− その1 まずは雪山三昧から −



あの山を越えた向こうに湯が‥本当にあるのでしょうか?

(2008年4月6日)

この日曜日はとにかく全国的に天気がよく、少なくとも関東周辺では「気圧配置上、夜まで天気が崩れることは全くない」という予報が出ておりました。であるならば‥かねてより「行くならこの時期しかないか?」と考えていた某野湯への訪問を決行してみようという気持ちが一気にわき上がりました。

目的地は那須山中の某所。山の上はまだ雪山の世界、しかも結構長い時間歩くことになりそうなのでピッケルとアイゼンは必携。また今回は携帯湯船こそ持参しないものの、そのかわりスコップを装備に加えました。現地に行ってみなければどんな場所かはよくわかりませんが、湯船製作に役立つことを祈るしかありません(笑)。さらには万が一のことを考えて非常食やコンロや鍋を持参することに。スコップがあるからビバーク時には雪洞を掘れるでしょう。一応雪山に行くのですから装備は万全に。

これらをザックに詰め込んで準備完了。おっと、どこで水を汲めるかどうかわからないので、水筒には「わが家の水」(つまりただの水道水)を満たしておきました。結果、翌日の行動時にこの水は大活躍いたしました(笑)。山に入って千葉の水道水を飲むというのもちょっとナニですが。

さて今回は峠の茶屋までの車道ももう開通しているようなので、これは先月末の某所訪問に引き続き、

しかあるまいと決心。というわけでやる気満々のまま就寝したのでありました。ところがどっこいはんにゃはらみた(笑)。

6:00前に出発の予定だったのが、起きたのが6:30だったからもうダサダサ。あーどうしよう、普通のツーリングだったら十分に早い時間なのですが、今日は山の中で何時間かかるかわかりませんから少しでも早く出て、暗くなってからのバイク走行を少しでも回避したいわけです。しかしこりゃちょっとでも想定が狂えば「山歩き後の疲れた身体で夜道を200kmくらい走らねばならない」ということにもなりかねません。というわけで‥

ま、荷物はもう全部準備は終わってるしというわけで結構さっさと出発できました。この時は「何だ、こんなに早く出発できるんだったらやっぱりバイクでもよかったかな?」と一瞬思いましたが、結論としてはやはり車で正解だったかと。わたしが30代前半だったらちょっと違ったかも知れませんがね(大笑)。

さてしかし外環の三郷南ICで高速に乗った直後、大変なことに気付いてしまったのでありました!

実は最初から手袋というかグローブを忘れていたわけではないのです。完全にバイクで行くつもりでいたので、トップケース内には常にグローブが4セットくらい入れてあるのを覚えていて「ま、現地に着いた段階でどれを持っていくか考えればいいか」というくらいの気持ちでいたわけです。で、急遽車で行くことに決めてもグローブまでには思いが至らなかったというわけなのです。

しかしこれはこれは大失敗です!そもそも那須連山といえば冬の季節風の強さで大有名。かつては「冬の峰の茶屋を吹き抜ける風はヒマラヤのそれに匹敵する」といわれたくらいなのであります。風については那須より北に位置する安達太良山よりも冬期登山の対象としてはキビシイんですよね。そりゃ4月上旬、しかも天気の安定した日とはいえ稜線上が無風とは決して思えないし、ノー手袋では完全に無謀登山です!しかもピッケルを手に持って歩くわけだし。

というわけで高速を運転しながら考えます。那須ICを降りたらワークマンでも探そうか、でも湯本方面に行く道にはそれ系の店はなかったはずだし、あっても軍手かゴム手袋かの究極の選択しかないよなぁ、どうしようかと思いつつ上河内SAで最初の休憩がてら売店をみてみると‥



あったあったあったぁ!

カラー軍手に見えますがさにあらず、きちっと毛の手袋、しかも結構厚手かつそこそこ目が詰まっていてこれ1枚だけで十分に使えそうです。感謝感謝と思いつつ\260也ですぐさま購入。実際、この日の天候においてはまさにベストともいえる逸品でした(逆に、自分が使うことを想定していたグローブは厚すぎて着けていられなかったかも知れません。人間万事塞翁が馬というか結果オーライというわけですね)。

さて那須ICで降りたあとはお昼ご飯のサンドイッチとチョコを買っていざ峠の茶屋駐車場へ。

確かに雪は少ないです。以前GWにバイクで来たときと同じくらいかも知れません。でも左上画像はまだ結構下の方なんですよね。ロープウェイ駅より上にはそこそこ残ってましたっけ。

左画像のザックにはスコップも写ってますが、多少雪山に行かれた経験のある方であれば「あれ、このピッケルってやたらに??」と思われるのではないでしょうか?そうなんです。とーっても長いんです。まるで仙人の使う杖のように長いですから勝手に「仙人ピッケル」と名づけてますが、これを買った時代(=30年近く前)には、縦走用にはこれがデフォルトの長さだったんですよね。

で、使い慣れてるしメタルピッケルだからへたりもしない?ので今でも現役というわけです。だからもう完全に減価償却は終わってます(笑)。

さて、そんなこんなでとりあえずスパッツだけを着用して登りはじめます。登山口すぐの所にある鳥居の隠れ方はこんな感じ。ネット上の記録によると今年はやはり残雪が少ないみたいですね。最初は4/19.20あたりに来ようかと思っていたのですが、もしその時期に来てももうブッシュが立ち上がっちゃっていて到達は難しかったことでしょう。ラッキー♪

登ること約30分で峰の茶屋避難小屋が見えてくると同時に、剣が峰のトラバース道が見えてきました。今回の登山行動におけるちょっとした難所がこのトラバース+朝日岳肩までのルートなんですが、どんなもんだろう?というわけで反対斜面の側からしばし眺めていると‥お、小屋からソロの登山者が朝日岳方面に歩き出したようなので、その様子を遠望しながらお手並み拝見とまいりましょうか‥。ん?え?ええ?

ありゃまー、ということは結構きびしいってこと?一瞬不安になりましたが、引き返した人の装備や経験もわからないので早合点は禁物、まずは自分の目で確かめてから判断することにして峰の茶屋避難小屋へ向かうことにします。と、続いての登山者2人がトラバースにさしかかり、しばらくその手前で止まっていましたが、やがてトラバース部分に進み始めました!

左上画像で斜面の中に2つの点が見えますが、これがそのお2人。右画像はそのあと通った別の2人を望遠で撮ったものですが、ピッケルを持ち、この画像ではよくわかりませんが実はしっかりアンザイレン(ザイルでお互いをつなぎ、相手の滑落をくい止められるようにすること)しています。ま、とにかく先行者がトレースをより確かなものにしてくれましたから行かれるかなという予想がついたのですが、傾斜からして一応油断はできません。過去にはもっとはるかにキビシイ場所も経験してはいますが、いかんせんそれは「昔話」ですからね(笑)。

小屋では休まずに、トラバース道のすぐ手前まで来て小休止といたしました。ここまで40分。まぁこんなもんでしょ。



茶臼岳はこんな感じでした。右側に見える噴気、あぁあそこに水の供給さえあれば楽勝野湯なのに(笑)。

肝心のトラバース道を見ると、すでに先人の手じゃなかった足によってある程度踏み跡はできています。でも足を滑らせれば「100mほど滑落した上で石や岩にあたって停止」は必定なので、念のためアイゼンを着用です。軽アイゼンなどというものは持っていないので、本格冬山用の12本爪です。うーん、前回使ったのは確か2004年の3月だったような。あれから4年もの間雪山には来ていなかったのね。えてしてこういう人が事故を起こすんですよね(苦笑)。



じゃぁまぁ、行きますか。

雪は多少ザラメ状になっていましたが、結論からいえばそれほど問題というか不安はありませんでした(そりゃそうだ完全装備なんだから)。ただしここで誤解しないで欲しいのは、「あくまでこの時のコンディションでは」という前提条件が付くということ。雪の状態は1日の中でも刻々と変わります。朝方だと凍結していてアイゼンなしの歩行はかなり危険ですし、日中、特に午後には雪が腐って足場が崩れやすくなります。ノーピッケルノーアイゼンでこの時期にここを通過するのは危険です。この残雪期にこのルートを通っていいのはアイゼンはなくともせめてピッケルを持ち、なおかつ滑落停止の技術を有する人だけと考えた方がいいでしょう(ストックはいざ滑り出したら何の役にも立ちません)。

実際には上記の装備を持たずに歩いていた人もいましたが、何かあったら一巻の終わりだということをお忘れなく。雪山をなめてはいけません。

トラバース部分を越えると登山道は三斗小屋側を巻き気味に上っていきます。雪は少ないのですが傾斜は急ですし、肝心な足場の部分が凍結している部分もありました。実はトラバースを越えたあとアイゼンを外したのですが、その後一箇所、アイゼンはなくともピッケルはないとややキビシイ場所もありました。



「緊張のトラバース、のんきにムービー撮影中」

よい子の皆さんは決して真似しないように!いやホントこういう時が一番危ないんです。ピッケルだって正しく持ててないし。

Wmv形式、920KB、23秒



上の両画像は全然楽勝の場所ですので念のため(笑)。

というわけで朝日岳の肩に到着です。ベンチが置かれていて、先ほどトラバースしていた先客さんとおぼしき方々が休んでおりました。Takemaはピークハントが目的ではないとはいえ、せっかくすぐそこに頂上があるのですから行ってみることに。うわー、那須連山で頂上に立つのって初めてだ(笑)。遊歩道のようなトレースをたどって頂上へ。風もそれなりで、快適な春山日和そのものでした。

左画像: ザックにくくりつけられたスコップが、「はーやくはやく!」と出番を待っています。もう少し待て!
中央画像: 風は穏やかとはいえ、山の稜線ですからそこそこは吹いています。髪の毛は天に向かってそそり立ってますね。
右画像: 車を止めた駐車場が小さく見えています。さてどーこだ?(マウスオンで拡大します)。




「頂上からの風景ぐるり」

いやはや本当に穏やかな頂上貸し切りでございましたわ。

Wmv形式、980KB、25秒

さて、諸般の事情によりここからはルートの詳細をぼかすことといたします。興味本位で現地を目指す人が出るのを防止するためですが、いや本日の最終目的地はこの僅かな時期以外(無雪期)には「途方もなく奥深い場所」にあるので、興味本位だけでは到達ははなはだ困難なんですけれどね(笑)。というわけで続きは次ページで!
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