1990 3月の日記


3月1日 晴れ

情けないというか何だか妙なことになってしまった。Copeland Passに登ってこようと思い、アイスアックス、クランポンまでレンタルしたのに、昼近くなって急に行くのがかったるくなり、結局明日行くことに決めた。Sさんという、捻挫をして身動きならぬ女性と妙な短歌をひねっているうちに変なのができた。

     泣かされて流れ流れて流されて流れる雲を眺め過ごしぬ

結局もそもそとしているうちに既に夜である。夕メシはきしめん。つまみにカレー、おかずは肉、タレはケチャップ、そして極めつけはキャベツ千切りソースかけ、きしめんにはのりとネギの薬味付き。しかもタレの中には鷹の爪。

2000注 さすがMt.Cook、日本人といるとすごいなメニューが。

3月2日 晴れ

上記のような日記はほとんど自動書記状態だった。Sさん(27才らしい。そうは見えない。もっと若く見える)はとても面白い人だ。今朝の起床は7:30ころ。出発は8:30。山の上の方でゴォーッっという風が吹きまくっているようだ。久々に革の山靴に足を入れてみて驚いた。靴底の足形をした底板がひどく反り曲がっていて、痛くて歩くこともたやすくない。考えた末、そのソールを取り外し、adidasのソールに入れ替えてみたがやはり厚さの違いはいかんともしがたく、Hooker Hutまでイテテの連続。Hutにて本底とニセソールとの間に靴下を一枚入れ、厚さを調節したことによって大分楽になったが、Trampingで使う布靴のフィット感とは比べものにならないほど痛い。Hooker Hutまで3hもかかった。

Hutでラーメンを食い、12:15出発。ホントは足の問題もあり泊まりたい気持ちも山々だったのだが、やはり明日ここから往復してクック村まで帰ることを考えると、やはり今日Shelterまで登っておくべきだ。うーむ、Shelterまでの上りはきつかった。小尾根を突き上げるだけだから迷うことはないのだが、半分小さな岩場系、しかも浮き石たくさん、ということで、Shelterに着いたときはノビる寸前。HutからShelterまでは2.5h。着くやいなやにっくき山靴を脱ぎ捨てたのはいうまでもないことだ。

ここのShelterのすぐ裏側からはいよいよ氷河が稜線まで延びている。かなり急だ。ルート取りは何とかできるだろうが(わからないけど)、明日は気を引き締めてのアップ&ダウンだ。アンザイレンしていない(できない)ので気ぃ引き締めていかないとな。さすがにトランピングとは気の持ちようが全然違う。膝下までのmudはいやはいやだが緊張するわけでなく、失敗すれば泥が付くだけだがこちらは違うものね。

外は風が強く寒い。小屋はドラム缶状であるが中は4人用のベッドサイトに区切られていて快適だ。寒いがすっかりくつろぐ。このShelterからもCookの村を一望できる。別世界だ。

明日は何時に起きよう。強風だったらいやだな。しかしこのShelterはいいなあ。

3月3日 晴れ Shelter〜Copeland Pass〜Shelter〜Hooker Hut〜Village

靴のコンディションが悪く大変にしんどかった。目覚めた頃は東側に少々雲があったが、出発の頃にはほぼ快晴に。登り始めは、氷河の上ゆえトレースのあともなく(クランポンの爪のあともないのはやはり今が夏だからであろう)、とりあえずルーティングイメージを描きながらザクザクと登り始めた。しかし、左足の二本締めアイゼンバンドがハズレやすいの何の。締めかたが甘かったのだろうが、雪渓とは違う急斜面で締め直すのは至難の業だ。

最初左よりの氷河沿いに上がっていったが、ルートを取れなくなってトラバって右側へ戻る。次にもう一度、さっきの下のルートを取ってみたが、これまたクレヴァスにぶつかって駄目(行けないことはなかったが)。では?と思って右側へ行こうとしたが、これから核心部にさしかかろうという手前でまたもバンドが緩みはじめ、観念して原点に戻る。要は左に寄りすぎているのだ。山岳氷河の急斜面をできるだけ最短で行こうと思ったのが失敗だった。

クレヴァスの小さな裂け目のあたりでもう一度バンドを締め直し、あらためて右の急斜面を見ると、何とか行けそうな気がしてくる。急直登ではあるが、まっすぐ上まで行けるのではないか。なんで左に巻き気味で上がったのか後悔する。シングルアックス&キックステップの繰り返しで一歩一歩上がる。ツアッケはほとんど刺さらない。1cmも刺さればいい方だ。しかもビレイなし。スタンスが崩れて落ちればHooker Hut近くまで1000m近くを真っ逆さまだろう。

ひえぇと思いつつじわじわと登り、大クレヴァスの脇にたどりついてハフハフ。そこからは傾斜も大分落ちて(でも二本足歩行などもってのほかの傾斜は続く)、ちょっと行けば雪原、そこから数m上、岩稜のナイフリッジこそがまさに分水嶺で、Tasman Seaに至る沢がずーっと見えた。Westland側は氷河こそないとはいえやはりそれなりに急な斜面だし、ここから降りる人の苦労が偲ばれる。

Passすぐ下の雪原でしばらく休憩した後下山にかかる。もっとのんびりしたい気持ちもあったのだが、今日中にクック村に戻ってのんびりしたいのだからまあ仕方ない。

雪田からいよいよ下りにかかり、一歩一歩キックステップ&アックスワークで慎重に下り始める。股の間からCopeland Shelter、そしてそのすぐ近くには今朝Hooker Hutから上がってきたと思われるクライマー(12-3人)が見える。こりゃ迂闊に下手な動きできないな、でも落ちたらすぐに助けが来るなと思いつつ、目は足下のステップの効き具合とピックの刺さり具合を見るのみ。さいわい一歩も崩れずShelterまで下ることができた。下ってしまえばこっちのもの。これから登ろうとする人々に「Have a good climbing !」などと言いまくる。しばらくShelterで休憩しながら彼らの登り具合を見ていたが、相当悪戦苦闘しているようだ。アンザイレンした上でトップがルート工作しているからのようだが、随分慎重だな、あのガイド。さすがにお客連れてくるとあんなになるんだろうな。

靴擦れが甚だしい。Hooker hutですでに半泣き状態。そこから平坦な道をCamping Areaまではまさに地獄の行進であった。テント場で靴を脱いだら、結局10ヶ所に水ぶくれができていた。足に合わない靴(もっとも自分の靴なんだけれど)は履くもんじゃないな、と身も心も痛感。

3月4〜7日 晴れ、晴れ、曇り、雨 Mt.Cook〜Wanaka(2NIGHT)〜QT

何となく書くのを怠けた。明日はもっと南に行こうかな。

3月8日 雨のち曇り QT Stay

雨なので今日も停滞。午後になって雨が上がったので、15:00頃になってゴンドラで上に上がり、ただ下り(ここから丘にも登らず)、YHでメシを作る(宿泊は当然モーターキャンプ)。Mt.Cookに登るための金が(不本意ながら)浮いてしまったから、その金で少し遊ぼうか。いや、使っちゃいけないかな。明日からは晴れるだろう。パラパントでもやるかな。

3月9日 雨

昨夕、青空が広がってきたのでこりゃいいぞと思っていたのだが、それも早朝ベッドの中で雨音を聞いた瞬間はかないものになってしまった。何もすることがない。無駄飯食いとはまさにこのことを言うのであろう。

ここ数日、伸びた髪が妙に気になっていたので、モールの中の床屋でカットしてもらった。$13、高いがさっぱりした。

3月10日 晴れ時々曇り

いよいよ晴れた。よーし今日はパラやるぞと思ってinfo行ってみたら、今日は強風につき中止だと。明日の予約だけして、今日はバンジーの日と決める。

バンジーを飛んだのは16:00頃。長いこと待たされたため、「早くしろよーっ」と内心いらついていた。こんなのすぐ飛べるだろ…と。いよいよ次というときになって足のハーネスを巻き付けられている時もまだ平静ではあった。しかし、いざお立ち台の上に立ったときは「しまった!」と心底思った。さっきまでなかなか飛べなかった前人たちの気持ちが良くわかった。しかし、自分は昨晩知り合った日本人に「いいショット撮ってね!」とカメラも渡してあるのだ。飛べなかったらどうする。自分にだって見栄はある。

飛び立った瞬間の1-2秒は、もう死ぬかと思った。沖雅也の気持ちが痛いほど分かった。
2000注 「涅槃で待つ」、この言葉、わかる人はわかるよね。

「飛び降り自殺者は落下途中で気絶してしまう」ということを聞いたことがあるが、気絶はしないにしろ放心状態になってしまうことは間違いあるまい。いや自殺の場合は死がぐんぐん近づいてくるその恐怖のあまりに気が狂うというのもわかる気がする。ま、ま、とにかく参った。この夜は妙にハイになって酒を飲んだ。

3月11日 晴れ時々曇り

今日はバンジーより安全に飛べる?パラパントの日である。R89を上に上がったところからのフライトとのことで、高度差は240m。日本で磯根崎からのフライトは150mとのことだったから、高度的にはこれまでで最も高いが、高いだけなら何とかなるだろうと思っていたが、当然初心者をターゲットにしているから、下で出される合図通りに飛ばなければならず、何だか味気なかった。もっともそれを無視して自由に(しかも安全に)飛ぶだけの技術があるのかというとそんなことはないのだが。

午後はカワラウ川に釣りに行ったが、ジェットボートの往来が激しく釣りになりそうもないので数十分で中止。ファミリーバーへ行って(今日は日曜だからパブリックバーは休業)、夕飯にきしめんライスを食べ、騒いでいるうちにSさんが到着。QTからTe Anauへ動いた多くの日本人らにより、彼女が自分の行動をよく把握していたのにはびっくり。$13で髪を切ったとかいうことまで知られている…。うーむうかつなことはできんな。

今晩はモーターキャンプ内をポッサムがうろつきつつギーギーとわめくのでうるさい。とにかく水曜にInvercargillまで行き、スチュワート島で久々にトランピングじゃ。荷物背負うの面倒くさいけれど。

3月12日 雨

今日は出発します!と声高に叫んでいたNくんであったが、8:00を過ぎてもまだテントから出てきそうな気配がない。自分ものんびりとうとうとしていたら、「Takeさんもう9:00ですよ」と逆に起こされた。そとは曇り空、今にも降り出しそうな雲行きだ。おまけに風が強い。3月中旬というのは日本でいう9月中旬にあたるのだが、太陽のない時の寒さは日本の同時期の比ではない。

サムイサムイ、夕飯何にしようかとNくんと話しているうちに(Nくんも出発中止)、Wanakaでリバーカヤックを一緒にやったYくんが突然出没。彼は16:00過ぎのバスでGoreに向かうとのことだったが、自分が「明日Invercargill行くよ」と言ったら、すばやく予約をキャンセルし、今宵の夕飯、寄せ鍋の仲間となる。今回は、Nくん、Yくん、そして経費節減のため?仲間に取り込んだ大阪の姉妹二人、そして自分の5人であった。

材料:白菜、トーフ、ネギ、鶏もも肉、得体の知れない白身魚。たれは醤油とみりんと砂糖に唐辛子少々、そしてレモンを絞ったもの。飯も含めて量が多すぎるように感じたが、結果的にはちょうどぴったりであった。Yくんは宿がなく、この夜は我がテントの下宿人となった。

3月13日 晴れ QT〜Alexandra〜Gore〜Invercargill

いよいよ移動の日がやってきた。N氏ともまたの再会を約束して別れる。

今日は昨日までとうって変わって上天気。昨日Routeburnへ向けて出発したグループも今日は快哉を叫んでいることであろう。GoreまではYくんとガス代シェアで行く。Alex.でTony's Orchardに立ち寄る。Thomas、Maxのデンマーク人二人はまだ働いており、あと2週間働くと言っていた。写真6本をPick upする。日本語勉強中のAnnaさんの所にも行ってみたが留守であった。Alex.〜Gore間のR90沿いの芝の上で飯を食い、Gore〜Invercargill間はずいぶん短く感じた。今日の移動距離260km。久々のロングドライブであった。

金が底をつきつつある。やばいな。

スチュワート島への船便は明後日の朝だから、明日はゆっくり準備の日だな。地図も飯も買い出さなきゃ。島にはテント持っていこうかな。$4/nightは痛いし。

3月14日 曇り時々晴れ

今日は木曜で船も出ないので準備&急速の日だ。金をおろし、リペレントと地図と食糧を買い込み、南端の町Bluffまで釣りに行く。糸を垂らすやいなや、Greymouthの10秒に勝るとも劣らずの早さで小さめのバターフィッシュがかかり、こりゃ今日は入れ食いか?と期待していたが、あとはさっぱり。雑魚ばかり。

びっくりその1

途中、ものすごく大きいあたりが来て、よし、今日の刺身は大物だぞ、と喜んだのもつかの間、上がってきたのは「大きな金網」であった。

びっくりその2

ここBluffの港は水の透明度が高く、かなり下の方まで見通すことができる。したがって、エサめがけて近寄ってくる小魚を見ながら「しっし、おまえらじゃ駄目なんだよ」と追い払いながら大物のお越しを待つ、といった感じだったのだが、途中、周りの小魚とは比べものにならぬほど大きな魚影発見。いかん、こんなのじゃこの竿が折れるぞ、と思い急いでリールを巻き戻し始めるが、何とその大物はエサにつられてそのまま一緒に上がってくる。いよいよエサが水面に出た。…と、なんとその魚も水面から顔を出した。なんて魚だ!???。いや、これ、魚じゃなかった。何とペンギン。ふと見ると、あっちこっちにペンギンが。ふーっ、あぶないあぶない、ペンギン釣るところだったぞ。グリーンピースが黙っちゃいないだろうな?

3月15 16日 雨のち嵐のち晴れ Invercargill〜Oban

どうやらQTの日々のうちに一日パスしたらしく日付がおかしい。今日は16日(金)である。

朝起きると小雨風混じり。げっ、今日の船は絶対揺れるぞ、いやだなあ的予感にさいなまされつつYHを8:00過ぎに出発。Bluffについて見つけたフェリーは予想通りの木っ端船。Te Anauのミルフォードトラック行きの船よりもさらに小さい。幸い埠頭の中は全然波もないので、まあ、沖出ても何とかなるんじゃないかと思ったのもつかの間、外海と港とを遮る最後の防波堤、波がかぶってるぞ、そしてその先は真っ白な波頭と大波の地獄だ。ひえええ、こりゃTDLのスペースマウンテンと同じだよ、と顔引きつらせながら冗談言っていたのもつかの間、乗客の中でまずトイレ駆け込み第一号。自分は船酔いしやすい方だとは思っていなかったのだが、この揺れは半端じゃない。最初のトイレは「あらかじめだすもの出しておいたほうが楽だろう」という防御策からのものだったのだ。

しかし、船はまさに木の葉のように揺れる。他の乗客たちもうつ伏すか、真っ青な顔してトイレが空くのを待っているかのどちらかで、生気のある人はほとんどいない。あ、斜め前の人がスーパーの袋にゲロしてる。しまった、袋持って来るんだった。しかも乗る前に「船で酔ってるのか酒で酔ってるのか分からなくしてしまおう」と、買い置きのDBなんか飲んだもんだから、船酔い+酒酔いのダブルパンチ。うはーーっ、き、気持ち悪い、吐きたい。そろそろあかんかな、と思ったその瞬間、近くにいた元気なおばちゃんが「袋いる?」と手渡してくれたので即受け取った。第二弾があふれてきたのはそれとほぼ同時。危ないところだった。ゲロ袋は見ているだけでいやになるのでそのまま口を締めてゴミ箱へ。そしたら、また気持ちが悪くなってきた。ううっ、やばい!でもトイレは長蛇の列…。

2000注 このときの船酔いが、これまでの人生の中での乗り物酔いワースト記録であることは間違いのない事実です。トイレを待つ間、流れ落ちる冷や汗、巻き上がる胃の内容物、口の中にまで上がってきた胃液を「ごっくん!」とまた飲み込みつつ順番を待つ心地… 地獄でした。

このあと少し落ち着きは取り戻したものの船は相変わらず大波小波の間を揺られ続ける。幸か不幸か睡魔が訪れてきた。今はこれにすがるしかない。眠っちゃおう!………

気がつくと、船は陽を浴びながら、波のない海上を、まるで何事もなかったかのように静かに進んでいた。何人かは甲板上に出て(嵐の最中は波が打ちつけており、とても出られる状態ではなかった場所だ)「ドルフィンだ!」などと元気そうである。しかし、このときの自分にはほんの10数歩のその距離があまりにも遠く、見に行くこともできなかった。

乗り物酔いなんて十数年ぶりのことだ。それにしても憂鬱なのは、車がBluffにある関係上、帰りもこの船で帰らなきゃならないことだ!

まだ身体が揺れている状態で最寄りのHutまで歩く気力は毛頭なく、YHに行ったがFULL。結局Caravan Parkに泊まることに。3人用のキャラバンを、船で知り合ったMくんとシェアする事にする。

午後、埠頭まで釣りに行く。釣りから帰り、焼き魚定食?を食ってのち、いつともなく寝てしまう。キャラバンカーの広い窓は夜空を映し、絶景であった。それにしても疲れた。

3月17日 曇り時々晴れ Oban〜Port William

Obanから3hでつくんだろうとたかをくくっていた自分にとって、Track入り口の表示まで来て、そこに「ここから3h」とあったのを見たときはショックだった。

Trackの雰囲気は、どこかAbel Tasmanを思い出させる。同じCoastal Trackだし、特にこっちのTonga BayとあっちのMaori Bayはまさにそっくりさんであったように思われる。ただしあっちのフラットトレースと、こっちの凸凹muddyトレースとは大きく違う。初日だけに荷も重くすっかりばてる。途中Musselの大量発見もあったが取らずに終わる。Hut横のWhalfで再び釣り。夕飯はビーフシチューと焼き魚3匹であった(焼くのが一番うまい)。明日の3hは今日にもましてmuddyであろう。あきらめて歩こう。天気は夕方から快晴に。もっと晴れろ!

3月18日 晴れ Port William 〜Bungree Hut

Mくんは今日Obanに引き返すというので、ここからは単独である。今日のコースは今回のルート中最悪と聞いていたが、あらかじめの覚悟もできており、まあ難渋はしたがにっちもさっちもいかないというほどではなかった。それにしても、あの山中でのアップダウンはあまり嬉しくないな、帰りを考えると。コースタイム3hのところ、2hちょいで着いてしまった。最後のBayに出てすぐの岩場にナイフ一本持ってとりつく。最初はなかなか見つからなかったが、こつをつかめばもう簡単。一つの岩の裏に7-8個ついてる。ただ、ここのはどれも皆小さく、取って良さそうなのは数えるほど。その「数えるほど」のアワビでアワビおどり食い、アワビ炊き込みご飯(以上昼飯)、アワビラーメン、アワビバター炒め(以上夕飯)としゃれ込む。浜辺の奥に張ったテントから水平線を眺めつつの豪勢な夕食だ。

ここで会ったドイツ人一行が「X'mas Village Hutに行くともっとでかいよ」というので、まあ嬉しいこと。

今19:00。とはいっても、Summer Timeは昨日で終わったような気がする。これで名実ともに夏も終わりか。あと4日くらいで春分、いやこっちでは秋分か。本当に早いな。日本では春山が気持ちいい季節なんだろうなあ。

しかし、こっちに来てからはまあまあの天気だ。このまま明後日のMt.Anglemまで天気がもてばよいのだが。明日はX'mas Hutまで4h、ガッツがあればそれから頂上を往復してこよう(たぶんない)。Summer Time云々といっても、ここにいる限り時間のズレなんて気にする必要もないのでこのままにしておこう。

くちばしの長い鶏(Oyster Catcher)やシーガルがたたっとテント前を歩いていく。何ともまあのんびりしているなあ。ビールは後1本、そのあとはコーヒーと水だけだ。うーむしまった、グレープフルーツジュース(粉)持って来るんだった。

3月19日 曇り時々晴れ Bungree〜X'mas Village Hut

今日はコースタイム4hのところ、きっちり歩いて、休憩込みで5hは優にかかった。しかしまあ、登るか下るかmudしかないコースだね。やっと持参の地図の射程範囲内に入ったのだが、Trackのルートが地図と実際とではかなり違い、やっぱり使えない。全くもう…と思いつつ、ベチャベチャとmudの中を歩いてきたのでありました。Xmas Hutは海沿いの丘の上にあり、窓からの景色は何となくリゾートといったところ。小屋も新しく、誰もいないので、今日はしっかり小屋泊まりにしてしまった。

小屋についてまずしたことは当然ながらPaua Catchingであった。Hutの正面は砂浜ならぬ石浜、こりゃいないかな、しかも小屋の前だし…と思っていたが、いるわいるわ。小さいのも含めると昨日よりすごい。ちょうど干潮なので都合がよい、ちょっと沖のほうに出て大石をひっくり返せばでかいのもいる。明日もここ泊まりだし、一体何個食べることになるのだろう。

一度ボイルしたほうが柔らかくて食べやすい。生はコリコリというよりコチコチであごが疲れる。しかし、野菜とこれさえあれば何日でも暮らせるな。毎食じゃ飽きるかもしれないけれど。昼飯は大Paua×4+野菜炒めで満腹となった。夕飯は魚を…とも思ったが、これは余りに釣れそうにないのでパス。明日、Mt.Anglemから下ってくる頃にはまた干潮になるからまあいいやということで、グリーンピース&コーン炊き込みご飯と野菜炒め。バターはこれまでの山行で液状化が懸念されたことから持ってきていなかったが、今回の持参は大正解。醤油も大量持参はそれだけで心強い。飯もまだ1kgはあるだろう。但しそのうち500gはロングライスだけれど。

このごろ、午前中は天気が悪く(とはいっても雨はほとんど降らない)午後晴れるというパターンが続いている。大勢はどうなってるのか知らないが、明日は午前中から晴れておくれ。

3月20日 曇り時々晴れ Mt.Anglem往復

朝方はDrizzle気味であった。おととい会ったドイツ人も「Mt.Anglemの良い時間は15:00以降だ」といっていたし、ということで出発は思いっきり遅く11:00。このころにはいると青空も見え出す。ルートの下半分は一般ルートと同じで歩きやすい。はあこりゃいいやと思いつつ1h、もうすぐ森林限界というあたりからは深い泥溝の中の道。よけ場がないし、木や草が覆い被さっていて下が見えない。エイヤッと歩くと下は深いmudだったりしてズボズボ。まあ、無駄な上下がないだけ少しはましなのかも。森林限界の上はwetな草原。このころから時折強い日差しも照りつけ、それほど苦しむことなく頂上へ。もっとも森林限界から頂上までは長く感じた。とはいっても小屋から2.5h。思ったより時間がかかったのはあの溝mudのせいだ。雨の後だったらいやだろうなあ。今回はなんだかんだ言ってmudも乾き気味だから結構楽だぞ、と思う。

今日の夕飯はアワビ中4個。ここのは簡単に取れて旨い。このあと日本に戻ってアワビを食うのはいつの日になることやら。ビールも昨日切れた。口がさびしいのでラズベリー風味のゼリーのもとを溶かして飲んでいる。コンロ(PeakT)もパッキンオイルが切れたかポンピングの時にキーキー音がする。ガソリンはまだたくさんあるので大丈夫。今日もHutは貸し切り。

しかし野菜が減らないなあ。トランピング用のシューズは右足に加えて左足も壊れだした。

3月21日 X'mas Hut〜Bungree〜Port William Drizzleのち晴れのち曇り

昨夜は飲み過ぎたコーヒーのせいだろうか、0:00頃まで寝付かれなかった。起きて飯を炊き、野菜炒めを食う。ふと見ると外は雨が降っている。どうせ朝方だけだろうとたかをくくっていたがなかなか止まない。出発は結局11:30、それでもまだDrizzle模様であったが、ちゃんと降ればさっさと停滞するのだが、となんだか煮え切らない。10:00には、やっぱやーめた!と思って火もつけたのに。

そうそう、いきなりペンギンの死体が打ち上げられていた。昨日はなかったから昨晩のうちに打ち上げられたものだろう。まだハエ一匹たかっていない。持ち上げてみるとまだ死後硬直状態だ。一瞬、「食おうか」の欲望がたったが、やっぱりやめた。

Bungreeまでくるとハンターばかり。ここまで4hのコースタイムはやっぱり厳しい。順調に歩いて4.5hというのが順当だろう。ハンターが向こうから鹿を引きずって歩いてきた。どうも彼らが好きになれないのでPort Williamまで行くことに決める。あそこではアワビが取れないので、あらかじめここで捕獲して持っていくことに決める。着いたのは19:05。ここの芝は気持ちいいので節約のためにもテントを張る。テントは行きにBungreeで泊まったときの砂でジャリジャリする。今夜は風もなく良い。明日は停滞しよう。

3月22日 雨 Port William(Stay)

停滞することは決めていたのだが、おそらくそのつもりでなくとも動かなかっただろう。夜半からすごい風と雨。特に風がすごい。景色を優先して風当たりの強そうなところにテントを張ったのは失敗だったが、グランド部分しかペグうちしていない(そこしかできない)この韓国製Great Outdoor2人用テントは、柔構造といえば聞こえはいいが、フレームが柔らかすぎて寝ているとテント生地が顔の上に覆い被さってくる。おまけに入り口側からの風で浸水が始まった。どうやらつぶれる心配はなさそうなので、寝袋に顔を埋めるようにして寝ていたが、さすがに明るくなった7:00頃からは起きてしまっていた。

午後になってWhalfに行って釣りをしようとしたら、雨ならぬひょうの攻撃にあってあえなく退散。夕方近くなって再度やったら、エサが良かったのか(何たってアワビの新鮮なるハラワタである)、食うにはまあまあ良い型が四匹釣れた。テントの位置をずらしたら、午後は大変にリラックスできた。

3月23日 曇り時々晴れ Port William〜Oban〜Invercargill

おかげで風は収まった。Obanまではかなり気楽。とにかく頭がかゆかったので、来たときに泊まったCaravan Parkでシャワーを借りた。こっそり…という下心もあったが、ここはやはり正当に$3を支払って堂々と浴びたのである。帰りの船には日本人が4人。来島時には飛行機で来たというので、「10数年ぶりに吐けますよ」とおどしてはみたが、今日は大変穏やかな海。Inver泊。

3月24日 Invercargill〜Te Anau

今日の目的地をどこにしようかさんざん迷っていたが、結局Te Anauへ。モーターキャンプ目指して市内を走っていたら、PHQの前でこちらに向かって歩いてくる見慣れた東洋人発見。そう、QTで一緒にバカやったNくんだ。彼もすぐにこちらに気付いたらしく走り寄ってくる。水色のファミリアでピンときたとか。しかしNくんは今日からMilford Track入りするとのことで、残念。彼が出発するまでの間、湖畔でワインと日本酒を飲みつつ話す。何となく、Nくんが戻ってくる28日までここにstayすることにしてしまう。Te Anauに来なかったら、28日などは明らかにChchにいるはずだったのだが…。今夜はMotorcamp泊まり(金払った)。

3月25/26日

25日は特に書くこともないほどに悶々と過ごした。釣りにも行ったが身が入らず、キャンプに戻ってワインを飲んでいるうちに眠くなり、何と16:00就寝。

26日。今日は釣りの日にするかと思い、朝9:00前よりWaiau川へ。ルアーは1個しかない。引っかけずに…と思いつつ竿を振るがいっこうに音沙汰なし。姿は見えるのだが、こっちから見えるということはあっちからも、だし。

昼飯時にMCに戻り飯と酒とウインナーでくつろぐ。15:00過ぎから再び川へ。これまた釣れない。17:30、前回テントを張っていた付近に場所を移動して釣るが、いっこうに反応なし。うーむ、あと2-3回投げたらやめようか、と思いつつリールを巻いていると…来た来た!引きがデカイ!何とか引き上げてみると、以前釣り上げたのよりはるかにデカイ!体長60cmくらいある大物!嬉しいのなんのって!しかし、何でいつも一人の時にばかり釣れるのだろう。MCに戻って写真を撮り、内臓だけ取って冷凍庫へ。28日にNくんが戻ってきたときに食おう。明日もたぶん釣りか?

3月27日 晴れ まだTeAnau

さすがに4日目ともなると退屈だ。12月よりずっと活躍してくれていた馬並みキャンドルの底に穴があいたので、残った外壁部を利用し、巾着のひもを利用して小キャンドルを二つ作った。これで数日は持つかな。昼はWaiau川行ったり、湖畔で昼寝したり。

天気は何とか持ち直したが、NくんがマッキンノンPassを越えた日は雨だったのではないか?それにしても暇だ。明日は何をしよう。テント内の整理か??

3月28日 晴れ時々曇り

午前中は買い出しと読書に明け暮れる。午後はトラウトの自然解凍。やたらに蜂が寄ってくるのはなぜだ?ついでに何ヶ月も持ち歩いていた松前漬けの制作に取りかかる。忙しそうだが、実際はやはり暇を持て余していた。夜、テントの前にシートを敷いてメシ&酒宴を行っていたら、近くのキャラバンカーから、パースから来たというおっさんがDBドライ一人2本の差し入れつきでやってきた。すぐ去ってしまったのはなぜ?

3月29/30/31日(31日 TeAnau〜QT)

この3日間は天候がいっこうに落ち着かず、コロミコトレックのOfficeに一日中居座っていた。メシ付き。押し掛け居候のようなものだ。29日夜は旨いステーキ&生ガキのおまけまでついた。平野さんの話によるとICIでは店長に「平野さんの紹介で…」といえば割引、その他エバニュー、ジャンスポ、モンベル等は直接平野さんに頼めば安くなるということだ。

31日はMt.Cookまで行くNくんとともに15:00ころQT向けて出発。夕方、YHで会った人と何気なく話していたら、「車を買いたい」という19歳ワーホリ青年がいるということを聞きつけ、早速商談開始&成立!とりあえずChch渡しでいいでしょ、ということで$1***、こちらとしては破格で売れた。ただし、生活用品や調理用具、調味料やテントなどのキャンプ道具、後からつけたカーステ、その他いろんな機材を全部つけての価格だから、決してぼったくったわけではない。でもNくんはこっそり「よかったねーっ」と笑っているから、確かにいい商売ではあったのだ。しかもChch渡しでいい(Chchまでは自分の荷物の整理等色々あるから…)というのだからありがたい。

明日は試乗をかねて3人でMt.CookまでそのあとChchだ。いよいよ先が見えてきたぞ

2000注 しかし、やたらに運がいいなあ。これは、QTのYHのビジターズブックやモールの掲示板に「Car for SALE」と色々書いておいたのが良かったわけで、彼はビジターズブックを見て「いいなあ、これなら買えるなあ」と思っていたそうです。そしたら売りたい本人が現れたというわけ。運ですねえ。