− その14 嗚呼恐るべし雲切新道 −
言うまでもなくまずは朝風呂でシャッキリがデフォルトであります!
そんなわけで7月31日の朝はしっかり快晴モードで始まりました。どこかで読んだ話ですが、運動前に湯に浸かると筋肉の活性が高まるのでヨロシイだとか何だとかで、まずは朝湯で身体を鍛え上げます(笑)。ま、もし逆効果であったとしても浸かったのは間違いないはずですが(笑)。それにしても前日午後の僅かなぐずつきを除いてはいい天気が日々続き素晴らしいことです。それにこの室堂−欅平ルートは飲み水確保の心配をしなくていいのでとても安心です。唯一の難点はといえば、
まぁそれはしょうがないことですのでハナからあきらめてましたが。それに今回は小屋泊まり縦走だったので、毎日シャワーやお風呂そしてさらには温泉にも入れたし‥でも、
「山で風呂!」自体が僥倖そのものなのに、それが連日続くというのはもう奇跡に近いですね。何でこれまで来ようとしなかったのか不思議なくらいです。ま、剱岳を往復しない限り行程途中にピークがないので「登山としての決め手に欠けていた」からかも知れませんが、実際のところこのルートが変化に富んでいて楽しいのは間違いないところ。と、まだ行程途中なのに妙にまとめ気配となりましたが、「変化に富んでいて」に注目です。本日の「変化」は登山者の間でも名にし負う「雲切新道」の下りです!(詳細については後述)。まずはその前に朝ごはーん!
前ページにも書いたとおりこの日われわれの朝ごはんタイムは7:00、山小屋の朝食タイムとしては相当に遅かったわけですが(しかも3人パーティは4時朝食だったし=これはかなり早い)、そんなふうに融通を利かせてもらえるのが小規模の小屋の利点なのでしょうね。でもTさんはじめ関係者の皆さんにとっては手間が増えるだけのことなので申し訳ないです。
あ、朝食は左上画像の通りとりたてて特別というわけではありませんでしたが、そこに1品、右上画像の品が添えられておりました。これは‥
花のシーズンもほぼ終わりということで1つしかないということでしたがそれで十分です。夏山の恵みを堪能させていただきました。
さてそれではもうひと風呂そろそろ出発です。TさんKさんMさんにお礼を申し上げ、まずは昨日と同じく沢を渡って源泉地帯へと登っていきます。
沢沿いの雪渓は昨日の午後に比べてもはっきりわかるほど溶けていました。ひと登りして源泉地帯へ。
本日われわれの行程は黒部峡谷の阿曽原温泉小屋まで。コースタイム的には楽勝なので湯っくりした上での出発だったわけですが、ここからの下りは‥
昨晩の宴会中に伺った話によると「いわゆる北アルプスの有名急登には入ってないけれど全然遜色ない急角度ですよ」とか、「道の両側にブッシュがあるのであまり高度感は感じないかも知れませんが、地形的にはナイフリッジなので転けたら一気」とか「以前に10mくらい転落したした人がいて、怪我はしていないということなのに上からロープを垂らしても上がってこないんですよね(以下略)」とか‥。
とにかくいろいろと激しい道のようなのです。おしんこどん大丈夫かなぁ。
ただし旧道なる仙人谷ルートを放棄してまで新道を開拓したのは、当然「こちらの方がまだ安全」という理由があるからです。詳しくはこちらのページをご覧下さい。チーム阿曽原、やりますねぇ。
源泉地帯からは斜面を登り気味にトラバースしていくのですが、仙人温泉小屋がよく見えるようになったところでおしんこどんが!
ちなみに谷を挟んでこれだけの距離があります(左上画像下部を凝視した上で左上画像マウスオン)。
【一瞬で終わる動画です(全4秒)】 |
やがて対岸の小屋からKさんとおぼしき方がホィッスルを吹きつつ赤い旗を振り始めました!これはお別れの合図でありまして「また来てねー」という小屋からのメッセージでもあるのです。実は今朝、3人パーティがわれわれよりもはるか早い時間に出発したそのまた数十分後、Kさんがわれわれの寝ている小屋のすぐ前でホイッスルを吹き、旗を振る風切り音も聞こえたので、まだ寝ていたわれわれでしたが「ははぁ‥」と理解したわけです。
しかし普通はKさんが下山客に「サヨナラー」とやるところのものを、おしんこどんが先にカウボーイよろしく指笛で伝えちゃうというところに「わが妻のやる気」を感じずにはおれません(笑)。聞けば、
なるほどねー。しかし指笛ができる女性って、特に日本人女性の場合かなり少ないんじゃないですかね?ちなみにわたくしTakemaも指笛はできません。口笛はできますし歯笛はその昔かなり‥(でもいま試してみたら歯笛はほとんどできなくなっていることが判明。ま、出来ても披露する場もありませんが)。
そんなわけでどうも悪評しか印象に残っていなかった雲切新道@800m一気に下降の始まりです!
最初こそ後立山側の稜線が眺められますが、その後はお腹よろしく急降下のセイロガン!このハシゴも何セットか連続します。
キツイ下り途中で立ち止まって撮影というのは面倒だったので、やはりハシゴ画像(=必ずTakemaが止まる)が増えますね。しかし全体的な傾斜は急だし、右上画像のハシゴも一番あぶなっかしいのはハシゴ最下部から撮影ポイントへのトラバースだったりします(写ってませんが)。
そしてうわさのナイフリッジ。基本的に登山道を忠実にトレースすれば危険はないのではありますが、下手にバランスを崩したりすると脇のブッシュが支えてくれる可能性はかなり低いでしょう。そういう意味では確かに「気を遣う道」ではあります。
しかしその一方で、念入りに整備がなされているのと、沢沿いルートでは大いに頻発しそうなルートファインディングの不安が一切無いこと、また天候による通過困難化の可能性をほぼ考えなくてよいことなどはまさに大メリット。チーム阿曽原ほかルート開拓に携わった関係者の皆さん、本当にありがとうございます。
しかし感謝したところでまだまだ道半ば、真下に見えている黒部川のあの本流まで下らなきゃいけないんだよなぁ。頭の真上から太陽にアブラレながらずんずんと下っていくうちに、徐々に灌木の背丈が高くなり、やがて道は森の中を行くようになりました。ふぅ。地形もリッジから普通の尾根、そして普通の斜面という感じに変わりましたが、それでも相変わらずずんずんと下ります。ただ九十九折りになるので道の傾斜自体は随分緩くなりましたが(両上画像マウスオンでそれぞれの拡大画像に変わります)。
しかぁししかし、沈まぬ太陽はあり得ず、そして終わりのない下山道というのも存在しません。トラバース道になりちょっと登ったり下ったりの道を進んでいくと‥
おおー、ようやく仙人谷の本流に出ました!ごらんの通り橋が架けられているので渡渉の心配もありません。というわけでこれまでの灼熱モードに活を入れるべくまずは手先を冷やしクールダウン!さらに顔を洗ってさっぱーり!しかし思っていたほど水が冷たくなかったのは意外でありました。上流にはあれだけ雪渓があるのにね。
さてここからは主に岩場にそこそこ強引に造られたコンクリ道を行くことになりますが、いかんせん幅がかなり狭いのでほぼすべての区間にステンレス製とおぼしきクサリが設置されています。
しかも、沢はどんどん高度を下げていくのに対して歩道は基本的に水平なのでいつの間にか高度感も出てきますし(笑)。
そしてやがて、「その高度差をクリアすべく」最後のハシゴが登場するのでありました。しかしですね、
一番上の部分が左上画像ですが、下りた先に水平に近い鉄板が見えますよね。しかし徐々に傾斜を増すハシゴ、そして右上画像のように日陰の場合は何の問題もないんですが日なたのハシゴ段が熱いっ!そんなわけで最後の方では(左上画像マウスオン)「急だからしっかりホールドしなきゃイケナイのに熱くて手でしっかり持てない」という内憂外患ABCD包囲網モードに陥ったというわけなのです(苦笑)。
まぁ「こりゃ無理握れない!」というほどではなかったのが幸いでしたが、シーズン中にはそんなタイミングもあるのかも知れません。そんな時にはグローブがあるといい‥のでしょうか?しかし「ハシゴの途中から熱くなる」となると対応できませんし、そもそも天気のいい夏山の行動中にグローブなんて暑くてうっとおしくてたまりませんし‥たぶんわたしはこれからも素手人生まっしぐらだと思います。
最後のハシゴをクリアしてしてしまえばもうそこは仙人ダム。はるか下に見えていたダムまで下り切ったのですから気分は悪いはずもありません。しかしここから、登山道は妙に人工的なルートを通ることになります。
左上画像の景色を眺めながら少し登ると右上画像の場所へと導かれます。そこには確かに方向を示す看板がありますが、どう見てもこれは人工的な構築物の上ですよね。矢印に従って進んでいくと‥
黒四ダムからここに至る「秋限定」の下(しも)の廊下歩道、そして仙人池方面から下ってくる雲切新道はまさに「ダム施設の階段で合流」するというわけです。
「黒四」というからには「黒三」にあたる施設等々もあるわけで、ここは黒三の発電用施設にあたります。しかしこの施設はもちろん更新されているとはいえダムの竣工は戦前(1940年)、つまり戦前にはこのダムがすでに同じ姿を見せていたというわけです。その過程についてはここでは言いますまいというかあとでたっぷり。なお黒四の竣工は1963年ですからぐぐっと高度成長期ですね。
さてダムサイトから下流を見ると、
間違いなく発電に利用された水なのでしょうが、ということはこの建物及び地下のどこかに「巨大な発電設備が鎮座」していることは間違いもないわけで、そしてそれが今年(2012年)から72年も前に構築されていたこと、さらには‥いや、それについては次ページのネタとして‥
ここではとりあえず夫婦の記念写真をアップしてお茶を濁す次第です(大苦笑)。