ナミビアの道路事情とレンタカー



こうなってしまったらもう大変。ちなみにこの車、横転(大回転かも)した傷が
車体の反対側にありありと。タイヤをいじってるのはスタンドから来たメカニックの人です。


ナミビアはレンタカーでないとなかなかまわりにくい国です。しかし、通行区分こそ日本と同じ左側通行とはいえ、本当の主要道路以外(B国道)以外のほとんどの道はダート、ダート、延々ダートの道ばかり。そこを70kmとか80kmとか(いや、それ以上の場合がフツーです)のスピードで走ることになります。結構危険です。しかも、アクシデントでも起こそうものなら、一番近い人家まで60km、なんて場所も珍しくはありません。ここでは、ナミビアを車で走る場合のポイントについて少しアドバイスを。

道路状況

【総論】(って、エラそうに)

基本的な認識として、日本の林道的なイメージの路面状況とは全く違うということ。全体としてはほとんどフラットダートです(時々ライトなウォッシュボードがあるくらい)。石のころがりも少なくて、圧倒的に走りやすいです。なお、道路にも等級がついておりまして、B国道はホントの幹線道路(基本的に全て舗装。舗装状態は総じて良く、制限速度は120km)、C国道(主要道路。一部を除き基本的にダート、制限速度は80km)、D国道(Cより道幅が狭くなる地方道。制限速度80km)、その他というようになっています。C国道はダートでも道幅は広く、整備状況もそれほど悪くはありません(路線によっての違いはあります)。Dになると道幅が多少狭くなりますが、基本的にはセダンの2WDでもOKのはずです(ただし、KaokolandやKalahariエリア、は除く)。なおD国道は交通量が極端に少ないですから、エンコでもしたら大変です。日本ではタイヤのパンクなどはほとんどなくなってしまいましたが、こちらでは珍しいことではありません。せめてタイヤ交換くらいは自分だけでできるようにしておきましょう。覚えておいて損なことではありませんし。


別にラリーの参加車両などではありません。ごく普通の一般車の走行風景。
こういう道を、長い日には1日500km近く走らなきゃいけないような場所も
あるわけですね。注意一秒怪我一生。すごい言葉だけど揺るぎない事実。

【個別案件】(役所の文書じゃないんだから(^_^;))

 カーブ標識に注意

地平線まで延々と続く道ですから、いつのまにかオーバースピードになってしまいがちです。しかし、カーブは時々出てきます。大体は緩いカーブなのですが、時には結構鋭角気味にカーブしていることも。直線と同じスピードで進入したら良くてコースアウト、運が悪いと横転・大回転に至ることもあります。4駆だって、ひとたび滑り出したら同じです(車重が重いぶん2駆より大変かも)。カーブの前には必ず標識がありますから、標識を見たらスピードダウン、これが鉄則です。

 アップダウンに注意

真っ平らに見える大地も、雨期には水の流れる小川となる場所が多くあります。もちろん乾期は水などありませんから、道路にもそこにわざわざ橋を架けたりはしていません。したがって、突然道ががくんと下り(2-3m)、また同じだけ登り返すような箇所が無数にあります。慣れてしまえばそんなに緊張を要する場所ではないのですが、ぼんやり高速運転していると、窪地の一番底でサスペンションが底づきしてしまいます。また、雨期は川となるゆえ、窪地エリアは目の粗い石(またはフカフカの砂)が多く、そこに高速で進入するとタイヤがパンクする可能性も高くなりそうです。そういう窪地が多い場所にはやはり「この先窪みあり標識」が出てきますから(ただし全ての場所ではない)、窪地の手前で減速するようにしましょう。

 路上の石はどのくらいころがっているのか?

こぶし大以上の石となるとまずほとんど見かけません。それだけ道路の整備状況はいいということです。ただし、「ほとんど」というのは「皆無」とは違います。時には「おおっ」って感じでころがっています。そして、高速運転中にぼんやり運転していると、進行上に突然!などということも十分考えられます。そんなとき急ハンドルでも切ったら…。路面状況には常に気を配ってください。特に四輪しか運転したことのない人は確認がおろそかになりがちかと思いますのでご注意を(二輪運転者は路面を見て走る習慣がついていると思いますが)。なお、石はともかく、深い砂にハンドルを取られる感じは常につきまといます。やばいかな、と思ったらスピードダウンしましょう。今回のTakemaは無謀ともいえるあわわkm走行もしていましたが、今こうして書いていられるのは所詮偶然だっただけ。

 ガソリンスタンド事情

町中にはTOTALやBP、ENGEN、SHELLなど、立派なGS(Petrol Station)がいくつかあります。原則的に年中無休、24時間営業の所も多いですからありがたいことです。なお、給油形式は日本と同じフルサービスで、自分でガソリンを入れることはまずありません。窓だってきちんと拭いてくれます。なお、GSの支払いは現金が原則。というよりも、カードなどでの支払いは出来ない、という話を聞いたことがあります。現金の用意を忘れずに。また、わずかな釣り銭(例:13セント=2円弱)とかはくれないことがありますが、まぁいいでしょ。ちなみに、1リッター$4弱(約60円)が相場でした(2001年8月現在)。

しかし、郊外に出ると話は大きく変わってきます。人家すらほとんどないのですからスタンドなどそうそうあるはずがありません。これまでナミビアを旅行した人の中には「ガソリンがなくなりかけ、道沿いの農場で分けてもらった」というような例があるようですが、これとてあくまでラッキーな話。農場がなかったら「平原の真ん中でエンコ」ということにもなりかねません。一日の終わり、または始まりには、最寄りのGSでまず給油、これを忘れないようにしましょう。たとえ10リットルくらいしか入らなくともこまめに給油を。道路地図などには郊外地域のスタンドの位置が書かれていることも多いです。でも、時には「スタンドのタンクの中もすっからかん」状態になることもあるとかないとか。


小さな田舎町、Uisのガソリンスタンド。
東洋人は珍しいせいか、みんなちらちらこっちを見ていたな。
 運転マナーはどうか

町中などで無謀に飛ばす車はありません(制限速度60km)。しかし、郊外に出ると皆さんかなり飛ばしています。舗装路では140kmで走っていても抜かされたりしますし、ダートでは四駆がすっ飛んでいくこともあります。ただ、道路状況のわからない我々がそのまねをしようとすると痛い目に遭う可能性も高いですから、「節度ある」運転(人によって個人差はあるでしょうが)を心がければ大丈夫。実際、こっちがひやっとするような荒っぽい運転の人は少ないです(車の絶対台数が少ないし)。なお、オービス=スピード監視カメラもある所にはあるようですが、機能しているのやら。ちなみに私はWindhoekから空港に行く道沿いにその表示を見ただけです。あとは見なかったな。

ついでにいえば、町の出入り口付近で検問をしていることもあります。私はWalvis BayとOtjiwarongoの町の出口、Windhoekと空港の間、の3箇所で遭遇しました。国際免許証を見せれば別に問題はないはずですが、一度だけシートベルトをし忘れていたときは、「罰金はN$300になりますよ」と言われてびびりました。見逃してくれた警官さん、今更ながらありがとう。さらに、向こうの人は日本人というか東洋人をあまり見たことがないので珍しがられるかも。ま、せいぜい中国語で「ニーハオ」とか言われるだけですが(笑)。

 交通ルールの違い(ローカルルール)はあるか

ほとんどないと思います。日本人がとまどいやすいラウンドアバウト(ロータリー)もありませんし。交差点によっては常時左折可能の場所もありますがごく少数。あ、そうそう、交差点での右左折の場合は接近する車両との距離に注意してください。日本の大都市なら「うん、次の直進車が来るまでに十分曲がれるな」と思われる距離があっても、こっちの人にとっては「おいっ!こっちが来てるんだから強引に入ってくるんじゃねーよ」という感覚を持つようです(わたしゃクラクション鳴らされました。日本での運転よりずっとGentlemanだったのに。首都でさえそうです。車の通行量は東京とかの比じゃないんですから、(相手のためにも)右左折には余裕を持った方がいいと思います。



道路の分岐点には必ず標識があるので、ちゃんとした地図さえ
持っていれば迷うようなことはない。日本でナミビアのロードマップが
入手できれば、事前に計画も立てやすいんだけれどね。無理か(笑)。
 市内での駐車

市内中心部などに車を止めると、なにやらゼッケンをつけた若者(が多い)が近づいてくることも多いはずです。そしてそのゼッケンにはCar Watching(都市によって名称は違いましたが)」とか書かれていたりします。彼らは「駐車車両管理人」というか、「自分と契約した車両がいたずらされないように見張っていてやる」人たちなんですね。「契約した」と書きましたが、別に「見ててね」なんて話をあらかじめしていなくても、車に戻ったときに「俺が見ていてやった」と強引にチップをもぎ取ろうという人もいないわけではないですが(笑)。基本的に悪意ある人達ではありません。というよりも彼らはそれを生業にしているわけですから(もちろん彼らに頼んでもいたずらに合わないという保証は何もありませんけど)。

「見ていてやった料」はどうやらN$1でいいようなのですが(この下のエピソード読んでね)、こちらは目立つ東洋人の旅行者ですから、「$5」とか、ふっかけてくる輩もいます。でも、夜の町中の路上などに停める場合(夕食などの都合で)はやっぱり何となく安心です。

このCar Watcherについてはちょっと面白いネタがあります。それは首都Windhoekでのこと。ちょっと郊外に宿をとった我々は、夕食にということで中心部まで車で出て、中央郵便局前のパーキングに車を停めました。で、そこにいたCar Watcherに「じゃ、これ見ていてね」と声をかけて食い物屋に向かったわけです。しばらくして戻った我々は、見ていてくれた彼にチップを支払おうとしました。しかし、運の悪いことに小銭がない。「夜だし、$2くらい払ってあげようかな」と思ってはいたのですが、$5コインしかなかったわけです。しかし、一応こっちから申し出ておいた以上支払わないわけにもいかず、その$5を渡して「じゃ、どうも」となりました。彼の嬉しそうな顔!その夜はそれで終わりました。

翌日、再び同じ時間に同じ目的で、これまた同じ郵便局前に車を停めました。そして昨日と同じ彼が近寄ってきました。「じゃ、今日も頼むね」、というわけで我々は近くのレストランへ。

さて、「今日の生ガキはイマイチだったなあ、やっぱりSwakopmundのが一番だったよ」などと話しながら車まで戻ってみると、あれ、なぜか例の見知った彼がいません。その代わりに結構年のいったゼッケンおじさんが近づいてきます。「あれ、あなたが監視していてくれたの?」「そうです」と、とってもにこやかな顔。どうやら彼は今日早あがりだったらしい。そしてふと車を見ると…あれま、汚れていた車がきれいになってる!老いたCar Watcherいわく、「汚れていたから磨いておいてあげたよ。どうだい、キレイだろ」。

彼にしてみれば、見も知らぬ車の持ち主のためにわざわざ車を磨くなどという大労働(ちなみに、車はダートを走り続けたためかなりホコリまみれになっていたものでした)をするはずがありません。ということは、この行為には次のような経緯が考えられるのではないでしょうか。

【若watcher】「じゃあ、俺はここらで失礼するから、あとの番を頼むね。見てるのはあの車と、それとこれこれね。そうそうあの白いカローラ、東洋人のカップルが運転してるんだけれど、昨日なんとチップ$5もくれたぜ。ラッキーだったよ。今日もあと1時間くらいで帰ってくると思うから、彼らには愛想良くしておいたほうがいいよ。」

【老watcher】$5かよおい!そりゃおいしい話だな!」

そして、彼はその後、自分も$5をいただくために何かできることはないかと考えた。「ん、この車、かなり汚れてるなあ。ならば磨いといてやるか!ピカピカにしておいてやればチップもはずんでくれるだろうし、これくらいの努力で$5だったら悪くない話だし。」というわけで、窓拭き、車体の泥を落として、バンパーを磨いて、はぁせっせっせのよいよいよいと

そこへターゲットTakemaペア登場というわけですね。そりゃ車を見たときはこっちだってたまげましたし嬉しかったですよ。だって車がちょっと見ないうちにピカピカになってるんですから。彼には文句なしで$5払おうと思いました。

し、しかぁ〜し!財布の小銭入れ内部の状況は昨日と逆!$2硬貨はあるけれど、あとはホントの小銭ばっかりじゃないのさ(¢10とか¢5とか)。さりとてもっと高額の紙幣というのもねぇ(目覚める貧乏天秤秤根性)。ということで、やむをえず$2コインを筆頭に、財布の中の小銭を適当にじゃらっと出してあげることにした。しかし彼、老watcherは…「えっ、聞いていたのと話が違うじゃないか、そりゃ確かにたくさん払ってやろうって意志はあるみたいだけれどさあ、でもその小銭だけじゃどう見てもそんなにはないよなあ。なんてこった」という表情である。でも仕方ない、ないものはないのだ。

ここで改めて思うのは「ナミビア人の人の良さ」である。彼だけでナミビア人を判断してしまうことには確かに無理があるけれど、普通なら?「おいおい、わざわざこれだけ磨いといてやったんだよ、それなのにこれだけのチップというのはあんまりでしょう、もう少しはずんでよ」くらいの文句というかゴネるくらいはあっても良さそうなものだろう。しかし、その時の彼にはそのような気配はみじんも見られなかった。出されたお金を受け取って、それでもまだきょとんとしているばかり(少なくともTakemaにはそう見えた)。このエピソードは、彼にすまないような、でも何だか思い出すとつい笑ってしまうような、そんな記憶として思い出される。後日、南アフリカのケープタウンで「チップをむしり取ろうと発進直前の車に向けて走るCar Watcherと、そうはさせじと急いで車に乗り込むドライバーのチェイス」をパブの窓越しに見てしまったこともつい比較ネタとして思い出してしまう。ちなみに、本来支払うべき(チップと書いてきたが、実際は「料金」と書いた方がいいだろう)相場はいくらなのか?$1でいいとも思えるし(本来は素直に受け取ってくれるはず)、ふっかけてくる場合もある。ま、$1か$2でしょうけれどね。特に北部の都市では$1で十分のはずです。

あー、駐車についての説明だけでこんなに長くなっちゃった(笑)。。


Car Watcherとはこんな人たち。市内中心部に行けばどこにでもいるのですぐわかります。
薄ピンクのゼッケンをつけてますね。ちなみにこの人は上記の登場人物とは別人。
「撮っていい?」と声を掛けたら喜んで応じてくれた。Otjiwarongoにて。
 レンタカーについて

KaokolandやKalahari砂漠方面(ブッシュマンのエリア)に行こうとするのでなければ2WDセダンで十分です。無理して4WDを借りる必要はないでしょう(キャンプで回る場合は、キャンプ道具もセットになった4WDを借りるのも一つの選択肢ではあります。車のレンタル料は明らかに高いですが、その代わり宿泊費が安くあがりますから)。なお、どこのレンタカー会社も結構新しめの車を用意しているようですが、走行距離以上に車は傷んでいるはずですので(ダート走行が長いため)、できるだけ走行距離の少ない車をリクエストすれば気休め(「たぶん故障しないだろう」)にはなります。あと、会社によっては走行距離併用システムによる料金計算がなされる場合もあります(例:1km走るごとに$0.5加算)。その場合思っていたより距離がかさむ場合がほとんどですので、ある程度のご覚悟を。予約時に必ず確認しておきましょう。ちなみにTakemaは偶然大手のAVISからレンタルしたので、走行距離約16500kmのほぼ新車、おまけに走行距離無制限でした(そして5100kmも走った)。また、レンタカーは基本的にUnleadedガソリン仕様になっています。Superじゃありませんので念のため。ついでに、付帯保険は修理その他の費用の80%までカバーという中途半端なもので、「100%には出来ませんか?」とリクエストすると、出来ないことはないがかなり割高になりますよ、旅行保険には加入していますか?ならば問題ないのでは。」ということだった。そういやそうか。でもって「自動車保険の対象外要件」として「野生動物との衝突による車のダメージ」というものがあるということも頭に入れておきましょ。Etosha国立公園内では最高時速が70kmに制限されていますが、シマウマは左右確認をせずに道路を横断しますから念のため。また、象に近づきすぎて車をバキバキにされたとしても保険はきかない、ということですね。

なお、一番安いグレードの車種をレンタルするとエアコンが付いていません。「ナミビアの風に吹かれつつ走ってこそ、ここまで来た甲斐ってものがあるってもんよ!」とお思いになるのは勝手ですが、ただでさえ乾ききった灼熱の砂漠ダートを丸一日走ったら、身体はパリパリにひからび(ダイエットにいい?)、髪の毛はガビガビ。ついでに対向車が吹き上げる砂埃を浴びまくって車内も身体も砂だらけ、というようなことにもなりかねません(いや、絶対になるでしょう)。できればエアコン付きのほうがいいんじゃないでしょうか。ついでに言えば、エアコン付きグレードになるとカーステも普通は付いています(ただしカセットだけね)。わたしらはMD→カセットのアダプターを持っていき(オートバックスとかで売っています)、360°の地平線が続く砂漠の中の道を「まぁわるぅまぁわるぅよ時代ぃはまわるぅ〜」などの思い切りミスマッチ系の歌を聴きながら走ってました(巨爆)。

さてそんなわけで、いよいよ次はダートをひたすら走り抜け、Namib砂漠方面へとむかいます。えらくゼータクなリゾートホテル?が我々を待っていた!どうぞご覧あれ。