− その17 いよいよ最終日、阿曽原から水平歩道を欅平へ(2)−



水平歩道も核心部、黒部川まで真っ逆さまだけは避けたいぞ(大太鼓付近にて)。

再び断崖絶壁を辿るようになりますが、ときおり樹林帯チックなエリアに入ったりすると「谷側に木がある安心感」を感じます。とはいえまばらに細い木があるだけなんですけれどね。

ふと下流側に目をやると、はるかに欅平駅周辺が遠望できました。機関車の警笛なども聞こえてくるんですが、実際はまだここから3時間以上かかるんで、気を抜かずに歩かなきゃいけません。道自体は平らなので息が切れることはないんですが、うっかりつまずいてよろめいた方向が悪ければ、約1/2の確率でこの世からオサラバですからねぇ‥。
水平歩道はこんな感じの道だと思って下さい。



こんな「人工足場=桟道」もあちこちにあります。それにしても保守管理はそれこそ命がけでしょう、頭が下がります。

それにしても昔懐かしカニ族ご愛用のキスリングでこの道を歩けと言われたら「じぇったいイヤです」といいたくなる道です。でもその昔は‥当然歩いた人々もいたんだろうな(恐)。

さて歩道の幅が狭くなってきたなぁと思ったら、大太鼓展望台の看板が。しかしのんびり出来るスペースなど皆無で、手すり代わりに張られている番線(針金)だけが文字通り命の綱です。しかし道中を通してほとんど持つことはありませんでしたが‥。


岩を穿った道と桟道とが交互に続きます。共通するのは「ザックを岩陰に引っかけたら即グッドバイ」ということですが、それでも当然岩寄りを歩きたくなるのが人情ってものですよね(苦笑)。ちなみに水平歩道ということですが、ほぼ徹底的に高度の水平を保つということは‥

これはこれでシンドイというか、精神衛生上かなり疲れます。もっとも直線で歩くことなどもとより不可能なのですが(大笑)。

それにしても人間の順応力とは大したもので、もうこの頃になると高度への恐怖心はすっかり消えていました。そういえば高熱隧道掘削時の作業人夫も、最初は「もっと低い温度の作業場でも熱くて作業不能」だったのが、いつの間にか「もっと熱い作業場でも働けるようになった」ということだったっけ。と、ここまでタイプしてきたところで‥

そうか、そういうことなのか!実感としてわかるぞ(苦笑)。

そんなわけでただひたすらに黙々と歩いていくと(実際は「この沢なんだろうなぁ」と思いながらでしたが)、いよいよ志合谷を渡る場所までやってきました!

先ほどのオリオ谷同様、沢の下をトンネルで通過するわけですが、右上画像をご覧いただければわかるとおりこちらは素掘りのトンネルです(一部に補強あり)。しかし先ほどのトンネルと大きく違うのは‥

ではではヘッドライトを手にした上で行ってみましょう!



この上にはどうどうと沢水が流れ、そしてその上には未だに分厚い雪渓が載っているはず。



途中には抜け穴(水抜き用?)があります。内部は排水工事がなされておりほとんど濡れませんでした。

志合谷のトンネルを歩いていきます。
志合谷を過ぎても道の様子は相変わらずで、延々と断崖ど真ん中直球ルートが続きます。そろそろ飽きてきているのは山々ですが、こんな時こそ気を引き締めて‥手にしているカメラも落とさぬように気をつけねば(他山の石)。

左上画像を撮影している時に思ったこと。「水平歩道の標高はずっと変わってないけれど、黒部川はどんどん下ってるんだよな。ということは落ちた時の標高差は1時間前よりも今の方が大きいってことなんだな、落ちたらより一層痛いんだな」と(笑)。

道中にはスパッと切り立った岩の間を行く道もありました。これって、やっぱり人力で開削したんだろうな。しかしこうまでして水平を保つ必要はあったのでしょうか?と、ここまで思ったところで「そういえば阿曽原付近の水平歩道の脇には朽ちたトロッコの線路があった」ということを思い出しました。もしかして、ごくごく簡便な形で線路が敷かれていた部分のかもしれません(しかしwikiなどにはそんな記載もないので勝手な推測ってことで)。

さらに進んでいくと再びトンネルが出てきました。ここなどは岩壁が急峻すぎて「トンネルで通すしかない」ということだったのでしょうが、どうやら最初からトンネルというわけではなかったようです。左下画像にマウスオンしてみて下さい、元画像のズームに変わります。

おそらくはかつて桟道をくくりつけていたはずの太い鉄釘が中空に突き出ています。ひえぇこれは怖そう。というわけで、落盤でもない限りとっても安全なトンネルへと逃げ込んでひと安心(笑)。さらに進んでいくと、おお、送電線の鉄塔に出ました!

こういう構造物を眼前にすると「欅平近し」を強く感じないでもないですが、しかしまだ標高差があるんだよなぁ。ちなみにややくたびれモードのおしんこどんは気がつけばまだあんなところに(右上画像マウスオン)。

いくつか鉄塔脇を通り抜けるとだいぶ古びた看板があり、そこには何とか判読可能な文字で「欅平駅1.3km」と書かれていました。そしてそして、ここからは念願の下り「シジミ坂」です!こんな山の中なのにどうしてシジミ?ちなみに水平歩道末端からの標高差は350m!水平距離を考えればとてつもない下りです。



やっほぉ下りだーい!ちなみに右上画像は半分くらい下ったところにあった指導標です。あと0.7km!

しかしこの下りが当然ながらなかなかに手強い!一部には砂地で足場が不安定な急坂もあったりして、でもここで転けてもたぶん途中で止まりますから問題なし!(いや多少の怪我はするかもしれませんが)。ちなみにシジミ坂の中間あたりでお父さんと中1くらいの男の子とすれ違いましたが、すでに13:00を回っていたこの時間から登り始めるとは‥今から阿曽原まで?いやほかに選択肢ないし(笑)。夕方到着とはあまりお勧めしない行程ですが、まぁこの日は夕立の心配もなさそうだったし結果オーライだったことを祈ります。



室堂からの直線距離こそ約14.4kmですが、実際の歩行距離は30kmオーバーでしょう。今回は山中5泊でしたが、後半の温泉に重点を置いた結果湯っくりモードになったわけで、多くの人が4泊で踏破しています。根性が座り体力モリモリの人なら3泊で歩く人もいるでしょうね。でも別に急がぬ旅ですしわれわれはこれでいいのです。そういや学生時代も「今日の行程は2時間ちょい!」なのになぜか5時前にテントを撤収して歩き始めたので、到着時には遅い下山パーティがまだテントを撤収中だったりしたこともあったっけ(三俣蓮華発双六着)。

さて、宇奈月行き直近の列車は14:16‥いや、この列車は工事列車と書かれていますから一般客の利用は出来ませんね。となればその次は‥うーんまだ45分以上あるぞというわけで生ビールと唐揚げほか軽いおつまみで無事の下山を喜び合いました。

このあとは列車に乗って帰るだけ‥いやちょっと待て、そうじゃないんですよ。今日の宿黒薙温泉旅館までは‥

そんなわけで観光客の皆さんと一緒に欅平行きの列車に乗り込みます。運転間隔が空いていたので満員御礼だったらザックが邪魔だよなーと思っていたのですが、とりあえず横1列で2人座れたのでまぁ楽勝。そんなわけでガタンゴトンとトロッコ列車に揺られていきます。
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