− その7 剱岳アタック(1) しかしガスが‥んん?−
明けて翌朝。朝食は前夜のうちにお弁当にしてもらっていたので4:30出発という計画です(朝食は5:00から)。夜明け前の剱は‥うーん頂上部にガスがかかってます。何とか東の空に流されちゃってほしいんですがどうでしょう。
ちょっと驚いたのは、すでに登山ルートの別山尾根ルートには数多くのヘッドランプによる「光の列」ができていたこと。それも、最初のミニピークである一服剱周辺のみならず、すでに前剱付近にまで達している灯りもあったりして、「あのぉ、あなた方はいったい何時に出発したんでしょうか?」とついつい聞きたくなるほどでした(聞けないけど)。「早起きは三文の得」といいますが、今日の場合はそのことわざ通りになるとすると帰路はカッパ着用なんてことも考えられるわけで、おーいそれは勘弁してほしいぞなどと、日の出前から一人マイナス妄想に耽るTakemaでありました(笑)。
ということで出発です。雪渓のトラバースがいくつか続くのですが、朝方ゆえ堅くしまった雪‥いやそうでもなかったな、この日は明け方もそれほど気温が下がらなかったみたい。ガスよ早く流されなさいと頂上付近を眺めつつまずは剣山荘へと向かいます。
およそ20分ほどで剣山荘へ。ちょうど日の出直前ということで小屋の前には何人もの人が出てきていましたが、そののんびりさ加減からして昨日頂上を目指した人たちなのでしょうね。たぶん「今日は頂上にガスがかかっちゃってるねエヘヘ」などと、微笑しながら会話を弾ませているはずなのです(強被害妄想)。
剣山荘出発は4:57。昔と比べて楽になったなーと思うのは、こういう時間記録をわざわざ手帳にメモしなくても、デジカメの画像に撮影時間も記録されているから正確に後追いができるってことですわ。
一服剱ピークまでの中間点あたりで、後立山越しに本日の日の出です。でもあっちも雲が多いし、雲が早々と上昇してこないことを祈るばかり。何たって32年ぶりなんだから(&おしんこどんは初めてなんだから)サービスしてよね剱の神さま!
やがて傾斜はどんどんきつくなり、ミニ岩場なども出てきます。とはいえこのあと出てくるであろう岩場群にくらべればお茶漬けサラサラ、いや違ったお茶の子さいさいジャングルジムの帝王レベルに過ぎません。もちろんおしんこどんも難なく通過。かくして岩の間から前剱が見えると一服剱に到着です。となれば‥
そうそう、このあたりでは巨大なナメクジが何匹か見られました。これまで見たことがなかったのでちょっとびっくり。
Takemaの指を置いてみましたが、2本合わせた幅が約3cmなのでこの個体は10cm近くありそうですね。調べてみるとその名もズバリ象印賞ものの「ヤマナメクジ」。もちろん人に害を及ぼすような毒などないようですが、ここ剱岳は岩を掴んでよじ登ることも多く、「見えない手がかりに手を掛けたらヌルヌルムニュ!」という事態だけは避けたいものです(想像したくないぞ)。その瞬間ビックリして思わずバランスを崩したらどうしよう、滑落原因が「ヤマナメクジに驚いたため」というのではあまりにもダサダサで山男の風上にも置けないというわけで登山界から追放されるやもしれません(笑)。
ま、あまりナメクジ話ばかりしていると身体がヌルヌルしてくるかも知れないので(謎)、とりあえず右上画像の白山シャクナゲでもご覧いただいて知能中枢をPh7(つまり中性)に戻してくださいませ。ちなみに右上画像にマウスオンするとユリ科の花のつぼみ画像に変わりますが、これは何という種類だろう?もうすぐ開花しそうな感じでこの色、クルマユリでもなさそうだしましてやクロユリでは絶対にない。ヒメサユリみたいな色合いなんだけれど標高2600m以上あるこの場所では咲かないよなぁ‥。ご存じの方がいたらお教え下さい。撮影場所は一服剱と前剱のコル近くです。
さていよいよ前剱の登りです。急なガレ場から始まり、やがてガレた岩場を登るようになります。うーんこんなに急峻だっけ?と32年前の記憶の引き出しを開けてみますが、こんなに急傾斜な記憶はなし。おそらく当時高校1年生とはいえ今よりもはるかに頻繁に稜線も沢登りもこなしていましたから「山慣れ」していたんでしょう。ちなみに中3の初訪問時には確か剱沢のキャンプ場で3日くらい豪雨と強風の中粘ってました。それがあたりまえだと思っていた「遠い夏」の思い出です。
本格的に鎖場連続エリアまで進んできました。左上画像では青い上着の先行者さんの奥に緑のザックを背負った方が見えています、そう、これが「正しい一般ルート」です。そしてこのあたりまで来ると周囲はすっかりガスの中。あーあこれじゃ頂上まで行っても報われないなぁという気もしますが、ま、ここまで来たことだし行くべきところまでは行きましょう。
しつこいようですが一般ルートです。でもまぁガスの中だから高度感をあまり感じなくて済んだのはラッキー?おしんこどんも余裕です(右上画像マウスオン)。
さてそんなわけで、往路最大の難所とされる「カニのたて這い」にやってきました。予想通りこのあたりはやや渋滞していました。山慣れしていない人たちがガイドツアーでやってくるわけで、ただでさえ岩場に慣れていないので進むのが遅めになるところに、鎖にカラビナを通しては外し外しては通しを繰り返す分さらに全体のペースが落ちてしまいます。安全のためには仕方ないことなんでしょうが‥。
もっとも右上画像にマウスオンすると出てくるとおり「この2本の鉄杭なしには普通の人は通過できない」難所でもあるわけです。と同時に、このような鉄杭がまた何とも絶妙な位置に設置されているのがすばらしく、「だからこそ一般ルートなんだよなぁ」と。もっとも数日前にはこのルートで滑落死亡事故が起きたばかりでしたし、実はこの日もこのあとヘリが‥(後述)。
この岩場を過ぎると傾斜が落ちガレ場の登りになります。そしてここまで来れば頂上まであと少し、相変わらずガスってまし‥え、え、えええーっ!
こ、この時は本当にたまげましたよ。夜明け前から頂上付近にはずっと雲がかかってましたし、われわれが一服剱まで登って来た段階では前剱頂上もガスの中でした、それが何と、本峰頂上を目前にしたここまで来たところで一気に雲というかガス一族さまより「それではお約束により撤収いたします」の一方的な通告によりバリバリの快晴系お天気に変貌するとは!うーむ日本経済にも是非こういう展開があって欲しいぞ(笑)。
まぁとにかくこの展開は誰も期待していなかったわけで、たまたま「天候急展開」の時にわれわれを抜いていったソロの男性は、時折大声で「ヨロコビの雄叫び」をあげておりました!わかるぞわかるぞその気持ち!しかしその一方でTakemaにはまた別の変化が(笑)。
右上画像は早月尾根との分岐を示す指導標です。ご覧の通り少し下から撮っていますよね。
で、左上画像ではほぼ同等の高さまで上がってきています。その標高差は5mくらいでしょう。右上画像ではTakemaも元気に両手を伸ばしてます。しかし‥
左上画像にマウスオンするとやらせ画像に変わりますが(笑)、実際このような姿勢でのミニ休憩が頻発したのは事実です。嗚呼衰えたりTakema(苦笑)。もっともこの山行中にこんなふうになったのはここだけで、実は筋肉痛も予想外に少なかったのは不思議でした。荷物が軽いこともあって翌日以降はさっさと身体が山慣れしたんでしょう。ちなみに高山病のせいにしておくと都合がよさそうですが(実際過去にも西鎌尾根などでかなりの頭痛に悩まされたこともありましたし)、今回は全く頭痛がなかったので単なるバテだと思われます(笑)。
というか上画像の場所から頂上まではほんの数分だったんですが、やっぱりバテていたんでヘロヘロ。混雑中の頂上に場所を見つけて座り込んだらしばらく立ち上がる元気がありませんでした。
まぁそれでもしばらく休んでいたら落ち着いたんで、お湯を沸かしてお茶かコーヒーでも‥ん?あれれ、スティック系の飲み物一式を置いて来ちゃったみたい(無念)。というわけで白湯を飲みながら遅めの「朝食のお弁当タイム」といたしました。しかし全部食べられなかったのはバテのせいじゃなくて少食人種だからです(しつこい)。
しばらくして頂上写真を撮ってもらうべくとお願いしたんですが‥たった今到着したガイドツアーの一行さんが写り込んでました。
ちょっとイマイチ感が強かったのでこのあと各自で撮り直しました。ま、気にするかしないかは個人差ありなのでしょうがないです。
このあとは頂上部をぐるぐる回りながら周辺の山々を撮り続けます。もうすっかり元気、さっきのバテバテは何だったんでしょという感じ。
八ッ峰のとげとげもしっかり見えてますが雲は多め、それに対して南側の剱沢方面はかなりいいお天気です。
最後にそれぞれの頂上タンノー画像を撮影しましたが(ついでに祠ソロ画像も=右上画像マウスオン)、この時点での頂上滞在者数はこの日のピークなのじゃないかと思うほどの大混雑。ちなみに剱沢小屋で何組かのパーティに話を聞くと、口を揃えて「今回は剱を登りに来たので、ピークハント後は室堂方面に戻る」とおっしゃっていました。さすが日本百名山の一座だと思うと同時に、明日からの山行はとても静かなものになりそうだと想像できました。もっとも、
山中5泊にして頂上1つというのは日本の山ではかなり珍しいはず(実際は頑張れば4泊で歩けるというか皆さん4泊行程のようでしたが)。うーんたまにはこういう山旅もいいもんです。
しかしここでふと。今朝、とてつもなく早い時間から登り始めていた人がいたというのをこのページの上の方で書きましたが、あの人たちはどう考えても「ガスの頂上」に滞在し、そして下っていったわけですよね。おそらくはこの段階で相当下まで下っているか、またはすでに室堂方面に向かっているはずです。というわけで、
性格の悪さを丸出ししたところで(苦笑)、さーて、それではわれわれも下り始めましょうか!