さあバルーンに熱風が吹き込まれ始めた。いよいよ空の旅の始まりだ。
翌日は早起き。バルーン(熱気球)というものは風に対してなすすべがない乗り物なので、フライトスタートは一番風のない日の出頃となるわけだけれど、問題はこのロッジからフライト場所のSesriumまでは約60kmあるということ。そして集合時間は6:30。ということで、ロッジを 5:30頃出発した。しかし、ダートの高速走行で一番危険なのは夜。あたりまえだが障害物が見えないからだ。というわけで出来る限り慎重に走り、6:25に集合場所到着。すごいな、まるで計算したような走りだ(笑)。
着いたときには、すでにバルーンがふくらみ始めていた。今日のお客は自分たちを入れて9人。そこにクルーが一人加わるから合計10人。すごい重さだ、浮くのかいなと余計な心配をしたりしたが、熱い空気をばかにしちゃあいけない。しっかり浮くのだ。徐々にSesriumの集落(とはいってもロッジと売店とGSだけ)が眼下に小さくなっていく。
おお、日の出だ。今日もいい天気、暑くなるんだろうな。
バルーンは徐々に、しかし着実に高度を上げていく。バルーン初搭乗のおしんこどんは何だかウスラ怖がっている様子。それも宜なる話で、乗っているバスケットは籐編み。もちろん中に補強材は入っているはずだが、見た感じは何ともひ弱な感じなのだ。足元(床下)からほんの僅かだが下が見えてしまうというのも、やはり精神衛生上あまり気持ちのいいものではない。でも、乗ったことのある人ならわかると思うけれど、バルーンって静かなのだ。「うそつけ、あのバーナーのゴオォーッって音、ウルサイったらないぞ」と反論なさる方、あなたは正解です。熱気を送るために焚かれるガスバーナーの音は確かにうるさい。でも常に焚かれっぱなしというわけじゃないし、むしろある程度の高度まで上がったら高度維持の時以外には焚かないわけですね。で、そのバーナー音があるからこそ、焚かれないときの静寂さがいやがおうにも強調される。しかもバルーン上は必ず無風(実際は風と同じスピードで移動しているわけですが)。静寂の中、ほんの僅かずつ大空の中を動いていくバルーン。機会があったら是非乗ってみてくださいね。ただし体験搭乗なんかじゃなくて(バスケットがひもで地上とつながっているやつ。北海道上士幌のフェスティバルで観光客に載せているのがあれです)ホントに飛んでいくやつでね。
バルーンは、砂丘の広がるナミブ砂漠と、それよりもほんの僅かに地下水のある草地の境目を南に進んで(流されて)いく。だから左には黒い岩山(その名も「Black Mountain」)、右には赤い砂丘という全く違う地形、色の対照がはっきりと見られる。バルーン自体も時々回転する(クルーがやってくれる)ので、思う存分いろいろな方向の景色を味わうことができる。来た甲斐あったぁ!
以前Kenyaでもサバンナ上空を飛ぶバルーンに乗ったことがあった。しかし、今回はどうも様子が違う。ちょっと考えてすぐわかった。高度が違うのだ。Kenyaの場合は「上空から動物を含めた風景を見る」というのがコンセプトだったから飛んでいる高さはそう高くもなかった。しかし今日はどう見てももっと高そうだ。そこでクルーに聞いてみた。
「今、地上高度で何mくらいなんですか?」
「えーっと、今はだいたい500mくらいですね」
「うっひゃーっ(実際こんな声を出したわけではないが)、500m!えらく高いですねぇ。」
「今日は比較的風が強いんです。だからあまり高度を上げられないんですが、風のない日は2000mくらいまで上がる(上げる)日もあるんですよ。」
地上高度2000m!そりゃコワイ。何だか聞いているだけでコワくなった。
(しかし、500mの上空にいながら2000mの怖さを想像するってぇのもなんだか矛盾した心理だったなぁ。地上高度0mで今こうしてキーボードを叩いている自分からしたら「もはやどっちもどっち」としか思えないんだけれど(笑))
結局、この日の最高地上高度は630mを記録したのであった。
さて、上空からこの砂漠エリアを眺めてみる。まずは左の写真、わずかに生えた草地の中に何やら点々と黒っぽい模様がある。あれは何だ。拡大してみてみよう(左の写真の上にマウスのポインタをのせてみてね。何だか理科の授業みたい(笑))。ふーむ、どうやらその部分だけ円形に草が生えていないということみたいですな(斜めの線は草の影です)。しかし、なぜ?まさかナミビアにもミステリーサークルが?それにしちゃあチャチだな。ん、クルーの人が説明を始めたみたいだぞ!
「真下にポツポツと見える円形の模様、あの部分に草が生えていないのは、☆●◆◇▼※〓※△□◎○@£#&@*§だからなんですね」
しまった迂闊だった。自分の英語力がついていけなかった(核爆)。
なんだかポイズネス=毒性があって云々と言っていたような気もするけれど、明確な答えはなし。これはもしかしたら地質的な問題なのかもしれない、よし、となればここはYoichi先生に聞いてみようっ!(HP運営者注:先生、こんなところからリンクを張ってすみません。よい子の皆さんは本気になって先生に質問しないでね。先生はお忙しいんだから。世の中には知らなくてもいいことってあるんだよ(大嘘))。しかし、地上に降りてから改めて聞かなかったのが、今となっては悔やまれるなあ。そして右の写真はそれこそ「水の浸食痕」そのものだろう(そんな用語あるのかどうか知りませんが)。ほんのわずかでも水の集まる、その低地にそって緑=植物の帯が延びているのが何だかけなげ。そしてそれ以外の場所の茶色も。
はるかかなたに見えていたバルーンの影がだいぶ大きく、はっきりとしてきた。高度もだいぶ下がったようだ。いよいよ着地だな。そして着地点にて朝ごはん(^o^)。