの結論はといえば「とりあえず南下しよう」というものでした。ぐっと西に向かったあと南下するというのは、それだけ小野川から遠ざかることを意味します。今回のコース取りでイマイチだったのは、往復にあたる距離が長く、それだけロスタイムが多くなってしまったということ。たとえば小出から五十里越を越えて会津に入るルートで来れば、かなりロスタイムも少なかったように思うのです。

結局この日、会津坂下ICから猪苗代ICまで再度高速に乗らなければならなかったのも時間不足が原因だったし、うーむコースの読みが甘かった?でも五十里越で来た場合、もしかして磐梯中の湯には行かれなかったかも知れないし、実は結構微妙なところなのかも知れませんね。



ね、ロスの大きい回り方でしょ?

ちなみに南に下るにつれてどんどん天気が良くなり、只見川まで下ってきたらすっかり青空、うわー、空が高いぞー!

実は下り始める前、只見川沿いの温泉地でまだ入浴していない場所はどこかと考えました。川口の玉縄の湯は時間的に無理だから諦めるとして、ふと気づけば「早戸温泉」と「宮下温泉」、そして「柳津温泉」が未湯です。しかし早戸はリニューアルしちゃってから混んでいて、前回トライ時も駐車場満車ゆえ尻尾を巻いて退散した記憶があるし、柳津は確か循環湯が多かったような気が‥というわけで宮下温泉に向かうことにいたしました。

とはいえ宮下温泉についての情報は皆無。ここが循環湯だったら悲しいなぁと思いつつ、「宮下温泉 ふるさと荘」へ入浴をお願いすることに。

只見線の鉄橋近くにはカメラマンがちらほらと。どうやらSLが運行されるみたいです。ふるさと荘の浴室は結構大きめ。

玄関には先客さんの靴がざっと見で20足くらいはあったかと。しかし、どうやら1階の奥の方からたくさんの声が聞こえていますから宴会の団体さんなのでしょう。脱衣場に入ってみると予想通り先客さんの脱衣はなし。うむ、これで温泉が掛け流しならいうことはないゾ!と、「加水・加温・循環なしの掛け流し」を謳う張り紙が。よーしよし、わが望むままに事が進んでいくぞ!(笑)。



湯船は4-5人なら余裕の広さ。お湯は只見川沿いの各湯に似た感じの「鉄系」です。



自噴湯は量が多すぎるのか、湯口に突っ込まれたホースから浴槽外に多くが排出されていました。

というわけで大満足の宮下温泉でありました。ふぅ。

さてこのあとは「行きがけの駄賃」よろしく西山温泉へと向かいます。ところで宮下から西山温泉へダイレクトに向かう大谷峠越えの道はかなーり通行量が少ないらしく、舗装路上に苔がびっしり生えているところが多かったです。四輪だからいいけれど二輪だったらものすごくびびりそう、しめった苔道、風情はあってもよく滑るだろうしなぁ(笑)。

西山側に降りてしばらく裏道を走ったところで「ん?こんなところで硫黄臭が?」。山の裾を巻くように伸びる細道で、Takemaの感覚器官が何かを察知しました。さっそく車を止め、周辺を探しましたが、あれー、どこからにおってくるんだろう?‥これで「何と自分の服からでした」というオチだったりしたらダサダサなのですが、そういうわけでもありませんし‥。もしかして、あの沢の上流に何かがあるのかも知れません。

というわけで特定が出来ないままこの地を離れ、次に目指したのは「神の湯」。くらーくどんよりとした小沢の脇からアツーい湯が湧き出ている場所、これまでは手湯しかしませんでしたが、今日はバケツも携帯湯船も車に積んでいるし、誰もいなければ自らに入浴行動命令を出そうと思っていたのです。無事到着後、まずは行動予定地の偵察です。と‥!

擁壁のすぐ下に出ているはずの源泉は砂に埋もれていました。このあとほじくってみましたが、温かさの微塵もなし。さらに、左上画像の中央よりやや左下、水面が揺れている部分が見えていますが、ここの下から湧きだしているのは冷泉でした。あの熱い湯はもう出ていないんでしょうか?

しかも以前来たときには見られなかったこのパイプにもほのかな温みすら感じられませんでした。お湯の出が止まっちゃったということなんでしょうか?ちょっと残念な気になりつつ、この場をあとにしたTakemaでありました。

おっと、周辺の川を上から眺めていたら、擁壁に設置された排水用の穴から水が出ているのが見えました。しかし‥どうやら成分は随分濃そうですね(右上画像マウスオンで拡大)。でも湯気が全く見えないので、こちらも「入浴不適冷泉」かも知れませんが(笑)。

さて、せっかくここまで来たのだから西山温泉の宿の湯に浸かっていこうということに。滝の湯・中の湯・老沢温泉・せいざん荘は以前訪問したことがあるので、あと残る旅館は下の湯と新湯ですね(他にも自宅の湯とかはありそうですが)。というわけで下の湯へおじゃますることに。ところで旅館と書きましたが、下の湯さんは今は泊まり客は取っていないのかな?

滝の湯旅館のすぐ手前で左に分かれる道を入っていくと、行き止まりには吊り橋が。この吊り橋を渡って行った先に見えるのが下の湯。分岐には看板が出ていないので最初はとまどいます(私も地元の方に聞きました)。

で、建物の玄関を開けようとすると‥鍵がかかってます。うわ、外出中なの?何というタイミングの悪さ!すごすごと吊り橋を渡って車まで戻ったところで1台のワゴン車が到着。てっきり自分と同じく日帰りの方だと思い、「今、宿の方はいらっしゃらないみたいですよ」と声を掛けると、何と、その車こそが宿の方のものだったのでありました!何というタイミングのよさ!

というわけで入浴をお願いし、いざお風呂へ♪

独自源泉のお湯は、静かに静かにとろーりとろりと流し込まれていたのでありました(ま、西山温泉の宿の湯はほとんどが独自源泉ですが)。左上画像の手前側浴槽に注がれた湯は、一番奥側に刻まれた溝を通ってもう一つの浴槽に注がれる仕組み。従って手前が明らかに熱いですが、入れないほどではなさそうです。他サイトでは「人間の入れる温度ではない」というような紹介がなされていたりしますが、この日はぬるかったのかな?

多少青みがかった湯からはいい感じの硫黄臭、お味はやや塩味が効いていますが、手にすくって飲むのに一苦労。熱いですからねー。と、気がつけば窓際にコップが置かれていたのね。しかし「手では触れない温度の液体を、われわれ人間はどうして飲むことができるんだろう?」という人体の不思議を感じずにはいられませんでした。

ちなみに源泉は、最初小さな升に投入され、そこでいったん貯められつつメイン浴槽に注がれます。これは「ワンクッションを置くことで少しでも源泉を冷やす」効果を狙ってのものなのか、それとも「浴槽内の湯花の流入を少しでも抑える」ためのものなのか、うーんどっちでしょうね。いやどっちもなのかもしれません。

しかしそれでも湯の注がれる浴槽底にはかなりの量の白湯花の堆積が見られます。上の方で書きましたが、この日のお湯は普段に比べてぬるかったのか、多少無理をすれば入れない温度ではなさそうです(体感44℃くらい)。というわけで、ささっと湯に入り、お湯を身体全体でざざっとかき回してみたら‥こんなになっちゃいました(マウスオンすると画像が変わります)。

何だか無意味な行動で妙に満足(笑)。というわけで宿の方にお礼を言って下の湯をあとにしたわけです。

しかしうーむ、そろそろ時間の方も迫ってきたようです。ここから小野川温泉まではそれなりに距離がありますから、夜間閉鎖の白布峠を越えていくためには下道をえっちらおっちら走っていくのではやや危険かも。というわけで会津坂下から再び磐越道へ。

しかしそこには「もう一湯の欲望」もないわけではなかったりして(笑)。
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