Mt.Cook 〜 Queenstown


                   

Cook村に着いたその日こそまあまあの天気だったものの翌日はしっかり雨。それほど寒いわけでもなく、走ろうと思えば走れたかもしれないが、無理に急ぐ必要も、新調したカッパの防水性をわざわざ試す必要も感じなかったので、すぐさま一日停滞とする。バイクはYHの管理人さんが「こっちの Private 車庫に入れといていいよ」とおっしゃってくれた言葉に甘えさせていただき、全く濡れることもなかった。約10年前と同様、村内をぶらぶらと散歩し、17:30にパブがオープンするのを待って(以前はもっと早くから営業していた気がするが・・)ほとんど一番に駆け込むあたりは、まるで自分の中で時が止まっているような感じだった。村にも大きな変化は見られずほっとする。

そういえば、10年前、南島の特にカンタベリー地方では、ビールといえば「DB」と相場が決まっていた。オタゴのほうは「Speights」だったけれど。でも、今回はどこに行っても「DB」ならぬ「CD」ビール(何でも「Canterbury Draught」の略らしいが)がかなり幅を利かせていた。クックのパブの店員さんに聞いたら「数年前に出た新製品だけれど、今はここではDBと同じくらい売れてるかな」といい、「飲んでみる?」と結構大きなグラスで試飲させてくれた。味はDBをちょっとドライにしたような感じだが、根っからのDBファンとしてのTakemaとしては少々複雑な思いだ。Chchでバイクを返したあと、空港までショップの車で送ってもらう中バイク屋のおいちゃんが「そうか、TakemaさんはDBが好きですか。でも、あれって甘いでしょ?」という。かくいうあなたも数年前までは当然のようにDB飲んでたじゃない!と言いたくなったが、万が一「俺は昔からスタインラガーだ」なんて言われたら返す言葉がなくなるのでやめておいた。今から数年前、ダイエーが「格安輸入ビール」の1itemとしてDBを輸入してくれたときは狂喜乱舞した記憶があるのだけれど、ダイエーさん、あの時より値段上げて構わないからもう一度輸入してくれないかな。あ、今ダイエーはそれどころじゃないのか?(ごめんなさい)。

そうそう、WH関係のMt.Cookのページで、「Mt.Cook でキャンプしていて、YHのシャワー借りに来てた」という、何とも不謹慎な記述がありましたが、「Public Shelter」の建物の裏側に無料シャワーがありました。シェルター自体は泊まることは不可能ですが、このシャワーは建物の外側からアクセスできる構造になっていますから、もしかしたら24H利用可能かも。シャワ−室自体にはキーロックは付いてませんでしたから。まさか夜になるとメイン電源落とすなんてこともないでしょう(あるかなあ)。とにかくクックでキャンプするんだ!という方はお忘れなきように。

さて、本題に戻ります。1日停滞した翌日はまあまあの天気。Mt.Sefton のほうは雲に隠れて見えないけれど、冒頭の写真のようにしっかり晴れてくれました。「次はいつ来るのかなあ」と、何となく後ろ髪を引かれる思いで出発。しばらく走っているうちに Petrol 残量警告灯がついたりしてちょっとは驚いたけれど、まずは何事もなく分岐の町 Twizel へ。給油と Fish'n Chips の軽食を済ませ、再び快調に飛ばし始める。とはいってもここまで交通量が少なく道もまっすぐだと、かえって「限界に挑戦!」なんて気にはならず、120〜130の巡航くらいか。大きなフロントカウルのおかげで風圧をあまり感じることもなく、のんびりした気分。途中陽がかげってちょっと寒くなったのでジャンバーを着たくらい。
さて、途中の峠の頂上でバイクを止めて休んでいたら、1台のバンが止まった。降りてきたおじさんはこっちのバイクを見て「いいバイクだねーっ」と話しかけてきた。ちなみに、このバイクで走っていたらこの人に限らずやたらに多くの人が話しかけてくる。止まってタバコ吸う暇もない(笑)。やっぱり珍しいんだなあと思うと同時に、日本製バイク乗ってる白人には話しかけなかった人もいたところを見ると、BMWだからっていうのもあったんだろうな。で、このおじさん(63才とかいってた)が突然、「いいものを見せてやるからこっちに来い」という。なんだろういいものって(やましい発想ではないよ)と思いつつ彼の車の中を見てみると、そこには果たして分解収納された一台のバイクが。

しかも見てみるとかなりの年代物の様子である。聞くと、「1930年代のバイクだ」という(メーカーの名前は聞いたのだが忘れてしまった)。このおじさん、今でも現役ライダー、しかもメカニックから何から全て一人でこなすというすごい人だったのだ。しばしバイク談義に花が咲く(「英語力の限界に挑戦!」って感じだったけれど)。今回オタゴ地方をこのバイクで回って帰る途中で、これから Chch の家まで戻ってまた組み立てるんだとか。そりゃそうだよな。あのバイクに全部走らせたらそれこそ壊れてしまう。「うーん好きな人は好きなんだなあ」と、ノーメンテナンスばんざい派のTakemaはふと思うのであった。
峠を下り、 Cromwell のあたりまで来ると空はすっかり晴れ渡り、「NZの夏ここにあり」という感じの(日本に直せば9月下旬です。念のため。)気温になった。ここで昼食。さて、「そろそろATMでお金おろさんと手持ちが心もとないぞ」と思って銀行を探したものの、肝心のATMはなんとメンテナンス中。今日はこのあと Queenstown の手前でバンジーやるつもりだからなんとかここでおろしておきたかったのだが、まあいつ直るのかわからない修理を待ってても仕方がない。ということで、この日のバンジーはなんとクレジットカードの支払にしてしまったのだ。普段滅多にカードを使わない(一度味をしめるとローン地獄にはまりそうなのが恐いので)Takemaとしては珍しいことをしてしまった。

なお、バンジー関係につきましてはこちらから行くことが出来ます。

Cromwell から Queenstown までの道は正直いってあまり面白いものではない。くねくね曲がりくねった道で、しかも交通量もそれなりにあるから前が詰まってしまうと何だか日本の国道を走っているような感じにもなる(「詰まる」といっても前に2台位いるだけなんだけれど)。でも不思議なことに、それまで数時間自分の好きなように走ることの出来ていた身からすると、流れに乗って走ること自体が何か新鮮で、なぜか少し落ち着いた気にもなる。

バイクを止め、43mの橋の上から川に向かって飛び込み、また何もなかったかのように、10年前も一人で通った道をバイクで駆け抜ける。非日常の中で自分の思いのままの時間が過ぎていく。「ああ、WHの時って確かにこんな感じだったなあ」と、過ぎ去りし日を思い起こす。何も変わっちゃいない。人が去り、町並みこそ変わるかもしれない。でも、構成分子のいくつかが変わっただけで、世の中は以前と同じように動いている。「いや、自分は変わった」と思うにしても、それとて実際は何も変わっちゃいないのだ。「あの頃とは違う」と自分に思わせることによって精神的安定を維持したいだけなのだろう。でも、こんなことを考えるようになったこと自体、しっかりおじさん化してきたのかなあ(それはそれで悪いことじゃないけれど)。読んでる人、すみません。次のページからはまたちゃんと書きます。

 「気持ちいいぞ West Coast !」

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