− その3 田村市の秘湯「聖石(ひじりいし)温泉 恵の湯」に福島の明日を感じる −



聖石温泉にて元気よく泳ぐ鯉のぼり。福島の空に未来を見よう!

さて、Takemaのツーリングマップル東北編にはところどころのページに手書き記入の情報が書きこまれているのですが、その多くは「今度このエリアに行くから調べとこう」という趣旨で記入されたものではなく、夜、お酒を飲みながらネットを眺めているうちに「へー、こんなところにこんな湯が。ならばいつかその方面に足をのばす時のためにメモっとこ」系の流れで記入されたものであり、今回目指す聖石(ひじりいし)温泉もその1つ。「しっかり茶濁り」という僅かなコメントに惹かれてやって来たというわけです。

「食堂 山の幸」に併設されている「恵の湯」。もちろん経営母体も同じで、入浴料は食堂で支払い、中の通路を通って浴室へと移動することになります(改装前は温泉側の入口から出入りしたようですが今は違います)。ちなみに右上画像の聖石温泉看板、一番上には小さな文字で「田村市の秘湯」と書かれているのが何だか乙です。国道沿いにあるわけですから「知る人ぞ知る」というレベルではないような気もしますが、裏を返せばこのR349がいかに非観光路線であるかを示しているような気もします。というか、自分もこれまでこの道を走ったことはありませんでしたっけ(実は今回往復とも利用したんですが)。

それはともかくとして食堂で入浴をお願いすると、「しばらく誰も入っていなかったんで湯が冷めちゃってます、ボイラーで沸かしますので10分ほどお待ちいただけますか?」とのこと。全くもって問題ないので、食堂から一段上がった休憩スペース兼宴会場にて待たせていただくことにしました。

しかし初めての温泉となるとどうも落ち着いていられないTakemaはちょっと周囲をうろうろ探索したくなり(笑)、表に出てみると建物裏の小川をまたぐ形で鯉のぼりが元気に空を舞っておりました。ええ、これからの福島県民諸氏の気概を示すがごとくとっても元気に!

と、奥の方からTakemaより少し(いやもう少し)年下と思われる男性が歩いて来られましたので「こんにちはー」と声をおかけすると、そのお方いわく、

え?と思ったら、確かに示された橋の下近くに「はしゃぎすぎたオス」のせつない姿がありました(笑)(右上画像マウスオン)。でも結果はともかくその勢いやよし!救い上げてもらってからはまた元気に空を舞うんだよー!

休憩室に戻り、そろそろかなーと思って待っていたら奥の引き戸が開き、そこから顔を見せたのは予想通り先ほどの男性でありました。ここ聖石温泉はもともと温泉宿から始まったわけではないのですが、ここではこの方を「若旦那」と勝手に呼ばせていただきます!

「今40度なのでもう少しだけ待って下さいね」と言われて待つこと数分、「どうぞ準備が出来ました!」というお言葉と同時に渡されたのは温泉タオル。い、いやわれわれは自前タオルを持参しているんですがと申し上げると若旦那いわく、

うわーそうなんですか、何だか思いきり期待できちゃうじゃないですか!とワクワクドキドキ、ポポポポーン!というナチュラルハイな気持ちになってくるから不思議です(この心情の機微が「わかる!」とお思いの方、あなたはまちがいなく「温泉人」!)。

そんなわけで若旦那とともにいざ浴室へと向かいます。男女別の入口手前にはしっかり神棚および仏様が安置されておりました。しっかり神仏習合というか本地垂迹の湯ともいえそうですが、まぁそんなことはいいとして、ここからは若旦那が浴室の説明をなさって下さいました!

その1 「うちの源泉は引き湯ではなくてまさに敷地内から源泉を出しているんです。それはそもそも先代が「掘れば出るんじゃないか?」と考えたからなんですが、ボーリングをするお金がなかったのでショベルで掘ってみたわけです。そうしたら本当に出たというわけで‥。」
その2 「でも、その源泉の真上に今の建物が建っている関係上、源泉の状態を源泉井として見ることは出来ません。でも今回の地震による影響はさしてありませんでした。ちなみに今の浴室部分は、以前わたしの車の車庫だった場所なんですよ(笑)。」
その3 「うちの温泉は鉄系の冷鉱泉ですからもちろん沸かし湯で循環もしています。湧出時は透明ですがそんなわけで茶濁り系になっているというわけですね。ちなみに女湯は木のオブジェを作ってみたんですが、男湯まで手が回らずちょっと手抜きになっちゃいました。ちなみに再開業に至るまでの保健所との様々なやり取りはもう思い出したくもないほどです(笑)。」

‥で、ここからがこのご時世系のお話です。

その4 「実は、去年1年は温泉を完全に休業した上で浴室を手作り基本で完全リフォームし、2011/2/26に再オープンさせたわけです。で、最初のひと月は地元の年配者の皆さんに振る舞い湯=無料で、そして3/26に正式オープンという形でスタートしようと考えていたんですよ。しかしそのさなかの3/11の地震と12日に端を発する原発事故となりましたからだいぶ目算は変わりました。あなた方もやっと今日3組目のお客さんですからねー。」
その5 「地震の時は男性のご老人が1人入っておられたので、急いで浴室に行って『おじいちゃん、上がってー!』と声を掛けたのですけれど、おじいちゃんは湯船から上がらず浴槽内で仁王立ち(笑)。それはともかくとしてありがたかったのは男女浴室の仕切り壁が無事だったこと。地震当時はすごく揺れていたけれど持ちこたえた、あれは別のおばあちゃんによる「苦情」がなければどうなっていたかわからないよー。」
入浴前にこれだけ話して下さるわけですから、若旦那のこの湯にかける心意気がバリバリ伝説ものであることは言うまでもありません。ちなみに「おばあちゃんの苦情」についてはここで書いちゃうと全ネタばらしになっちゃうので、若旦那に直接お聞き下さい!

さ、そんなわけでいざお湯へ!実は男女とも貸し切りでどっちも自由に入っていいですよという「超VIP待遇」を受けておりました(大感謝)。




(実際はもっと薄い色です、以下の画像をご覧あれ)



実際の色はこんな感じ。でも十分な茶黄土色だし、さりげなく置かれたリスもいい味を出しています。



こちらは女湯なんですが、貸し切りモードなのでたっぷりタンノー。循環湯ではあってもこのエリアでこの湯はあまりにも嬉しい♪



女湯(左)と男湯(右)のオブジェ、確かに男湯の方は「もうちょっと頑張りましょう」的な気にもさせられますが好みの問題かも?(笑)。

続いて半裸レベルで?男湯へ移動。こちらは湯樋ではなく竹樋からのお湯流し込みですが、かえってこういう方が潔いような気もしました(笑)。こちらの温泉の改築以前の画像を見ると「それはそれで素晴らしく憧れる」浴室画像なのではありますが、今のようにしっかり手を入れた(しかも個人で)温泉浴槽はまた味があります。というかこういう個人営業温泉こそTakemaのツボにはまってしまうんですが(大笑)。



この両画像を見て「そもそもこれは循環湯だからダメ!」という人はTakemaと友達になれない気がします(笑)。



おしんこどんの浸かっている男湯も広ーい!ちなみに浴槽湯の透明度は‥右上画像マウスオンでね。

さて聖石温泉恵の湯をすっかりタンノーした後は、今宵の宿である高湯温泉を目指します。福島盆地に向かう途中の道路には桜も菜の花も、そして斜面に植えられた花々も満開でした。さりげない&地域の方々が頑張って創り上げてきた‥





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