− その2 頂上から赤湯温泉まで −

さてそんなわけでお昼ご飯なのであります。おっとその前に例のペットボトルをお渡ししなきゃ。すると宿のご主人が「芳名帳」なるものを持ってきてくれまして、「ご協力いただいた方にご記名を願っております」とのこと。先人の皆さんを見ると、中には10数リットルを担ぎ上げておられる猛者もおられるようで‥このシステムは比較的機能しているようですね(笑)。

で、お昼ご飯なのです。今日はラーメンと焼き肉、それに朝食として食べきれなかったカツサンドがメニューなんですが、ラーメンをゆで始めたあたりで緊急事態発生!

というわけで急遽雨具を着たり傘を差したりと大あわて。結局このランチのメインディッシュである高級カルビ焼肉写真を撮るのをすっかり忘れました(大笑)。あーあここからは雨の行軍です。

さて向かうは赤湯温泉への昌次新道。苗場山はいわゆる「プリン山」ゆえ、頂上周辺のまっ平らな池塘エリアを抜けると、あとは一気に急斜面の下りとなります。というか最初の部分は岩場もあり、足場もしっかりしていませんからちょっとキンチョー。とはいえ相変わらず折りたたみ傘を差しながら下るTakemaなのであります。雨具の上って着るの大嫌いなもんで(笑)。

ただしそのうち雨に濡れて道側にかぶさってくる植物群の前に「やっぱり着なきゃダメだな」と、着用を余儀なくされました。いくらゴアの雨具でも蒸れないわけじゃないからいやだったんだけれどなぁ。

しかし「本当の荒行」はここから始まったのであります。頂上からのコースタイムは3時間45分なのですが、雨の中かれこれ2時間半以上歩いたあたりの木に打ち付けてある古い道標によると「ここから赤湯まで3時間」を示す表示が。うっそだろー!雨中の行動ってどうしても黙々行軍となりますからそんなにダラダラ歩いたわけでもないのに!

またこの日は平日ということもあり赤湯へ降りる他の登山客は皆無らしくて、道中には「クモの巣」がこれまた行く手を‥阻むというほどじゃないですが、顔にぴたっと張り付いたりするとやっぱり「チクショー」という気になりますね(苦笑)。最近刈り払いを含む整備がされた気配もなく(情報によると今秋刈り払い予定とあったのに)、とにかく「いつになったら着くんだ系エンドレス下山気分」いっぱいのままひたすら下り続けます。

やや傾斜が緩くなってきたあたりで「このあたりがフクベ平じゃないとしたら夕暮れとの勝負になっちゃうな」と不安に思いながら歩いていくと、あーよかったフクベ平の看板あり。しかもいつの間にか残りのコースタイムがぐぐんと減ってます。さっきの「あと3時間」ってのは何だったのさ!雨もどうやら上がったみたいで、あと1.5時間ガンバラナキャ。



フクベ平まで到着、さーってこっからさらに大下り、でも最後に登り返しがあるんだよなぁ(苦笑)。

しかしここからの下りでおしんこどんに異常発生!どうやら靴擦れで指の皮がむけ始めたらしい(可哀想)。しかも3箇所同時?バンソウコをぺたぺた貼って降り始めますが、ペースが鈍ったことはいうまでもありません。彼女の足型は日本人離れしているんで(甲が低く足幅が狭い)、日本で売っている既製靴のほとんどが足に合わないそうなんです。どれくらい細いかというと、以前東京の巣鴨にある某オーダー登山靴屋さんに行ったとき、「店側がストックしている足型のうち一番細い木型でもまだ合わなかった」といういわく付きなのであります。いわゆる「足だけ欧米人」なんですね(笑)。

だから今回履いている既製の軽登山靴はそもそも足に合っていないわけで、彼女いわく「登りはいいんだけれど下りになると靴の中で足がどんどん前に行っちゃうんだよね」とのこと、大変だなぁ。ちなみにTakemaの足は「純粋日本人型」らしく、市販の普通の靴が一番ぴったりきます(笑)。

それでも何とかやってきました、サゴイ沢に架けられた最初の橋まで。ここまできたらもうあとは一投足‥といいたいところですが、沢筋が急峻すぎて道をうがてず、ここから小屋までは一気に尾根を乗っ越さねばならないという「最後の苦行」が待っているのであります。というわけでここでチョコレートなどをぱくついて中休止といたしました。ここからの登り返しは‥思ったほどはなく約70mほどの登りでした。結局頂上からの下りは標高差にして約1000m強、でもその差以上に疲れたなー。あ、体力が落ちたのが最大の理由なんでしょうけれど(大苦笑)。

何とか小屋間近の次の橋まで到着したところで時間計測。16:00ぴったり。頂上を出たのがほぼ12:00でしたから、休憩を入れたらちょうどコースタイムくらいですね。それにしてもあの途中の「気を萎えさせる古い指導標」は撤去していただきたいものです(笑)。

ところで小屋のすぐ手前(上流側)の河原には、源泉がポコポコ湧き出ている場所がありました(右上画像)。色的にも「赤湯」的なんですが、いかんせん量が少なくてこの時期の入浴にはどう考えても適しません。というか疲れもピークに達していたんで、ここは手湯にとどめた次第です。夏の時期なら何とかなるのかも知れませんが‥(右上画像マウスオンで検温中のおしんこどん画像に変わります)。

というわけで、やっと着いたぁ!

昨日のうちに予約を入れておいたので比較的すんなりと案内されましたが、「着いた」ことにより体力よりも気力が萎えたのか、2Fの部屋まで荷物を担ぎ上げるだけでも一苦労。あー疲れたんだもんねもうどうでもいいんだもんね‥いや、このあと「楽しき一仕事」が待っているんですけれどね(微笑)。

通された部屋は何と15畳の大部屋、もちろん平日だからか相部屋ではなく貸し切りです!ちなみにベランダも付いていて(窓から出入りするんですが)、雨具やらザックカバーやら傘やらをぜーんぶ干すことが出来たのはラッキーでしたね。なお1Fにも何部屋かあるんですが、実はこの時期、小屋のすぐ下にある橋の復旧工事をやっておりまして、工事関係者の方々が多く泊まっていた関係上、遅く到着したわれわれは2Fの部屋にならざるを得なかったわけですね。

ひとしきりのんびりしたあとは‥さーて行こうではありませんか天国の湯へ!



ぬふふ、ぬふ、ぬふふふふ♪(意味不明ですが気持ちはおわかりいただけるかと存じます)。

さてここ赤湯温泉には3箇所の湯(それぞれ独自源泉)があります。立ち寄り湯の場合は右上画像の露天風呂のみということなんですが、今日はもちろん泊まり客なのですから全部入れます!え、うち1つは女性専用じゃないかって?いやそれがですね、この日の泊まり客(工事の人たちをのぞけばわれわれを含めて5人)のうち女性はおしんこどんだけ。だから彼女が入りに行くときに一緒に行けば全く問題はないというわけなんですね。いや裏を返せば「おしんこどんが入っていないときは他の男性陣も自由に入れる」ということにもなるんですが(笑)。

さ、まずはその女性専用「青湯」へおしんこどん共々行ってみました。

身体中汗まみれのはずなんできっちりとかけ湯をして、適温(やや熱め)の湯に浸かります。冷えていた身体がじわわんじわーんと温まっていくのを実感します。あーこりゃいいわぁとしみじみ湯ったりいたしました。半露天(女性湯ゆえ目隠し付き)ですが、正面には清津川の本流(まだ「川」というより「沢」の趣ですが)を眺めつつというのはいいモノです。ただしお仕事ゆえ仕方ないんですが、工事の方も視界に入ってしまうんですけれどね(笑)。青湯の場所から工事現場を見るとこんな感じ(右上画像マウスオン)になります。

続いてはこれまた小屋掛けされている「薬師の湯」へ。何でも昔の小屋はこの場所にあり、その頃は内湯だったんだそうな。

青湯に比べるとかなりぬるめ、長湯に適したお湯ですね。それにしても、どこにも源泉の流れ込みが見あたらない‥足下湧出なのかと一生懸命湯船の中を探しますが、結局見つけられず仕舞いでした。まぁいいかということで浸かっていると、ここだけはほとんど内湯に近い状況なので何だか閉鎖空間恐怖症に?いや、すぐ脇を流れる沢の音を聞いているとやっぱり「沢を見ながら入りたいよなー」と思っただけです。というわけで脱衣を抱えてすぐそばにある「玉子湯露天風呂」へサクっと移動。

一番奥からもちろん自噴の源泉が投入されていますが、この源泉がまた熱い!湯船は3つに仕切られていますが、脱衣場側はこの時期にはぬるすぎるし、かといって源泉の湧き出す浴槽は熱すぎる(46℃くらい?)。真ん中の浴槽が温度的にもちょうどよく、ここで湯っくり。

「青湯&玉子湯をうろうろと」

途切れることのない清津川の沢音を聞きながらもついついうろうろしちゃうのはTakemaの性(さが)とでも言いましょうか(笑)。でもこの湯浴みのあとに山の幸を使った夕ご飯ときてはもう言うことないです。

Wmv形式、2.99MB、1分20秒

部屋に戻ると灯油ランプが据えられていました。この時期この時間ゆえ部屋の中は結構涼しい(というか薄ら寒い)のですが、しっかり練炭暖房のコタツが置かれていて頭寒足熱にはちょうどいいですね。基本的に山小屋ですんで布団は自分たちで敷かなきゃ、もちろん「足をコタツに突っ込めるように」布団を配置したことはいうまでもありません。

と、そのうちに「ご飯でーす」の声が聞こえてきましたんで食堂へ。決して豪華ではありませんが心づくしの夕ご飯、宿に到着後ここまで我慢してきたビールとともにいただきます!ご飯とおみそ汁はお代わり自由、おみそ汁には山で採れたきのこがたっぷり。うーんこういうの大好きです!

御年80才と思われるおばあちゃんは、この宿の「名物」といわれるだけあって元気いっぱい。うちの母よりもっと年上なのに、山道を越えてここまで来るのも全く厭わないようですごい(実はTakemaの母もいろいろな意味ですごい人ではあるんですが(大笑))。

「孫がね、『おばあちゃん、僕は40kgまでなら背負ってここまで来られるからね、おばあちゃんは35kgだから、おばあちゃんが歩けなくなっても僕がここに連れてきてあげるからね』と言ってくれるんだよ、嬉しいじゃないかねぇ」

いやぁいい話です。問題はそのお孫さんは現在大学生ということなんで、「ぬるい大学生活の中で体力を落としていないか」というところですね(笑)。いやそんなことはここのご主人が許さないか。昌次新道のフクベ平まで、おそらくはご主人が刈られたんでしょうね。まだ機材は上に置いてあったから、雪が来るまでにずーっと上までやるんでしょう。自分たちにとってみればかなり気が遠くなるような話ですが、ご主人にとってみればあたりまえの話なのかも。そしてその父の背中を見てきた息子さんも‥。

山中ゆえ17:30に始まった夕ご飯タイム、のんびり食べても18:30にはお開きとなりました。というわけで部屋に戻ってコタツにあたっていると、予想通りというかしっかり眠くなってきたんですね。しかし夜の湯めぐりもしたいわけだし‥

という算段になったわけです。なんたって頭寒足熱で足があったかいと気持ちいいんです。しかし‥これが大きな間違い、朝から歩き続けた身体はしっかりと休息を求めていたわけですね。うわー、せっかく背負ってきた500mlの芋焼酎にも一切手をつけずに朝までぐっすり寝ちゃいましたわ!(大笑)。

さて翌日は‥まだ歩くのか、しかも登り道!
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