- その4 滝峡荘の湯をフライング入浴 -



もくもくポッポポー!発電中!

(2024年8月8日-8月18日 その4)

ところで前日、滝観荘チェックイン時の宿代(前払い)支払い中に「滝峡荘」についてうかがったところ、何ともびっくり系のお答えをいただきました。要約して以下にまとめます。

Takema 「なかなかここまでは来られないので、明朝はすぐ上の滝峡荘にも
立ち寄りたいと思っています。あちらでは日帰り入浴を再開している
そうですので。700円と聞いていますが、朝は10:00からですか?」
管理人さん 「あ、滝峡荘はこちらと姉妹関係にありますので、今のところは
こちらにお泊まりの方は無料で入浴できます。朝は何時頃の入浴を
ご希望でしょうか?もしよろしければわたしが鍵を開けますので。」



というわけで、朝9時だったかにお願いし‥いや、画像記録を見ると8:30過ぎに現着していることが判明。8:30にお願いしていたのかな?ちょっと早すぎでわがままでしたね(正規営業は10:00から)。まぁ幸い素泊まり宿ですから管理人さんも朝餉の準備や片付けはなく、また泊まりはわれわれだけでしたから朝もそれほど忙しくはなかったはずだと信じます(苦しいな)。

なお、管理人さんのお言葉の中に「今のところは」とありました。この(無料の)扱いがいつまで続くかはわからないようです。またわれわれのような「フライング入浴」についてもお宿の状況によっては「無理、駄目です」といわれても仕方がないことでしょう。「たまたまわれわれの時はそうしていただけた」と考えておくべきで、「必ず融通を図ってくださる」わけではないとご理解下さい(チェックイン時に確認してみるのがいいとは思います)。

話を戻していざ滝峡荘へと向かいます。山奥のどん詰まりにあるここ滝ノ上温泉ですが、朝7:00-8:00ころの車の通行は比較的頻繁です。そう、本当のどん詰まりにある葛根田地熱発電所の関係者諸氏が通勤してくるからなのですが、うーん、やはりそこそこの雇用を生んでいるのかなと(後述)。





という感じでありました。まぁもともとはもちろん温泉施設なのでしたが(滝ノ上温泉は乳頭山への登山口でもありますし)、一時休業の間にこの地熱発電施設を整備するとともに、お風呂については昔の浴室部分をできるだけ生かしつつ再建し、2022年にリニューアルオープンしたまだピカピカの施設なのです。



詳しくは公式サイトをご覧いただければと思いますが、こちらの地熱バイナリー発電所では小規模とはいえ最大460kWの電力を地域に融通しているのだとか。宿泊した滝観荘の電気もたぶんこちら由来なのでしょう。



そして、その脇にひっそりと佇む?温泉施設が滝峡荘(りゅうきょうそう)です。「滝」を「りゅう」と読ませるのは滝観荘(りゅうかんそう)もそうですがなかなか独特である気がします。ところで右上画像の看板ですが、なぜか「滝」の字だけが小さい?でも看板自体は古くからのものに見えるし?

というわけで検索していると、ずっと以前から拝見していた「はしご湯のすすめ」さんサイトに、旧施設における同一看板の画像を見つけました。引用許可をいただきましたのでこちらで比較してみましょう。




はしご湯のすすめサイトより画像引用、2013年)

見比べてみると‥「滝」の字は、さんずいの三本目の色褪せの様子を見るにほぼ当時のままの筆でしょう。が、「峡」「荘」は明らかに後から加筆、いや加筆というレベルではなく「元の字体」を無視して大らかに書き直したようです(笑)。

その昔、鎌倉時代の説話集「古今著聞集」には、半端な書道家が藤原行成(三蹟の一人)の書した額を修整したために命を落とすという話が綴られていますが、それはともかくとしても‥



これは謎です。9時にはこちらの管理人さんもお越しになると聞いていましたが、その前に現地を離れたので聞けずじまいでしたが。

それにしても、再建以前の佇まいをみるにつけ「たぶん自分が当時浸かった滝ノ上の湯はここだったんだろうな」という思いが強くなりました。木の浴槽だったのはほぼ間違いない記憶として残っていますし‥ではいざ、すでに解錠してもらっている滝峡荘内部へ!



内部に入ると広いくつろぎスペースがあります。テラスもありなかなかお洒落です。ただもしかして施設構築時にいろいろあったのか、公式サイトには「(今のところ)宿泊はできませんので滝観荘でお泊まり下さい」的な記載があります。宿泊も念頭に置きながらの建築だったのかな?もしそうであれば、この施設ってもう少し手を入れれば貸し切り高級云々にできそうな気もするのですがねぇ(個人的に「それはやめてほしい」という思いもありますが)。









こちらの湯小屋は、上屋はともかく浴槽はできるだけ往時の造りを生かす形で再建されたそうで(「多少広くなった」というのは手前側の踏み段設置のことかな?)。またシャワーなどの設置はなく昔ながらの湯汲み場の位置も基本的にそのままなのだそうです。



いかんせん古い訪問(前世紀)かつ温泉にさして興味が無かった頃の訪問なので断言はできませんが、やっぱりかつて訪れたのはたぶんこの滝峡荘だったのかな(木の浴槽だったし)。たぶん30年くらいぶりなのかな。




案外湯面が低いのは排湯口の低さに由来します。正しい湯面高。

高温源泉なので投入量はちょろちょろでしたが(夏ですし)、最初にざざっと湯揉みをしたら熱いながらに入れました。たぶん45度ジャストくらいだったかな。湯守の調整の完璧さに「さすが!」と頭が下がりました。だって最後に調整したのはおそらく12時間以上前のことでしょうから‥。

こちらの管理人さんですが、もともとの「滝峡荘」の経営者、またはその係累の方なのでしょうか。そもそも「滝観荘」も自分が初めて来た頃とは経営者が代わったはずで、現在はどういう形でこの2つの施設が維持なされているのかはわかりませんが、どうも完全な同一経営母体ではなく「緩く繋がっている」感じです。上で書いた「今のところは(無料です)」というのもそうですし、このページを書くにあたって旧滝峡荘の佇まいを画像で見るにあたり感じたことがあったからです。それは‥





滝ノ上温泉エリアに続く県道は、冬期は関係者(発電所関係)を除いて閉鎖され立ち入ることができません。それは同時に温泉施設の冬期メンテナンスにも手間が掛かることを意味します。

上のテラスとて、利用者がいないわけなのですから除雪もそう頻繁に行われるわけでもなさそうです。それでもあえてこのテラスを造ったところにこの施設設置者の思いを感じるのです。なぜなら、




はしご湯のすすめサイトより画像引用、2013年)

現テラス(2つ上の画像)って、もともとの地権者たるオーナーさんが発電施設の構築と施設の再建とをするにあたり、温泉関係施設については1つ上の画像のような「テラスを復活させたかった」という思いを具現化したものではないのでしょうか?みんなでワイワイできるコモンスペースとして‥。

なおすぐ近くに位置する滝観荘と滝峡荘ですが、もともとの経営母体も違うことから利用源泉も別で、滝観荘は「第二鳥越の湯(63.4度、pH4.5、単純硫黄泉)」、滝峡荘は「滝峡荘の湯(96.0度、pH8.7、ナトリウム-塩化物泉)」と異なっています。確かに滝観荘の湯は硫黄臭を感じましたし、滝峡荘の湯はさっぱりとした単純泉の熱みを感じました。でもそれぞれにいいお湯なのは間違いないです。

今回滝観荘を泊まり先に選んだのは正解でした。まぁ訪問時の運(貸し切り)もありましたが、静かに過ごすのには一番です。TVはなくてもWiFi電波はありですし。



さてこのあとはすぐ奥にある葛根田地熱発電所方面へと向かいました。が、こちらにはビジター用の常設見学施設がありません。それとこれは帰ってきてから知ったのですが、ここに設置されていた2機の発電設備のうち、1号機(1978年運転開始)は地下の蒸気量減衰により、設計最大出力5万kWだったものが1万kW程度まで下がっていたこともあり2022年に廃止されていました。2号機(1996年運転開始)はもともと3万kWの出力設計だったようですが、たぶんそちらも減衰があるのかどうか、とにかく「1号機用の蒸気井噴気を2号機に回す」ことになったようです。

上画像には軽トラ等の作業車両が駐まっており、周辺には多くの作業員の方々がおられましたので早々に退出しましたが(別に不法侵入はしていませんが)、



考えてみれば自分もいくつか地熱発電所及びその周辺を訪問してきましたが(ビミョーな表現であることをお許し下さい)、施設周辺に作業員の方々が多くおられることは稀だったわけです。

地熱発電所は安定して運転している限りそれほど多くの運転員を配置する必要はないわけで、そこに人が多いというのは何らかの手を入れる必要があることを意味するわけです。葛根田の場合、発電機廃止に関係する作業をなさっていたということだと思われます。



おしんこどんが滝ノ上の朝湯*2(正しくは*3)による睡魔大王とのバトルにいそしむ中、自分は玄武洞をちらりと見学してきました。1998年に大崩落があったらしく往時の姿ではないようですし、県道沿いにはバックネットのような防御網がめぐらされておりました。岩壁は対岸とはいえ崩落すればその衝撃(破片)はこちらの県道側にも飛んでくるでしょう。その時のこと(休憩施設もあり)を考えれば防御施設の設置は言わずもがななのですが、問題はどんな規模での崩落が起きるかということです。

あまり悲観的に考えたくもありませんが、まぁ山体崩落でいえば25年以上前に大崩落し、その後そのおまけで落ちるべきものはもう落ちきったと考えてもいいのかなとは思います。今のところは。

でも、2024/10現在、岩手山においては噴火に関する警戒情報が出ていたりもするわけで、御嶽山の噴火災害を思いおこすに「火山はいつ何をしでかしてくるかもわからない」のです。そんなことを一切考慮していなかった自分はかつて呑気に真っ赤な溶岩を目の前で吹き上げている火山の火口縁に座って「のんびりと見学」をしていたわけですが(この時です。バヌアツ共和国のタンナ島ヤスール火山)。





ただこの時点で「どこに寄り道するか」についてはあまり調べておらず、岩手山の南面についてはあまり野湯の情報も知らないことから、安直に「とりあえず休暇村まで上がろうか」と思っていたわけです(つまりは「仙女の湯」でお茶を濁そうかと思っていたわけです)。



展望はもちろんいいんですけれどねぇ。

ただ上がってきてみると、平日なのに予想外の駐車車両の数。もうチェックアウト時間は過ぎているでしょうに!とこの時は思ってしまったのですが、あの車はもしかして登山客の駐車車両だったのか?

というわけで休暇村の駐車場ではなく一段下の駐車場に車を止めましたが、広い駐車スペースに駐車車両はほぼなく、しかもすぐ上にあるリフトは動いていない?「何とも商売っ気のないことよ」とこの時は思いましたが、どうやら動いていたのに気づかなかっただけ?

「○○とナントカは高いところに」の故事通り(うそつけ、故事じゃない)、自分はリフトで上がれるなら間違いなく上がっていたはず、しかも駐車場の端でさえ上のような展望が得られていた日ですから、上部からはさらなる大展望を楽しめた‥はず。まぁこのときは知らずに諦めました。

さてすると温泉か‥。しかし休暇村の湯や仙女の湯は以前宿泊したときに入っているし、近くにどこか‥と思って検索してみたら、「ありね山荘でかけ流し湯の入浴可能」とあります。実は網張温泉元湯からの引き湯なのですが、露天風呂からの展望もいいみたい。というわけで行ってみると‥








というわけでしっかり入浴しました。料金は420円とこの手の施設にしてはお安めですし。ちなみに先客さんありのため湯画像はなしですが、この日の湯は何と透明湯でした。網張といえば白濁湯のイメージですが、福島の岳温泉と同じように長い距離を運ばれてくるうちに湯がこなれたからなのか、それともこの日の湯のコンディション由来だったのかは不明です。まぁ熱め湯をタンノーした次第です。



山の上ですから早くもコスモスが。ところどころに設置されていた現代版笠地蔵のようなものはアブ捕獲器「アブキャップ」でありました。黒いボール部が太陽光で暖められ、温度に反応するアブが集まり、最後は最上部にある捕獲器に入って出られなくなる、という仕組みのようです。継続使用により効果を発揮するのだとか。考えたなぁ。

さてこのあとはいったん山の上から下界に下がります。

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